信おん御伽草子

信長の野望onlineの世界を物語として綴ります
ゲーム内では真宮寺八雲でログイン中!お気軽にお声かけくださいね

大ふへん者 拾 「譲れぬもの」

2019-01-18 18:12:31 | 親愛なる皆様へ
《譲れぬもの》

心中。


「随分と威勢がいいな、え?おい」

本来の姿であろう、見慣れぬ男、
滅裂斎が竜司の髪を乱暴に掴んで凄む。

変わらず身動きの取れない竜司は、
顔をしかめて、されるがままとなる。

が、
その意思と主張までは抑えきれるものではなく、


「へっ、さっきから聞いてりゃ、
グダグダと大層なことをぬかしやがって。

つまりはあれだろ?

お前は人の力を使いながら、
偉そうにしてる軟弱者ってことだろ?

『虎の威を借る狐』…いや、違うか。
『人の褌で相撲を取る』、だ。

はは、お似合いだよ、お似合い」


「…ふん、お前こそ、
『口だけは回る』ようだな。

何を言おうが、お前の身体は俺のものだ。

今から、仲間の女を斬り伏せてやる。
いや、めちゃくちゃに辱めてやるから、
楽しみにしておけよ」

勝ち誇ったように話す滅裂斎に、
竜司は、ふぅ、と一息つくと、

「お前には無理だよ。
お前ごときじゃ、雪音には勝てない」


怒りを抑えながら、静かに言う。


「はははっ、なんだ情け無いな。
お前、自分があの女よりも弱いと思ってるのか?
それでも傾奇者か?
見掛け倒しも甚だしいな」

滅裂斎は竜司の髪を離すと、
愉快そうに笑った。

「それなら、それでもいいさ。
女の身体に入るのは初めてだが、
強い奴なら構わんし、何より楽しみだ」

下劣な感情を隠しもしない滅裂斎の顔に、
竜司は侮蔑の視線を向ける。

「わかってねぇな。
あいつは負けない。
お前のものにもなりはしない。

せいぜい足元をすくわれて、
盛大に尻餅つくがいいさ」



身外。


舞う雪は少しずつ、その数を減らし、
雪音の視界には、対峙する傾奇者の姿が、
はっきりと映るようになっていた。

意識を眼前の敵に集中させながら、
雪音は、背後の者へと声をかけた。


「千代恵さん。いくつか聞かせて欲しい。

この滅裂斎とやらが、不思議な力で他人と入れ替わることは知っていたのか?」

雪音の問いに、
千代恵は即座に首を振る。

「いいえ、存じ上げておりませんでした」

「そうか…ならば、もう一つ。

そうすると、あなたは、
胸に抱くその方を、自分が想いを寄せる人だと、
そう思っていたはず。

何故、あの傾奇者に仇討ちを頼んだのだ?」

「そ、それは…」

背を向けたままの雪音の言葉に、
千代恵は言葉を詰まらせる。

そんな彼女の替わりに答えを発したのは、

「…拙者が、頼んだから、だ」

「!!! 誠一郎さま!」

千代恵の腕の中で、
うっすらと目を開けた誠一郎だった。

「…千代恵、殿。すまない、心配を、かけた」

「いいえ、いいえっ、ああ、誠一郎さま…
誠一郎さまなのですね?!」

誠一郎はうっすらと微笑み、
彼女に頷いて見せる。

そして、顔をしかめながら、上体を起こすと、
雪音に向かって話しかける。

「…雪音、殿と、申されたか?」

「ああ、そうだ」

「各々方には、
大変な迷惑をかけてしまって…申し訳ない」

「気にしないでほしい。
