【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

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佐々木スレ8-574 佐々木×古泉

2007-05-17 | その他

574 :1/6:2007/05/19(土) 04:00:31 ID:UraJxel1
「――学食はここですね」
涼宮ハルヒの対とも称される彼女――佐々木が転入してきた初日の昼休み。担任教師殿より
彼女の案内役を仰せ付かったが為に、僕はこの休み時間で校内を案内して回る事となっていた。
しかし昼休みなのだからまずは食事からだろうとそう考え、ここまでやってきたと言う経緯である。
「なるほど――しかしこの利用者数対総席数を鑑みるに、この学食はいささかキャパシティ不足で
 あると判断せざるを得ないようだね? いつもここの平均利用率はこんな感じなのかい?」
苦笑いを浮かべながらそう話し掛けてくる彼女。
「申し訳ありません、生憎と僕は余り利用した事が無くて」
これは僕の正直な意見だった。いつもは購買か、或いは学校周辺のコンビニエンスストアで手軽に
摂取可能な食糧を調達していた。ここ数ヶ月は落ち着いていたとは言え、昔はスクランブル続きで
悠長に食事を摂っている時間など無かったから、今でもその癖が抜けていないのかもしれない。
「しかしこうも混み合っていたとは――涼宮さんが学食の拡張を望んでいるのも肯けますね」
「この有様を見れば誰でもそう思うだろうさ。今日来たばかりの僕ですらそうなのだから――
 どうだろう、とりあえず味定めと言うのは。古泉君も久方振りなのだろう?」
――何を言い出すのだろう、この女は。何故僕があなたと食事を同席しなければならないのか。
「まあ、僕がキミにとってのペルソナ・ノン・グラータであろう事は重々承知しているがね。
 無理強いはしないし、そんな権利も僕には無い。だけど――」
喉の奥でくつくつと鳴る不思議な笑いをしながら、彼女が続ける。
「僕に聞いておきたい事の一つや二つ、キミにだってあるのだろう?
 僕の方にしてみたところで、キミに確認しておきたい事だって何も無い訳ではないのさ」
やれやれ、と言うのは彼の専売特許だと思っていたのだが――
どうやら穏やかな昼食と言う訳には行かないのだろうな。
「仕方ありませんね――転入初日の女生徒を助けると思って、御一緒いたしましょう」


575 :2/6:2007/05/19(土) 04:01:54 ID:UraJxel1
「キョンよお、何でお前ばっかりモテてるんだよ……俺は納得いかねえぞ」
谷口、国木田、俺と、二年生になっても何ともまあ代わり映えのしないいつもの面子で昼飯を食って
いた時の事、谷口がそんな事を言ってきやがった。
誰がモテてるってんだよ……万年カーニバル状態のハルヒだけでも頭が痛かったってのに、今度は
終日ペダンティックな佐々木のヤツまで加わってしまった。俺の近年の運勢には間違いなく女難の相
が出ているに違いないね。
「気付かぬは己ばかり、ってか? 色男サマはつらいね、この野郎」
こら谷口、箸の先端を向けて突付くジェスチャーはやめろ。おっかないんだよ。
「あの佐々木って女、ありゃファンが相当な数つくぜ。俺的評価でAランクは下らないね」
谷口評価などアテになるものか。しかし佐々木のヤツ、中学時代は表立たなかったものの男子人気は
相当にあったらしいな――もっとも、それも国木田から漏れ聞いただけの話ではあったのだが。
「それにしても驚いたよね。まさか佐々木さんが転入してくるなんてさ」
さてその国木田だが、こんな事を言ってのけている。
「どこがだよ、ちっとも驚いた素振りなんて見せてなかったじゃねえか。お前があの時九組の転入生は
 佐々木だって教えてくれりゃ、俺だってあんなに驚かなかったのによ」
「そうだった? 僕としてはかなり驚いた方だと思ったんだけど」
相変わらずマイペースな奴だぜ。こいつときたらきっとこの国の首都がブラックホールに飲み込まれても
わーすごいねーとかで片付けちまいそうだ。
「何言ってるんだいキョン、流石にそんな事があったら僕だって悠長に学校に来てたりしないさ」
そうかもな、と俺は相槌を打ったが、こいつの事だから学校に来ていなくても家のテレビの前に
釘付けになってニュースウォッチャーをやってそうな気がしないでもない。おとなしそうな外見とは
裏腹に肝っ玉の座った奴であるからな。
「まあ九組って言うのが佐々木さんらしいと言えばらしいから、それで驚きが多少減らされてたかもね。
 英語と数学は彼女の十八番だったから」
言われてみれば、佐々木と国木田とはテストの点で何かと張り合っていたっけな。
かつてのライバルと再び同じ学校となった事で、こいつとしても何やら闘志が湧いているのかもしれない。
もっとも俺は中学時代より蚊帳の外であった訳だが――
「いいねえ、秀才のスレンダー美人かー……
 ったく、そんなのがこのダメキョンに夢中だってんだから、世の中不公平だぜ」
「うるせえ」
谷口の与太話に付き合ってたらいつまで経っても弁当が減らん。こいつは無視だ、無視。


