時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(五百四十六)

2011-02-01 05:52:40 | 蒲殿春秋
やがて、範季そして範頼は義経の邸を去った。
この後いかにするかを問うた範季は車中で後白河法皇のお心を思い、そして自身が抱える有る思いを持て余していた。

この頃後白河法皇の元に鎌倉の源頼朝から一族の官位の推挙が届いていた。
その内容は
武蔵、駿河、三河三国の国守の推薦とその三国を頼朝の知行国にしたい旨、
そして前大納言平頼盛の復任、さらに姉婿の一条能保を讃岐守に任じて欲しいとのことであった。

平頼盛の復権については後白河法皇ご自身もお考えになっていたことである。
彼は頼朝の元に出向いて法皇の御意志を頼朝に伝えついには鎌倉勢を上洛させることに成功したのであるから
頼盛にはしかるべき対応をしなければならない。
一条能保の讃岐守任官も望むところである。
現在平家本軍は讃岐を占拠し讃岐国屋島を本拠地としている。
頼朝が最も近い身内をその讃岐国の国守にと願ったということは
近いうちに平家を制圧する責務を自ら負うといっているに等しい。
少なくとも国守はその国に有る謀反人を追討する義務を有する。

しかし、東国三か国を自らの知行国にしたいという願いには後白河法皇はいい顔をなされない。
法皇は仰せられた。
「その身が坂東にあるのに何ゆえ知行国を望む。知行国主ならば都にその身があらねばならぬ。」
と。
この頃後白河法皇は頼朝に対してご不満をお持ちになられておられた。
━━ あの者は何ゆえ上洛せぬのか、 と。

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