《駆け込んできた彼女》
場所は同じくタケル邸、その一室。
座敷に座っているミコトの前には、
しょんぼりとした様子の子犬と子猫。
「…で、すこし酔ったから、調子に乗って、
変身薬を何個か同時に飲んだら、
その姿になって、時間も経つけど戻らない、と」
顔を引きつらせたミコトの前で、
子犬(虎空)が頷いて答えた。
痒いのか、首のあたりを、後脚でガシガシとかいている。
「その通りでござる。
びっくりして、酔いも覚めたでござるよ」
「地味な変化だな?って思ってたら
コレだもんな。まったく参った」
隣の子猫(タケル)が前脚で顔をグリグリと撫でながら同意する。
「馬鹿なの?二人とも」
辛辣なミコトの言葉。
だが、これ以上真をついているものもあるまい。
子犬(虎空)と子犬(タケル)は、
「「返す言葉もございません」でござる」
と、素直に認めるのであった。
ミコトは思いっきり大きなため息をつくと、
「とにかく、このままって訳にもいかないわ。
永続的な効果は無いと思うけど、
中和する薬を作るから、それを試しましょ」
「おお!流石は薬師でござる。
ミコト、すまんが頼むでござる」
子犬(虎空)は、ピョンピョンと跳ねながら、
尻尾を全力で振っている。
「頼むわ、ミコト。
埋め合わせはするからさ」
子猫(タケル)が、大きく伸びをして、
首をプルプルと振った。
それを、じぃっと見ていたミコトは、
「あのね、あんた達緊張感なさすぎじゃない?
可愛すぎるんだけど?」
にやけそうな顔を、懸命に抑えながら言う。
少々、本音が漏れてしまっているが。
「そうは言っても…え、なんでござると?」
「…この姿を褒められてもなぁ」
その時、
玄関の扉が勢いよく開いた音がして、
「すいません!タケルさん!
いらっしゃいますか?」
と、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あれ?由美さんだ。
何か約束でもあったの?」
ミコトの問いに、子猫(タケル)は首を振る。
「あっそ、とりあえず、出ましょうか」
「ミコト!ミコト!!」
立ち上がりかけたミコトを、
子犬(虎空)が慌てて止めた。
「なに?虎さん」
「できれば、この件は由美殿には内密に…」
「なんでよ?しっかり聞いてもらって、
しっかり呆れられて、しっかり反省すればいいんじゃないかな?」
「そこをなんとか頼むでござるよ〜。
こんなの、みっともないやら、情けないやら、
この通りでござるっ」
そう言って、つぶらな瞳で訴える子犬(虎空)。
「う…そんな目で見られると…
わ、わかったわよ、内緒にすればいいんでしょ」
ミコトは、クルリと背を向け、
由美の元へと向かう。
「なんか、今、ミコトに願い事すれば、
なんでもいけそうな気がしてきた」
彼女の背中を見ながら、
子猫(タケル)は目を細めた。
「はい、はーい。
由美さん、どうしたの?」
ミコトが声をかけながら向かうと、
玄関には、由美が慌てた様子で立っていた。
「あ、ミコトさん?
タケルさんは、ご不在かしら?」
「う、うん。
なんか、虎さんと急用とかで出かけてるよ。
わたし、お留守番。
どうかしたの?なんか、急いでるみたいだけど」
そうなのだ。
何やら、しきりに外の様子を伺うなど、
普段の由美とは違い、とても落ち着きがない。
「お願いです!
私をかくまってください!」
「は?」
「お願いします!」
言うが早く、由美は自分の履物を持って、
パタパタと中へと入って行った。
「ど、どうしたのかな…?」
首を傾げながら、由美の後を追おうとすると、
ドンドンッと、誰かが乱暴に戸を叩いている。
「なんなの?もうっ。
はいはい、何ですか?」
ミコトが顔だけを出して、表をのぞいてみると、
険しい顔をした男が二人立っていた。
「…女、少し聞きたいことがある。
ここらで、巫女の女を一人見なかったか?」
片方の男が、早口で尋ねてくる。
身なりは良さそうだが、
礼節が決定的に備わっていない。
もう一人の方は、
しきりにあたりを見渡して、
誰かを探しているようだ。
それよりも…
女?お、ん、な?!