576 :3/6:2007/05/19(土) 04:04:33 ID:UraJxel1
「――意外とお食べになるんですね?」
先に席へと着いていた彼女の前にある盆を眺めての、率直な感想だった。
大盛のカツカレーにグリーンサラダと味噌汁。
華奢な外見をしているから食が細いのだろうと言うのは何の役にも立たない先入観だな――
「そうかな、これくらいは普通に頂いているよ? よく食べてよく眠らないと頭脳という奴は
 ちゃんとした仕事をしてくれないからね。あとは適度な運動かな」
「なるほど」
彼女の前の席に腰掛けながら、返事を一つ。笑顔を張り付けるのも忘れない。
「まあ、食の割に線が細いとからかわれた事もあったがね。
 自分としてはもうちょっと肉が付いて欲しいと思わなくもないのだけれど――」
彼女は自らの胸元をちらりと一瞥する。僕の視線もつられてそこへと――おっと、いけない。
「――それで、お話とは?」
意図せず飛ばしてしまった不躾な視線を誤魔化す為に、話題を変える。
「ああ、そうだったね――滅多に無い機会だろうから、不要な韜晦はやめようと思う。
 と言っても、キミがどこまで信じてくれるかは僕には判りかねるがね」
「――では僕も遠慮なく伺いましょう。あなたにとって、彼は何です?」
僕の何の奇もてらわぬ質問に、彼女は苦笑する。
「また何とも、直截な質問だね。いいだろう、韜晦は無しだと言ったのは僕の方なのだから」
向かいの彼女の顔から笑みが消える。これがこの女の本当の顔なのだろうか――
「キョンは僕のスペシャルだよ。他の誰も彼の代わりにならない。僕はキョンの事が好きだ。
 友情から来る好意だけではなく、一人の少女として、彼の事が愛しい。
 いつだって彼の傍に居たいと、時々抑えられなくなりそうな感情を覚える事もね。
 この感情の事を恋愛と言うのなら、今の僕は正に恋患いなのだと、そう言えるだろうさ」
「――また何とも、直截なご返答ですね」
まさかここまで正直な返答が来るなどとは予想外もいいところだ。
春先に僕達の前で彼の事を「親友」と言った彼女とは別人であるかのように思われる。
「しかし、何故彼なんです? 彼は何の変哲も無い、ただの一般人だと言うのが僕らの見解です。
 橘京子達の組織にしたところで、それについては異は唱えないでしょう」
「それについては僕に聞くまでも無く、一年間キョンの友人をやってきたキミも判っている事じゃ
 ないのかな、古泉君?」
「僕が――? 何をですか」
「それでは逆に僕からキミへと問わせてもらおうか、古泉君。キミは何故キョンの友人をやっている?
 キミの『アルバイト』については橘さんからも伺わせて貰っているが、今でも仕事上の演出で
 彼の友人を装っているのならば、大したものだと僕は思うよ」
僕が彼の事をどう思っているかだって――? 確かに彼女の言う通り、彼へと近付いた目的とは
彼の傍に居た涼宮ハルヒに他ならなかった訳で、まずは協力者として彼を味方に付ける為に
友人関係を偽装していた事は否定はできない。
だが――
僕は何時からか、彼と話す事それ自体が楽しみに思えるようになっていた。
聞かせた者を煙に巻くような、我ながら小賢しいと思える話にも何だかんだと文句を付けながらも
付き合ってくれる物好きは彼以外には有り得なかっただろう。
「あ――」
そうだ、何故だか判らないが、彼と話している時間は僕にとって非常に安らげる時間なのだ。連日
連夜の『アルバイト』で心がささくれ立っている時も、彼と話す事で苛立ちが治まった記憶は何度も
ある。聞き上手な彼の性格もあるのだろうが、不思議と気のおけない彼と言う存在は貴重だった――
「気付いたようだね――回答は要らないよ、きっと僕と同じだろうから」
向かいの席の彼女は微笑んでいた。思い人の良さを話相手に理解された事による喜びから来る
笑みなのだろうか――この笑顔を独り占めできるであろう彼に嫉妬を覚えてしまう。
いや、何を考えている、古泉一樹。目の前の彼女は僕など歯牙にも掛けてはいないのだと理解しろ。
そうでなければ僕なんかに彼女がこんな話をする訳がないのだ――


