Green Mind

音楽の感想や日記なんかをね

Sandy Hurvitz / Sandy's Album Is Here At Last!

2005年11月10日 | 60~70年代ロック (米)
R. Kellyは気に入った! Chocolate Factory。100sのK-ingの元ネタはこの人だったのか。




ジュディ・シルやローラ・ニーロ系のシンガー。ジャケにザッパが写っていることからも、制作当初はザッパプロデュースでマザーズがバックを務めてリリースするはずだったらしいのですが、その過程でザッパとサンディは対立。んでザッパは「じゃぁ一人でやれ」とキレて後のことをイアン・アンダーウッド他マザーズに任せてしまいます。そして彼女はある日スタジオに行くと「レコーディングは終わったよ」と告げられレコーディングは終了。マザーズはクビになってマザーズ自体もツアーへ。この時彼女は19歳。随分可哀想なことやったもんだね。

という事情もあるので、演奏は簡素。ほとんどがピアノの弾き語りなのですが、どれもこれもほとんどベーシックトラックという感じでこれからあれこれ付け加えることを前提にして録られたようなものばかり。なのにこうも曲が輝いて聞こえるのは見事なものです。ヴォーカルスタイルと作曲の影響はソウルやブルーズを音楽的背景に感じ当時19歳とは思えないほど力強く憂い、そして悲しげな表情が流れています。、そんな声質とほぼピアノでの弾き語りという編成と相俟って全体の雰囲気は暗く重めでライナーの言葉を借りると「神秘的」で「幽玄」です。ずぶずぶとハマっていくこの感じはジュディ・シルを聴いた時と同じで繰り返し聴くうちに宝物になりそうな感じもまた一緒。4曲ほどレコーディング強制終了が無ければ本来目指していたであろうジャズベースのラフな演奏をバックに歌うサンディは迫力があり、M5でのサックスのソロは抑制ゆえの情念の深さが官能さへ繋がっていて失神もののカッコ良さです。このデビュー作以降はエスラ・モホーク(Essra Mohawk)という名で活動してるのですがこっちのほうが有名なのかな?

Todd Rundgren / Runt_The Ballad Of Todd..

2005年08月21日 | 60~70年代ロック (米)
この前、たまたま最近のトッドの映像を見ることが出来たのですが、相変わらずの長髪にエキセントリックな色使いの服を着て、両手を広げてコテコテのソウルを歌う彼の姿に、まだこの変てこアメリカ人は健在だと思いました。

以前このブログでもトッドはこの順番で聞くといいですよ、というのを書いたのですが3番目に位置している理由はこっからが凄いから!とりあえずコレを聞いてからSomething/Anything?、もしくはトッドラングレンの旅へいってらっさい、てな感じの一枚です。音の方はTheが付きそうなくらいシンガーソングライターという一枚で、彼のマルチプレイヤーぶりも、「コードと一緒に動くメロディライン」、バラードの後には割とハードめな曲を配置しほんわかした気分を壊す構成も、ソウルとビートルズ大好きっぷりがボロボロこぼれる見事なポップソングの数々..ということでポップ職人としてのトッドはとりあえずここで一応の完成したという感じです。そして改めて聞いてみるとトッドの声質と発音の仕方、曲の作り方はホントにバラードに合うということを、ほとんどミドルテンポ、ハードな曲に挟まれる様に配置されたM2、M3、M7、M9で思い知らされてます。特に「A Long Time, A Long Way To Go」で泣かせにくるのあの展開は反則でしょー。反対に「Parole」や「Bleeding」はちょっともさってるかなぁと感じましたが、この盤に収録されている以上は魅力に転じてしまうよなぁ。

The Meters / Look-Ka Py Py

2005年07月13日 | 60~70年代ロック (米)
こんなに可愛い子楳図かずおとつのだじろう直系の漫画を書いているなんて!

昨日はザゼンとバインのシングルを予約した。

ひょー、おったまげた。人間じゃねえよ。この絡み具合。グルーヴィー、ファンキー、ねちっこい、そしてジャケから匂い立つアホ臭さと変な爽やかさ。ミニマリズム・ファンクと名付けたくなるほど中毒性の高い音楽。ベースとドラムスの絡み、新鮮な拍の取り方もとりあえず一朝一夕で習得できるもんではないだろうということは何となーく感じるんだけど、この感覚、実は素質だったりするのかと思うと愕然としてくる。あ、そこでここを打つか、バスドラを蹴るかという風に全く予想がつかなくて最初は乗るに乗れずあっち向いたりこっち向いたりで忙しい。けれども何回か聴いているうち「踊れる」感、というより是が非でも「踊りたくなる」感が出てきて出てくる音全てに順応、腰を据えて踊ることが出来るのだ。実際踊る、踊らないは別にしても気がつけば体の一部が動くというのは間違いないはずで、そうなると楽しいことこの上ない音楽だと思うのです。尖ったシンコペの嵐、オルガンのグルーヴィィィなうねり、ギターはペケペケと頼りなさげなフレーズを心地よく弾き、ベースとさりげないユニゾンを繰り広げる。この絡み具合が普通そうでやたらカッコいい。1億回聴いても飽きなそうな傑作。インストってのもいいな。

