戦国の世は御伽草子の如く

信長の野望onlineの帰参者が、戦国の出来事を物語として綴ります
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特化を目指して 五 「わたしを繋ぐもの」

2018-02-20 08:49:16 | 真宮寺八雲の書
《わたしを繋ぐもの》

どれくらいの時が経ったのだろう。

一瞬とも、永遠とも感じられる、
暗闇の中、たった一人の恐怖の時間。

叫び続けた声も、流し続けた涙も枯れ果て、
いずみは虚ろな瞳を闇に向けていた。

何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない。

暗闇の中、いずみは自分自身が、
闇の中に溶け込んでいるかのように思えてくる。

わたしも、この真っ暗な暗闇と同じ…
ううん、もしかして、わたしというものも、
本当は…

ここに、いないのかもしれない。

「わたしは、わたし…は、誰?」

あれ?わたしの、名前、は?

思い出せない。

わたしの名前、わたしの顔、わたしの、何か…

思い出せない。

ああ、そうか、やっぱり、そうなんだ…

思い出せないなら、そうなんだ

きっとはじめから、
そんなものが、なかったからだ…

「そう、なのね…」

じゃあ、もうやめよう。

思い出すことも、考えることも。

だって、つらいの…

なにか、胸の奥が苦しくなるの…

「もう、いや、なの…」

闇に消えていく、少女の呟き。

少女は、静かに瞳を閉じた。

だんだんと、からだが、いしきが、
やみといっしょに、ひとつになっていく。

あたまのなかが、くろくぬられていくようだ。

ああ、くるしい、つらい、
でも、きっと、もうおわるのね。

このまま、とけてしまえば、きっとおわる。

この、いやなきもち、なくなるよね

くらやみのなか、ひとみから、ひとすじ、
光がながれた。

光はやみのなかを、おともなくおちていく。

いや、光はえんをえがくように、
やみのなかをすべり、
しょうじょのからだのまわりをただよう。

なに?まぶしい…

やみのなか、ちいさな光。

だが、やみにとけこむ、しょうじょには、
めをあけていられないくほどに、
つよい光にかんじる。

『どうしたの?』

だれかの声がきこえる。

「…まぶしい。あと、くるしいの」

ききとれないほどのこえでこたえる。

『どうして苦しいの?』

しょうじょは、ちいさくくびをふる。

わからない、と。

『そう…わからないのかぁ』

わからない、なにもかも。
じぶんのことも、じぶんのなまえも、
なにもわからない。

『じゃあ、どうして泣いていたの?』

声はしょうじょにたずねる。

「どうして?どう、して…?」

『うん。どうして?』

「あ…さみしい、から」

やみのなか、それは優しく輝く。

『どうして、さみしいの?』

「どうして、だろ…?
わたしは、なにもない、
ただのくろいやみとおなじだから?」

感じる。
光が首を振ったような空気を感じる。

『何もない闇は、さみしいとは感じないよ。
何かを持っているから、何かと繋がっているから
人はさみしいという気持ちを持てるのよ』

光が大きくなる。

そこに現れたのは、一人の女性。

顔はよく見えないが、
温かい、優しい雰囲気を感じさせる人。

『さあ、そのさみしさを感じさせているもの。
あなたと繋がっているものは何?』

少女の頭の中の闇に、
小さく、しかし、力強く光が灯る。

《いつもありがとうな!》

《ありがとう、い……!》

いつも、そばにいてくれる、優しい声。



《気をつけて、行ってらっしゃい》

《忘れ物はありませんかな?》

いつも、影から支えてくれる、頼もしい声。



《わん!》

《今日も張り切っていくニャ、…ず…ちゃん》

いつも、寄り添ってくれる、明るい声。



《良く頑張ったな》

《すごいわ〜、い….ちゃん!いい子ね〜》

いつも、導いてくれた、力強い声。


《美味しいお菓子があるよ、寄っていって》

《いやぁ、こないだは、ありがとう》

《お出かけかい?また、あとでね》

《……みちゃん!こっち、こっち!》

いつも、包んでくれる、温かい声。


そして、

《落ち着いて詠唱を。大丈夫ですよ》

《では、参りましょうか。いざ、出発!》

《あだだだっ!痛いです、い…み!》

《良く頑張りましたね、いず…》


そうだ。
わたしは、一人じゃない。
こんな闇なんかじゃない。

わたしと一緒にいてくれた…
ううん、わたしと一緒にいてくれる人がいる。

わたしと繋がっている人たち。

その人たちがいるから、
わたしは、わたしでいられる。

わたしを、わたしでいさせてくれる。

わたしを繋ぐ人たち。

大切な、わたしの…

溢れる想いに呼応するかのように、
こぼれ落ちていく、温かい涙。

闇の中、いく筋もの光が流れる。


みんなが呼ぶ、わたしの名前は…!

