信おん御伽草子

信長の野望onlineの世界を題材のオリジナル小説を書いておりました。令和二年一月、ブログを閉鎖しました。

変身薬奇譚 弐 「駆け込んできた彼女」

2018-01-31 14:04:15 | 封印の書 虎空
《駆け込んできた彼女》

場所は同じくタケル邸、その一室。

座敷に座っているミコトの前には、
しょんぼりとした様子の子犬と子猫。


「…で、すこし酔ったから、調子に乗って、
変身薬を何個か同時に飲んだら、
その姿になって、時間も経つけど戻らない、と」


顔を引きつらせたミコトの前で、
子犬(虎空)が頷いて答えた。

痒いのか、首のあたりを、後脚でガシガシとかいている。

「その通りでござる。
びっくりして、酔いも覚めたでござるよ」

「地味な変化だな?って思ってたら
コレだもんな。まったく参った」

隣の子猫(タケル)が前脚で顔をグリグリと撫でながら同意する。


「馬鹿なの?二人とも」

辛辣なミコトの言葉。
だが、これ以上真をついているものもあるまい。

子犬(虎空)と子犬(タケル)は、

「「返す言葉もございません」でござる」

と、素直に認めるのであった。


ミコトは思いっきり大きなため息をつくと、

「とにかく、このままって訳にもいかないわ。

永続的な効果は無いと思うけど、
中和する薬を作るから、それを試しましょ」


「おお!流石は薬師でござる。
ミコト、すまんが頼むでござる」

子犬(虎空)は、ピョンピョンと跳ねながら、
尻尾を全力で振っている。

「頼むわ、ミコト。
埋め合わせはするからさ」

子猫(タケル)が、大きく伸びをして、
首をプルプルと振った。


それを、じぃっと見ていたミコトは、

「あのね、あんた達緊張感なさすぎじゃない?

可愛すぎるんだけど?」

にやけそうな顔を、懸命に抑えながら言う。
少々、本音が漏れてしまっているが。


「そうは言っても…え、なんでござると?」

「…この姿を褒められてもなぁ」



その時、
玄関の扉が勢いよく開いた音がして、


「すいません!タケルさん!
いらっしゃいますか?」

と、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「あれ?由美さんだ。
何か約束でもあったの?」

ミコトの問いに、子猫(タケル)は首を振る。

「あっそ、とりあえず、出ましょうか」

「ミコト!ミコト!!」

立ち上がりかけたミコトを、
子犬(虎空)が慌てて止めた。

「なに?虎さん」

「できれば、この件は由美殿には内密に…」

「なんでよ?しっかり聞いてもらって、
しっかり呆れられて、しっかり反省すればいいんじゃないかな?」

「そこをなんとか頼むでござるよ〜。
こんなの、みっともないやら、情けないやら、
この通りでござるっ」

そう言って、つぶらな瞳で訴える子犬(虎空)。

「う…そんな目で見られると…
わ、わかったわよ、内緒にすればいいんでしょ」

ミコトは、クルリと背を向け、
由美の元へと向かう。

「なんか、今、ミコトに願い事すれば、
なんでもいけそうな気がしてきた」

彼女の背中を見ながら、
子猫(タケル)は目を細めた。


「はい、はーい。
由美さん、どうしたの?」

ミコトが声をかけながら向かうと、
玄関には、由美が慌てた様子で立っていた。

「あ、ミコトさん?
タケルさんは、ご不在かしら?」

「う、うん。
なんか、虎さんと急用とかで出かけてるよ。
わたし、お留守番。

どうかしたの?なんか、急いでるみたいだけど」

そうなのだ。

何やら、しきりに外の様子を伺うなど、
普段の由美とは違い、とても落ち着きがない。

「お願いです!
私をかくまってください!」

「は?」

「お願いします!」

言うが早く、由美は自分の履物を持って、
パタパタと中へと入って行った。

「ど、どうしたのかな…?」

首を傾げながら、由美の後を追おうとすると、
ドンドンッと、誰かが乱暴に戸を叩いている。

「なんなの?もうっ。

はいはい、何ですか?」


ミコトが顔だけを出して、表をのぞいてみると、
険しい顔をした男が二人立っていた。

「…女、少し聞きたいことがある。
ここらで、巫女の女を一人見なかったか?」

片方の男が、早口で尋ねてくる。
身なりは良さそうだが、
礼節が決定的に備わっていない。

もう一人の方は、
しきりにあたりを見渡して、
誰かを探しているようだ。


それよりも…

女?お、ん、な?!

