Sagami タイムズ 社説・時代への半鐘

潮流の本質を見極める

屍の上を行く未来へのレール・ウェイ

2023-08-04 20:51:53 | 旅行
 ーロシア外務省のザハロワ情報局長が2023年8月2日の記者会見で、1945年8月9日の第2次世界大戦終戦間近における対日参戦を「日本の主要領土で何百万人もの日本人の命を救った」として、改めて正当化した(NHKの報道より)ー

 日本にとって1945年8月9日と言えば阿鼻叫喚たる惨状となった連合国による8月6日の広島への原爆投下に続き、その矛先が長崎にも向けられ驚天動地的な苦しみを味わった日。敗戦というかたちでの終戦を迎え入れざるを得ないきっかけとなった祈念日といえる。

 また、旧ソ連が日ソ不可侵条約というものがあるにもかかわらず連合国による広島、長崎への原爆投下計画を知り、不可侵条約を一方的に破棄し日本へ忽然と宣戦布告し侵攻を始めた日でもある。

 旧ソ連はその後、武器を捨てた日本兵やその家族を極寒の地「シベリア」へと連行し長年にわたり抑留、食べ物や着るものをろくに与えずシベリア鉄道の敷設労働を強制した。連行された数は約58万人、そのうち1割が過酷な労働状況と飢えや寒さに苦しみながらツンドラの地に命を落としていったという。

 広島や長崎に原爆が投下されることを知りながら阻止しなかった、丸腰の日本兵や家族を連行し食料や暖を与えず強制労働をさせた、そんな国の情報局長が「日本の主要領土で何百万人もの日本人の命を救った」と言えるのか。逆に、旧ソ連、現ロシアの経済的発展、社会的インフラの基盤を担うシベリア鉄道を築いたのは旧日本兵だ。その屍が今でもシベリ鉄道を支えているはずだ。

 (このように、一つの事象を採ってみても取り巻く環境や考え方、教育の違いから互いに相いれない見解が生じてしまう)

 世界には様々な人種や民族が存在しそれぞれの社会を形成している。考え方も違えば文化や風習、教育、食生活に至っても違いはある。だからこそ、かけがいのない唯一の地球においては、ほろ苦い連鎖の中で話し合い共通する目的や意義を見出すべきではないのか。

 時間という列車は、今日も、過去から継いだ線路の上を未来に向かって走り続ける。我々現世を生きるものは次世代へと継なぐ線路の指針、そして、その上を走り続ける列車には何を積み込めば良いのかを常に考えていかなくてはならない。


いつかはきっと、悲しみ尽きてたのしみ来たる日に

2023-06-22 14:32:40 | うんちく・小ネタ
 ― 日本国民の多くから敬意をもって親しまれてきたロシアのプーチン大統領。愛くるしい仕草と一所懸命柔道に取り組む姿勢が高い評価に値し平和条約の締結というものが現実味を増したかのように見受けられてきたが、ロシアのウクライナへの侵攻でオホーツク海から日本沿岸に寄せては返る波の泡のごとくと帰してしまった ―

 さて、北京オリンピックの成功により世界中が人類の叡智や能力の進化に感動する中、続いて行われたパラリンピックの意義を蔑ろにしてまでロシアはウクライナに軍事による侵攻を開始した。それは、2022年2月24日のことである。

 その後の戦況は惨憺たるものだ。ロシアは無差別的な攻撃を繰り返し、民間人を殺戮した上に田畑や公共インフラを破壊し地球環境までも壊滅させ気候変動をも増長させている。

 そんな中、ロシア上下院は、9月3日のロシア記念日を「第2次世界大戦が終結した日」から「軍国主義日本に対する勝利と第2次世界大戦終結の日」とする法案を可決した。非友好的なキャンペーンを繰り返す日本に対し報復措置を講じたものとしている(NHKの報道)。

 確かに、日本は欧米に倣いながらロシアに制裁を加えている(欧米化)。

 先の世界大戦においても悔やみきれないほどの過ちを犯してしまったことも事実だ。だからこそ、(実際には接収されたものだが)武力を放棄したし人道主義を掲げている。このことは、国連をはじめ全世界からも広く認知されているものだ。