「思い出したよ。
わたしは、森宮いずみ。

桜花の森宮いずみです」


瞬間、黒い闇は跡形もなく消し去られ、
周りにあるのは白い世界。

そこには、ぽつり、ぽつりと、
今まで、いずみが出会った人たちの姿が映し出されている。

いくつも、いくつも。

もちろん、そこにはいずみ自身の姿も共にある。

笑いあっていたり、真剣な表情でいたり、
時には涙を流したり。

楽しいものばかりではないが、
どれもこれも、かけがえのないものばかり。

自分を繋いできてくれた、大切な思い出たち。


宙をふわりと舞うように、
いずみは、ある場所へと降り立つ。

いつのまにか、
身体も自由に動かせるようになっていた。

その目の前には、
先ほど話しかけてくれた、光の女性が。

いずみは、ペコリと頭を下げて、

「ありがとうございました。
おかげで、大切なものを思い出しました」

心からのお礼を言った。


相変わらず、その表情は見えないが、
なぜか微笑んでいることはわかった。

『人と人の繋がりと同じように、
この世界の全てのものは繋がっているわ。

これから先、
あなたの振るう力にも同じことが言える。

何一つ、孤立するものはないことを忘れないで』

「はい!」

優しい声に、いずみはニッコリと笑って答えた。

「あ…」

いずみの身体が、
意思とは関係なく静かに浮かび上がる。

『お別れ、ね。これからも、頑張ってね』

「あ、あの!あなたは、一体?」

どんどん、速さを増して遠ざかっていく彼女に、
いずみは慌てて問いかける。

『わたしは、あなた。
そう、あなた自身よ、いずみ』

一瞬だけ、彼女の顔が見えた。
いずみが大人になったような、
美しい女性の素顔が。

「あ…ありがとう!また、また会えるよね?!
また、どこかで…」

言葉の途中で、
いずみの姿は消えていった。

残った彼女は、
小さく微笑んで呟く。

『ふふふ、そうね、いずみ。
はるか先、未来であなたは出会える。
きっと、ね』


そして、『いずみ』も、
白い世界の中で静かに消えていった。


〜続く〜
次回「特化を目指して 六」
命をかけて



☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
伝承、システム、設定等とは一切関係ありません

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特化を目指して 四 「暗闇の中へ」

2018-02-19 08:12:21 | 真宮寺八雲の書
《暗闇の中へ》

ここは、桜花家臣団宿舎、いずみの部屋。

そう広くない部屋だが、
きちんと整理整頓がなされて、
可愛らしい小物や、小さな花が活けてあるなど、
何とも、いずみらしい空間である。

胸を張ってもいいくらいだが、
いずみは少し赤面して、

「なんだか、あかり先生に見られるの、
恥ずかしいな…」

と、はにかんだ笑顔を見せた。

「えぇ〜? どうしてかしら〜?
と〜っても素敵な部屋じゃない〜。
恥ずかしがることないわ〜」

「えへへ、うん!
ありがとう、あかり先生!」

あかりの優しい言葉に、
いずみはニッコリ笑って頷いた。

「ふふふ、さて〜それでは始めましょうか〜。
いずみちゃん?
そこに座ってくれるかしら〜」

指された場所に、
いずみは素直にチョコンと正座をする。

少し緊張してきたのか、
背筋をピンと伸ばして、
硬い表情を見せる。

あかりは、対面に膝をつくと、いずみの顔を、
正確にはその瞳をジッと見つめる。

吐息がかかるほどの顔の近さに、
いずみは思わず目を丸くした。

「…うん、いいわね〜。
ここにきてからも〜ちゃんと頑張っていたのが、
よくわかるわ〜」

「そう、なの?」

首をかしげるいずみに、
あかりは微笑んで答える。

「もちろん〜。
とても良い気に満ちているもの〜。
…これなら、きっと大丈夫ね〜」

あかりは、先刻、いずみから預かった、
特化の目録を取り出して説明した。


「いずみちゃん
これから、言うことをよく聞いてね〜?」

あかりの目の色が、少し変わった気がして、
いずみは、ただ黙って、それに頷いた。

「これから、特化の技能を得るための試練に臨んでもらうの〜。
い〜い?ひとつだけ、忘れないでね〜?