NRBQ / At Yankee Stadium

2005年07月12日 | 60~70年代ロック (米)
僕は世界に数多く存在するというNRBQ信者という訳ではありませんが(というかまだこれしか聴いてない)、「At Yankee Stadium」信者ではあります。キース・リチャーズに「エレキでウッドの音が出せる」と言われたベーシスト、ジョーイ・スパピナート、セロニアス・モンクを敬愛しカーラ・ブレイバンドでも活動をし、このアルバムでもアヴァンな一面を見せ俺を逝かせたキーボーディスト、テリー・アダムス、今は脱退してしまったけれど時にトリックスターの如くギターを弾く巨漢というかファットマン、アル・アンダーソン、レコードオタクでソロアルバムでは脳内宇宙を作り上げているらしいドラマー、トム・アルドリーノの4人、全粒粉ホーンの2人で制作。再発されると聞いたときはすぐ予約して、発売日前には早起きしてフラゲをして沢山聴いた。体を動かしながら時にデレデレと酔う様に。

一言で言うとちゃきちゃきのロケンロー。下町のかほりが漂う、飾り気はないが洒落っ気はある。こいつらはルックスを見てるだけで何かホンワカしてくるが、そいつらが出す素がボロボロとこぼれ落ちる音の方も最高。世界にある音楽は全部好きだぜ、というノリで続く名曲、名演のオンパレードで緩めのロケンロー、灼熱のロケンロー、SSW風切なめミドルテンポ、全粒粉ホーンを率いてのスウィングジャズ風、パワーポップ、ジャジーなバラードと彼等の音楽的語彙の豊富さ、引き出しの多さを示すように多様な曲調がポンポン出てきて笑みを絶やす暇がない!というような感じになる。音の隙間はあるが、出す音に隙はない。あるようでない。「全シーズン、どんな気分でも屋内外問わず対応可」とは裏ジャケに書いてないが、書いておいてもいいくらいの傑作。

Danny Kortchmar / Kootch

2005年07月03日 | 60~70年代ロック (米)
白人は黒人になれない開き直りが酸っぱく切なく展開。ヘタレ入りながらもファンキー、メロウ、ポップと見事に揃った。よく買ったな中三の俺、偉いぞ、という名盤。

ギター、ヴォーカルはもちろん自分で演奏してるのですが、下手やるとこういう音楽ならなおさら、ヘロヘロになってしまうベース、ドラムも自分で演奏。クラブシーンでの再評価云々、と言われてるようにこの緻密ながら勢いを失わないリズムの組み立て方、そこに乗るスリリングで洒落たアレンジの巧さ。センスと自身から出るグルーヴを信じきって作ったような潔いスッキリさがカッコいい。シンガーソングライターの手触りを見せながら、ソウル、R&Bからの影響が強いメロウで切ない曲に曽我部と同じ香りを感じた(曽我部モードだからね。しょうがない)。この曲調が下手なヴォーカルの魅力をどんどん引き上げ、M6のようなメロトロン(多分)とコーラスがブワーっ、更にはテナーのソロまでとコテコテのバラードの魅力も助けることになる。全9曲32分という短さも最高。夏にこのCDを聞いた覚えはないような気がするけど、夏真っ盛り、聞いたら気持ちいいだろうね。

Chicago / Chicago Transit Authority

2005年06月18日 | 60~70年代ロック (米)
おりゃあね、ベタベタのバラードをかましまくる商業主義バンドの代表格シカゴとなる前の「Chicago Transit Authority」の同名ファーストアルバム程凄いデビュー作を知りません。多少言い過ぎだという事は自分でも分かっていますが、この緊張感、メッセージ性、そして単純に踊れまくるカッコ良さは今の時代でも新鮮に鳴り響くからそんなことも言いたくなります。そしてデビュー作にして二枚組。

