時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(三百九十一)

2009-06-03 22:05:44 | 蒲殿春秋
越後の城氏の復活
その動きは頼朝にすでに知らされていた。
今、城長茂は密かに頼朝の家人の比企能員や梶原景時に通じている。
能員や景時によって刻々頼朝に情報がもたらされる。
この復活劇の背後には頼朝との密やかな連携があったのである。

そしてその城氏の影響で神経を北陸に向けざるを得ない奥州藤原氏の動向は、坂東の情勢に大きな変化をもたらす。

以前から奥州の支援を受けて頼朝に背き続けていた常陸国の佐竹氏や常陸大堟一族は奥州藤原氏の援護が受けれなくなり常陸国への戻れなくなっている。
そしてもう一つの影響が現れた。
頼朝に反旗を翻していた上総介広常の在地における力が弱まってきてしまったことである。

上総介広常はいうまでもなく坂東最大の豪族である。
だが、秩父一族やその他豪族を配下に収めた頼朝に正面きって戦って勝利できる自信はない。
上総介広常がここまで強気に頼朝に反旗を翻すことができたのは奥州藤原氏の後援があってのことである。

だが、奥州藤原氏の関心は北陸に移ってしまった・・・

しかも上総介広常にとって間の悪いことに、下総における勢力を回復しつつある千葉一族が頼朝に猛接近し、その力を背景に上総にまで影響をもたらそうとするようになってきている。
また海を通じてすぐの側の相模三浦一族も上総にたいする野望を燃やし在地豪族たちの切り崩しをはかってきている。
娘婿の加賀美長清もまた・・・
そして頼朝自身も上総の豪族を直接に御家人の列に加え上総介広常の影響力を弱めようと図る。
上総における広常の実権は失われつつある。

このまま今の状態が続くというのであれば上総介広常の取るべき道は一つしかない。
頼朝に帰参を申し立て、再度上総支配の支援を頼むしか・・・

都にあって頼朝追討の院宣を請うている義仲はこの状況をまだ知らない。

それどころか坂東に対する義仲の目論見が崩れつつあるこの状況下、さらに義仲を決定的に追い詰める知らせが頼朝のもとにもたらされようとしている。

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