言葉遣いがなっていない男に、
苛立ちながらミコトは答えた。
「知らないわよ。他所を探しなさいな」
言い終わらないうちに、
ピシャリと戸を閉めてやった。
戸に張り付いて、外の様子を伺っていると、
男たちは二言三言話した後に去っていく。
巫女の女って…
「由美さん、なんであんな連中に?」
今日は色々な事が起き過ぎて、
だんだんと疲れてくる。
ミコトは大きく息を吐いて、
おそらく由美もいるであろう、
奥の部屋へ足を向けた。
「由美さん、なんなの?あの連中は…
あれ、いない?」
襖を開けて中に入ると、そこに由美の姿はなく、
変身薬で遊んだ馬鹿者たちがいるだけだ。
「由美さん?」
見回すミコトに、子猫(タケル)が
ある一点を前脚で指してみせる。
押入れ?
由美さん…子供のかくれんぼじゃないんだから
少し呆れながら、そっと開けてみると、
しまわれた荷物の間に、
由美が丸くなって隠れている。
「何やってるの?由美さん」
「あ、ごめんなさい…隠れなきゃと考えたら、
思わずここに…
ミコトさん、その…あの方々は?」
顔を赤くし、恥ずかしそうにしながら、
由美は押入れから這い出してきた。
「あの『方々』っていう程、
高尚な連中には見えなかったけどね。
とりあえず、行ってしまったわよ」
鼻息荒く、ミコトが答える。
それを聞いて、由美はホッと胸を撫で下ろした。
「そうですか」
「巫女の女はどこだって言っていたけど、
何かあったの?由美さん」
ミコトの問いに、
由美は思いがけない答えを口にした。
それには、ミコトをはじめ、
足元の子犬(虎空)と子猫(タケル)は、
思わず絶句してしまうのである。
「実は…
私、お見合いをすることになってしまって…」
〜続く〜
次回「変身薬奇譚 参」
命名
☆肩の痛みは、首の骨が原因ということです。
薬が、ひぃ、ふぅ、みぃ…四種類(>_<)
昔の祖父が、こんな感じだったと思い出し、
なんともいえない気持ちにw
ケガとは関係ありませんが、
インフルエンザも流行中の様子。
皆様もお身体、御自愛くださいませ(・∀・)
☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
伝承、システム、設定等とは一切関係ありません
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場所は同じくタケル邸、その一室。
座敷に座っているミコトの前には、
しょんぼりとした様子の子犬と子猫。
「…で、すこし酔ったから、調子に乗って、
変身薬を何個か同時に飲んだら、
その姿になって、時間も経つけど戻らない、と」
顔を引きつらせたミコトの前で、
子犬(虎空)が頷いて答えた。
痒いのか、首のあたりを、後脚でガシガシとかいている。
「その通りでござる。
びっくりして、酔いも覚めたでござるよ」
「地味な変化だな?って思ってたら
コレだもんな。まったく参った」
隣の子猫(タケル)が前脚で顔をグリグリと撫でながら同意する。
「馬鹿なの?二人とも」
辛辣なミコトの言葉。
だが、これ以上真をついているものもあるまい。
子犬(虎空)と子犬(タケル)は、
「「返す言葉もございません」でござる」
と、素直に認めるのであった。
ミコトは思いっきり大きなため息をつくと、
「とにかく、このままって訳にもいかないわ。
永続的な効果は無いと思うけど、
中和する薬を作るから、それを試しましょ」
「おお!流石は薬師でござる。
ミコト、すまんが頼むでござる」
子犬(虎空)は、ピョンピョンと跳ねながら、
尻尾を全力で振っている。
「頼むわ、ミコト。
埋め合わせはするからさ」
子猫(タケル)が、大きく伸びをして、
首をプルプルと振った。
それを、じぃっと見ていたミコトは、
「あのね、あんた達緊張感なさすぎじゃない?
可愛すぎるんだけど?」
にやけそうな顔を、懸命に抑えながら言う。
少々、本音が漏れてしまっているが。
「そうは言っても…え、なんでござると?」
「…この姿を褒められてもなぁ」
その時、
玄関の扉が勢いよく開いた音がして、
「すいません!タケルさん!