『自分自身』を信じてあげるのよ〜。

では、頑張ってね…いずみちゃん」


そう言うと、あかりは手にした目録の表紙に、
指で何かの紋様をなぞる。

その瞬間、目録が淡い光を放ったかと思うと、
その光は、まっすぐにいずみの方へ飛んできた。

突然のことに驚き、
それを避ける間もなかったいずみは、
光をまともに浴びて、思わず瞳を閉じた。


すると、急に意識が遠くなっていき、
身体が後ろへと引っ張られる。

いずみは、そのままパタリと
畳の上に倒れこんでしまった。



しかし、いずみの意識の中では、
違う感覚が支配している。

倒れたいずみ、いや、彼女の意識は、
そのまま宙に放り出されたかのように、
どこかへ、真っ逆さまに落ちていく。

薄く瞳を開けるが、そこにあるのは闇。

ただひたすらに黒い世界。

そして、何も聞こえない、静寂の世界。

暗闇の真っ只中。

落ちているような、いや?浮いているような?
不思議な感覚に戸惑う。

「あ、あかり先生?」

そう声を出してみるが、
まるで水の中にいるように、
その声もくもって聞こえる。

そして、恐ろしいことに、身体も
指一本動かすことができないことに気がついた。

何なの?
一体、何が起きているの?

意識に広がる困惑、混乱…
いや、一番適当であるのは、
恐怖、である。

「先生!あかり先生!!」

必死の呼びかけに、返る声はない。

暗闇の中、一人。

特化の修行であることなど、
考えられず、いずみはひたすら叫び続けた。

「先生!かえでお姉ちゃん!もみじお姉ちゃん!
こ、怖いよ…助けて…助けて!
助けて、八雲さまぁああっ!!」


いずみの部屋。
いずみは、そこに横身体を横たえている。

意識はなく、知らぬ者が見たら、
ただ眠っているだけのようだ。

だが、側に座るあかりは、もちろん解っている。

今、いずみは試練と戦っている。
きっと、苦しい思いをしているはずだ。

あかりは、彼女の手をそっと握り、
静かに呟く。

「信じているわ…いずみちゃん」


場所は変わり、
ここは、家臣団宿舎に隣接する道場。

固く冷たい床に、かえでが仰向けに倒れている。

意識はなく、頬にかかる髪をよけるような身動き一つすらない。


その側では、
もみじとあすかが向かい合って立っていた。

「…先生、
それじゃ、かえでは大丈夫なんだな?」

チラッと、倒れる彼女を見て、もみじが言う。
視線はすぐに、あすかの方へ。

直立不動の姿勢、そんなあすかから感じる気迫。

それは、今まで出会ってきた、どの相手よりも、
凄まじいものであった。

全身の皮膚が、
ヒリヒリと焼け付くように感じるほどに。

もみじは、
思わず、あすかに防御の構えを取っていた。



「もみじ。
お前たちの姿、その様子を見れば、
これまで、どのように生きてきたか、
どれほど成長したかは、すぐにわかる。

特化の目録を受け取るに、
相応しい実力があることはな」

そう言って、
手にした二冊の目録を、もみじに示す。

うち、一冊の目録が淡い光に包まれていた。


先ほど道場に入り修行の開始が宣告された。

あすかと稽古を行うのかと思っていた二人。


だが、思いがけないことが起きる。

あすかが目録に指で何かを描いた瞬間、
目録から光が飛び出して、かえでを襲った。

そのまま床に倒れ込み、起き上がらないかえで。


「かえで?!
先生!何かをしたんだ!」

咄嗟に身構えて、あすかに問う。

「慌てるな、もみじ。
もう修行は始まっている。

かえでは今、己の意識の中で戦っているんだ」

「…先生、
それじゃ、かえでは大丈夫なんだな?」

「大丈夫、という言葉は正確ではないな。
言っただろう?
かえでは『戦っている』んだと」



あすかは語る。

「始める前に言った一言を覚えているか?

