Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

【LBFF_2013】『ブランカニエベス』 (2012) / スペイン・フランス

2013-10-12 | 洋画(は行)


原題: Blancanieves
監督: パブロ・ベルヘル
出演: マリベル・ベルドゥ、ダニエル・ヒメネス・カチョ、アンヘラ・モリーナ

第10回ラテンビート映画祭 公式サイトはこちら。

映画『ブランカニエベス』 公式サイトはこちら。(2013年12月より新宿武蔵野館ほかにて日本公開)


人気闘牛士の娘カルメン。彼女が生まれると同時に母は亡くなり、父は意地悪な継母と再婚。カルメンは邪悪な継母に虐げられる幼少を過ごす。ある日、継母の策略で命を奪われかけた彼女は、“こびと闘牛士団”の小人たちに救われ、「白雪姫(ブランカニエベス)」という名で彼らとともに見世物巡業の旅に出る。そんな中、女性闘牛士として頭角を現したカルメンは、行く先々で圧倒的な人気を得るようになるのだが…。
2013年ゴヤ賞作品賞・主演女優賞等最多10部門受賞したほか、世界の主要映画賞を50部門以上受賞した傑作ダーク・ファンタジー。衣装デザイン賞受賞のパコ・デルガドは『レ・ミゼラブル』の衣装も手掛けたスペイン屈指のデザイナーである。
(LBFF2013 公式サイトより)


もうこれを先行でご覧になった方もちらほらTwitterのTL上に散見されて、評判もよく結構期待してました。
やっぱりスペイン映画には自分的に期待する部分が多いんですよね。



(以下所々ネタばれあります。読む方は自己責任で)






冒頭からモノクロームの無声映画、しかも舞台は1920年代。闘牛にフラメンコ、ここまででますます期待値がUPしてしまう。
白雪姫をベースにしているだけに、悲劇のヒロインの虐げられっぷりもいじらしく、そして出会うべくして出会う魔女の底意地の悪さも徹底的。カルメンにもアントニオにも何の落ち度もないのに、裕福で恵まれているからというだけで一方的に恨まれてしまうのもまた運命なのか。

生まれて以来続くカルメンシータの苦渋の日々、そこにわずかながらも入って来る飛び切り明るいフラメンコのシーンが、彼女に流れている正統の血筋を物語っている。世知辛い世を照らす一輪の真紅の薔薇のような存在だった亡き母カルメン、その亡き母カルメンに血を吹き込んだと思しき祖母もまた華麗なフラメンコで若き日を偲ばせ、孫のカルメンシータも幼いながらその片鱗を見せる。フラメンコとは人間の生身の感情をダイレクトに表す舞踊、3人の女たちのひたむきな踊りの中に、彼女たちが送って来た人生の無念と、少しの喜びやきらめきを感じさせる。この物悲しさを引き立てる役割をしているのが、バックに流れるパルマのリズム。ここまで来るともう、完璧なまでの物語の運び方。

ここまでに血とか血筋という言葉を多く使ってしまったけど、本作には随所に「赤」を連想させる場面が出てくる。
例えば闘牛士のマント、闘牛士やカルメンに投げられる一輪の薔薇、流れ出る血液、フラメンコの衣装、真紅の唇。
情熱の色であると共に、時として制御の効かない例えにも使われる赤。これらは容易に映像から推測はされるものの、モノクロームであるがために、決してスクリーンで色が見えることはない。むしろ色を見せないことで赤という色の持つパワーと魔力を感じさせている。このあたり、邦画だが『海と毒薬』を思い出した。あれもモノクロの作品なれど十分に血の恐ろしさが伝わってきた作品だった。
色が見えない、そして無声映画なので声も聞こえない、これらは全てカルメンが望むように生きられないことと関連している。どんなに叫んでも訴えても、父母から受け継いだ血筋を持ってしても叶わない人生。真紅の呪いに縛られたカルメンは、望まずして転がり込んだ白雪姫として生まれ変わりたかったのかも知れないが、一度赤く染まった人生を白く塗り替えることは容易ならざることだから。

カルメンと相対する継母(=魔女)のマリベル・ベルドゥもまた、ブランカニエベスの「白」に対しての「黒」を見事に演じている。この世にこれ以上の意地悪はないんじゃないかと思わせるのはさすが。
「こびと闘牛士団」の面々も実際に低身長の俳優が起用されており、そして王子様にもちゃんとその役割にふさわしい俳優が起用されているところも、ダークファンタジーなのに細かい所の辻褄をきっちりと合わせてきた節が窺える。王子様かと思いきや・・・というところも、本作が一筋縄ではいかない伏線となっていて素晴らしい。あるいは勘のいい人ならば、カルメンの母が闘牛場で「ある物」を取り損ねた所からもうそれを感じているのだろう。

モノクロームの無声映画といえば、最近では何と言っても『アーティスト』なのだけど、あちらが明るくテンポのある作品なのに対して本作はどこまでもダークファンタジー。それでいて両者とも無声映画へのリスペクトを忘れてはいない。しかしながら全ての映画が同じような結末を迎えることはなく、そして既存の白雪姫のステレオタイプに縛られないといけない規則もなく、逆転の発想で新しくダークな「ブランカニエベス」を生み出した手腕には脱帽させられる。スペイン映画独特の、人生観への恨み節はここでも見事に花開いた感がある。


★★★★★ 5/5点






『映画』 ジャンルのランキング
Comments (12)   Trackbacks (10)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【LBFF_2013】『ダヤニ・クリ... | TOP | 【LBFF_2013】『エリ』 (2013... »
最近の画像もっと見る