貴殿が謝ることではないだろう」

「…先の質問だが、拙者は、
この千代恵殿と夫婦になる約束をしていたのだ。

その時、私は…」



『…誠一郎さま?この小刀は?』

『これは、他界した父から譲り受けたものだ。
千代恵殿に持っていてほしい』

『そ、そんな大事なもの、受け取れません!』

『頼む、持っていてくれ。
父は拙者に、武士として、侍として、
立派に生きるようにと厳しく教えてくれた。

これから先、もしも拙者がそれに反するようなことをするようならば、侍として恥ずべき行為をするようならば、私をそれで止めてほしい』

『止めるって…そんな…』

『ふふ、大丈夫。
拙者は立派な侍として生き、
千代恵殿を守り続ける。

千代恵殿を幸せにしてみせる。

その覚悟と決意の印だ。

だから千代恵殿…
どうか、ずっと拙者の側にいてくれ』

『ああ…誠一郎さま…』


滅裂斎となった誠一郎が山賊町を去った後、
日を経たずして、
あるならず者の噂が千代恵の耳に入る。

『大ふへん者』の旗印を差した傾奇者が、
近くの村や、街で狼藉を働いている、と。


それを聞いた千代恵の悲しみと悩みは
如何程のものであっただろうか。


ただ、自分が捨てられた、それだけであれば、
どれだけ『楽』であっただろうか。


一度は互いを想い、将来を約束し合い、
死が二人を分かつまで共にいることを誓った。


それと同時に託された『願い』と『形見の小刀』


揺れる気持ちの中、
出会った傾奇者の男に、誠実な心を見た千代恵は
ある決心をする。


そして、

「…あいつに仇討ちを頼んだ、という訳か」

そう言って、雪音は神妙な顔で頷いた。

違う反応を見せたのは、
竜司の姿、滅裂斎。

「はっはっは!そんなこと言って娘!
ただ単に、
捨てられた男への恨みのためじゃないのか?

そんな約束の為に、人一人殺そうと言うのか?
恐ろしい女だぜ…うおっ?!」

滅裂斎の驚きの声と同時に、
キィィン!!
という、甲高い金属音が辺りに響く。

瞬足の速さで間合いを詰めた雪音が、
太刀を横薙ぎに打ち込んでいる。

咄嗟に受け止めた滅裂斎の薙刀が、
拮抗した力により細かく震えていた。


「…突然斬りかかるとは、
随分と汚いじゃないか」

睨みつける滅裂斎に、
負けぬ眼力で対抗する雪音。

「ああ、すまない。
あまりに聞き苦しい言葉が、
聞こえてきたものだからな。

だが、この程度の速さの太刀を受けられぬわけではないだろう?

天下に名を轟かせる傾奇者様ならば…な!」

カキィン!!

互いの武器を弾かせながら、
双方、間合いを取る。


太刀を握り直し、正眼に構えた雪音は、
己の刃越しに見える敵を見据え、
そして言う。


「人それぞれに持つ譲れぬもの、守るべき想い。
貴様ら傾奇者とて、いや、だからこそ、
真に理解しているものだろう。

だが、それが解らぬようであれば、
貴様はただの『ならず者』だ」

「なんだと?!この女!」

不機嫌を通り越し、激怒の感情を表に出して、
滅裂斎が怒鳴り声を上げた

「その澄ました顔をぐちゃぐちゃにしてやる、
覚悟しろ!生意気な女め!」

その刃に怒りの炎を宿して、対峙する二人。

戦いの再開、である。


〜続く〜
次回「大ふへん者 十一」
傾奇者矜持(かぶきものきょうじ)


