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ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

タンノイRHRの客

2009年09月06日 | 巡礼者の記帳
横浜から初秋の奥の細道に分け入って、芭蕉の句で有名な『山寺』を周遊されたM氏とその友人は、やがてROYCEに到着すると、ゆっくりソファに寛いでいる。
五年ほどまえにもお見えになったので、あの明晰なバックロードのタンノイRHRによってジャズを楽しまれていることを、当方は思い出した。
あのころロイヤルは壁の長手方向に置かれて、現在と違う音で浮世を遊泳していたが、スピーカーは、古典的なオールバックと七三の髪型のように、またはミニとロングドレスのように印象の変わる音像が、意外にアンプと違う変化をみせて聴きものである。
その音の違いを興味深く聴いているM氏の、ジャズに対してかいまみせる造詣の深さとプロモーターと見まがう顔の広さを尋常でないとひそかにあやしんでいた当方であるが、数多くのライブ演奏に足を運び、仕事場から直接会場にのりこむ時には、途中のレコード店でジャケを購入し(家にもあるのだが)楽屋で面会してサインをいただいている、たとえばそういう人であった。
タンノイでジャズを聴くM氏について、当方、自分のことはさておいて、どこか半信半疑のおももちで接していたので、このさい単刀直入に問うてみた。
「ふむ、そのことなら、わたしは初めは徹底的にクラシックを聴いていたのです。あるときからジャズにはまり、ジャズにふさわしいタンノイはどれか、オーディオ店とも相談して『RHR』を選んだのですが、あのでかいずう体の箱を運送屋さんが持ち込んだときには、うっかりカミさんに伝えていなかったので、大騒ぎでした。
しかし、このロイヤルを聴けば、フロント・ホーンの重要な効果が理解できましたので、考えが変わりました。それとラファロのベースがこのように聴けるのであれば、845アンプというものが、なにか射程の照準に入って来るような・・・」
ふとM氏はマイルスのことを話題にされて、ぜひ『Kind of Blue』を聴きたいとのことである。エバンスのピアノ、トレーンとアダレイのサクス、マイルスのトランペット、あの立体構造がいかなるデテールで描かれるのか、そのうえ本当にベースとドラムスが合体した楽器のようにのっしのっしと周囲の空気を揺さぶって去っていくのか、タンノイで聴く青墨のジャズをM氏の耳はどのように聴いたのか、やがて時は過ぎ陽の影は長くなった。
ひとときを楽しんだジャズの人達は、リップ・サービスも演奏のうちに、これまで聴いたどのヴィレッジ・ヴァンガードよりも、自分の理想で鳴っていると申されて、涼しく去っていった。






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