必然的なヒストリー

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【篤姫レビュー】ふたつの遺言

2008-07-13 21:41:33 | 大河ドラマレビュー《篤姫》

将軍、徳川家定薨去-
大老・井伊直弼の専横が目立つ中、遂に巨星・島津斉彬が満を持して最新式軍隊を引き連れて上洛を決意!
が、その斉彬にも暗い影が・・・


と言うような感じで、今回の予告の煽り文をつくってみました。

で、本題。
井伊直弼が大老に就任するに当たり、慶福の次期将軍就任が最早決定したも同然の前回。
家定は井伊直弼に篤姫を慶福の『後見職』に就ける様に提案。勿論ながら、この提案は却下。御台所といえども表面的に女性に職を与えるのはまだ無理な時代でした。
その後、彼は倒れます。
囲碁の石を見つめる家定がとても哀れです。
その報は大奥ではまず本寿院に伝えられます。彼女は篤姫には、その事を伝えぬように御殿医に命じます。
ここでのキーパーソンは徳井優。某引越センターのCMのイメージをまだ引き摺っている徳井さん。篤姫には家定に「障りなく」と伝えます。
が、篤姫は既に「家定が只ならぬ容態になっている事」を察していたのでしょう。
家定が涙する、まさにその時に姫もまた涙するのでした。

家定の病状悪化を待ったかのように井伊直弼は「修好通商条約」を締結。朝廷の許しを得ずに締結した国家反逆罪を老中・堀田に擦り付け罷免させます。
老中・堀田正睦。家光に仕え、家光に殉じた男・堀田正盛の子孫。名君・家光にその能力を見出された男の子孫は、家光の祖父・家康に能力を見出された男の子孫によって徳川幕府から追放されたのでした。
この後、堀田正睦は名誉挽回する機会がなく、1864年に無念の逝去。享年55。(←もう出番がないことを前提に書いてみました。まだ出番があったらスマン

続いて、慶喜を始めとする一橋派の面々に謹慎・蟄居を命じます。名目は「押しかけ登城の咎」ですが、報復人事といえるでしょう。
そして、出ました!直弼、必殺の呪文「恐れ入り奉ります」。全く心が篭っていません。中村梅雀、悪役が板についてきましたね。

江守が色々と叫んでいましたが、奈良岡さんのナレーションと被った為、何を言っているのか分かりませんでした。残念!

一方、薩摩では。
琉球王子の警護にかこつけて、薩摩の力を井伊に見せ付けるため西洋軍式の兵を整えて上洛を画策します。
しかしながら。
南国の猛暑の下、西洋式の調練を閲覧中に斉彬は倒れます。
もう助かる見込みもなく。
久光に遺言を託し、南の巨星・島津斉彬、昇天。
享年・50。
後に松平慶永は語ります。
「水戸の江守、土佐の山内容堂、佐賀の鍋島閑叟などは遥かに及ばない。実に英雄と称すべき」
欧米列強と対等に渡り合う基礎を築こうとした『英雄』の早すぎる死でした。
江戸で斉彬の死を聞いた篤姫は斉彬から送られた手紙を読みます。
そこには諸侯の英雄ではなく、父としての斉彬として篤姫への“遺言”が書かれていました。
姫は十分に知り尽くした斉彬の親としての情愛を再び噛み締めるのでした。手紙が効果的に使われて純粋に良い演出だと思いました。

そして、不運は続き。
家定薨去の事実を滝山から聞かされます。
30日も前に亡くなっていた家定。
姫の予感は的中していました。
篤姫が駆けつけた時には、もう家定の遺骸は棺の中。
死に目に会えなかった姫の悲しみは推し量る事も出来ません。
琉河的にドラマの演出に「薨去の際の慣習」を採用した事は高評価です。
敢えて家定の臨終シーンを流さない事で、その後の姫の悲しみが際立ったといえるのではないでしょうか。
常識的に考えると看病をしていたはずの奥女中から容態ぐらいは聞かされていそうなものでが・・・。周囲は敵だらけということで脳内補完。ちなみに奥女中の手にも負えなくなると男手で看病をされていたそうです。人生最期の瞬間に自分を枕元に侍っているのはむさ苦しい男ばかり。将軍にとって嬉しいのか、それ