577 :4/6:2007/05/19(土) 04:06:29 ID:UraJxel1
「さて、今度は僕の方から問わせてもらおうか――いや、そんな緊張しないでくれたまえよ」
くっくっと笑う彼女に言われて、我知らず全身の筋肉が緊張していた事に僕は気付いた。
いけないな、まだ警戒心が解けていないのか――
「それで、ご質問とは?」
何気ない風を装って返してみたが、どうにも表情が巧く作れているのか自信が無い。
一体彼女が僕の何を知りたいと言うのだろうか。
「キミ達――より正確に言えば、キミの組織と橘さんの組織の事さ」
『機関』の事を? 一体何故? 何の為に? いけない、僕は混乱しているようだ、落ち着け――
「キミ達は四年前に何らかの原因で超常の力を授かったと聞いている。
 古泉君達に授けたのは涼宮さんで、橘さん達には僕がそうした――と言う事らしいね?」
「ええ、そうです。何故だか理由は判らないけれど、僕らは何か普通と違う力を得た。
 そしてそれが涼宮さんから与えられたのだと言う事も、やはり理由無く理解できてしまった――」
「橘さんも似たような事を言っていたよ。涼宮さんを僕に置き換えたらそのままだ」
「彼女達の立場ならばそう言わざるを得ないでしょうね。何しろその為の組織なのですから」
「それが故にキミ達の組織は互いに相容れないと、そういう理解で問題ないかな?」
「ええ」
何も言うまでも無い。橘京子達が属する組織の解釈ではなく、我々『機関』の認識こそが正しいの
だと、僕には判る。そう判ってしまうのだから仕方がない。
「それにしては妙な話だと思わないかい? 別々の人間にそれぞれ力を与えられたからと言って、
 何故そこで反目が起きるのか――まるで聖典の解釈の相違から来る宗教論争のようだよ」
「――何が言いたいのでしょう? 遠回しな表現はやめようと仰ったのはあなたの筈ですが」
「おっと、これは失礼してしまったね。ではもう少し直截に言わせて頂こうか。
 キミ達と橘さん達、両者へ起こった事が両方とも事実であると仮定した場合、
 神的存在――何ともむず痒いが、敢えてこう表現させて頂こう――が両立してしまう。
 しかしそれは有り得べからざる事態であると、キミ達は認識している。
 だからキミ達と橘さん達は対立せざるを得ない。しかし、だ――」
佐々木は湯飲みを手に取り茶を一口含んだ。
「涼宮さんも僕も神的存在などではないと仮定したらどうなる?」
「え――?」
そんな事、考えた事も無かった。
何故だか判らないが判ってしまうあの感覚が、僕達に思考停止をもたらしていたと言うのか?
「――しかし、ならば僕達にこの力を与えたのは誰だと言うのです?」
そうだ、まずはここから明らかにして貰わねば――
「涼宮さんと僕が関わっていた事は否定しないよ。むしろ僕達は古代宗教で言う『かんなぎ』――
 神的な力の触媒として機能していたのではないかと、そう思っている」
「ま、待ってください、ではあなたの考えている神的存在とは――」
喉がカラカラで声がかすれる。喉を潤す為に湯飲みを持ち上げた僕の手がやたらと震えていた。
「キミにも判っているんだろう? キョンだよ」