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。









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大ふへん者 九 「憑依の旗印」

2019-01-18 08:34:37 | 親愛なる皆様へ
《憑依の旗印》

「どういうことだ?」

暗がりの空間にて、目の前の男、
四里滅裂斎を睨みつけながら竜司が問う。

「おいおい、そんなにイラつくなよ。
これからしばらくは、一緒に過ごすんだ。
仲良くやろうぜ?」

「一緒に過ごす?冗談じゃねぇ。
だいたい、ここはなんなんだ!」

そう怒鳴る竜司に向かって、
薄ら笑いを浮かべながら、
滅裂斎が答えた。

「ここは、お前の心の中さ」

「あ?心の中?」

「ああ。それで、お前が動けないのはな、
俺がお前の身体を頂いたからだ」

「…訳がわからねぇ。
一体、何がどうなっているんだ?」


そう問いかけたのは、
竜司だけではなかった。



その外側、とでも言おうか。

白雪舞い散る中、
対峙する雪音と竜司、いや滅裂斎。

背後の千代恵たちを庇うように、
雪音は、少しだけ体を動かす。

そして、
相手を睨みつけながら、
厳しい声色で問うた。


「お前、『あいつ』じゃないな。
そこに倒れている者といい、
一体、何がどうなっている?」

内と外、
姿は違えど恐らくは中身は同じ滅裂斎は、
優越感に浸るかのように、
満足そうな笑みを口元に浮かべた。

「ふっ、そうだなぁ…」



あるところに、一人の傾奇者がいた。

誰もが知る有名な武将にあやかって、
背に『大ふへん者』の旗印を掲げると、
意気揚々と街を練り歩く。

異様の格好に身を染め、
肩で風を切って歩く様に、街の人々は、
敬遠の視線を送っていた。

というのも、


「どいつもこいつも、
俺の力強い艶姿に恐れをなして、
卑屈な目をして去っていく。

弱っちい連中さ。

傾奇者としての俺の凄さに、
すっかりビビってやがった。

大抵の奴は、この刀を抜いて見せれば、
言うことを聞き、俺に従う。

時々、突っかかってくる奴は、
そのまま、刀の錆にしてやったんだが…」


動けぬ竜司の前、
刀を構える雪音の前、
滅裂斎は苦々しい表情を見せて、


「ある日、薄汚い侍に刀を突き付けたら、
奴め、汚いことに突然居合で、
俺を斬りつけやがったんだ。

避ける間も無く、俺は致命傷を受けて、
その場に倒れこんだ。

死にたくねぇ!
まだやりたいことは沢山ある!
天下に滅裂斎の名を轟かせる野望も!

ありったけの恨みを込めて、
その侍を呪った。

ふっ、ふふふ、そうしたら、だ。

戦利品のつもりか、
その侍が俺から旗印を抜いた瞬間、


俺は、その侍の身体の中にいた。

侍の身体を乗っ取って、自由に動かせる。
そいつの技の全ても俺のものだ!
俺は生き返った、
いや、永遠の命を手に入れたんだ!!」



特別な力を得た自分。
何かに選ばれたという歓喜がそうされるのだろう。

滅裂斎は恍惚の表情で天を仰ぎ、
そのまま、独り言のようにそれを語る。



「その後、俺は強そうな奴を見つけると、
手当たり次第に決闘を申し込んだ。

だんだんと面倒くさくなり、
無理矢理に襲いかかったりもしたがな。

負けた後、相手に念を送ると、
そいつは導かれるように旗印を手に取る。

中には自分から拾ってくれる馬鹿もいたがな。

簡単だろう?
それで、入れ替わり完了だ。

強者を求めて、今まで何回も
憑依を繰り返してきた。

その度に、俺は強くなる!