以下はあくまでドラマの設定としての家定評ですが。
病がちであった事、先天的な障害の持ち主であったと伝えられている事、阿部正弘・島津斉彬・江守烈公らの名士の影に隠れてしまった事、これらの要因により世間の評価はイマイチだった13代将軍・家定。
彼が本当は有能で先見性に優れていた事は篤姫だけは知っていました。
家定の均衡の取れた政治感覚、そしてその有能さ。
それは家定と篤姫、2人だけの秘密でした。
家定薨去にあたり、その秘密は篤姫だけのものとなったのでした。


次回、「天璋院」誕生。
家定の遺志を継ぐ決意を新たにした篤姫。
彼女の“第二の人生”が始まります。
それにしても、タイトル的に視聴率が取れそうで何よりです。


6 コメント

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こんばんわ~ (くう)
2008-07-13 22:10:31
>敢えて家定の臨終シーンを流さない事で、その後の姫の悲しみが際立ったといえるのではないでしょうか。

私もそう思います!
安っぽいお涙頂戴にならなくて良かった。
篤姫は、どう慰めたらいいのか解らないほど
悲惨な感じでしたね~。。。(; ;)
でも、予告で怒鳴ってたけど~。。。
ベートーヴェンの交響曲第3番の第二楽章 (がてう)
2008-07-13 22:25:56
史実とはいえ夫と父が同時期に亡くなるなんて、本物の天璋院もさぞや傷心だったでしょうに。
今日はじめて知りましたが、妻が夫の死に立ち会えないとは、えげつない習慣ですねぇ、これも儒教に則ったものなのでしょうか。
兄の臨終に立ち会った島津久光、何か嬉しそうな顔してたぞ、わたくしにはそう見えた(フフフ)
余談ですが久光役の俳優さん、番組が始まった当初はてっきり「北条時宗」の北條顕時役のひとかと思ってました、ああ勘違い(汗)

> 中村梅雀、悪役が板についてきました
井伊直弼はこのあとにしでかす「安政の大獄」などがきっかけで桜田門外で首を取られるのですが、そのシーンはどうなるんでしょう、そんときの梅雀氏の演技が楽しみです。
それにしてもこの条約の尻拭いをさせられることになる人物について調べたら、陸奥宗光は江戸で勉強中、小村壽太郎は3歳の幼子でした。
冴えた演出 (琉河岬)
2008-07-13 23:15:31
くうさん、こんばんは!

家定のラストシーンは具体的に描かれなかったのが、却って印象深かったと思います。
家定の出番が実質、碁石を見つめて姫を渇望するシーンで終了だという事も考えて、余計に悲しみが増幅されました。
文章で書くとウソっぽくなってしまいますが、ドラマを見て何となく泣きそうになったのは、今回が久しぶりです。
葬送行進曲 (琉河岬)
2008-07-13 23:28:18
がてうさん、こんばんは!

>交響曲第3番の第二楽章
粋なタイトルですね~♪
まさに今回にピッタリな曲ですよね!

>これも儒教に則ったものなのでしょうか
ちょっと資料を漁ってみましたが、どのような理由でこのような慣習が生まれたのか、分かりませんでした。ドラマの冒頭部分で解説してくれるととてもありがたいですね~。

>兄の臨終に立ち会った島津久光、何か嬉しそうな顔してたぞ
私も「斉彬の遺言」の名の下に江戸でやりたい放題したがっている久光の野望がうっすらと見えた気がしました。(笑)

>梅雀氏の演技が楽しみです
今よりもっと歌舞伎メイクが濃くなって、台詞回しも歌舞伎臭くなるのではないかと・・。
Unknown (姫だるま)
2008-07-14 11:46:39
家定のセリフに「女性の力」とありましたが、確かにこのドラマに出てくる女性は、篤姫や幾島を始め、強い人が多いです(逆に男性陣は迫力不足の人が山盛)。

篤姫の人生に指針を与えてきたのは母のお幸ですし、「母の愛憎」の回でフクは鬼の母になりました。本寿院も家定の最強の母でした。

これから篤姫は家茂のどんな母親になっていくのでしょうね。
女優の迫力 (琉河岬)
2008-07-15 00:19:03
姫だるまさん、こんばんは!

>確かにこのドラマに出てくる女性は、篤姫や幾島を始め、強い人が多いです
同感です。脚本や演出の後押しもありそうですが、女性陣は芯の通った強い人物として描かれてますよね!
当初懸念していた、宮崎さんの「御台所としての威厳」も出てきたように思えますし、これからも楽しみです。
男性陣はダメンズが多いですね~。辰巳琢郎とか松澤一之とか・・・。迫力があるのは高橋英樹ぐらいじゃないかと・・・。

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