小平だより

月・火・金・土の午前9時〜11時が通常診療 午後は第三金曜のみ4時から6時です。感染症は11時以降の電話予約制です。 

吸入ステロイド薬の報道について

2014年02月27日 09時44分14秒 | 重要な医療情報
本日の新聞で取り上げられていますが、アメリカで吸入ステロイド薬による小児の低身長が報告されています。
小児アレルギー学会にわかりやすい日本語要約がありますのでまずご一読下さい。

この報告が出たのは今回が初めてではなく、十年ほど前から同様の報告は相次いでいます。当院でトータルで得た結論としては、以下の5点に要約できます。現在の治療方針を変更する必要性はないと考えています。

1.就眠不良は深夜の成長ホルモンの分泌を抑制するため、気管支喘息はそれ自体が低身長の原因の一つとなります。その他のリスクも勘案して、必要な症例は治療するべきです。そして、そのためには用量を正確に割り出す必要があります。

2.アメリカと日本では、吸入ステロイドの使用量が異なります。上記のリンク先を読んでいただくとわかりますが、乳児で1.5倍、幼児~小児で2倍です。吸入ステロイドに限らず、アメリカの臨床医は日本と異なり健康保険を利用した気軽な頻回再診ができない社会のため、次回再診まで「絶対に」発症しない量を使用する傾向があります。過去の同様の論文から、当院ではこの用量は副作用が出て当然の危険量だと判断しており、小児でこの用量を実施したことは過去一度もありません。もっと低用量で治っています。よそからの転院で異様な大容量の方は時々いらっしゃいますが、吸入実技指導に問題のあるケースが多いようです。

3.患者さんには細かい定期的な再診をお願いします。よく、もっと長期に出してくれ、スパイロ検査はめんどくさい、というお声は聞きますが、こういう副反応を防ぎ、最低用量に調整するためには絶対に必要な措置です。特に、もう改善しているのにスパイロ検査を延々受けずに延々とお薬だけ貰いに来られるケースは、こういうリスクが有るのだということを銘記しておいて下さい。お忙しいお母さんの代わりにおじいちゃんおばあちゃんが連れて来られ、夜間は一緒にいないので様子がわからない、というケースがありますが、用量を決めるのは困難です。

4.適切な量に減量するためには、タバコのようなPM2.5への接触をなくす。暑さ寒さに負けず、外でしっかりと運動して自律神経系を鍛える。皮膚や鼻などからのアレルゲン感作もトータルで止めて免疫系が安定できる条件を整える。の三点は大事です。特に、タバコに関しては服につけて帰ってきただけでも反応はあります。親の禁煙は必須です。

5.発作が出て治療、目立たないとぱっとやめ、を繰り返す場合。一回発作を見つけたらしっかり治療し、安定したら見張りながら減薬する場合。トータルでのステロイド使用量は後者の方が少ない傾向があります。これは皮膚ステロイドの塗布に関しても同じです。減薬して最後にプランルカストやシングレアを残しますが、これも最後の着陸には重要な治療です。内服を怠る方に再燃する率が高い傾向があります。


かつての皮膚のステロイド塗布薬騒動の時と同様、適切な量と用法の管理ができていないと事故は起きますし、逆に過剰な忌避で健康を損なうケースは出てきます。技師さんの技量や本人の理解度にもよりますが、大体7歳を過ぎると良好なスパイロ検査ができるケースがほとんどです。しっかりと定期的に計測を受けて下さい。