わかるか?
自分より強い相手に負けたとて、
そいつの力を奪えるんだ。

俺は『勝ち続ける』んだ。




それ、そこの男と娘。

そいつらと会ったのは、
山賊町に行った時だな。


男の方は、
そこらじゃ名の知れた武芸者だというから、
その身体を奪ってやろうと近づいたんだ。

決闘を申し込んでやったが、
意味のない戦いはしたくないとか、
大層なことをぬかしやがる。

だが、所詮口だけの格好つけ野郎。

良い仲だという、その娘に手を出したら、
血相変えて斬りかかってきやがった。

馬鹿なやつだ、俺の狙い通りだと知らずによ」


思いがけない話に驚いたのだろう。

滅裂斎の話を、千代恵は目を見開いて、
その身を震わせながら聞いていた。

未だ目を覚まさない男の身体を抱きしめながら、
ハラハラと涙を流す。



「噂通り、剣の腕は一流だったから、
俺はそのまま負けて、旗印ごと乗り移った。

いい身体だったな。
褒めてやるよ、今までで最高の武技の持ち主だ。



その男と入れ替わった俺は、
山賊町から出て行こうとしたんだが…ふはは、
その時が最高だったぜ。

その娘が俺に縋り付いてきて言うんだ」


『どうされたのですか?!誠一郎さま!』

『まるで人が変わったかのようではありませんか!』

『私を…お嫌いになってしまったのですか?!』


「そう言って、俺を引き止めるのさ。
初めは、一度くらいは手篭めにしてやろうかとも思ったが、あまりにしつこいから、いい加減頭にきてな。

蹴りを食らわせて出てきたってわけだ。
なあ、そうだろう?」


滅裂斎の呼びかけに、
千代恵は俯いて何も答えない。

涙を流しながら、ギュッと男の、
誠一郎の身体を抱きしめるばかりだ。



「何だよ、相変わらず辛気臭い女だな。
怪我をしちゃいるが、その男を取り戻せたんだ。
もっと、喜んでも…」


ヘラヘラと笑いながら語る滅裂斎の言葉を、



「…おい、ちょっと黙れや」

心の中、と呼ばれた場所で、
動けぬ竜司が、

「…おい、少し黙れ」

白き雪の戦場で、
刀を構える雪音が、

怒りに燃えた視線を滅裂斎に向けながら呟く。


「はぁ?なんだって?」


「「黙れと言ったんだ!!」」


場の空気が震える。

とぼけた様子の滅裂斎に、
竜司の身体の内と外同時に、
凄まじい覇気のこもった声が響いた。


〜続く〜
次回「大ふへん者 拾」
譲れぬもの


お知らせ

間も無く始まります新章。

そのパッケージのデザインに、
御伽草子の登場人物である、
『姫巫女』の姿が採用されました。

数多くの素晴らしい絵姿を見せた方々の中から、
そんな名誉ある一人に選んで頂いたことは、
大変誇らしく思っております。


そちらを目にされた初めての方が、

「楽しそうだな」

「ちょっと、興味があるな」

そんな風に思ってくれたら、

また、今もこの世界を楽しんでいらっしゃる方々が、

「お、こんな人がいるのか」

「少し話してみたいなぁ」

なんて感じてくれたらと思うと、
ドキドキが止まりません。


そんな風に、何かのお役に立てたら、と。


『誰かの役に立ちたい』


親愛なる、あるお方の強い思いに触れて、
私は、今、ここにおります。


今回の素晴らしい出来事は、
私の一生の記念となると同時に、
そんな思いに手を添えられたかもしれないと、
感じております。

手前勝手ではありますが…ねw


この度、選出頂いた方々、
何よりも、いつも私と御伽草子を支えてくださる
多くの皆様に、
この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

最後に、この方より…


「やっほぅ♪姫なのじゃ!
(*^▽^*)
あの絵姿を見た時は、あまりの驚きに、
息が止まるかと思うたわw

でも、ほんとに大変誉高いこととして、
心から喜んでおるのじゃ。

姫はいつも、あの姿で歩き回っておるでの。

見かけたら、お気軽に、
お声をかけてたもれ♪

それじゃ、皆の衆、まったのー!」
(((o(*゚▽゚*)o)))♡

☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。







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大ふへん者 八 「終わらぬ戦い」

2019-01-09 22:22:43 | 親愛なる皆様へ
《終わらぬ戦い》

大きく肩を上下させる竜司の側に、
雪音はゆっくりと歩み寄る。

目の前の『不可解な光景』に、
内心首を傾げながらも、まずは、

「…大丈夫か?」

と、竜司へ声をかけた。

額に大粒を汗を浮かべながら、
竜司は黙って頷く。

そして、雪音と二人、
地面に横たわる滅裂斎と、
それに泣いてすがりつく、

『千代恵』の姿を見やった。



仇討ちを依頼した本人が、
仇討ちの相手の身体を必死で揺すり、
その名前を泣き叫ぶ。

名前。

滅裂斎ではなく、
『誠一郎』という聞き覚えのない名前。



「一体、どういうことだ?」

雪音の問いに、竜司も答えられずに首を振る。

「俺だって聞きたいぜ。
なんで、ここに千代恵さんがいるんだ?

それに、誠…なんとかって?」

「私に聞くな。
お前たちの戦いに気を取られて、
あの声が聞こえるまで、
彼女の接近に気がつかなかった」

「そうか、まあ…」

竜司は大きく息を吐いて、
少し弱々しい笑みを見せて言う。

「あの二人に聞けばわかるだろ」

千代恵に上体を抱き起こされた滅裂斎は、
未だ瞳を閉じたまま、ぐったりとしている。

完全に気を失っているようだ。


「…殺さなかった、のだな」

「ん?ああ。いや、咄嗟だったから、
選んだつもりはないが、
最初から不殺の仇討ちとするつもりだった」


後から、竜司が話した言葉だ。


『自分の手による仇討ちじゃないが、
人の命をあの細腕にかけるのは酷だと思ってな。

腕の二、三本も折ってやって、
もう悪さはしないだろうって伝えようと』


そんな竜司に、雪音が返したのは、

『腕が三本あってたまるか』

という辛辣なものだったが…


とにかく、
詳しく話を聞こうと、
雪音と竜司は二人の元へと歩み寄る。

声をかけようとした、その時、
生温い風が通り過ぎた。

そして、

バササッ…!

という音とともに、
『大ふへん者』の旗印が風に吹かれ宙を舞った。

それほど、強い風ではなかったが、
旗印は勢いよく雪音と竜司の方へと飛んでくる。

このままでは顔にでも衝突しては、
怪我をしてしまうかもしれない。

「おっと…」

自分たちにぶつかりそうになるそれを、
竜司は片手で掴み取る。




ドクンッ!!




