時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(六十五)

2006-12-05 23:39:17 | 蒲殿春秋
範頼は自分には武の心得がある
自分と当麻太郎らで範光の身辺はか必ず護ると約束した。
それを違えず、範頼らは範光の側に常に控えていた。

範光の話した通り国府の中には険悪な空気が満ち溢れていた。
自分が都から連れてきたもの以外は心許せるものがいないという
範光の言葉に実感が沸いた。
うかつにどれか一つの言を取り上げると他がいきり立つ。
この諸勢力の均衡をとるのは至難の業だ。
やっと調整に成功して国務を進めようとしたら
誰かが八条院や平家に注進したあとでその指示により国守の裁定が覆される。

国守はあって無きような状態が暫く続いていた。

それでも、範頼がいることで身辺の安全が確保されて
範光は落ち着きを取り戻してきた。
それぞれの言を聞き、都への取次ぎを約束し自分の都の縁戚の力も借りて
おぼつかないながらも範光は国守としての政務を取れるようになってきた。

それでも時々おびえたり引きこもったりすることもあったのであるが・・・・

範光を励まし続ける日々の中
ある女性が範頼の元に訪れた。
八田局後に寒川尼として知られる女性である。
小山氏の当主小山政光の妻にして嫡子朝政の母、なおかつ宇都宮氏の娘でもあった。
範頼の父義朝をよく知るものであるという。

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