Sagami タイムズ 社説・時代への半鐘

潮流の本質を見極める

近くの親類に想いを

2012-02-29 15:29:13 | 国際・政治

 

 

 

 台頭する中国海軍を抑止するために「国外、最低でも県外」をあきらめ、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の辺野古沿岸部への移設を推し進めようとする民主党政権。思惑と沖縄県民の決意との溝を埋めることができずいたずらに二年間の時間だけを費やしてしまったが、この間、米国は日本側による費用弁償を前提に海兵隊4000人のグアム移転を打ち出した。日米合同委員会が描くロードマップの先行実施によるもの。

 

米国は今回の再編を「東南アジア全域を視野に入れた組織の構築のため」としている。しかし、大局的に観ると、米国債の大量購入など経済面で大変お世話になっている中国に対し、軍事の面では多少配慮するといったかたちを執ったかのように思える。つまり、日本海や東シナ海における覇権を金銭のために中国に手渡したかたちで、事実上、米軍の一部撤退だといえよう。証拠に、中国艦船が沖縄本島、宮古島間を跋扈しても、米軍は動きを見せない。

 

一方、時運を掴んだとしてか野田佳彦首相は、両国政府の合意による成果といわんばかりに2301億円からなる振興策という手土産とともに満面の笑みを浮かべながら初めて沖縄を訪れた。辺野古への移設を早めたいのだろうが、「抑止力」とした前提が崩れているし、そもそも、手土産が少なすぎる。仲井真弘多知事と是非に関し平行線をたどるのは当たり前だ。

 

今回の振興策費はあくまでも、政権を獲得してから今日まで、沖縄県民の気持ちを弄んだことに対する慰謝料に過ぎない。到底、移設うんぬんの話ではない。本当に、金でどうにかなると思っているのであれば、これから毎年、当初予算の五分の一ぐらいをもっていく必要があるのではないか(この場合、他の地域の行政に弊害が起きるが・・・)。

 

 とにもかくにも、独自の軍事戦略を展開する米国、それに付随するかのように国民を巻き添えにしながら揺れ動く日本国政府。普天間基地の辺野古移設への前提が崩れた時だ。これを機に、「遠くのトモダチ」ばかりに頼ることのない防衛網を構築するべきだ。全国に点在する米軍基地周辺の危険や騒音を取り除くためにも・・・。


隗より始めよ

2012-02-23 17:04:31 | 国際・政治

 社会保障と税の一体改革にひた走る野田佳彦内閣。年金や医療、介護など国の基幹をなす社会保障を持続可能な制度とするため、消費税を引き上げてその財源に充てるというのが主なものだが、ムダ全廃を訴えて国民から政権を委ねられた民主党のはずであるから、まずはそれを徹底して行なう必要がある。

 民主党の代表である総理大臣をはじめ各国務大臣、野党を含む他国会議員らは平成22年度の終盤からそれぞれ20%、15%程度の給与削減を行っているという。最近では、議員定数の削減にも踏み込む動きが加速しているかのように思える。また、国会公務員の給料に関しても、人事院勧告に基づき平成234月に遡って0.23%削減、とりわけ、24年度、25年度の二ヵ年についてはこれと合わせ平均7.8%を引き下げるとして自民党、公明党との間で合意を得たようだ。然るべき措置であると一定の評価をするにはするが、果たして、今回のこの施策、国会議員や国家公務員たちは一体どのように捉えているのだろうか?

  消費税の増税を前提に、とりあえず「自らの身を切ってみせた」だけなら余りにも切ない。議員給与の削減を継続するかは先行き不透明であるし、公務員給料に至っては、消費税が8%に引き上げられる平成264月には元に戻す手はずになっているとも聞く。ここからは到底、描く理念や日本の将来像がまったくみえてこない。

 ご承知の通り、日本の抱える課題は、長引く不況と類を見ない少子化による生産人口の減少で税収が右肩下がりになることが予測される中において高齢化に伴い増大する医療・介護費、年金の給付を如何に確保していくのか、国民からあずかった税金をどのようなかたちで有効に使っていくのかということだ。

 決して、誰かだけの身を切る、切らないの話ではない。限りある税金、粛々と組み替えを行なえばいいだけのことと考える。また、あえて自らが口にするほどの覚悟を決めて身を切ろうというのであれば、その前に、本当に「ムダ」の無い大切な施策だけを執っているのかどうかを見極めようとする心構えも必要なはずだ(例えば、集まった税金から拠出するのは年金や医療、介護、そして国防や治安、教育等だけにするといった大胆な施策を講じる、公務員の給料はその中の余った分でそれぞれ配分する、その他の行政サービスはすべて受益者負担、といったような、すっきりとして明確な予算編成を執ることも一つの案ではないか? )。

 私たちも悲壮感を漂わせる政治家などの発言に哀愁を感じ、信頼に代えている場合ではない。私たちがやらなければならないことは、内閣府(行政)によって編成された予算の中に、国民が希求してやまない施策が本当に組み込まれているのか、優先順位の低位に位置づけられる、つまり、「ムダ」と思われる国会議員給与・定数、公務員給料、ハコモノ型公共事業等の施策に関しては、徹底とした予算削減、廃止に向けた取り組みなどがなされているのかどうかを見定めることだ。国家の浮沈に際しては「隗より始める」を国民の側も自覚しなければならない時が来た。