578 :5/6:2007/05/19(土) 04:10:10 ID:UraJxel1
「まさか――何故彼が?! 彼は『機関』の調査でも何の変哲も無い普遍的な人間である事が判明
 しています。何の特殊な生まれでもない彼が何故――」
「僕や涼宮さんの生い立ちも精査したのだろう? 僕達は何か特殊な生まれをしていたのだろうか?」
「――いえ、そのような事実は確認されていません。
 しかし涼宮さんは僕達『機関』にとって特別な人間でしたから――」
初めから僕らにとって特殊な人間だったから、それ故に何の疑念も抱いていなかった。
「しかし、彼が何らかの力を揮ったと言う事実は確認されていません。ならば彼が――」
「キョン独りでは力を揮えないのだと、そう仮定したらどうだろうね?
 彼は――そうだな、コンピュータのオペレーティングシステム、いわゆるOSの機能として存在する
 システムコールの塊の如き存在と解釈できるのではないかと、僕はそう思っている」
「――申し訳ありませんが、計算機理論についてはあまり詳しく無いのですよ」
「失敬、僕もコンピュータに関しては素人だから上手く言えるかどうか自信は余り無いのだが、
 なるべく平易に説明できるように努めてみるよ。その上で聞いてくれると嬉しい。
 OSと言うのはコンピュータ全体が上手く動く為の調停者としての役割を持っている訳だが、
 その他にコンピュータでよく使われる処理のセットを予め用意していて、利用者が簡単にその機能を
 再利用できるような仕組を持っている。これがシステムコールと呼ばれている代物なのだけど、
 今重要なのは、このシステムコールと言うのは利用者の要求により動くもので、OSそれ自体が
 自発的に機能を発動させる事は無い、という点だろうね」
「と言う事はつまり、涼宮さんやあなたが利用者であり、彼があなた達の願いのようなものを認識して、
 それを実現する為に彼が力を発動させていると、そういう事ですか?
 しかしそれならばやはり彼が力を揮った痕跡のようなものが認識される筈ですが」
「そう、そこさ。このシステムコールと言うものはそれを実行した利用者の権限で動作し、追跡や
 記録も成されるものでね。つまり涼宮さんが願った事は涼宮さんが実行者として、僕が願った事は
 僕が実行者として、周囲には認識されていたのなのではないかと、そう思うのさ」
まさか――そんな事が?!
「しかしその話では彼に何かを願えば、誰でも何もかも叶ってしまうのでは?」
「恐らく、彼が無意識下で特権的利用者を承認しているのだろうね。選別の基準など知るべくも無いが、
 彼が特別な誰かの願いを叶えてやりたいと、意識はしていないにせよ思った時に、彼の力が祈願者を
 通じて実現してしまっているのではないだろうか?」
確かに――筋は通っているように思える。
祈願者である彼女達。
力の塊であり祈願の承認者である彼。
祈願者を触媒として発動される神の如き力。
しかし――いや、ならば、何故今までこんな事に思い至らなかったのだろうか?
「ハードコーディングに等しいレベルで刷り込まれた常識と言うものは、それを信じる当人にとっては
 否定しがたいものだろうさ。ましてやレゾンデートルに関わるものならば尚更だ。
 しかし真実への道と言うものは常識を乗り越え、非常識の受容から拓ける事だってある。
 天文学において天動説が地動説へと取って代わられたように。コペルニクス的転回というやつだね。
 さっき僕が話したのは全て僕の仮説だが、僕のような小娘にも反論を許してしまう程に、
 キミ達が真実として信じて寄り添っているものも、脆く儚い存在かもしれない」
涼宮ハルヒが扉で彼が鍵なのだと、僕はそう思っていたが――
逆、だったのか?
彼が扉で彼女達が鍵なのだと、そう考えるべきだったのか?
「まさかあなたは彼の力を狙ってここへ?」
「ノーだね。キョンがどんな力を持っていようがいまいが関係ないよ。僕はキョンだから彼の事が
 好きなんだし――ついでに言えば、彼に何かを願った覚えはあるかと言うのもノーだ。
 ああなったらいいね、とか、こうなったらいいね、なんてものを一々憶えていられよう筈もない」
森達は気付いているのだろうか。『機関』の上の連中はどうだ?
いやそれよりも――橘京子達は?
「ちょっと待ってください、この話、橘さんには?」
「一応、させて貰ったよ。残念ながら彼女には受け入れて貰えなかったようだったけれど」
無理もない、自分の足元の地盤を崩すような話だ。
僕ですら理性では解釈できるが感情がそれを否定しているのだから――


579 :6/6:2007/05/19(土) 04:12:10 ID:UraJxel1
「あら、古泉くんに佐々木さんじゃない? 今日は学食だったんだ」
「やあ、涼宮さん。私がちょっと無理を言ってね、彼を付き合わせてしまって」
「ふーん、そうなの――古泉くん、そのおソバもう伸びてるわよ。ダメよ食事を粗末にしたら」
向かいの佐々木のトレイを見れば、既に空っぽの食器しか残っていなかった。
あれだけ話しておきながらいつの間に?
「――はは、参りましたね」
苦笑を浮かべた後、伸びきった蕎麦を一口啜った。
醤油の味しかしなかった。


それにしても、妙な話を聞かされてしまったものだ。
小娘の適当な仮説と一笑に付すのは簡単な事だったが、否定しきれない真実の響きが含まれている
ような気がして、いつまでも頭から離れてくれそうにない。

――『機関』のお偉方どもはこの事に気付いているのか?
或いは気付いていながら、僕達を――?

真実を知る為には自分で調べるしかないのだろうな――
明日も睡眠不足に悩まされそうだなと、下校中にそんな事を思った。

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お粗末さまでしたと言うか一体どこが佐々木SSなんだ・・今は反省している。
あと●に何かヤバ目のフラグが立ったかもしれない。FCKに期待している。