まるで、地響きの如く不気味な鼓動が、
竜司の全身に走った。





「取り込み中にすまない。
少し話を聞かせてもらえるだろうか?」

と、雪音が千代恵に声をかける。

涙を流しながら、
雪音の方へと顔を上げる千代恵。

その表情が、悲しみのそれから、
目を見開いた、驚愕と恐怖へと変わった時、

雪音は背後から発せられる、
背筋が凍るような殺気に気がついた。

!!!

考えるよりも先に、身体が反応する。

振り向きざまに腰の刀を抜き、
感じるまま、己に迫る悪意を薙ぎ払う。


「おっと!」

そこで目にしたのは、
薙刀を振りかぶったまま、
後方へと飛び退る竜司の姿。

薄ら笑いながら、雪音に言う。

「ふふふ、惜しかったな。
背後からの一振りで決めてやろうと思ったのに」


雪音が感じた殺気は、
間違いではなかった。


なぜ?
どういうことだ?


そんな疑問と混乱に意識を支配されぬよう、
しっかりと刀を握り直し、
切っ先を相手に向けながら、静かに問う。


「…お前、どういうつもりだ?」

「ははは、いい表情だな。
信頼していた者に裏切られた、
戸惑いと悲しみの顔、といったところか?」

「どういうつもりだ、と聞いている」

「どういうつもりだと?
決まっているだろう、お前を殺そうとしたのさ。

本当は背中を斬られ、血に染まりながら、
絶望と困惑の中で
死に絶えるところを見たかったが…

嬲りながら…ああ、そうだ、
その強気な顔が泣き顔に変わるのを見るのも、
楽しそうだなぁ」

薙刀を手で弄びながら、
ニヤつく竜司を見た雪音。

そして感じる、『違和感』と『既視感』


そんな長い時を共にしてきた訳ではないのだ。

だから、竜司がどんな立ち居振る舞いをする者か
そんなことは、細かく覚えてはいない。

しかし、武に生きる者として、
こと『戦い』に関しては別である。

己の武器を手に立つ、今の竜司の姿。

立ち方、足の開き、薙刀の持ち方。

それらは、
雪音が今まで見てきたものとは別人のものだ。

それに、あれは…


いつの間にか、竜司の背中にはためく、
『大ふへん者』の文字。


それを掲げる竜司の顔つきに、
誰かの面影が重なる。


いつも、屈託のない笑顔を見せる竜司だ。
あんな不気味で不快な笑い方をしたことはない。

別の人間の笑顔だ。

…さっきまで見ていた、
あの男の笑い顔だ…

眼前の竜司から目を離すことが出来ず、
気配のみ背後を探る。

そう。

そこに倒れているはずの、
四里滅裂斎の笑い顔にそっくりなのだ。


疑問と戸惑い、
狂気と悪意が支配する場。

竜司と対峙する雪音の視界を、
小さく白いものが横切った。

一つ、二つ、
風に舞うそれは、だんだんと数を増やしていく。

こな雪舞い散る越中の地。

戦いは、未だ終わってはいなかった。



そして、この男も…


「…ん、あ?」

小さく呻いた後、
竜司は薄く目を開く。

真っ暗な空間。

いや、
なんだろう?