言葉遣いがなっていない男に、
苛立ちながらミコトは答えた。

「知らないわよ。他所を探しなさいな」

言い終わらないうちに、
ピシャリと戸を閉めてやった。

戸に張り付いて、外の様子を伺っていると、
男たちは二言三言話した後に去っていく。

巫女の女って…

「由美さん、なんであんな連中に?」

今日は色々な事が起き過ぎて、
だんだんと疲れてくる。

ミコトは大きく息を吐いて、
おそらく由美もいるであろう、
奥の部屋へ足を向けた。



「由美さん、なんなの?あの連中は…
あれ、いない?」

襖を開けて中に入ると、そこに由美の姿はなく、
変身薬で遊んだ馬鹿者たちがいるだけだ。

「由美さん?」

見回すミコトに、子猫(タケル)が
ある一点を前脚で指してみせる。

押入れ?

由美さん…子供のかくれんぼじゃないんだから

少し呆れながら、そっと開けてみると、
しまわれた荷物の間に、
由美が丸くなって隠れている。

「何やってるの?由美さん」

「あ、ごめんなさい…隠れなきゃと考えたら、
思わずここに…

ミコトさん、その…あの方々は?」

顔を赤くし、恥ずかしそうにしながら、
由美は押入れから這い出してきた。

「あの『方々』っていう程、
高尚な連中には見えなかったけどね。
とりあえず、行ってしまったわよ」

鼻息荒く、ミコトが答える。
それを聞いて、由美はホッと胸を撫で下ろした。

「そうですか」

「巫女の女はどこだって言っていたけど、
何かあったの?由美さん」

ミコトの問いに、
由美は思いがけない答えを口にした。

それには、ミコトをはじめ、
足元の子犬(虎空)と子猫(タケル)は、
思わず絶句してしまうのである。

「実は…
私、お見合いをすることになってしまって…」


〜続く〜
次回「変身薬奇譚 参」
命名

☆肩の痛みは、首の骨が原因ということです。
薬が、ひぃ、ふぅ、みぃ…四種類(>_<)
昔の祖父が、こんな感じだったと思い出し、
なんともいえない気持ちにw
ケガとは関係ありませんが、
インフルエンザも流行中の様子。
皆様もお身体、御自愛くださいませ(・∀・)


