時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(七十八)

2006-12-24 10:01:44 | 蒲殿春秋
八条院にどのような思惑があったにせよ、それを実行、計画するものがなければ
それは発行されることはなかったし、後の歴史の大転換は無かった。
その行動の主体が誰であったのかの評価は後世判断はさまざまにわかれる。
けれども一枚の文書が以仁王の名で発行され
その文書がこの国に十年にも及ぶ全国的な内乱を引き起こしたことは事実であった。

「下 
 東山東海北陸三道諸国軍兵等は
 清盛法師とそれに従う謀叛の徒を打ち滅ぼすこと

 最勝親王様(以仁王をさす)のお言葉を受けて前伊豆守源仲綱が宣言します。
 清盛ならびに宗盛などは、威勢をもって、帝を滅ぼし
 凶悪なものを使って国滅ぼし、朝廷の役人と諸国の民を悩まし
 国土を乗っ取ろうとしてます。
 彼らは法皇様をも幽閉し、忠臣を流罪しました。
 卑怯な手を使って大切な官位を彼らの思うがままにしています。
 そのため、忠臣は法皇様の御所にも上がることもできず、
 きちんと修行を積んだ僧侶達は囚人となってしまいました。
 比叡山の大切な年貢は、謀叛の輩に分け与えられます。
 天地は非常に悲しみ、人々は憂いております。
 院の御子であらせられます最勝親王様は
 このことを大変案じられ
 法皇様をお助けし、民の心を安らかにさせようと
 天武天皇の例にならい皇位を簒奪したものを退け
 聖徳太子の例にならって仏法の敵を倒そうと
 お立ちになられることをお心に定められました。
 親王様はかならずや世の中を安らかに治められるでしょう。
 しかしながら、親王様のご決心を成就させるには
 神仏のご加護と諸国の人々の協力が必要です。
 諸国の源氏と藤原氏ならびに諸国の勇者の人々は
 最勝親王様に従って清盛追討に立ち上がりなさい。
 この命令に従わない者は清盛の同類と認め罰を与えます。
 けれども、この命令に従って最勝親王様に味方し、功績を立てたものには
 諸国に派遣する代官を通して
 最勝親王様ご即位の暁には、必ず恩賞を与えましょう。
 この令旨を諸国の人々は謹んでお受けするように
 
                    治承四年 四月」
 
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