そう、『自分自身を信じろ』だ。

特化の修行とは、
身体能力、技術を身に付けるものではない。

それぞれの『心』の力を試すものだ」

「…『心』の力?」

怪訝そうな表情のもみじに、
あすかは黙って頷いた。

「これから先、もっと強い力、精錬された技、
それらを得るために、もっとも必要なもの。

それが『心』の力だ。

どんな時にも、己を見失わない。
己の大切なものを見失わない。

そんな者だけがこの先へと進めるんだ」


あすかの言葉を聞いたもみじは、
ふう、と大きく息を吐いて構えを解く。

「そういうことなら、先に言ってよ、先生。
私、先生がとち狂ったかと思ったよ」

「ふん、失礼な奴だ。
だが、その反応は武の者として正しいものだ。

それに、これはれっきとした修行だ。
試練と言い換えてもいいくらい厳しいもの。

戦いなんだ。

さあ、もみじ。
どうする?やめておくか?」

あすかは、もみじの目録を見せながら、
そう聞いてきた。

「先生、ちょっと待ってくれないか?」

もみじは、そう言うと、かえでの元へと近づく。

乱れた彼女の髪を直して、
その姿勢も楽なものへと、手を添え正した。

自分の羽織っていた衣服を、
かえでの身体にかけてやると、
もみじは、その隣へ横になる。

「よし、と。
さ、先生、準備出来たよ」

まるで、昼寝でもするかのように、
瞳を閉じるもみじ。

それを見て、あすかは苦笑いを浮かべて言う。

「まったく、お前は変わらないな」

「何だよ、それ?
どうせ、かえでみたいに寝ちゃうんだろ?

