動物相談室

サファリパークの現役スタッフ達が答える動物相談

シロサイとアフリカゾウについて

2008年01月14日 | ゾウ・サイ係
【Q】質問者:山下さん
こんにちは、私は、横浜市内在住の山下です。
姫路セントラルパークについて何点か質問させて頂きます。

そちらの動物園ではシロサイを飼育されているそうですが、そのメンバー(頭数、名前、性別)をお教え下サイ。また、国内での繁殖成功例も教えて下サイ。

アフリカゾウですが、東京都多摩動物公園で展示されているアイが居ます。彼女は1998年に雄のパオ(今年7月11日に死亡)、2002年には、雌のマオ(現在は、盛岡の動物園に引越し)を出産しました。そのアイがそちらから来園されたとお聞きしました。そちらでも1991年に繁殖したとき、雄のタカが生まれたということもお聞きしました現在の時点でアフリカゾウの繁殖成功例は幾つあるのか教えていただけますか(非常に難しい質問を出してしまってごめんなさい・・・。)

また、そちらで飼育されている雄のヒロを間近で見て見たいのですが。

【A】回答者:西村係長
 
 現在当園では4頭のミナミシロサイを飼育しています。そのメンバーを紹介しますと、サラ(♀)1979年生・ナクール(♀)1982年生・ソフィー(♀)2005年生・ジャスパー(♂)2004年生となっています。若い個体は今年の11月に南アフリカより導入された新しい仲間です。国内の繁殖成功例については、初めて成功したのは1978年宮崎サファリパーク(この施設はもうありませんが)です。実はシロサイは動物園での繁殖成功例は未だに無いのです。成功しているのはすべてサファリパークのみです。昭和50年代から60年代にかけて全国でサファリパークが増えたので、それにあわせてシロサイの繁殖も増え、繁殖も見られるようになりました。シロサイは同じアフリカに住むクロサイとは違い社会性を営みます。動物園でシロサイを飼育する場合はほとんどがペア飼育です。本来の生活スタイルではないのでその事も動物園で繁殖しない原因であると考えられます(もちろんそれだけではないのですが)。逆にクロサイはサファリパークではあまり飼育されないので動物園では繁殖例は見られます。さて、当園の繁殖の話をしますと1984年の開園からシロサイの飼育を始め、現在までに8回の出産があり、その内3例が成功しています。(1985年♂・1991年♂・1997年♂)残念なことにメスの子にはどうも縁がない様です。今まで種オスとして活躍してくれていたお父さんサイが2004年に死亡してしまい、その後当園での繁殖はストップしてしまいました。また近年は、国内のシロサイの繁殖状況も良い状態とは言えず、高齢化も進みこのままでは種の保存という動物園の目的を果たすことが難しいので、今回新しい個体を導入して再び繁殖を目指すことになりました。新しい個体はまだまだ小さく、先輩のお姉さんサイ達とはミックス出来ていませんが、徐々に環境に慣らして行き、早ければ5年後位の繁殖成功につなげたいと思います。その時またブログ等で皆様に報告したいと考えています。

