時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

史料について

2006-11-25 13:25:59 | 蒲殿春秋解説
この時代で「一級史料」として評価されているものは   (信頼性順位 1位)
「公卿補任」(公卿一覧表及び各人経歴)
「玉葉」「山塊記」「兵範記」「吉記」など同時期に書かれ
原文がそのままの形で残っている日記
「平安遺文」として近年編纂された当時の手紙などの記録

ついで信頼性の高いものは
「百錬抄」「清獬眼抄」などの古記録の編纂物      (信頼性順位 2位)
「愚管抄」(当時の天台座主慈円が書いた歴史書)     

その次くらいに「吾妻鏡」(「東鏡」) ※1          (信頼性順位 3位)
 =鎌倉幕府の公式記録

その次くらいか同等に「尊卑分脈」(※2)などの系図類  (信頼性順位 4位)

そのほか補足的史料として
「軍記物」や「説話」「物語」(※3)               (信頼性順位 5位)


※1
吾妻鏡は後年(鎌倉中期に)各種記録を元に編纂されたものであるので
日時的なものなどの編纂時の誤謬
転写ミス
軍記物の内容の混入
頼朝の実力の過大表記、北条一族正当化の為の潤色があるので
大体においては信用してよい記事が多いものの
他史料との付け合わせや「潤色」に関する疑いを持つ
という態度が必要な「取り扱い注意」史料である。

※2
「尊卑分脈」も取り扱い注意史料である。
この本は系図を調べる上で非常に有用な書物であるが
成立が「南北朝」時代なのでそれ以前のものは
誤謬を疑う必要がある。
特に源平記に関しては「軍記物」の中からも記事が採用されている場合が
あるのでより一層注意が必要である。
南北朝時代の人が源平期の人脈を探るということは
時間的に考えると
現在の我々が元になる系図もなしに江戸後期の人々の人脈を探るのと同じくらい困難な作業であることを想起していただきたい。
最近は「各種系図」に関する信頼性に対する研究が進んできたようで
どの系図がより信頼できるものかがキーポイントになってくると思われる。

↑は私の個人的意見です。
尊卑分脈に関してはこちらの方を是非ご覧ください

※3
「軍記物」「説話」「物語」
「フィクション」部分や「大げさ」部分も多分に含まれているので
あくまでも「副次的に」「取り扱いに非常に注意して」
「事実かもしれない」と取り入れることは可能である。
なお、その際その本の「成立年代」に注意し異本が複数有る場合は
付けあわせをしてどの本の記事から採用するかの配慮も必要であろう。
(例 「平家物語」でも「延慶本」と「源平盛衰記」では200年以上の成立年代の隔たりがあるのではないかとも言われている)
ただし、記事によっては他史料より信頼できる部分がある場合もある。

ps.信頼性順位は色々な本を読んだ結果(守備範囲はそんなに広くないです)
私が個人的につけたものです。

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