だったら、この方が楽だし。だろ?」

片目を開けて、もみじは微笑んだ。

「たしかに、な。
それでは、もみじ、頑張ってこい」

あすかの言葉に頷いたもみじは、
そのまま、闇の中へと誘われる。


道場の中、
横たわる二人の前で、あすかは呟く。

「信じているぞ、かえで、もみじ」


〜続く〜
次回「特化を目指して 五」
わたしを繋ぐもの


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特化を目指して 参 「修行開始」

2018-02-18 07:58:25 | 真宮寺八雲の書
《修行開始》

城下町、桜花の城門前。

そこに集う五人の人影から、
明るく賑やかな声が聞こえる。

それぞれが力強く、精錬された技を持つ
武の者たちであるが、
思えば、芯にあるは華ある娘たちである。

しばし、これから始まるであろう、
厳しい修行を忘れ、話に綺麗な花を咲かせる。


「三人とも元気そうね〜
久しぶりに顔が見れてる嬉しいわ〜」

そんな、のんびりとした言葉遣いで
あかりが、かえで達に微笑んだ。

その腕には、先ほどから
いずみがニコニコしながら抱きついている。

「私も あかり先生に会えて嬉しい!」

「あら〜、嬉しいわ〜。
いずみちゃんは、すごく可愛らしくなったわね」

そう言って、あかりはいずみの頭を撫でた。


「もみじ、随分と息を切らせているじゃないか?
日頃の鍛錬を怠っていないだろうな?」

眉根を寄せて、もみじの胸を拳で叩くあすかに、
彼女はバツの悪そうな表情だ。

「そ、そんなわけ…嫌だな、先生。
ほら、この通り鍛えてるって!」

慌てて腕に力こぶを作って見せた。

側のかえでは、クスクスと笑うと、

「先生、いつものアレです。自室の…」

「お、おい、かえで?!」

「…ああ、まだ散らかしグセが治らないのか?
仕方がない奴だな」

呆れた様子のあすかに向かって、
もみじは、視線をそらして、ごまかした。

「なんだか、久しぶりですね。このやり取りも」

その様子を見て、
楽しそうに、かえでが笑う。

「冗談じゃない。
片付けくらいは最低身につけておけ。

私がいる間に、しっかり片付けられなかったら、
修行はやり直しだからな」

「そりゃないよ、先生〜?!」

頭を抱えて、悲痛な声を上げる彼女を見て、
皆、楽しそうに笑った。


五人の心の中は、少しだけ時間が遡る。

かえで、もみじ、いずみが桜花に来る以前の、
訓練所で過ごしていた頃に。



そんな彼女たちを、
遠くから見つめる者たちがいた。

家臣団目付役が、
隣の補佐役へと、にこやかに声をかける。

「実に楽しそうですな」

「まったく」

頷いて補佐役が答えた。

「しかし、先生というからどのような方々がいらっしゃるかと思ったら、想像より若い女性たちで驚き申した」

「ええ。私も訓練所でお会いした時には、
目を丸くしたものです。
が、外見で判断してはなりませんぞ。

あのお二人、あの場所では若手なれど、
かなりの実力者ということ」

そう目付役が説明した。

「うむ。
先ほどお会いしましたが、
その立居振る舞いより、それは十分感じました」

相変わらず、姦しい様子の一団。
二人は、しばらくそれを微笑ましく眺める。


「目付役殿、後で家臣団の皆にも伝えますが、
少し困ったことが起きております」

「困ったこと?」

訝しげに目付役が聞く。

「ええ。最近、この辺りで野盗の類が出没しているそうです。それに備えて、桜花の警備について、話し合いたいと思います」

「なんと…襲撃の恐れがあると?」

「わかりませぬ。
が、八雲様の留守中、この町の守護は我々にて
しっかり行いませんと」

「…左様でございますな」

二人、険しい表情を浮かべ頷きあった。



「さて、いつまでもこうしてはいられない。
お前たち、さっそく特化目録の修行に入るぞ」

槍でトントンと地をつきながら、
引き締まった表情であすかが言った。

「そうね〜。
お話は終わってから、ゆっくりしましょう」

相変わらず、ニコニコと微笑みながら、
あかりが同意した。


「はい。よろしくお願いします。
道場を空けてあります。
そちらでよろしいですか?」

かえでの言葉に、
あすかが頷いて答えた。

「かえで、もみじは、私が担当する。
そうだな。では、その場所をお借りしよう」

「私は〜、いずみちゃんの担当ね〜。
私たちは、どこかお部屋が借りれるといいわ〜」

「じゃあ、わたしの部屋でいい?
あかり先生」

「じゃあ、お邪魔するわね〜」

「うん!」

いずみは嬉しそうに笑った。


かえで、もみじの二人は、
あすかと共に道場に。

いずみは自室にて、
あかりから修行を受けることとなった。

少し緊張の色が見えてきた三人。

それぞれの場所にて始まった修行の内容は、
この時想像もしないものだったのである。


〜続く〜
次回「特化を目指して 四」
暗闇の中へ


☆この物語は、架空のお伽話です。
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特化を目指して 弐 「久しぶりの再会」

2018-02-16 08:23:28 | 真宮寺八雲の書
《久しぶりの再会》

その日の朝、桜花の喋るお供猫、
だいずは己の幸運を噛み締めていた。

「おお、あれは…」

いつもの散歩の途中、
桜花の城門前で出会った女性たち。

一人は槍を手に凛々しい表情を見せる美女。

もう一人は、
穏やかな笑みをたたえて、
先の彼女へと話しかけている美女。

「…侍と薬師さんかニャ?
見慣れない人たちだけど、そんなことより、

綺麗なお姉さん発見ニャ〜♪」

目を線のように細めて、
ニッコリと笑う?だいず。

そんな女性を見つけた時の行動は一つ。

ウキウキの足取りで、
彼女たちの元へと近づいていった。


「ニャ〜」

足元から聞こえる声に、
薬師の女性が気づいて言う。

「あら〜、可愛い猫ちゃんね。
よし、よし、いい子ね〜」

薬師はのんびりとした口調で、
だいずに話しかける。

しゃがんで手を伸ばすと、
だいずの喉元を転がし始めた。

侍の彼女は槍を縦に持ち直立不動。
視線だけ動かして、その様子を見ている。

ん〜、気持ちいいニャ。
さて…

チラッと周りを伺い、
誰もいないことを、
特にかえでの姿がないことを確かめる。

むふ♪

だいずは、さらに薬師の近くへ寄り、
その足元に身体を擦り付ける。

「あらあら〜、甘えん坊さんね〜」

更に屈んだ彼女の膝に手をかけ、
お顔の間近へ…

と、調子に乗った瞬間、

?!!