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
伝承、システム、設定等とは一切関係ありません

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変身薬奇譚 壱 「おふざけの代償」

2018-01-30 08:16:09 | 封印の書 虎空
《おふざけの代償》

変身薬。

それを使うと、
種類に応じた姿に変身できるという、
なんとも奇妙な薬である。

動物であったり、物の怪であったり、
あるいは、各国の武将の姿になれるものまで。

そのように、様々な姿に変われる薬であるが、
実際に能力が変わるわけでもなく、
また、少しの時間が経てば、元に戻ってしまう。

つまりは、
娯楽用として用いられることがほとんどである。


正しく使用していれば…だが。




その屋敷からは、
賑やかな笑い声が聞こえていた。

そこは、虎空の知人である、
陰陽師、タケルの屋敷。


風情ある趣きの庭を望める部屋にて、
虎空とタケルの二人は、
何やら楽しそうに笑い合っていたのである。

側には、徳利と盃。

豆粒ほどの丹が、沢山入った小箱が一つ。


まだ、日が高い時分であるが、
虎空が出先で良い酒を手に入れたというので、
旅の話を肴に一杯楽しんでいたところであった。

そんな中、余興としてタケルが取り出したものが
これである。


「いやぁ、これは面白いものにごさるな」

「だろ?
ミコトんちから貰ってきたんだ。
変身薬詰め合わせだって言ってた。

詰め合わせっていうか、
ただミコトが中身ぶちまけて、
混ざっただけなんだけどな」


丹の入った小箱を、
ガサガサと振りながら、タケルが答えた。



酒も入り、いい気分になってきたところで、

「虎さん、面白いものがあるんだ」

という、タケルの一言。

交互に動物や化け物、立派な侍の姿を見せて、
腹を抱えて笑っていたのである。



「タケルが変身した、白と黒の熊みたいな動物は面白かったでござる。どこに住んでいるのであろうか?」

「さぁ、俺は見たことないな。
虎さんの、○○の△△も、
『ござる』が笑えたよ。最高、あれ」


一旦休憩、と再び盃を交わす二人。

この後、
良い感じに、ほろ酔い気分となり、
とんでもない事を言い出してしまうのである。


「しかし、一通り見たようだな。
何か変わったものは、もうないのかな?」

「うむ、どうでござろうな?」

そう言って、虎空は二、三粒の丹を手に乗せた。

「見た感じでは、わからないでござるものな。
ミコトであれば、わかろうが…」

「そうなんだよ。
あいつ、これ、全部何かわかるみたいでさ。
大したもんだよ、まったく」

「…これ、このまま飲んだら、混ざって変身したりするのでござるかな?」

「あはははっ!そんな訳…どうなんだろうな?
半分半分とかになったら面白すぎるね」

「やってみるでござる?」

「お、ノリノリですな、虎さん。
じゃ、二人で一緒にやってみようか?
男は度胸!な、虎さん!」

「でござるな」

「でござるよ」

あっはっは!!

馬鹿である。




しばらくして…

バァーン!!

と、勢いよく扉が開かれて、

「タケル!!
あんた、わたしんちから、
勝手に薬持ち出したでしょ?!」

怒声一番、ミコトが入ってきた。

鬼の形そ…失礼。
とても怒った表情でキョロキョロと見渡すミコトだが、そこにタケルの姿はない。

返事もない。


「上がるからね!」

ミコトは、いつもタケルが使っている、
お気に入りの部屋へと向かう。

襖を開け、顔だけ入れて見ても、
そこには誰もいない様子だ。

だが、床には盆が置かれ、
徳利、盃、そして、

「!あった、わたしの薬箱!

もう!
やっぱりあの、おふざけ馬鹿陰陽師が持って来てたのね」


その時、どこからかタケルの声が聞こえてきた。


「誰が、馬鹿陰陽師だ!」

「え?!」

ミコトが驚いて部屋の中を見渡すも、
やはりタケルの姿はない。

「ちょっと?
どこか隠れてるの?」

庭の方も見てみるが、
やはり人の気配は、まったく無い。

そのかわりに、

「あ、なんだ君たちは?」

と、口調もくだけて思わず顔がほころぶミコト。


軒先に、チョコンと座る子犬と子猫がいた。

めちゃくちゃ、可愛い。


「よしよし、おいで♪」

ミコトは近づいていくと、
子猫のあごをゴロゴロと撫で、
子犬の頭をグリグリと撫でる。

微動だにしない二匹。
微妙な表情の二匹。


そして、

「ミコト、ちょ、ちょっと痛いでござる」

という声が子犬から、

「あ!虎さん、ダメだって!
バレちゃうだろ?!」

という声が子猫から聞こえてきた。


ん?


「え?何?」

ミコトは驚いて、二匹を撫でていた手を止める。


「いや、ここは正直に話して助けてもらうが良しでござるよ?タケル」

「えー、絶対怒るからって、さっき言ったじゃんか。知らないよ?俺は」

「この姿になって、もう随分時間が経っているでござる。餅は餅屋、専門家に任せるでござる」

「はぁ…まあ、仕方ないか…」

最後、観念したように、子猫がうなだれてみせた。


「ちょっと、まさか…あんた達?」

顔を引きつらせて、
ミコトが二匹を指差すと、

「拙者でござるよ、ミコト」

と、子犬が、

「俺だよ、俺」

と、子猫が返事をしたのである。


〜続く〜
駆け込んできた彼女

☆か、肩が痛い(-_-)
寒さの影響でしょうか?
一昨日あたりから右肩が痛くて仕方ありません。
頑張れ、ロキソニンw

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蛇王の封印 「後日談」

2018-01-26 08:30:55 | 封印の書 陸奥和泉
《後日談》

美濃の魔物動乱より、大分、月日が流れて。


ここ稲葉山の一角には、最近評判の店がある。

武具から何から、あらゆる物の真贋を鑑定して、
時に売却などの斡旋もしてくれるという。

噂を聞いた冒険者たちが、各地より訪ねてきて、
店の主人に鑑定を頼むのだ。

今では、そこのお墨付きをもらった物は、
高値で取り引きされるほどだとか…。

店の名は、『唯一無二斎』

ただ、ここの主人は、少し変わっていて、
話し始めると止まらない、明後日の方向へ行く、
本気か冗談かわからない事を言う、などなど。


今日も、客の一人を捕まえて、

「私がこの商売を始めたのはね、
ある鍛冶屋さんから…あ、私も鍛冶屋なんだけど
不器用でねぇ。槍を作っていたはずなんだけど、
出来上がったら、斧に…
え?ああ、始めたきっかけね。
その人に、こういう商売はどうだって、
勧められてね。
最初は半信半疑だったけど、これが大当り!
もう、大恩人様々なわけですよ。
足を向けて眠れないね。
え?その方の名前?
…あれ、なんだっけな?
もつ?まつ?まつ大五郎の助だったかな?」