いらっしゃいますか?」
と、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あれ?由美さんだ。
何か約束でもあったの?」
ミコトの問いに、子猫(タケル)は首を振る。
「あっそ、とりあえず、出ましょうか」
「ミコト!ミコト!!」
立ち上がりかけたミコトを、
子犬(虎空)が慌てて止めた。
「なに?虎さん」
「できれば、この件は由美殿には内密に…」
「なんでよ?しっかり聞いてもらって、
しっかり呆れられて、しっかり反省すればいいんじゃないかな?」
「そこをなんとか頼むでござるよ〜。
こんなの、みっともないやら、情けないやら、
この通りでござるっ」
そう言って、つぶらな瞳で訴える子犬(虎空)。
「う…そんな目で見られると…
わ、わかったわよ、内緒にすればいいんでしょ」
ミコトは、クルリと背を向け、
由美の元へと向かう。
「なんか、今、ミコトに願い事すれば、
なんでもいけそうな気がしてきた」
彼女の背中を見ながら、
子猫(タケル)は目を細めた。
「はい、はーい。
由美さん、どうしたの?」
ミコトが声をかけながら向かうと、
玄関には、由美が慌てた様子で立っていた。
「あ、ミコトさん?
タケルさんは、ご不在かしら?」
「う、うん。
なんか、虎さんと急用とかで出かけてるよ。
わたし、お留守番。
どうかしたの?なんか、急いでるみたいだけど」
そうなのだ。
何やら、しきりに外の様子を伺うなど、
普段の由美とは違い、とても落ち着きがない。
「お願いです!
私をかくまってください!」
「は?」
「お願いします!」
言うが早く、由美は自分の履物を持って、
パタパタと中へと入って行った。
「ど、どうしたのかな…?」
首を傾げながら、由美の後を追おうとすると、
ドンドンッと、誰かが乱暴に戸を叩いている。
「なんなの?もうっ。
はいはい、何ですか?」
ミコトが顔だけを出して、表をのぞいてみると、
険しい顔をした男が二人立っていた。
「…女、少し聞きたいことがある。
ここらで、巫女の女を一人見なかったか?」
片方の男が、早口で尋ねてくる。
身なりは良さそうだが、
礼節が決定的に備わっていない。
もう一人の方は、
しきりにあたりを見渡して、
誰かを探しているようだ。
それよりも…
女?お、ん、な?!
言葉遣いがなっていない男に、
苛立ちながらミコトは答えた。
「知らないわよ。他所を探しなさいな」
言い終わらないうちに、
ピシャリと戸を閉めてやった。
戸に張り付いて、外の様子を伺っていると、
男たちは二言三言話した後に去っていく。
巫女の女って…
「由美さん、なんであんな連中に?」
今日は色々な事が起き過ぎて、
だんだんと疲れてくる。
ミコトは大きく息を吐いて、
おそらく由美もいるであろう、
奥の部屋へ足を向けた。
「由美さん、なんなの?あの連中は…
あれ、いない?」
襖を開けて中に入ると、そこに由美の姿はなく、
変身薬で遊んだ馬鹿者たちがいるだけだ。
「由美さん?」
見回すミコトに、子猫(タケル)が
ある一点を前脚で指してみせる。
押入れ?
由美さん…子供のかくれんぼじゃないんだから
少し呆れながら、そっと開けてみると、
しまわれた荷物の間に、
由美が丸くなって隠れている。
「何やってるの?由美さん」
「あ、ごめんなさい…隠れなきゃと考えたら、
思わずここに…
ミコトさん、その…あの方々は?」
顔を赤くし、恥ずかしそうにしながら、
由美は押入れから這い出してきた。
「あの『方々』っていう程、
高尚な連中には見えなかったけどね。
とりあえず、行ってしまったわよ」
鼻息荒く、ミコトが答える。
それを聞いて、由美はホッと胸を撫で下ろした。
「そうですか」
「巫女の女はどこだって言っていたけど、
何かあったの?由美さん」
ミコトの問いに、
由美は思いがけない答えを口にした。
それには、ミコトをはじめ、
足元の子犬(虎空)と子猫(タケル)は、
思わず絶句してしまうのである。
「実は…
私、お見合いをすることになってしまって…」
〜続く〜
次回「変身薬奇譚 参」
命名
☆肩の痛みは、首の骨が原因ということです。
薬が、ひぃ、ふぅ、みぃ…四種類(>_<)
昔の祖父が、こんな感じだったと思い出し、
なんともいえない気持ちにw
ケガとは関係ありませんが、
インフルエンザも流行中の様子。
皆様もお身体、御自愛くださいませ(・∀・)
☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、
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