22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/30(月) 14:05:46 ID:7nH82uV4
「キョン……実はあたし寝取られ萌えなのよ」
その日は何故か朝比奈さんも長門も古泉もいなかった。
お互い俺とハルヒしかいない団活動に意味を見出せなかったらしく、ハルヒが俺に入れさせた味も素っ気も無い茶をぐぴりと飲み干すと、敢え無くこの日はお開きとなった。
……それだけならば、何も問題はない。
問題は、今この瞬間から始まった。下校途中、二人きり、突然のカミングアウト。
寝取られ萌え? こいつは何を言っているんだ。引くぞ。
そして両頬に手で覆うな。恍惚とした表情をやめてくれ。耳まで赤いぞ。
ハルヒが「あの時駐輪場であんたが……」やら、「佐々木さんに親友って……」やらとほざいていたが、ゴニョゴニョとした声だったのでよく分からなかった。
しかし何故佐々木の名が今ここで飛び出す。薄々想像はつくがまさかお前まで誤解してるんじゃないだろうな。
などと俺が考えていると、ハルヒは制服の内側に手を突っ込み、胸の辺りを弄りだした。おい! それはマズいだろう。ここは公共の場だ。
そういうことは一人でベッドの上でしなさい。俺はハルヒの肩をわし掴みにする。
切なげな声が聞こえる。目の焦点が合っていない。どうしちまったんだこいつは。
「ばかぁっ……じゃましない、で……」
馬鹿はお前だ。間違いないぜ。
「あんたがぁ……んっ、さ、ささきさんとなかよくしてるの、みてるとぉ……んぁ、なんだか、ムズムズってぇ……」
「それは○○萌えというよりも性癖というのでないかい?」
俺はそう口にしようとしたが、道の陰から見慣れた感覚のある自称親友が現れ、俺のセリフをものの見事に奪っていった。ちなみに○○の読みは『まるまる』だ。ホニャララではない。
「佐々木……」
俺には何が何だか分からない。分からないまま、佐々木が俺の下顎にすらり細い指を伸ばし、うっとりとした熱に浮かされた瞳で俺を見てくる。
「キョン、涼宮さんなんかとは比較対象にもならないほどに、キミを愛しているよ」
うっすらと瞼のおろされたその顔は扇情的と形容されるものであり、俺は眉に塗りつける筈だったツバを飲み込んでしまう。
「ん……んんぅ……あ、やぁ……」
佐々木の威圧に満ち満ちた文句にハルヒが一層指の動きを激しくする。
路上、自慰に浸るハルヒ、そのオカズである俺と佐々木のキスシーン。
嬌声が通学路に響き、滑りのある佐々木の舌が俺のものと絡み合う。
「……佐々木さん、キョンをよろしくね。腑抜けでフラクラで意気地のないヤツだけど、根はいいヤツだから……」
「涼宮さん……」
夕日をバックに手を硬く握り合う女二人の解読不能な友情劇を眺めつつ、俺はここからが本番なのだと気合を入れる。
何せ俺はまだ昇り始めたばかりだからな、この長い長い寝取られ男坂をよ……
――――○――――――――――――――――――――――
。0
「という夢を見たんだ」
「そうなのかい、キョン。結婚しようか」
大したオチも佐々木分もなく終わる。