三河の白岩遺跡。

その側に厳かな雰囲気漂う神社が建立された。

水の神として蛇が神様として祀られており、
家内安全、無病息災、などを祈願しに、
多くのものが訪れるという。

嘘か本当か、縁結びのご利益もあると噂が広がり、時折仲睦まじく参拝する男女の姿が見られた。

その一角には祠があり、
ある壁画が奉納されている。

金と銀の蛇が美しい天女を連れて、
天へと昇っていく様子が描かれており、
その傍には、二人の僧侶の姿が見て取れた。


いつ、誰がその壁画を奉納したのか、
それは定かではないようだが…




時を遡る。

三河の寺院を、
和泉と姫巫女、桔梗、将監の四人が訪れ、
今回の事の顛末を伝えていた。

寺院に属する円尚が命を落としたのだ。

何も知らせぬわけにはいかなかった。

和泉たちの話を聞き、
三河寺院の僧都や、側近の僧侶たちは
皆、一様に言葉を失っていた。

それを見て、姫巫女が言う。

「まあ、の。
いきなり、こんな話をされても、
にわかには信用できんかもしれん。

じゃが、円尚が亡くなったことは事実ゆえな。
それを伝えたかったのじゃ」

その言葉を受けて、僧都が口を開いた。

「いえ、あの者はここ数年、
自分の祖先である覚円と蛇王についての文献を
事あるごとに調べておりました。

それと合わせてみても、
伺ったお話は誠ではないかと、そう思います。

円尚が大変ご迷惑をかけたようで、
申し訳ありません」

そう言って、頭を下げる僧都に、
静かだが怒りのこもった声がかけられる。

「ご迷惑、ですと?
あなた方は何もわかっていない。

円尚殿が、なぜそれまで追い詰められたか、
その理由がわかりませんか?」

声の主は、将監であった。

「伝承の英雄の子孫だからと、
あの方を皆さんはどのような目で見てきたのですか?どのような言葉をかけてきたのですか?

あの方から、
その心のうちを聞いたことはあるのですか?

容易に想像がつきます。

失礼ですが、この地であの方の事を話す人々は、
みな同じ顔をしておりましたから。

なぜ、誰も寄り添って差し上げなかった。
お前は円尚だと、覚円ではないのだと、
この世でただ一人の人間だと
なぜ、言って差しあげなかったのですか?