赤黒い、そんな形容が相応しい光が、
ぼんやりと灯っている。


不思議な感覚だ。

自分が立っているのか、横になっているのか、
それすらも判断できない、妙な浮遊感。

何の音も聞こえず、何の匂いもしない。

「くっ?これは、一体…?!」

そして、目と口以外、
指先一本すら動かすことが出来ないのだ。


噛みしめる歯にのみ、力がこもる。


「くそっ!!どうなってやがる!」

自分の意思を伝えられない身体に
悪態をついた竜司へ、


「お目覚めか?」


と、何処からか男の声がかけられた。

「誰だ!!」

「ふっ、まあ、そう怒鳴るな」

怒鳴る竜司の眼前に、
含み笑いを聞かせながら、
一人の男の姿が浮かび上がった。


見覚えのない男。

だが、見覚えのあるものが二つ。

顔に描かれたくまどり。

背中に差された『大ふへん者』の旗印。


ああ、そして、もう一つ。

くまどりの顔に張り付けられた、
不気味で不快な笑い方。


「…お前は、誰だ?」

竜司の問いに、男が答える。


どこか予感をしていたその名前を。


「俺か?俺の名前は四里滅裂斎。
その名を天下に轟かせる傾奇者よ」


〜続く〜
次回「大ふへん者 九」
憑依の旗印



☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。















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大ふへん者 七 「仇討ちの行方」

2019-01-08 18:56:48 | 親愛なる皆様へ
《仇討ちの行方》

「おらおら、どうした、どうした?!」

滅裂斎の凶刃が嵐のように、
竜司へと襲いかかる。

強気の口調、態度は伊達ではなかった。

打ちこまれる斬撃は、
隙あれば竜司の喉元を、急所を食い破らんと、
あらゆる角度から攻めてくる。

反撃に移ろうにも、

「…!!」

好機とみた隙こそが、相手の罠。

逆に一歩押し込まれるという攻防が続いていた。


見届け人として、
二人の戦いを見つめる雪音。


必死に表に出さぬようにしているが、
その両の拳は、爪が食い込まんばかりに、
強く握りしめられている。


見定めた二人の実力。

いつもより、竜司の動きが少し鈍く思える。

だが、それを差し引いても、
雪音は、わずかだが、
滅裂斎の方を上と感じていた。


軽口を叩きながらの連撃。

だが、その言葉さえも、
竜司の精神へ向けられた刃の一つだ。


正直、このままでは…


そんな不安が頭をもたげる。


見届け人などという立場でなければ、
あの鞠男との戦いのように、
助太刀にも入れようが、
今はそうもいかない。

それに、自分を任命した男のためにも。

そうだ、しっかりと見届けなくてはいけない。

雪音は、視線をそらさぬまま、
ふぅ、と一息吐き呟いた。

「見届けるから…
骨なんか拾わせるな、ばかもんが」







はぁ、はぁ、はぁ…

息を切らせて、坂道を登る。

この丘の頂が目的地。

前方の視界には随分と前から、
巨木の上部が見えている。

まもなく、
その根元にたどり着くだろう。


気が焦る。

少し前から聞こえてくる剣戟の音。

聞き覚えのある男性の声。



山賊町の茶屋で出会った傾奇者に、
『仇討ち』を頼んで数日。

本当に、それで良かったのか?

そんな疑問が頭から離れなかった。

それで良かったのか?

それが正しかったのか?

そして、

それが自分の望むものなのか?


最後の問いが浮かんだ時、
はっきりとした答えが見えた。

違う、私は…
私は『そんなことを望んでいない』!


ふらつきながら、丘の頂にたどり着くと、
千代恵の目に、その光景が飛び込んできた。


二人の男が戦っている。

一人は自分が仇討ちを頼んだ傾奇者。

そして、もう一人は…

千代恵の悲痛な叫び声が響く。

「誠一郎さまぁっ!!」








油断をしていた訳ではなかった。

しかし、
これほどの技量を持った者だとは思わなかった。

滅裂斎の剣を受けながら、
竜司は心の中で歯噛みする。

防戦一方の状況に対してだけではない。


なぜ、こんな剣を持ちながら、と。


滅裂斎の剣は、
速さ、威力を兼ね備えた強き剣だった。

それだけではない。

力任せに振るうではなく、
その根本に、しっかりと基礎が活きる、
誠実、かつ真っ直ぐな剣だ。

戸惑い。

なぜ、こんな剣を持つ者が、
か弱き町娘の千代恵に手を出し、
その大切な人を奪うような真似をしたのか?


そして、複雑な想い。

これほどのものを持っているからこそ、
人道外れる蛮行へと及んだのだろうか?


戦いの中、
そんな想いが竜司の動きを阻害する。

かろうじて、
滅裂斎の太刀を受け止める中、
竜司の耳に誰かの叫び声が届いた。

剣の動きに夢中になり、
それが誰のものなのか、
何と叫んでいるのかわからなかったが、
たしかに、聞こえたのだ。



その時、眼前の滅裂斎の動きに変化を見た。

不敵な笑みが張り付いていた表情にも、
驚きか、戸惑いか、何とも説明しがたい、
別のものがあらわれている。

何より、
ほんの少しだが、剣の軌道、身体の動きにも、
ブレが生まれている。

刹那、そして微細な変化。

だが、竜司が反撃の一手を打つのには、
十分すぎるほどの『隙』であった。


「うおおぉっ!!」

薙刀の柄で、滅裂斎の刃を受けると、
得物を回転させて、それを受け流す。

思いがけない方向へ、
太刀を流された滅裂斎の身体が泳いだところに、
柄に掌底を添え、
思い切り脇腹へと打ち込んだ。

ミシリ、と肋骨の軋む音が手に伝わる。

「ごはっ?!」

竜司の一撃を受け、
滅裂斎は目を大きく見開き、
手にした太刀をとり落す。

地に落ちた武器を追うように、
滅裂斎の身体もまた、
地面へと崩れ落ちていった。


パサッ!