ブラスロックなんてもう誰も言わなくなったけど、このホーンセクションはカッコ良すぎ!吹奏楽部に入っている中高生の皆さんは是非コレを聞きましょう。ダイナミックにして丸みも帯びた優しい響きが、ファンキーでブルージーな超テクのバックに乗っかると倒れそうになります。そこにキャベツの千切りする時のような小刻みで鋭く切り込むテリー・キャスのギター。何を隠そう、テリー・キャスは僕の一番最初に好きになったギタリストで常にギタリスト五指に入るほど好きなギタリストの一人でもあるのです。シカゴはホーンも入ったバンド故にそれの迫力に負けない様に、試行錯誤を重ね研究しその結果生まれたのがあの絶妙なサステインをかけた鋭いトーンとウネリ気味のフレーズ。それに1969年に灰野敬二もサーストン・ムーアもびっくりな6分47に及ぶノイズギターのソロをぶちかましてしまう嗅覚の鋭さも評価すべきでしょう。曲も代表曲と名曲がてんこもり。サタデー・イン・ザ・パークも最高にいいけど、若さと実験精神に溢れたファーストも最高ですよ。それにしても演奏上手い。

Judee Sill / Heart Food

2005年05月28日 | 60~70年代ロック (米)
父親が萩原健太さんのホームページで見て買うまで、こんな素晴らしすぎる才能を持ったミュージシャンのことを知らなかったなんて!まぁいつもの様に後悔、と同時にやっぱりまだ知らない音楽は多量に存在しているということを再確認。健太さんの所で紹介されているのはまた別のアルバムだけど、今作は1973年発表のデビューアルバム「Heart Food」。良すぎて感想が書き難いのですが、やはりあの時代の暖かみのあるシンガーソングライター系譜のミュージシャン。と言いたいところなんですが、その枠に収まりきらない才能を持っていることは曲もアレンジもプロデュースも全部自分でやってしまうという所から分かります。曲の良さをに引き立てる色んな感情を自由に支配する刺激的なストリングスのアレンジに驚く。曲もSSW系のしっとりした弾き語り、祝祭を思わすようなストリングスを使った曲、バンドを従えたファンキーな曲とヴァラエティーに富む内容。その中でも飛び抜けて美しいが曲がM2とM9で、M2では「愛、霧の中から昇ってくる」という歌詞に象徴的なように幻想的で言葉通り包み込む温かく綺麗な曲。M8ではライナーに「シルのレクイエム」とあり、イントロであるピアノ、ヴァイブの旋律から今までとは違う種類の美しさを備えていることが分かるのですが、分厚い多重録音のコーラス部分、ヴォーカル部分、バックを受け持ったピアノもただ事はない美しさ。あらゆる形容詞を用意しても追いつかないほど、悲痛ともとれるメロディは狂おしく愛おしい(ここで形容詞使っちゃったけどさ)。歌詞カードの最後にあるSpecial Thanks to Godという言葉がハマりすぎて、ハマりすぎて。けど、最後はストリングスによる行進曲、アイリッシュトラッド風の1分ちょっとのユーモラスな曲で終わらせる。そんなとこにも、アルバムの中でも至る所に優しい力をひしひしと感じる一枚。

才能あふれる女性ミュージシャンが現れると、ローラ・ニーロ風とかジョニ・ミッチェル風とかと使われることが多い現在ですがそこに是非ともジュディ・シルを加えていただきたい。ホントに良いから聞いて、聞いてとちょっとばかし興奮気味。

Crazy Horse / Crazy Horse

2005年05月21日 | 60~70年代ロック (米)
70年代にはこんな激名盤がサラリと出ていたんですよ。1971年発表のファーストアルバム「Crazy Horse」。Crazy Horseというとやっぱりニール・ヤングのバックバンドでの活動の方が有名ですが、こんなにも素晴らしいロックンロールアルバムを出しているんです。ダニー・ウィッテン、ジャック・ニッチェ、ニルス・ロフグレン、ラルフ・モリーナ、ビリー・タルボットの黄金メンバーで制作され、ぶっとくて、土と男の匂いがぷんぷんと漂う名盤。