それを棚に上げて、
円尚がご迷惑をかけたなどと…
見当違いにもほどがあります!」


しん、と静まり返る一同。

「…分をわきまえず失礼をいたしました。御免」

一礼をして、立ち上がると、
将監は部屋を出て行った。

姫巫女は後ろに控えて座る桔梗を見ると、
黙って頷いて見せた。

その後、桔梗は両手をついて、
僧都たちに頭を下げると、
将監の後を追っていく。

「僧都殿、連れが大変失礼をいたした。
どうか許してほしい」

頭を下げようとする姫巫女を、
僧都は慌てて止める。

「いや、とんでもない。
あのお方のおっしゃっていたことは、
ごもっともでございます。

いや、真実でございます。

我らがもっと、
円尚という人間を見てあげていれば、
仲間を支えてあげていれば、
円尚は蛇王などというものにこだわりはしなかったでしょう。

お恥ずかしいことです。心から残念に思います。
あの方は、それを気づかせてくれました。

ありがとうございます」

僧都を始め、その場の僧侶たちは、
そろって頭を下げた。


寺院の境内に、将監は一人佇んでいた。

桔梗はそこへ、静かに近づいていく。

「申し訳ありません。
自分を抑えきれず、お恥ずかしいところを…」

背後の気配を感じて、
将監は振り返らずに、そう謝った。

「何をおっしゃるのですか。
将監様は大切なことを皆様にお伝えしたのです。

それに、お恥ずかしい話ですが、
わたくし、胸がスッとしました」

桔梗が、少し戯けたように言う。

黙ったままの将監。

「わたくしも、
ご一緒に円尚様を見届けさせていただきました。

あの方は、
最期に将監様にお礼を言って逝かれました。

ですから、
将監様は胸をお張りになってくださいませ。

でなければ、円尚様が浮かばれませんわ」

振り向いた将監は、哀しそうではあるが、
微笑んで桔梗に礼を言う。

「ありがとうございます、桔梗殿。
貴女のお言葉で、今は私の心が救われました」

桔梗はニッコリと笑って、
小さく頭を下げた。



時と場所を移して、
その明くる日、岡崎の町の中にて。


「ああ?伊勢と近江に行ってみたい?」

そう言う和泉に、姫巫女はコクコクと頷いた。

「越後に帰るのに、せっかくじゃから、
違う国も見てみたいのじゃ!」

「それはわからないでもないが、
ちっと遠回りだしな。
桔梗は何て言ってるんだ?」

「…まだ、聞いてないのじゃ」

視線を逸らしながら、姫巫女が言う。

「お前…俺にそれをさせるつもりだろ?」

「ぅ…お願いじゃ、和泉。
なんとかしてたも?」

まるで、仔犬だな…

涙目、上目遣いで懇願する姫巫女を見ながら、
和泉は思う。

「わぁかったよ、まあ、多分大丈夫だろ。
早速話に行こうぜ、チビ姫」

「あっ…」

立ち上がる和泉の裾を、
キュっと握って、姫巫女は俯く。

「?
どうかしたか?」

「あの…その…出来れば、の?
出来れば…呼ぶ…ときは…」

姫巫女の染まっていく頬を見て、
ああ、と和泉は気づく。

「…行こうぜ、姫。一緒にな」

パッと顔を上げて、姫巫女はニッコリと笑う。

「うん!」


歩き出した和泉の腕に、
抱きつくようにして姫巫女も続く。


「お、おい」

「なんじゃ?」

「いや…まぁ、いいか」

「なんじゃってば!」

「だから、いいって言ってんだろ!」

「気になるじゃろう?
ハッキリと申せ、和泉!」

「うるせぇ姫だな、
ちっとは淑やかさってもんをだな…」



だんだんと、小さくなっていく二人の声。

許しが出れば、次は伊勢の国へ。

そこで、どんなことが起きるやら?

それは、次回のお楽しみに…


〜後日談 結〜


皆さん、こんにちは!
薬師のミコトです。

冒険者の皆さんにお願いがあります。
お薬を飲むときには、
用法、用量を守り、正しく使いましょう。

間違っても、ふざけて飲んでみたりすると、
痛い目を見ちゃいますよ?