 今回、9月3日のロシア記念日を「軍国主義日本・・・」としたことは死者に鞭打つ二重処罰と言えるもので鎮まった魂を現世に呼び戻すものとも言わざるを得ない。

 ロシアがこのように日本国民の人心を侮辱するようなことをするならば、日本もこれからの毎年2月24日を(ちょっと長くなるが)「親愛なるロシア国・プーチン大統領が無辜のウクライナに忽然と進攻し民間人を虐殺するなど破壊の限りを尽くしたことで自らの評価を下げ、地政学的に北方領土共有化へと歩むことになるきっかけをつくった日」と、記念日にすることにしよう。いつかはきっと「日ロ平和条約締結のきっかけとなった日」へ変えられるようにと祈りながら・・・。

荒れ果てた野に叫ぶ日本国憲法の意義

2023-06-18 15:11:05 | 日記
 ウクライナに対し阿鼻叫喚たる攻撃を続けるロシア、その手法の一つとして、イラン製の無人突撃ドローンを駆使しているという。このドローン、一般的には「カミカゼ・ドローン」と呼ばれているもので自爆攻撃的のラジオコントロール型ヘリコプター。

 その命名は察しの通りだが、この人命にとってとても危険なヘリコプターの部品に日本製のバッテリーやモーター、カメラが使われていたという。
「民生品として生産されたものをイランがドローンに組み入れていた」と言うが、戦場においてはたびたび、カモフラージュによる攻撃が行われている。いわゆる、「偽旗作戦」だ。「民生品と銘打ちながら実は日本は、イランにドローン用部品を輸出していた」とされても仕方がない状況で、ウクライナからは「ロシアに対し殺傷能力のある武器の供給を支援していた国」と推定がなされてしまう恐れがある。

 また、アメリカは、熾烈極まりない攻撃を受けているウクライナに対し相応な迎撃・巡行ミサイルや砲弾、銃弾を供与してきたが、そのことから急速な弾薬不足に陥っているという。そのため、必要な弾薬の供給を日本に求めたが日本政府は概ね了承の意向を示している。国際平和のために同盟国に弾薬を供給することは日本の執る原則からも反しないものではあるが、ロシアからは自国民に対し攻撃をしてくる「ミサイルや砲弾、銃弾の主要部品を供与した」と推定されてしまう。つまり、「ウクライナへ武器の迂回供与をした、いわゆる『好ましからざる国』」としてリストに位置づけらてしまう危険性がある。

 なぜ、このように今の戦争当事国両国から非友好国どころか敵国とされてしまう恐れがある状況に陥ってしまったのか。二次大戦敗戦後、各国に支えられながら急速な経済復興を遂げたという自負からの「甘え」があったからだとしか言いようがない。性善説が日本を席巻した。

 裏腹に世界各国の権力者は虎視眈々としている、揺さぶりをかけてくるのは世の常だ、日本だけが常に「正義」を保てるとは限らない。

 では、どうするべきか、この際、基本に返り立つことが肝要だ。もう一度、日本の旗幟を鮮明にする必要があるのではないか。基本が揺るがなければそうそう他国の思惑が付け入る隙はないはず。

 「国際紛争を解決する手段として武力における威嚇又は武力の行使は永久に放棄する」。今すぐにでも国際平和のための原則を見直し殺傷能力のある武器となりうる原料や(民生用を含めた)部品の輸出や供与を法律で禁じるべきだ。そうしなければ、海千山千が跋扈する世界において日本は人道主義を掲げながらも逆に「ならず者」にされてしまう。


ロシア提案の6か国協議再開を日米が無視、東アジアに禍根

2023-06-11 13:35:20 | 悩み
 日本には「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがある。ある人を恨むあまり、その人が行なうことやその人の持ち物など、その人と関係のあるものは全てを憎らしいと思うようになってしまう、という意味。

 今回、核兵器保有数世界一のロシアから6か国協議の再開が提案された。協議は、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)に基づき、地球環境を理不尽にも壊滅させ人類の培ってきた歴史や文化すべてを無きものとする危険な核兵器をこれ以上世界に拡散させないために世界の警察的な役割を担うアメリカにも参加してもらい核兵器の取り扱いに関し東アジア全体で話し合っていこうとする安全保障の合議体のこと。

 核の開発を進める北朝鮮の発射する弾道ミサイルや人工衛星なるものに幾度となく国土の上を横切られた日本にとっては、国家、国民の生命や財産の安全を担保するためにもまたとない機会と言えるはず。ミサイルや衛星なるものに核弾頭を積まれた場合には、取り返しのつかない事態が起こりうるからだ。

 にもかかわらず、アメリカはおろか被害を受けることになりうる日本までこの提案を無視している。それは、提案者であるロシアが、ウクライナに対し凄惨な侵略を続け(核兵器不拡散を訴えながらも)隣国ベラルーシと核兵器の共有を進めていることに起因するように思えるが、まさしく、ロシアの言うことなすことすべてに対し気に食わないというところ。

