範頼が武蔵国吉見荘へと向かったのは、盛長が来た夜から数えて二日後であった。
婚儀から数えると七日ほどしかたっていない。
迎えてばかりの妻を鎌倉に残して、その妻が貰ってばかりの領地へ行くことになってしまった。
一行は鎌倉からひそやかに出発した。
供についてくるのは当麻太郎と吉見次郎、そして舅安達盛長がつけてくれた雑色二名、荷駄の馬、乗り換えの馬、そしてそれぞれの馬の口取りだけである。
表向きは、妻の新領地の視察であるので大掛かりな兵をつれていくわけにはいかない。
盛長から鎌倉は志田先生の動きを何も知らないことになっているので、あくまでも領地視察にふさわしい少人数で、と申し渡されている。
範頼ら一行は、志田先生に対する備えであるということをおくびにも出してはならない。
人数の割りに荷物が大きいのがこの一行の特徴である。
荷駄を積んだ馬が数頭付いてきている。
荷物の大半は食べ物だという。
一行の荷物の手配をした瑠璃が夫の大食いを心配して食糧を大量に積み込んだ結果
このような大荷物になってしまった。
道中範頼はどこからか視線を浴び続けているような気がしてならなかった。
その視線は止むことなく範頼を捉え続けている。
けれどもどこからの視線かはわからずじまいであった。
とにかく、ひたすら歩みを進めた。
武蔵国に入り、吉見荘へと駒を進めていた範頼はこの道を歩むのは初めてではないような気がしてきた。
「吉見荘は間もなくじゃ。」
という吉見次郎の声を聞いたとき、
以前ここを通ったことがあるという気持ちはさらに強まった。
吉見荘に入りある寺を見たとき
範頼は「あ!」と声を上げそうになった。
その寺はかつて幼い頃稚児として過ごしていた寺だったからである。
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婚儀から数えると七日ほどしかたっていない。
迎えてばかりの妻を鎌倉に残して、その妻が貰ってばかりの領地へ行くことになってしまった。
一行は鎌倉からひそやかに出発した。
供についてくるのは当麻太郎と吉見次郎、そして舅安達盛長がつけてくれた雑色二名、荷駄の馬、乗り換えの馬、そしてそれぞれの馬の口取りだけである。
表向きは、妻の新領地の視察であるので大掛かりな兵をつれていくわけにはいかない。
盛長から鎌倉は志田先生の動きを何も知らないことになっているので、あくまでも領地視察にふさわしい少人数で、と申し渡されている。
範頼ら一行は、志田先生に対する備えであるということをおくびにも出してはならない。
人数の割りに荷物が大きいのがこの一行の特徴である。
荷駄を積んだ馬が数頭付いてきている。
荷物の大半は食べ物だという。
一行の荷物の手配をした瑠璃が夫の大食いを心配して食糧を大量に積み込んだ結果
このような大荷物になってしまった。
道中範頼はどこからか視線を浴び続けているような気がしてならなかった。
その視線は止むことなく範頼を捉え続けている。
けれどもどこからの視線かはわからずじまいであった。
とにかく、ひたすら歩みを進めた。
武蔵国に入り、吉見荘へと駒を進めていた範頼はこの道を歩むのは初めてではないような気がしてきた。
「吉見荘は間もなくじゃ。」
という吉見次郎の声を聞いたとき、
以前ここを通ったことがあるという気持ちはさらに強まった。
吉見荘に入りある寺を見たとき
範頼は「あ!」と声を上げそうになった。
その寺はかつて幼い頃稚児として過ごしていた寺だったからである。
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