背中に差されていた、
『大ふへん者』の旗印が、
倒れた勢いで身体から離れ、
生地に泥をつける。

風にはためくそれを、
竜司は肩で息をしながら、
チラリと見やった。


あの一瞬、
何が聞こえてきたのか。

なぜ、滅裂斎の動きに乱れが生じたのか。


それを理解することはできなかったが、
この戦いが、仇討ちが終わったのだと、
それだけを竜司は思い、
その場に立ち尽くしていたのだった。


〜続く〜
次回「大ふへん者 八」
終わらぬ戦い


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。










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大ふへん者 六 「刃、合わせて」

2019-01-05 09:48:36 | 親愛なる皆様へ
《刃、合わせて》

あくる朝。

日が昇って、まだ間もない頃に、
例の巨木へと赴いた竜司と雪音。

二人は、
そこで思いがけないものを目にし、驚いた。


「ふっ、待ちくたびれたぞ」

仇討ちの相手である四里滅裂斎が、
すでに立会い場所に来ていたからである。


不敵な笑みの滅裂斎に、
竜司が首をかしげる素振りを見せながら言う。


「随分と、お早い到着だな。
そんなに楽しみにしてたのか?」

「ああ、その通りさ。言っただろう?
『勝つ』のは俺の方だと」

「言ってくれる。
あとで、ほえ面書くんじゃねえぞ」

「ふん…ところで、
そこの女も一緒にやるのか?」


滅裂斎が、顎で雪音をさしながら尋ねた。

雪音が答えて言う。


「私は、この仇討ちの見届け人だ」

「へへっ、そんなもん抱きながら、
大丈夫なのか?」


滅裂斎が言うのは、
雪音の胸に抱かれたヤマドリのことだ。

元気を取り戻してきた様なので、
野に放してやるため一緒に連れてきたのである。


「…やれやれ、私が共に戦うか警戒したり、
この子にいちゃもんをつけたり、
忙しいことだな。

お前の相手は、この男ひとりだが、
あまり舐めない方がいいぞ」


雪音は呆れたようにため息をついて、
滅裂斎を睨みつける。


「この傾奇者、何考えているかよくわからないし、どうにもつかみどころはないわ、フラフラといい加減だわ、いらつくことも多々あるが、
とりあえず腕は立つからな」

と、褒めているのか、貶しているのか、
微妙な言い回しに、隣の竜司が苦笑した。



「逃げ出さずにきたことは褒めてやるさ。

さあ、始めようぜ。

山賊町、千代恵の想い人の仇、
この傾奇者、野神竜司がとらせてもらう!」


手にした薙刀をクルリとまわすと、
竜司はその矛先を滅裂斎へと向けた。

口上と同じく、
武士が己の刃を相手に向けることは、
その者に対して勝負を挑む意思表示だ。


相変わらず、不敵な笑みを見せながら、
滅裂斎も腰の刀を、ゆっくりと抜いた。

その切っ先を竜司へと差しながら、
滅裂斎が言う。

「ふっふっ、あんな女の頼みを聞いて、
ここまでくるとは、御苦労なことだ。

だが、『勝つ』のは、
この至高の傾奇者、滅裂斎だ」


両者の刃に朝陽が光を与える。

二つの輝きを見比べながら、
雪音は屈んでヤマドリを地に下ろすと、
スッと立ち上がり、その場を離れた。

竜司と滅裂斎、
二人と等しく距離を取る位置に移動し、


「この仇討ち、
森雪音が見届けさせていただく。
双方、異議はないな?」

武器を構える彼らへと声をかけた。


「ああ、もちろんだ」

「ほう、雪音というのか?
可愛らしい名じゃないか。
こいつの後はあんたに相手をしてもらおう。

可愛がってやるぜ。たっぷりと、な」

いやらしい視線で、
雪音を舐めるように見定める滅裂斎。


「…馬鹿なことを…」

竜司はため息を一つつくと、

「…言ってんじゃねぇ!!」

怒鳴り声とともに、
薙刀を振り上げ、滅裂斎へと突っ込んでいく。

「おりゃああっ!」

空を切り裂き、竜司の刃が迫る。

怒りの咆哮。

力強い攻撃であるが、
全てが真っ直ぐすぎる。

頭上から振り下ろされたそれを、
滅裂斎は、身体をわずかにずらして、
悠々と躱した。


ズン、と重い音を立てて、
薙刀が地へとめり込む。

「はぁっ!」

大きく晒された竜司の隙に、
今度は滅裂斎の横薙ぎの太刀が振るわれた。

胴へ刃が届こうとする瞬間、

ギィイン!!