どんなことが起きるかって?
ふふ、聞きたいですか?
例えばですね…

次回「変身薬奇譚」
おふざけの代償

ああ、虎さん。
今までありがとう。
どうか、お元気で…うふふ♪


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蛇王の封印 結 「想い、触れあい…」

2018-01-25 03:17:16 | 封印の書 陸奥和泉
《想い、触れあい…》

美濃における、
魔物の動乱は突然幕を閉じる。

美濃、尾張、両陣営ともに、
その原因は分からずじまいであるが、
まずは自分たちで勝ち取った平穏を、
心から喜ぶことにした。


黄昏時迫る美濃の街道を、
馬上の信長を先頭に、
織田の精鋭達が尾張へと向かっていた。

ふと、前方を見ると、薄暗い街道の両端に、
一本ずつ篝火が焚かれていた。


どこからか、一人の忍びが現れ、
信長の前に傅く。


「御帰還のところ、申し訳ありません。
美濃領主、斎藤道三より
信長様への言伝を預かって参りました」

信長はそれを聞くと、軽く笑った後に言う。

「許す。申してみよ」

「はっ、
『此度、お主が破壊した関所の門は、
特別に当家で修理してやる』

…以上でございます」


「なぁんじゃ、そりゃあ?!」

信長の側に控える秀吉が、呆れたように叫ぶ。

が、当の信長はというと、

「ふはははは!
今度はもっと丈夫にするよう伝えよ」

楽しそうに笑い、再び馬を進める。

いつのまにか、忍びの姿はいなくなっていた。


その時、左右に置かれた篝火が、
ボゥッ、ボゥッ、ボゥッと、
等間隔を開けて街道沿いに灯り始めた。

だんだんと繋がっていくそれは、
炎の道しるべとなり、尾張の方へ伸びている。

その美しい光景に、
後方の尾張勢の者たちからも感嘆の声が上がる。



それだけではなかった。

街道沿いには、共に戦った美濃勢の者たちが、
並んで見送りに来ていたのである。

中には、村人たちや町の者まで。

それは、ずっと、ずっと、
篝火と同じように続いている。


ありがとう。助かった。
そんな感謝の言葉。

次は戦場にて。手加減はしないぞ。
そんな武士らしい言葉。

他にも、心のこもった、様々な言葉を受けながら
尾張の者たちは、夕暮れの街道をいく。

見送る者、見送られる者、
両者に幸せな気持ちを抱かせたこの出来事は、
長く両国の中で語り継がれたという。



そして、
語られぬ出来事がこちらに。


「終わった、の」

蛇王が消えた宙を見つめながら、
姫巫女が呟く。

「ああ、そうだな」

和泉は、そう短く答えて、
手にしていた、銃をおろした。


その途端、
姫巫女の羽衣と、和泉の籠手に変化が起きる。

それぞれ光りながら、その形を変えて、
羽衣は金の首飾りとなり姫巫女の胸元へ、
籠手は銀の腕輪となって和泉の左腕に収まった。


「これは、すごいの」

「まったくだ」

お互い、素直な感想を述べる。

「これからも、見守ってくれるのじゃな」

不思議な文様をあしらった首飾りを、
指で触りながら、姫巫女が言う。

和泉も頷いて、
その腕輪を夕日にかざしてみた。

「蛇神のじいさんの信頼、裏切らないようにしないとな…って、そうだ。

おい、ちょっと、こっち来てみ?」

和泉は自分の前を指差して、姫巫女を呼ぶ。

「なんじゃ?」

「いいから、ほれ」


クイクイ、と指差しを続ける和泉。

姫巫女は渋々、そこに立つ。


「んで、上を向いてくれよ」

「もー、なんなのじゃ?」

ブツブツと言いながらも、
姫巫女はグッと顎を上げて空を見上げる。

あ、カラスが飛んでいった…

和泉は片膝をついて屈むと、
露わになっている、姫巫女の首すじに
顔を近づける。

「暗くなって来やがったな、どれ…」

「まだかー?」

「まだだー」


和泉はじっと姫巫女の白い肌を見つめる。

そう、白く美しい肌。
どこにも、傷も、痣もついていない。

稲葉山の町で、操られていたとはいえ、
和泉は姫巫女の首を力を込めて
締め付けてしまった。

ひどい傷がついているのではないか、
そんな思いが頭に浮かんだのである。

何も残ってない。

かといって、あの失態の事実も、和泉の自責の念も消える訳ではないが、

「…良かった」

そう呟いて、
和泉は安堵のため息をついた。

その吐息は、当然、姫巫女の肌を滑りながら、
吹き抜けていく。


「…んぅっ!
和泉、くすぐった…」


「あ、悪いっ…」


肩をすくめて、下を向いた姫巫女と、

姫巫女の声に驚いて、謝りながら上を向く和泉。


二人は顔は今、お互いの瞳しか映らないほどの
近い、近い距離にいた。


思わぬ出来事に、
言葉なく、その瞳を見つめ合う和泉と姫巫女。



ただ、見つめるだけなのに、
何も語らないのに、
互いのたくさんの思いは、
触れ合い、溶け合い、一つになっていく。



どちらからでもない。



姫巫女は、胸の前で両手をキュッとにぎり、
潤む瞳をそっと閉じる。

姫巫女の柔らかな髪を右手で優しく撫でると、
和泉は桜色に染まる頬に手を添えた。


そして二人は、そっと唇を重ねあう。


幸せな想いが心から溢れ、
光の粒となり姫巫女の瞳から零れおちた。


想い、触れあい、重なりて、

そして今、心、一つに…



〜結〜



親しき者を求めて、始まった『ふたりたび』
終着の地は変われども、
まずは一件落着、大団円。

幸せな二人の時を邪魔せぬように、
些少なことは、
後日談として語らせていただきます。
(もちろん、和泉たちの物語も、まだまだ続きます)



☆この物語は、架空のお伽話です。
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蛇王の封印 十四 「受け継がれたもの」

2018-01-24 23:10:43 | 封印の書 陸奥和泉
《受け継がれたもの》

「ぐおおぉ?!力が、力が抜けていく!

