第二十二回参議院選挙が行なわれ連立政権を担う民主党、国民新党が惨敗した。民主党代表の菅直人首相は敗因の理由を「事前説明が不足している中で消費税の引き上げについて触れたこと」としているが、そうではない。久しぶりに大勝を果たした自民党も、マニフェストには「消費税を当面の間10%にする」と謳っているからだ。
「政治と金が足かせになった」と捉える向きもあるが、これもあてはまらないような気がする。鳩山由紀夫元首相の問題は修正申告を受理されているので与謝野馨氏が言った「平成の脱税王」は妥当性に欠き、あえて呼ぶならば「平成の高額納税者」とならなければならない。小沢一朗元幹事長の疑惑も土地購入原資にゼネコンからの裏金が含まれていない限り悪質性を感じられない。しかも、政治家は「政治と金」について極力注意を払わなければならないが、むしろ国民の側は、このぐらいのことには慣れっこのはずだ。
ではなぜ、ここまでの惨敗を被ってしまったのか。「わずか10カ月で評価を下すのは早すぎる」とかばう気持ちも分からなくはない。この間に「事業仕分けによる税金の無駄遣いの洗い出し」「高校授業料無償化」「公共事業の削減」「子ども手当の支給(児童手当の拡充)」など「政府としての役割」を果たしてきたという実績もある。蓮舫行政刷新担当相などは選挙区二位の竹谷とし子氏に90万票以上、実に二倍を上回る有権者の支持を得て当選したほどだ。
では、なぜ有権者はこのような結果をもたらしたのだろうか。再び「ねじれ国会」にしても良いと思うほど民主党の何を見抜き嫌気したのだろうか。
それは、鳩山元首相が「米軍普天間基地の移設を辺野古沿岸とする」理由に、「中国や北朝鮮を見据えた抑止力が必要」としたことや、菅首相が「消費税の増税」の理由に「(ギリシャ危機を引き合いに)800兆を越える国の借金で財政が破綻する恐れがある」としたことに答えがありそうだ。
国民は、二人の首相の発言の裏側にいる何かの姿、つまり、「官僚」の影を見て取ったのではないか。二つの理由はともに官僚が常套的に使う文句だ。「後期高齢者医療制度」「障害者自立支援法」がなかなか廃止されないのもそうだろうし、「暫定税率」などは廃止されないままで今秋には「たばこ税」の増税が行なわれる。「脱官僚」と声高に叫びながらも、実は、官僚の言うがままだ。そういった、民意を汲み取ることの無い官僚支配による政府の構図に、国民は辟易したのではないか。話しは変わるが、「国会議員給与や定数の削減」などは衆・参の両院で多数を占めていた時に自分たちで決めれば済む話しではなかったのか。
自分たちの身を削らずに、国民に負担増を強いるだけの政治では三行半をつきつけられるのは至極当然だが、「ねじれ」のもたらす国会の混迷で日本丸の進路が不透明で不安定になったことも事実だ。その「痛み」は国民が背負うことになる。