ルーズで迫力のあるロックンロールナンバーM1で始まり、ニール・ヤング作のM2ではオリジナルよりファンキーで図太い音が聞け、メランコリックなメロディ、カノン風コーラスが聞けるM3、変なサイケエフェクトをかけたロックンロールM4、そして歌詞、メロディともに最高の今作のハイライトと言えるバラードM5。ライ・クーダーの滴り落ちるスライドが聞け、全く無駄がないシンプルな演奏が歌を引き立てます。後にニール・ヤングが「Tonight's The Night」で取り上げるM6もガレージロックと言っていいくらい迫力のある曲、M7は個人的に大好きな爽やかフォークックナンバー。その後にしつこくネチネチと絡みまくるスライドが最高にマディーなM8、シンプルなリフでタン・タン・タンとポップなM9を披露し、西海岸フォークロックを思わせる美コーラスで聞かせるM10、強烈なスライドギターで幕開けするM9もカントリー、スワンプ、ロケンローが幸せな融合を果たしています。

濃くて、暑苦しい、そして楽しいズブズブとはまっていくロックンロール集。タイトで力強い。しかも、「もう話したくない」なんていう稀代のバラードまで残してるんだから、聞かないわけにはいきません。かっこいいよ。

Al Kooper / Naked Songs

2005年04月12日 | 60~70年代ロック (米)
アル・クーパー30年振りのソロ記念レヴュー。

1972年発表の6作目「Naked Songs(赤心の歌)」。このアルバムに刻まれた空気はとても痛く切ない。それはタイトルにもある様にアル・クーパーの「裸」が詰まっているからで、時に圧迫感すらあるほどだけどM1のメッセージはとても優しく響く。どんな時聞いてもこのメッセージは普遍的なものであると思うし、今の時代聞くとやはりそれは更に強まる。どんなに強く振る舞っていても実際人間なんて弱いもんだ、そこを分かってこそ真の強い人間だ、なんてアルが薄笑いをしながら言ってるのを想像してしまった。そんなメッセージが詰まっているから、そういうのを全部吐露してしまっているという意味でも堂々としたアルバムです。そして音の方は、ブルーズ、ソウル、ポップスを洗練された感覚で煮詰めたという感じの音でカッコいい。アルの歌はあんまり巧くないけどやっぱり伝わってくる。それはさっきも言った様に堂々としているから。本職のキーボーディストである才能は随所で聞かせてくれますが、泣きのブルーズギターもM2で聞かせてくれます。M3というクラブでも流行ったらしい名曲、名カバーM6、オーティス・レディング作M8, オルガンがグルーヴィーにうねるM9、ピアノ弾き語りとちょっとしたストリングスによるバラードM10。色々な音楽の要素(特にソウル,ブルーズ)をポップスに昇華させる見事なセンスに脱帽です。その上アル・クーパーという存在まで浮き上がらせてしまうのは容易ではないはず。その才能を30年振りに聞けるというのですからこれは期待するしかないでしょう。

Steely Dan / Countdown To Ecstacy

2005年03月11日 | 60~70年代ロック (米)
今日はSteely Danです。僕は超有名な「Aja」よりも初期の「Can't Buy A Thrill」や今回紹介する1973発表のセカンドアルバム「Countdown To Ecstacy」が好きです。洗練されまくってる「Aja」も結構好きなんですが、ジャジーで変なロックバンド、スティーリー・ダンのファンとしてはやっぱりこの作品が最高傑作になりますね。異形のブルーズロックM1、デニー・ダイアスの浮き立つようなギターソロ、メロディといい初めて聞く人は衝撃必至のダン節全開の曲だ。静かに軽やかにリズムを刻むピアノが印象的なM2、ペダルスティールギターも入るとそこは小川のせせらぎの様な雰囲気になる。曲の入り方が素晴らしいM3は中盤のピアノとギターの掛け合いがカッコいい。こんなのどっかで聞いたことあるなぁと思ったら、ジョー・ジャクソンっぽいんだ。もちろんジョー・ジャクソンが影響を受けたんでしょうが。奇妙なリフ、ユニゾンがクールなM4はポップな歌を持ったジャズロック調な曲で、中盤~後半の熱は凄い。このアルバムのハイライトであるM5。この曲はなんといってもリック・デリンジャーのスライドギターに尽きます。いつになく明るく歌うフェイゲンと管隊がカッコいいM6。ここで聞けるハーモニクスを多用したジェフ・バクスターのソロもカッコいいです。M2の様なゆったりとした西海岸ポップスM7、ファンキーに跳ねるM8では、M1で名ソロを聞かせてくれたダニー・デイアスが最後の最後にまたカッコいいソロを弾いてくれ、ホクホク顔で終幕は間違いなし。

全体的にフェイドアウトしていく曲が多いのは残念ですが、余韻を残すという意味では結果的に効果抜群だったということで良しとしましょう。相変わらずゲストの使い方が巧く、ギターソロの名演の多さといったら。ギター弾きは必聴かな?