信おん御伽草子

信長の野望onlineの世界を題材のオリジナル小説を書いておりました。令和二年一月、ブログを閉鎖しました。

大地の友愛 六 「立ち塞がる仁王」

2019-12-01 13:41:00 | 姫巫女の書
《立ち塞がる仁王》

自然な光景、である。

弓を携えた黒髪の巫女と、
赤みがかった髪を揺らす小さな巫女が、
仲良くお手手を繋いで歩いているのだ。


「うん、やっぱり姫ちゃんの方が、
海月さんよりも違和感がない」

「ほっといて、真希さん!」


満足そうに頷く真希に、
海月が間髪入れずに言葉をさす。


おわかりだろうが、
汀女が迷わないように手を繋ぐ役目は、
姫巫女が担当することとなった。


緑豊かな山野を行きながら、
黒髪の巫女、汀女がため息をつく。

「ごめんね、姫巫女さん。
ボクのために手なんか繋いでもらって…」

と、隣の姫巫女に謝った。

「ううん!
謝ることなんかないのじゃよ?

ほら、こうしておると、姫と汀女殿、
どんどん仲良くなっていくであろ?

姫、とっても嬉しい!」

姫巫女は微笑みながら、
繋いだ手をブンブンと振り、
汀女にそう言った。

「そうだね。
ありがとう、姫巫女さん」

「汀女殿、姫たちは仲良しさんだから、
姫のことは姫で良いよ」

「じゃあ、姫さん、
ボクのことも殿なんていらないよ」

「ふふ、じゃあ汀女、張り切って
狐さんのところへ行くのじゃ!」

「行こう行こう!」


そんな微笑ましい二人に、
羨ましそうな視線を送る者が一人。

「いいなぁ、いいなぁ!
汀ちゃん、いいなぁ!
私も姫たんと手を繋いで、
ギュッってやって、
チュッてしながら歩きたい!!」

悶えるように身体を揺らす、
かなたである。

「チュッてなんじゃ、チュッて…じゃあ、ほら、かなたも一緒にお手手繋ご。
みんな一緒に仲良しさんじゃ♪」

「いいの?!やったあ!!」


「ふふ、かなたさん、嬉しそう」

ウキウキと駆けて行くかなたを見ながら、
真希がそう呟く。

「あの人、お気に入りになると、
とことん前のめりだからな。

っと、あれか?

おーい、みんな!
あの丘を越えた先に森があるらしい。
例のキツネ村みたいだ」


片手に持った地図を振りながら、
海月が言う。

村、というか獣の縄張り。

ネズミたちによれば、
そこからは、とても嫌な気配が漂ってきているのだという。


「…今のところ、何も感じないけどね」

かなたのいう通りだ。

ここまで手を繋ぎながらの、
ルンルン行脚であったが、
そこは手慣れた冒険者。

道すがら、
何か変なものは見当たらないか、
妙な空気は漂っていないかと気を巡らせ、ここまで来たのである。


「ま、行ってみればわかるさ」

と、海月が言った、その時、


「貴様たち、何者か」


辺りの空気を震わせて、
恐ろしげな声が聞こえてきた。


!!!


とっさに武器を手にとり、
身構える一行。


シュゥゥウっ!!

前方の地面から、
突然勢いよく白煙が立ち上った。

「みんな、気を付けろよ!」

遮られた視界に警戒していると、
煙の中から、
再び太く大きな声が聞こえきた。


「もう一度、問おう。
貴様たちは何者か?
ここへ何をしにきたのだ?」


だんだんと薄れいく煙の中から、
その声の主が現れる。



顕に見えるは赤黒い肌、
隆々と盛り上がる逞しい身体。

カッと見開かれた鋭い瞳に、
硬く結ばれた口元。

鬼、とも違う、
これは…


「仁王…さま?」

かなたの呟きの通り、
目の前に現れたのは、
巨大な仁王であった。

手にした棍棒を振り回して、
不審な侵入者である、
目の前の人間たちを威嚇する。



「…俺たちは、
ある者から依頼を受けた冒険者だ。

この先にある狐の集落に用がある」


海月が身構えたまま、
そう仁王へ告げた。


「冒険者?ふむ…我が名は『司夢理』
この上野を守護するものなり」

『司夢理』?
守護するもの?