射るような殺気を感じ、
だいずは思わず飛び退る。

着地した瞬間に、
喉元には鋭い槍の矛先が当てられ、
身動きが出来ない状況に。

煌めく刃の光が、
だいずの顔を照らしていた。

「猫、お前は一体何者だ?」

重いはずの槍を片手で軽々と支え、
鋭い眼光でだいずを見据える。

「随分と不埒な雰囲気を出すではないか。
しかも、私の気に気づいたばかりか、
槍を突きつけられて動きを止めるなど、
通常の猫では、ありえない行動だ」

背筋に冷たいものを感じながら、
だいずは目線を侍の方へ向ける。

見下ろす彼女から発せられる気迫に、
思わず腰が引けてしまう。

「あらあら〜、あすかちゃん、
そんなに怖い顔しなくても。

でも、不思議ね〜。
確かにこの子からは、
異常に強い魔力を感じるもの。
もう少し、確認したかったのだけど」

なんと、薬師の方も、
だいずに何らかの不信を抱いていたようだ。

「化け猫の類い…か?
このようなものが町の中を歩き回るなど、
ここの警備はどうなっているんだ?
あとで、きっちりと説明してもらわねばな。
あいつらには」

「お手柔らかにね〜、あすかちゃん」

そう言って、薬師はクスクスと笑った。


「さて、首をはねる前に、もう一度聞こうか。
猫よ、お前は何者だ?」

その時、桜花の喋るお供猫、
だいずは己の不運を噛み締めていた。


「お待ちください」

ふと、その場に男性の声がかかる。

声の主は、桜花の城主補佐役のもの。
彼は歩み寄りながら、侍に重ねて言う。

「お客人、当方の城主代行、八雲様のお供猫が、
何か粗相をいたしましたかな?」

「お供猫?」

侍は怪訝そうな顔をして聞く。
しかし、視線はだいずから離さない。
一瞬たりとも、隙を見せないつもりである。

「それにしては、私が知るお供らとは、
随分と雰囲気が違うではないか」

「確かにそうでございますな。
が、少々変わったところはあったとて、
その猫が、
我が主人のお供であることは変わりませぬ。

そして、ここはすでに城下町内。

恐れながら、気軽に部外者が武器を振り回して良いものでもありますまい?

故にお願い申し上げる。

お供猫が危害を加えぬことはお約束いたします。
槍を収められよ、お客人」


しばし後、
侍はフッと軽く笑うと、

「確かに貴殿の言う通りだな。
教え子たちへ、久しぶりに槍をつけるため、
少し気が高ぶっていたようだ」

そう言って、槍をクルリとまわし、
己の脇へと収めた。

ホッとしただいずが、
ペタリと座り込む。

「かたじけない。
その猫、少々甘えグセがありましてな。

ご不快なことがあったのなら、
この通り謝罪させていただく」

補佐役が深々と頭を下げた。

「いや、こちらも不躾な振る舞いであった。
非礼を詫びよう」

「そうですよ〜。
失礼をいたしました〜」

侍と薬師も、揃えて頭を下げる。


顔を上げ、あらためて互いに向き合う三人。

補佐役はニコリと笑い、

「私は桜花の城主補佐役を務めておる者です。
お二人を心から歓迎いたします。
ようこそ、いらっしゃいました」

と、歓迎の言葉を述べる。

薬師も柔らかに微笑むと、
会釈して挨拶をする。

「これはご丁寧に〜。
私は家臣訓練所より参りました、
登美谷あかり、と申します〜。

そして、こちらが…あら〜?
あすかちゃん?

お〜い、あすかちゃ〜ん?」

あかりは、侍へと呼びかける。

あすかと呼ばれた侍は、
先ほどとは違い、惚けた表情を見せ、
補佐役を見つめたまま動かない。

「あ〜す〜か〜ちゃ〜ん?!」

「え?!」

ハッとしたあすかが、慌ててあかりに言う。

「ど、どうした?あかり」

「どうした?じゃないわ〜?
ご挨拶しないとダメよ〜?」

「あ、ああ!
これは、し、失礼いたしました!