 さて続いてアフリカゾウの話ですが、アフリカゾウもシロサイ同様に全国にサファリパークが増加したのに合わせ個体数も増え、開園当時は小さかった個体が成長し成熟期を迎え始めた1980年代から国内でも繁殖例が見られる様になりました。初めて繁殖に成功したのは群馬サファリパークで、1986年にオスの子が誕生しています。現在までに国内の動物園・サファリパークで11例の出産例がありますが、その中で成功しているのは(生後6ヶ月以上生存したということになると)6件です。それらの中で現在も生存している個体は4頭という状況です。つまりアフリカゾウを繁殖させるというのは技術的にも難しい事なのです。当園では1991年に繁殖という素晴らしい出来事を経験する事に恵まれました。当時はゾウ達はまだ若く繁殖はまだ時間が掛かるだろうと考えていたのですが、オスが2頭も居て常に競い合っていたこと、メスが5頭も居てオスが相性の良い個体を選ぶことが出来たこと、それらの好条件が重なって繁殖に繋がったと思います。生まれたのはオスの子で現在は広島市安佐動物公園で飼育されていて、2世誕生を期待されています。
 アイの当時の話をしますと、生まれたタカを見て驚いて攻撃しようとしたのですが他のメス達に叱られたというエピソードがあります(なぜ攻撃しようとしたかというとアイには赤ちゃんゾウが何か判らなかったのです。ゾウは本来自分の生まれ育った群れの中で子育てを見て学習します。しかし、小さい内に親から離され動物園やサファリパークで飼育されてしまうとそういう学習する機会がないのです)。そんなアイも多摩動物園へ移動して2度も繁殖して立派なママゾウになるとは我々スタッフも感心させらせます。アイに負けず当園でも1991年以降途切れている繁殖を何とかしなければいけないのですが、月日の流れで諸事情が変わり、現在はオスとメスを分けて飼育しています。しかし、このままでは繁殖に結びつかないので今年からは人工繁殖の研究を更に進め、オスゾウの精子採精トレーニングを、来年度に関してはオスとメスの再ミックスを検討して実現させ、近い将来また可愛い赤ちゃんゾウが見られる様にスタッフ一同努力して行きます。
 最後になりましたがオスのヒロを間近で見てみたいという要望ですが、ドライブスルーからは見えるのですが、より近くでとなるとちょっと難しいですね。昨年の夏にはバックヤードツアーを開催していましたので、本当に間近で見て頂く事は可能だったのですが、現在はツアーをやっていませんので山下さんの願いを叶える事は現状では無理ということになります。また、ヒロをお客様に間近で見てもらえる機会が取れた場合は、「サファリ飼育日誌」のブログ等を通じて発表したいと思います。

動物達の愛称

2008年01月01日 | 園長
【Q】質問者:horsypalsさん
キリンの親子(リン太・イヅミ・トーマ)やゾウ、チャイルズファームの犬達やクマ牧場の楽しいクマ達のようにサファリに居る動物達には、個々に愛称は付いているのですか?愛称を個体別に写真と一緒に貼り付けてある子達は、とっても解り易くて有り難いのですが例えばドライブスルーサファリに出ているアメリカバク(メスは確かハッピーちゃんですよね?)のように、他の皆にも付いているのでしょうか?
もし、付いているのであればどこかに一覧でも良いので書いてあると嬉しいです。
お忙しい中に下らない質問で申し訳ありません。

【A】回答者:奥田園長
horsypalsさん、はじめまして。
当園の動物には、全て名前がついています。他所から来てついていた名前や、担当者が考えたり、皆さんから募集したりと、命名のスタイルは色々ありますが、飼育動物には名前がついていますし、父親や母親が誰であるかとか、誰と仔供をつくったかとか血統記録していますし、病歴や治療歴も個体ごとに記録しています。

特に血統というものを重要視しています。なぜならば、野生動物は使い捨ての商品ではなく、貴重な地球の財産です。その野生動物には絶滅の危機に瀕している種類の動物がいます。特にその様な動物は、全世界の動物園で保護して繁殖に力を入れていて、数を増やす努力をしています。そして、血統更新や繁殖目的で動物園同士で貸したり、借りたりする事が多くあるんですよ。その為に個体情報は貴重なものになります。

話しがズレてしまいましたね。動物についてある名前や愛称が分りましたら皆さんも親近感が湧いたりすると思っています。そこで今までしていなかった名前の紹介や貼り出しを一部の動物から始めました(すこし前までは、行っていませんでした)。ただ、全ての動物を紹介するのは、難しいですね。数が多くなって来ると見分けがつかないと思います。当園で一番多くいる動物はブラックバックでして、112頭も居ます。112頭分の写真と名前を全て出しても分らないでしょう。
ただ、何か特徴のある動物とか、分り易い動物には名前の紹介をして行きたいとも考えています。
飼育日誌のブロクの方で動物紹介を担当者がしている記事がありますので、そちらも覗いてみて下さい。