となると、
相手は山神か何かだろうか?

ならば、
その対応も注意しなくてはならない。

そう気を引き締めた、その時、


「んあ?」

と、海月の口から、
大変間の抜けた声が漏れた。


「どうしたの?海月君」

「いや…ほら、あれ…」

汀女に聞かれて、
海月は司夢理の、ある場所を指差す。


汀女も姫巫女も真希もかなたも、
その指の先を見て、

「「「え?」」」

と、戸惑いの声を。


「なぁ、司夢理さんよ」

「な、なんだ?人間」

「それ、何?」

「え?」


海月が指差していたもの。

それは、司夢理の体のある場所。

お尻のところにある、


ふさふさとして、
もこもことした、
獣の尻尾のようなものだった。


「し、しまった!!」

司夢理はそう叫ぶと、

「なんということだ…」

ガックリと、その場に崩れ落ちた。

勇猛な外見に似つかない悲壮な姿は、
再び白煙に包まれて見えなくなる。

そして、次に現れたのは、

「あ、狸さんじゃ」

でっぷりと太った老狸だった。

僧が持つような錫杖に、
大きなボロ傘を背負い、
白く長い髭をお腹まで伸ばしている。


「久しぶりに変化をしたから、
失敗してしまった…」

残念そうに言った後、
老狸は一度咳払いをし、
仰々しく、シャランと錫杖を鳴らした。


「お前たち、見事な洞察力だ。
まずは第一段階、合格!

見たところ腕も立つようだが、まだだ。

知性あるものでなくては、
あの状況を打破できるとは思えん」


あの状況?


全員、コテンと首を傾げる前で、
老狸は声高らかに叫ぶ。


「己の知力の限界を見せてみよ!!


『口から出て、
耳へと入っていく葉っぱってなーんだ?」


さあ、答えられるものなら、答えて…」

「言葉、じゃろ?」


……

………

あっさりと答えられた老狸、
その動きがピタリと止まった。

「え?え??それが知力の限界を云々っていう問題なの?とんちの謎かけじゃない」

かなたが、呆れたように言う。

「私もどんな難しいこと言われるのかと、
ドキドキしちゃった。

でも、なんか懐かしいわね」

「そうだね。
ボクも子供の頃、お友達と遊んだなぁ。
おばあちゃんとかに、
色々教えてもらったりしてさ」

「うんうん、私も!」

おそらく、本気で難問を出題したつもりであっただろう老狸の前で、女性陣が無慈悲に、はしゃぎまくる。

そんな中、ため息とともに
海月が優しさを見せた。

「まあ、ほら、なんだ。
あれだろ?こんなちっちゃいのもいるから、易しいのにしてくれたんだろ?」

と、
姫巫女の肩をポンポンと叩きながら言う。

「姫、そんなちっちゃくないもん!」

「ちっちぇえよ!
今は形だけでも納得しておけよ!
意気揚々と出した問題を、
さらりと答えられたらガックリくるだろ?
かわいそうだろよ!」


言ってしまってはオシマイである…


「ま、まだだ!次は、もっと難しいのを出してやるから、心して臨むがいい!