私は訓練所の講師をしております、
風上あすかと申します。

先ほどは、お見苦しいところをお見せしてしまい誠に申し訳ありません」

先ほどまでの、悠然とした佇まいは何処へやら、
ワタワタとした様子で、補佐役へと挨拶をする。

「あら、まあ〜…」

その『理由』に心当たりがあるあかりは、
頬にてを当て、困り顔で首を傾けた。


「おお!
それでは貴女方が、
かえで殿たちの先生でいらしたか。

皆さん、とても楽しみにしておられましたよ。
私もお会い出来て光栄です」

「わ、私もお会いできて嬉しく思います!」

そう答える あすかに、
補佐役は頷いて言った。

「ただ今、かえで殿たちを呼んで参ります。
申し訳ないが、こちらでしばしお待ちくだされ。

だいず、お前もついて来なさい」

会釈をし、背を向けて去っていく補佐役の後ろを
フラフラとした足取りで、だいずが続く。


その後ろ姿をあすかは、
頬を赤らめながら見つめていた。

「あすかちゃ〜ん、また〜?」

あかりに横から顔を覗かれ、
あすかは慌てて答える。

「な、何がだ?!」

「ちょっと、キュンって来たんでしょう?
あの方、あすかちゃんの好みだものね〜」

「ば、馬鹿、そんなんじゃ…」

「はいはい〜。
あすかちゃん、普段キリッとしてるのに、
時々惚れっぽいのよね〜」

「ち、違う!」

いたずらっぽい顔でクスクスと笑うあかりに、
真っ赤な顔で否定するあすか。

この二人、昔からの大親友。
お互いの事を知り尽くした仲であった。



そんなやり取りをしていると、

「先生!」

と、声が聞こえてくる。

見ると遠くから、
三人の人影がこちらへと駆けてくるところだ。

それを遠目から見つめて、あかりが言う。

「久しぶりの再会ね〜。
三人とも元気そうだこと〜」

「ふん。確かにな。
どれほど腕を上げているか楽しみだ。

変わってなかったら、
こってり絞ってやらねばな」

「ふふふ、あすかちゃん、怖〜い」

そう言って、あかりは彼女たちに手を振った。



「先生、お久しぶりです!」

かえでが、二人に会釈をして挨拶をする。

「どーも、先生。ご無沙汰っ」

片手を上げて、ニッコリ笑うもみじ。

「あかり先生!」

そう言って、いずみはあかりに抱きついた。


久しぶりの再会。

まもなく、特化への修行が始まるわけだが、
とりあえず今は、その喜びに笑顔の花を咲かせる五人であった。


〜続く〜
次回「特化を目指して 参」
修行開始


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
伝承、システム、設定等とは一切関係ありません

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特化を目指して 壱 「二人の先生」

2018-02-14 09:27:15 | 真宮寺八雲の書
《二人の先生》

朝日が眩しく瓦葺きの屋根を照らす。

ここは、城下町桜花にある、家臣団宿舎。
筆頭のかえでをはじめ、もみじ、いずみが寝食をともにしている屋敷である。

それぞれの部屋、皆で過ごす広間、台所や浴室、そんなに大きくはないが技を磨くための道場もあり、家臣団の憩いの場となっている。

お供のあずき、だいずの寝所もこちら。

八雲の警護を行う彼女たちの心身の健康の為と、
補佐役と目付役が相談して作られた施設だ。

やはり、あの二人、大変有能な人材である。



そんな施設の廊下に
トコトコと小さな足音が響く。


足音は、一つの部屋の前に止まると、

「もみじお姉ちゃん、いずみだよ」

中にいるであろう、部屋の主人に声をかける。

が、返事がない。


小首を傾げ、もう一度声をかける。

「もみじお姉ちゃん、開けるよ?」

そっと襖を開けると、
少し暗めの部屋の真ん中に彼女はいた。


敷かれた布団に、両手両足を大きく広げた格好で
実に気持ちよさそうですに眠っている。

訪ねて来たのがいずみで良かった。

異性が見たら、赤面してしまうような、
あられもない姿で寝息を立てる もみじ。