何故だ?あの者たちは敵同士ではないのか?
憎しみあっているのではないのか?!」

頭を抑え、もがき苦しむ蛇王。

先ほどまで感じられた、
息苦しいほどの強大な邪気は消え去っていた。


蛇神が和泉たちに問う。

「我も不思議だ。
何故、戦をしあう国だというのに、
あんなにも通じ合えているのだ?

当たり前のように、共にに立って戦えるのだ?」


顔をしかめ、頭をボリボリとかきながら、
和泉は答えた。

「なんつうのかな…
綺麗なことばかりじゃないのは確かだが、
憎しみ合うとか、そういうんじゃないんだ。

違う国、違う土地、
まったく違う生活を送っていたとしても、
俺たちの間には『信頼』があるんだ」


「そうじゃよ、蛇神様。
じゃから、姫たちは、ああやって共に戦ったり、
笑ったり、泣いたり、怒ったりできるのじゃ。

不完全ではあるが、人や人の心は、
愛おしいものなのじゃ」


二人の言葉を聞いた蛇神は、黙って瞳を閉じる。


「そうか。
正直、我も人間には愛想を尽かしていたのだ。
愚かな連中じゃ、話を聞く価値もない、と。

じゃが、一度でも信じてみれば、
我も蛇王も別の道があったのやもしれんな」


そして、蛇神は二人の手をとり、
その顔を見つめて言う。

「今こそ、人を、お主らを信じよう。
我の力を貸し与える。それで、蛇王を倒して…
いや、闇から解放してやってくれ」

蛇神の身体が光の塊へと変わっていく。
そんな中、彼は姫巫女に、こう話しかけるのだ。

「姫巫女よ、短かったが楽しかったぞ?
大切な者を守り、守られ、幸せになるのだ。
いいな?」

なぜ?なぜ、そんなことを?

「お、おかしいのじゃ?蛇神様。
それではまるで…」

「…和泉よ。この姫を守れ。
そして、お主自身も守れ。
良いか?二人在ってこその幸せと知るのだ」

柔かな微笑みとともに、
蛇神は光となって二人の身体に注がれる。

その瞬間に、全てを理解してしまう。

蛇神は力を貸し与えたのではない。

信じた者たちに己の力の全てを分け与えたのだ。


「そんな…」

両手で顔を覆う姫巫女の肩を、
和泉は優しく抱き寄せる。

二人、その身体には光が溢れ、やがて、
ある形を成していった。


姫巫女の光は、
御守りとして託された羽衣を包み込んだ。
やがて羽衣は、金色の光を纏い神々しさを増す。

和泉の光は、
その左手へと巻きつき、拳から肘までを覆う、
白銀の籠手へと姿を変えた。


白岩の蛇神、その神力は信頼を得た
二人の者に受け継がれたのである。



はあ、はあ…

空を見つめ、苦しげに肩で息をする蛇王。

気配を感じ、視線を上げた先には、
一人の鍛冶屋と巫女が立っていた。

二人から発せられる、
金と銀の光が目に突き刺さるように眩しい。


「お前達、その光は…?」

「蛇神様がくれたのじゃ。
お主を闇から解放してほしい、とな。

のう、
一度でも人を愛してくれたのじゃろ?
どうか、今一度、機会をもらえんじゃろうか?