『お姫様が住んでいる場所は、
どんな色の場所?』

さぁ、どうだ?!」

「「「「白」」」」

「容赦ねぇなぁ…」


「く、くぅぅぅっ…正解!
も、もっと難しいのを出してやるぞ!」


とのことであるので、
どうかしばらくの、お付き合いを。

「なんか姫、
ちょっと楽しくなってきたのじゃ♪」



『簡単に動かせるけど
絶対持ち上げられないもの、なーんだ?』

『お墓参りに行くときに、
着なくてはいけない衣装は、なーんだ?』

『切れないノコギリを使うと、
よけいに切れてしまうもの、なーんだ?』

『たくさんこぼしてしまっても、
全然減らないもの、なーんだ?』

『植物を育てるのが
苦手な鳥って、なーんだ?』

『ご飯を食べるときに、
抱っこして食べるもの、なーんだ?』

『口でかまずに、
手でかむものって、なーんだ?』

『絶対に売ってくれない、
そんなお店の商売は、なーんだ?』


そんな問題が次々と出されていき、


「やった!今度は私が早かった!」

「やられたぁ、ボクもここまで出かかっていたんだけどな」

「えぇと、
真希ちゃん答えたから、十二点。
うん、三人並んだね。
今は、姫たん、十四点で一番ね。

海月君、まだ二点だから、
頑張らないと負けちゃうよ?」

「いや、もう途中から、
不憫を通り越して、哀れになってきたから
俺はもういいよ…」

「まぁ、たしかに…キリがないかの」


ちらりと姫巫女が見やる先には、
うーん、うーんと唸りながら、
一生懸命次の問題を考える老狸の姿が。

謎かけ問答で、
現在コテンパンにされているのだが、
変に意地になっているらしく、
諦める様子がまるでない。


「仕方がない、の。狸殿、狸殿」

姫巫女は、
老狸の髭を小さく引きながら声をかける。

「痛い痛い!何をするか?!
今、次の問題を考えているから、
もう少し待て!」

「いや、
今度は姫が狸殿に問題を出すでの。

これに答えられたら狸殿の勝ち。
それでどうじゃ?」

「お前が?」

「うん。一回勝負じゃ。いいかの?」

「お、おお、かまわんとも」


ニッコリ笑う姫巫女に押され、
老狸は頷いて答えた。


「ではゆくぞ?

太郎殿の母君には、
五人の兄弟がおるのじゃ。

子沢山じゃの♪

名前が、一郎、二郎、三郎、四郎、
さて、最後の一人の名前は?」



老狸の顔を覗き込むようにして、
姫巫女が言う。

「さ、答えてたもれ?」

「ふふん!なんと簡単な。
五人兄弟であれば、四郎の次は…」

「あー、よーく考えての?」

「考えるまでもない。
四郎とくれば、次は五…」

「た、ろ、う殿の母君の子供達じゃぞ?」


その様子を微笑みながら見ている真希が、
小さく呟く。

「姫ちゃん、優しいわねぇ」

「あっぶな…
私、咄嗟に答えてしまいそうだった」

かなたが、
自分の口を手で押さえながら言った。


「五人…母君…ん?た、太郎の母君?
あーーー!太郎だ!
もう一人の名前は、太郎!!」

「おお、正解じゃ!
お見事じゃの、狸殿」

腕を振り上げて喜ぶ老狸に、
姫巫女がパチパチと拍手をする。

そして、チラッと四人の方を振り向き、
片目を瞑って見せた。



合図を受け取った一同、

「さすがだな。いやぁ、お見事お見事」

「姫ちゃんの難しい問題、
さらりと答えるなんて、すごいわ」

「ボク、すっかり騙されて、
五郎って答えそうだったよ」

「私も、私も!」


いやいや、みんな優しいことである。



五人の拍手の中、
老狸は照れ臭そうにしながら、

「はっはっは、
まあ、伊達に長く生きてはいないからな。

お前たちも、なかなかだったじゃないか。

うんうん、その知性、認めてやろう」

大きく頷き、そう言った。


「それでは、
姫たちが怪しいものではないと、
認めてくれる?」

「ああ、すまなかった。

友人である狐たちの村が、
大変なことになってしまってな。

どうしたものかと、
思案に暮れていたところに、
お前たちが来たものだから、
少し警戒していたのだ。

あとは、その、成り行きでな、
は、ははは」

バツが悪そうに言った後、
老狸がペコリと頭を下げる。


「いきなり、
この人数が来れば仕方がないよなぁ。

とんち問答も、
楽しませてもらったみたいだし…

ところでさ、
大変なことってなんだよ?」

「うむ…それがだな…」

太った体が萎んでしまったかのように見えるほど、落ち込んだ様子の老狸。

皆が無言で待ち続ける中、

彼の口から出てきたものは、
思いもよらない、事件の状況であった。



「狐たちが皆…
石に変わってしまったんだ」

〜続く〜
次回「大地の友愛 七」
散開

↓もっかい参加中↓
にほんブログ村 ゲームブログ 信長の野望Onlineへ
にほんブログ村



☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。
















コメントを投稿