台頭する中国海軍を抑止するために「国外、最低でも県外」をあきらめ、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の辺野古沿岸部への移設を推し進めようとする民主党政権。思惑と沖縄県民の決意との溝を埋めることができずいたずらに二年間の時間だけを費やしてしまったが、この間、米国は日本側による費用弁償を前提に海兵隊4000人のグアム移転を打ち出した。日米合同委員会が描くロードマップの先行実施によるもの。
米国は今回の再編を「東南アジア全域を視野に入れた組織の構築のため」としている。しかし、大局的に観ると、米国債の大量購入など経済面で大変お世話になっている中国に対し、軍事の面では多少配慮するといったかたちを執ったかのように思える。つまり、日本海や東シナ海における覇権を金銭のために中国に手渡したかたちで、事実上、米軍の一部撤退だといえよう。証拠に、中国艦船が沖縄本島、宮古島間を跋扈しても、米軍は動きを見せない。
一方、時運を掴んだとしてか野田佳彦首相は、両国政府の合意による成果といわんばかりに2301億円からなる振興策という手土産とともに満面の笑みを浮かべながら初めて沖縄を訪れた。辺野古への移設を早めたいのだろうが、「抑止力」とした前提が崩れているし、そもそも、手土産が少なすぎる。仲井真弘多知事と是非に関し平行線をたどるのは当たり前だ。
今回の振興策費はあくまでも、政権を獲得してから今日まで、沖縄県民の気持ちを弄んだことに対する慰謝料に過ぎない。到底、移設うんぬんの話ではない。本当に、金でどうにかなると思っているのであれば、これから毎年、当初予算の五分の一ぐらいをもっていく必要があるのではないか(この場合、他の地域の行政に弊害が起きるが・・・)。
とにもかくにも、独自の軍事戦略を展開する米国、それに付随するかのように国民を巻き添えにしながら揺れ動く日本国政府。普天間基地の辺野古移設への前提が崩れた時だ。これを機に、「遠くのトモダチ」ばかりに頼ることのない防衛網を構築するべきだ。全国に点在する米軍基地周辺の危険や騒音を取り除くためにも・・・。