時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(三百六十七)

2009-03-18 05:58:35 | 蒲殿春秋
源頼朝はまず末弟義経に命じた。
都に東国の年貢を納める。その為に上洛せよ、と。
その夜義経は頼朝に再び呼ばれ只一人兄頼朝から詳細にわたる指示を受けた。

その二日後、源義経は自らの郎党たちと兄頼朝からつけられた兄の御家人達数名を引き連れて大量の荷駄と共に都を目指して出立していった。
これがこの時代最も輝きを放つ男の栄光と悲劇への旅立ちとなった。

一方頼朝のもう一人の弟である範頼は鎌倉に暫く残るよう命じられた。
命じられたその日範頼は久々に鎌倉の自邸に戻った。
範頼は久々に妻のところで過ごすことになるのだが、その日々は数日で終わる。
頼朝が佐竹征伐を宣言し、全御家人に召集をかけたからである。
範頼も兄に同行することになる。

上総介広常も今回は頼朝の命に従った。
佐竹は広常にとっても打ちのめしておきたい相手であるからである。
大軍を引き連れた頼朝に攻め寄せられた佐竹残党はあっけなく攻め落とされた。
今回も奥州に逃れようとする佐竹一族。
だが、その奥州へ逃れようとする途上で待ち伏せていた鎌倉勢によって彼等は再び攻撃を受け幾人かのものは捕えられて頼朝の面前に連れてこられた。

頼朝はこの捕虜たちを御家人全員の前に引き据えた。
そして面前で尋問させる。

捕虜のうちの一人が頼朝の望んだ答えを白状する。

奥州に佐竹を支援する勢力がある。それを頼って自分たちは奥州に逃れるところだった、と。

「方々、聞かれたか。
奥州には我等に従わぬ佐竹を支援するものがいる。」
と頼朝は宣言した。

翌朝頼朝は御家人たちを招集した。
「奥州において佐竹を支援するものの名が明らかとなった。」
一同を前にして頼朝は語る。
南奥州の豪族の名が幾人かが名指しされる。その名を聞いた上総介広常の顔色が変わる。
「そして藤原秀衡」
最後に頼朝が最大の大物の名を口にする。

一同の間にどよめきが走る。

我々は、今まで奥州や佐竹の脅威にさらされてきた。そして今東海、東山、北陸の沙汰を任されたわしに従わぬ佐竹を奥州の者たちは未だに支援していようとしているのじゃ。それはつまり、かの者たちはわしに敵対するということである。」
頼朝は一同を見回した。

「そこでわしは、朝廷より東海、東山、北陸の沙汰を受けたわしに従わぬ奥州の者たちを成敗する。」

前回へ 目次へ 次回へ

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ





最新の画像もっと見る

コメントを投稿