と、金属音が響き、
その攻撃が止められる。

竜司は咄嗟に薙刀をおこし、
刀身ではなく、その柄で刃を受けていた。

斬りはらう滅裂斎の力と、
受け止める竜司の力がぶつかり合い、
ギリギリと音が立てられる。


「…鉄ごしらえの薙刀か?随分と豪気な。
大したものだ」

「お前に褒められても、ちっとも嬉しかねえよ」

「ふふふ、その力、手にしてみたいものだが、
これならどうだ?!」


滅裂斎は一瞬、後方へ飛び退ると、
刹那、地を蹴り、竜司へと迫った。

先ほどの一閃よりも疾く鋭い一撃、
いや、滅裂斎の剣撃は一度で止まらず、
二の太刀、三の太刀と繰り出される。

力よりも、速さ。

右、そして左、
または上下から迫る攻撃を、
竜司は薙刀でいなしていく。


不気味な笑みの滅裂斎に対し、
受ける竜司は厳しい表情だ。



…強い


真剣な眼差しを、闘いに向ける雪音。
互いの力量を見定めていく。

竜司の力は、短期間であるが、
側にいるうちに、

まあ、知りたくなくても知っているが…

雪音の思惑の中、
滅裂斎の武により、驚きが広がる。


伊達や酔狂で、
喧嘩をふっかけているのかと思っていたが、
『ここまで生き残っている』
ということは、


「…それなりの力があってこそ、か」

雪音が小さく呟いた。


「ほらほら、どうした?
守ってばかりでは、つまらんだろう?」


反撃の隙を見せないほどの連撃に、
竜司は防戦一方である。

かすめる切っ先が、
竜司の衣服、装備を削っていく。

致命傷を受けずにいるのは、
竜司の能力の高さゆえだが、
このままでは、勝つことはできない。

どうする…?


武技を身体に任せ、
竜司は思案を巡らせる。

勝ちへの道筋を見つけるために。



「おお、見えてきましたね。
あれが富山ですか?」

「ええ、そうよ。
…久しぶりに来るわね」

街道を歩く、
私、八雲と、一緒に旅をしている色葉の会話だ。


「雪音と竜司も、
目的地に着きましたかね?」

「うーん、そうね…
あそこからなら昨日のうちに着いているはずよ」

「さすが土地勘のある方は違いますね」

「ふふ、当然よ」

私の言葉に、
色葉は御満悦の様子だ。

「そういえば、昨日会った娘さん。
あの人も巨木を探していましたが、
たどり着けましたかね」

私は、ふと昨日の出来事を思い出して、
色葉にそう尋ねた。


昨日、二人で歩いているところに、
旅の途中だという娘が一人近づいてきて、

『この地に大きな木があると聞いているのですが、こちらの方向でよろしいのでしょうか?』

と、声をかけられた。

色葉がにこやかに対応して、
詳しい道順まで教えていたのだが、

「あんな普通の娘さん、
無事に着けましたかね?」

「んー?なぁに?
結構可愛らしい子だったから、気になる?」

からかうように、私の顔を覗き込む色葉に、
私は呆れた様子を見せて即答する。

「何を言っているんですか、違いますよ」

「冗談よ。
あそこからだと、うまくいけば今頃到着かな」

「そうですか。
竜司たちの目的地も巨木の場所でしたし…
なんです?
観光の場所にでもなっているんですか?」

「どうだろ?最近のことは、よく知らないけど、
ほんとに大きな木でね。
待ち合わせとか、目印とかにする時があるの」

「ほほう…まさか、
彼女も仇討ちのためとかは無いですかね」


思いついたことを、冗談として口にしてみる。

そんなにホイホイと
仇討ち目的の方がいては大変だ。

あり得る話ではない。

「まっさかぁ。
そんなにホイホイと
仇討ちする人がいるもんですか」

色葉の口から、
考えていたことと同じような言葉が。


「ですよね」

「そうよ」

「そんなに仇討ちがあったら」

「大変よ?そんなにあったら」


しばし、無言で歩く私たち。

やがて同時にぴたりと足を止めた。

そして、顔を見合わせる。


「「…まさか」」


〜続く〜
次回「大ふへん者 七」
仇討ちの行方


☆この物語は、架空のお伽話です。
作中にて語られることは、実際の人物、伝承、
システム、設定等とは一切関係ありません。








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