もっと…ううん、ほんの少しでも良い。
人のことを知ってもらえれば…」

悲しそうに蛇王を見つめて語る姫巫女。
その言葉を遮って、蛇王が叫ぶ。

「黙れ!我を誰だと思っている。
貴様らのような、愚かしい存在とは違うのだ。
人を知る必要など無し!
全部踏み潰してやればいいのだからな!」

怒号に身を縮める姫巫女の前に
守るようにして、和泉が立つ。

「ギャンギャンうるせぇな。
人の話もまともに聞けない奴が、
偉そうに他を否定するんじゃねぇよ。

俺らも、ただ踏み潰されるわけにはいかないからな。きっちり抵抗させてもらうぜ。
っていうかな…」

一度、大きく息を吐いて、
和泉が咆える。

「俺に『あんなこと』させた落とし前は、
きっちり、とってもらうからな!!」

今もその手に思い出す姫巫女の首を絞める感触。
操った蛇王と、操られた自分への怒りの声であった。



「なめるな、虫けらが!!」

身体を震わせ、
蛇王は無数の竜巻を作り出す。

先ほどよりも数の多いそれを、
和泉と姫巫女に容赦なく打ちだした。


姫巫女は胸に手を当て、祈りを込めると、
纏う羽衣が強い光を放つ。

羽衣はまるで大きな翼のように広がると、
その羽ばたきをもって、光の風を繰り出した。

黒い竜巻は、光の風にあたると、
そのまま、吸い込まれるようにかき消された。

「なんだと?!」

信じられない、
そんな表情で光の溢れる空間を見つめる。


「いくぞ、こらぁ!」

間髪入れず、右手に銃を持った和泉が、
蛇王めがけて突進してきた。

何の工夫もない、真っ正面からの進撃に、
不敵な笑みをもって、蛇王は言う。

「愚かな。食らうがいい!」

右の拳に力を込めると、バキバキと音を立てて、
緑色に輝く鱗に覆われる。

強度と硬度を増した拳の一撃を、
馬鹿正直に、正面へとやってきた和泉へ繰り出した。

勝利を確信する蛇王。しかし…

血肉を爆ぜ、身体を吹き飛ばすはずの攻撃を、
信じられないことに、和泉は左手一本で
受け止めている。

和泉の左手にはめられた籠手が
淡い銀色の光を発していた。

「馬鹿な!普通の人間が受け止められるはずがない。まさか、お前たちの、その力…?!」

歯ぎしりをして、和泉を睨みつける蛇王。
拳を挟んで、和泉もまた、蛇王を睨む。

「俺たちを信じて託された力だ。

お前はさっき、無下にはねのけたな。
『姫』から差し出された信頼の想いを。

そいつが、どんなものか、
身体に叩き込んでやるから覚悟しろ!」

和泉は受け止めた蛇王の拳を上に刎ねあげた。

無防備に晒された胴へ、
至近距離で銃弾を撃ち込む。

「ぐはぁ?!」

悶絶する蛇王の顔面へ、左の拳の一撃。
たたらを踏んだところを、再び距離を詰め、
蛇王の腹部へ、一発、二発、三発。

打撃が打ち込まれるたびに、
蛇王の身体がくの字に曲がる。

「稲葉山の…お返しだ、この野郎!!」

最後は、身体を左に回転させて、
側頭部に左裏拳を命中させた。

「ぐおっ!」

蛇王の身体は、そのまま横に吹き飛び、
青緑の血を撒き散らしながら、地に倒れこんだ。

こんなところで、倒れるわけにはいかぬ!
もっと、人間どもに復讐せねば、
でなければ…でなけ、れば?

なぜだ?なぜ、我は人間を恨んでいるのだ?

なぜだ?なぜ?

頭の中に広がる闇の中、
蛇王は何かを探す。

自分が人間を恨んだ理由。

自分が闇の道を歩んだ理由。

それは…



ふらつきながら立ち上がる蛇王。

その表情は虚ろで、瞳の焦点も合っていない。


己の前方には、和泉と姫巫女が、
寄り添うようにして、一丁の銃を構えている。

金と銀の光が、混じりあうように、
蛇王に向けられた銃身に注がれていた。


「…やるぞ」

和泉の言葉に、姫巫女はコクリと頷いた。

発射された銃弾は、
金銀の光を巻き込みながら、蛇王へと迫る。

蛇王の眉間に命中した後、追いかけるように、
光の奔流が蛇王の身体を突き抜けていった。

昔のうたにある、風の前の塵のように、
サラサラと崩れていく蛇王。


…光?光が、見える。
しばらく、目にした覚えのない光。
これは…

闇の中、一握りの光を蛇王は見つけた。

それを、恐る恐る手にとり、じっと見つめる。

その中には、かつて自分が愛した…


「ああ、会いたかった……殿。
ずっと、ずっと…」

光の中、蛇王は目から涙を流しながら呟き、
そして、消えていった。


ある者が言った。

山中のどこかから、金と銀の光が溢れてくるのが見えたのだと。

その途端、暴れていた蛇の魔物は、
みな元の姿へともどり、どこかへと逃げ去ったのだという。

不思議な結末に、
美濃、尾張の面々は首を傾げながらも、
事態の収束、自分たちの勝利に、
勝どきの声を上げた。

美濃の各地より広がる歓喜の声。

それは、
日が傾きかけた美濃の空にこだまして、
蛇王の最期を見届けた、
和泉、姫巫女、
二人の元へも届いたのであった。

〜続く〜
次回「蛇王の封印 結」
想い、触れ合い…


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
伝承、システム、設定等とは一切関係ありません

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