いずみはため息をつくと、
小さな声で断りを入れて室内へ入る。

「もう、もみじお姉ちゃん風邪ひいちゃうよ?」

足元でお団子になってしまっている布団を、
身体にかけてあげた。


「ん…?あれ、いずみ?」

「うん。おはよう、もみじお姉ちゃん」

目覚めたもみじと、挨拶を交わす。

「あー、よく寝たなぁ」

ぐしぐしと目をこすりながら、
もみじは大きなあくびをする。

その姿が可笑しくて、
いずみがクスクスと笑った。

「可愛い顔して寝てたよ」

「な?からかうなよ、いずみ」


年下のいずみの言葉に、顔を赤くする。
そんな表情をみて、いずみはまた微笑んだ。


「ところで、どうしたんだ?いずみ。
なんか用事か?」

もみじの質問に、いずみは頷いて答える。

「かえでお姉ちゃんに頼まれて起こしに来たんだよ。きっと、まだ寝ているだろうからって」

「そっかそっか…なんかあったっけ?今日。
八雲は出かけてるし、えっと…」

そこまで言ったもみじは、
ハッとして、そして表情が固まった。

その理由をいずみが口にする。


「忘れたの?
今日は『先生たち』が来る日だよ。
目録の修行手伝ってくれるって。
楽しみだね!」


もみじとは対照的にニコニコ顔のいずみ。
本当に楽しみのようだ。

「やばい!こうしていられない!」

もみじは、そう叫んで部屋を見回す。
その…お世辞にも片付いているとは言えない室内をみて、また顔を引きつらせた。


「お片づけしないと、前みたいに怒られるよ」

「あー!!なんで、昨日やっておかなかったんだ!わたしは!!」

「じゃあ、わたしは、かえでお姉ちゃんに教えてくるね。もみじお姉ちゃん、起きたって」


立ち上がるいずみに、
もみじはすがりつくように言う。

「い、いずみ!後生だ、片付けを手伝って…」

「ごめんね、もみじお姉ちゃん。
かえでお姉ちゃんから、

『もし、もみじの部屋がぐちゃぐちゃになっていたら、一人で片付けさせてね』

って言われてるから」


絶望感丸出し。
そんな、もみじの手をぎゅっと握って、

「先生たち、もうすぐ着くみたいだよ。
頑張って、もみじお姉ちゃん!」

いずみは心から応援するのだった。



もみじの部屋を後にして、
いずみは少し離れたところにある部屋へ。

「かえでお姉ちゃん、入るよ?」

「どうぞ入って」

すぐに返答が返ってくる。

開けた先には、
先ほどとは違い、整理整頓、掃除も行き届いた
綺麗な部屋が広がる。

その中では、
かえでが身支度を整えている最中だった。

部屋に入ってきたいずみに微笑みながら言う。

「ありがとう、いずみ。
あの子、寝てたでしょう?」

「うん。可愛かったよ」

可愛…??

ちょっと意味がわかりづらかったが、
まあ起こしてくれたのは間違いないようだ。


「まったく…
今日から修行に入るのに、緊張感ないわね」

ため息をつく彼女に、いずみが明るく答える。

「楽しみだね、かえでお姉ちゃん」

また違う意味で緊張していない者がここに。

しかし、それがいずみの魅力の一つ。

だから、かえでもそれに同意して言う。

「そうね。私も楽しみ。
先生とお会いするのも久しぶりだものね」

「あすか先生とあかり先生、早く来ないかな。
あずきとだいずを紹介するんだ」

「あずきとだいずも喜ぶでしょ…?!

しまった!だいずに余計な事しないように言っておかないと!」

慌ててかえでが立ち上がる。

「余計な事?」

「あんな事や、こんな事よ!
いずみ、だいず、何処にいるか知らない?!」

「この時間だと、お散歩かな?」

「…先生たちと会っていませんように」

かえでの祈りが天に


届かなかった。


「猫、お前は一体何者だ?」

鋭い槍の矛先を喉元に突きつけられて、
だいずの命は風前の灯。

何をやらかしたのか?
おそらくは自業自得なのだろう。

ありがとう、だいず。
君のことは忘れない。


〜続く〜
次回「特化を目指して 弐」
久しぶりの再会


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