 アメリカと日本の対応は非常にわかりやすい。ウクライナへの連帯を示すものでロシアとの決別を示唆するもの、正義は西側にあると・・・。

 しかし、一方で日本国民からすると、提案の無視は北方領土の返還(共有化)、拉致被害者の救済をも放棄したものと見受けられる。アメリカ一辺倒のシングルスタンダードで良いものなのか。

 アメリカはEUのNATO加盟国との間で核を共有しているし、(依頼によるものではあるだろが)韓国や日本との間で核兵器の共有を図ろうとしている。北朝鮮やイランに対しては制裁を加えながらも、インドやパキスタン、イスラエルにはそれを許している。

 世界はダブルスタンダードに満ちあふれている。核兵器の取り扱いに関してだけでも上記の通り。

 アメリカは強い、強いがゆえに6か国協議再開の提案をも無視することができる。しかし、日本は今となっては東アジアにおけるただの小国だ。食料もなければ軍事力もない、おまけに資金も底が見え始めている。藁にもすがりながら何が何でも東アジアの中で生き抜いていかなければならない状況なのだ。このような状況の中で北朝鮮からの核兵器による威嚇を止めさせ北方領土の共有化を実現し拉致被害者の救済を図るためには何が必要なのかを考えなけらばならない。

 これからの日本は、「坊主憎いが説教(お経)尊い」(その人は憎いがその人が良い意見を言うのなら耳を貸そう⦅=さがみタイムズ社作⦆)としてダブル、トリプルというかたちでの多角的な外交基軸を構築していく必要があると考える。

金と銀で創られたヤヌスの像が導く行方は

2023-06-11 12:24:25 | 旅行
 ロシア外務省は日本政府に対し、「ウクライナへの軍事装備品の供与を決定したことは敵対行為のエスカレートや犠牲者のさらなる増加につながる」と懸念を伝えたと発表した。陸上自衛隊が保有するトラックなど、100台規模での提供といった支援策を対象にしたものとみられ「この決定は、ロシアと日本の関係をさらに危険な袋小路に追い込み深刻な結果を招く」とした。

 これに対し日本は、「今回の事態はすべてロシアによるウクライナ侵略に起因しているにも関わらず、日本に責任を転嫁しようとするロシアの主張は極めて不当で断じて受け入れられない」と、切り返したという。

 日本の主張は正論のように聞こえる。確かに、法の支配に依った世界秩序を乱し人道への冒涜や地球環境への破壊を繰り返しているのはロシアかもしれない。しかし、その正論を当事者である相手側に直接言ってしまうとトゲにもなるし角が立つ。そもそも、ロシアが西側の唱える正論(=正義)を理解できるのであれば、もともとこの戦争は起きていなかったからだ。

 二律背反の中で、一方的な正義を直接ぶつけてしまうとロシアが言うように事態をさらに悪化させてしまう。今回のこの場面では、「日本が提供するのは機材や人員を運搬する車両のみ(なので人道支援の一環だ)」くらいに止めておいた方が得策だった。

 「雄弁は銀、沈黙は金」と古くから言われる通り大上段から自身の考える正論、いわゆる正義をかざしてしまうと『エスカレーション・シップ』を招き世相は混沌とする。

 イソップ童話集の中にこんな物語があった。

 質素な暮らしをしている普通の樵が池に鉄の斧を落としてしまったところ、突然、神様が降りてきてその樵に問いを投げかけた。「あなたが落としてしまった斧は金の斧ですか銀ですか、鉄ですか?」と・・・。樵は「鉄の斧です」と、正直に答えた。すると、神様は「あなたは正直ですね、その正直さが素敵なので全部差し上げます」と、落とした鉄の斧どころか金銀の斧まで樵に与えてくれ、以後、樵は安泰な生活を送ることになる。

 このように、「正直」は神からも認められるほど大切なものでビターな世相の中で一筋の光となることがある。しかし、「正義(=雄弁)をかざす」ということは「正直」がゆえになされてしまうものではあるが、時に、「正直」を遥かに超え※「ばか正直」になってしまうことがある。

 聞き流しても良いではないか、相手側の主張を聴く姿勢をみせることが外交上重要だ。日本政府には、今の戦時下においても日ロ平和条約締結という課題に対し「正義とは一体何なのか?」を問い掛けながら如何に取り組んでいくのかが求められている。
※「ばか正直」とは日本語で、臨機応変の才がない、正直すぎて気が利かない(正直一点張り)の意味