12 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (とらねこ)
2013-10-16 23:04:43
おお、気合が入ってますね!
roseさんもだいぶ気に入られたみたいですね~。
モノクロなのに赤を感じる、私も同感で全く同じことを書きましたよ。
『海と毒薬』もそうと聞いて気になります。私あれ小説しか読んでないので。今度機会があったら見てみようかな。
Unknown (mig)
2013-10-20 09:56:52
これ、試写お誘いあったのだけど行けなくて
でも楽しみな1本
Roseさん、評価高いねー!
公開までまとうっと。
とらねこさん (rose_chocolat)
2013-10-26 20:01:57
気合い入れましたー!
だってすごいよかったもんね~。
あの終わり方がよいのですよ。

モノクロなのに血の赤の気味悪さを感じさせるのはさすがですよ。『海と毒薬』もそう。
この雰囲気が出せるからこその、話の不安定さというか、そこがよかったのです。
migちゃん (rose_chocolat)
2013-10-26 20:02:28
そうですー! これ、おすすめ。
きっとmigちゃん気に入ると思うよ。
感想聞かせてねー
こんばんは (ノラネコ)
2013-12-06 22:57:07
これは「かぐや姫」もそうなんですけど、誰もが知ってる物語でも、切り口を変えただけでこれだけ斬新なものが出来るという証明の様な作品ですね。
それは同時にモノクロ無声映画という手法にも言えて、別にカラートーキーより劣るものではなく、作り方によってはこれでしかありえない映画もあるのだという事も雄弁に伝えてくれました。
大変な意欲作ですね。
ノラネコさん (rose_chocolat)
2013-12-07 09:53:20
>誰もが知ってる物語でも、切り口を変えただけでこれだけ斬新なものが出来る
斬新でしたねえ。しかも途中から古典じゃなくなってる。
現実世界なんですよね。そこがもうたまらなくよかった。

>作り方によってはこれでしかありえない映画もあるのだと
オリジナルが古典ものなので、余計にそう感じますよね。モノクロ無声がどんぴしゃ来てました。
こんばんは。 (えい)
2014-01-03 21:57:24
なるほど。
「赤」ですか…。
モノクロ映画の中にその“色”を見たrose_chocolatさんの
審美眼に感服です。
えいさん (rose_chocolat)
2014-01-04 22:03:38
上のとらねこさんへの返信にもあるのですが、
「モノクロームに赤」といえば『海と毒薬』を思い出したんですよね。
あの強烈な赤。どんなにか凄みがあったことでしょう。もちろん本作もですが。
こんばんは (オリーブリー)
2014-01-13 18:50:35
終了間際に滑り込めました。
確かに、白黒の奥行きや広がりを感じる作品でした。
隠れ「赤」も納得です!!
roseさんのベストに背中を押され、おかげさまで楽しめました♪
オリーブリーさん (rose_chocolat)
2014-01-15 09:55:50
これ、あっさりと終了しそうですごい残念なんですよね。
いい作品なのになあ。

劇場でご覧になれたとのことで、よかったですね。
赤はよかったでしょう~? 
あれが凄みの秘密なんでしょうね。
あぁぁ (sakurai)
2014-03-22 17:12:42
やっぱり感じられてたんだ!!
roseさんの高評価に、結構な期待度を持って臨んだんですが、素晴らしかったです。
なにもかも、きっちりと作りこまれてて、見事な表現でした。
でもって、役者の面々の説得力のある存在感!!
いやーーー、素晴らしかったです。
私は、勝手にハッピーエンドにしてしまってましたわ。
sakuraiさん (rose_chocolat)
2014-03-24 10:12:25
ああ~、よかったです。
思ったよりも普通という方も結構いらしたんで・・・。

>なにもかも、きっちりと作りこまれてて、見事な表現でした。
>でもって、役者の面々の説得力のある存在感!!
まさにまさにその通りです。
どの場面にも手抜きがないというか、ちゃんと計算しているのがすごい。

最後は悲しくもあるけど、あれもハッピーの1つの形なんでしょうね。

post a comment


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

Related Topics

10 Trackbacks

Trackback  Ping-URL
ブランカニエベス・・・・・評価額1700円 (ノラネコの呑んで観るシネマ)
純白のマタドール。 「ブランカニエベス」とは、スペイン語で「白雪姫」の事。 グリム童話をベースに、舞台を二十世紀前半のスペインに移し変え、数奇な運命を辿った美しき女闘牛士の物語として再生させた異色のファンタジーだ。 スペインの伝統文化と誰もが知る童話...
『ブランカニエベス』 (ラムの大通り)
(原題:Blancanieves) ----この『ブランカニエベス』って、 いま話題の作品だよね。 スペイン映画と聞いたけど、 このタイトルってどういう意味? 「スペイン語で『白雪姫』。 観る前までぼくは 映画の一部にその要素が入っているのかなと…。 ところが、これはもうウ...
パブロ・ベルヘル監督・脚本『ブランカ二エベス(Blancanieves)』"白雪姫"+闘牛士+モノクロとサイレント (映画雑記・COLOR of CINEMA)
グリム童話白雪姫+闘牛士+モノクロとサイレントの独創的ミクスチュア作品『ブランカニエベス(Blancanieves)』監督・脚本はパブロ・ベルヘル物語・人気闘牛士の娘カルメンシータ(ソフィア・オリア)
ブランカニエベス (心のままに映画の風景)
1920年代のスペイン。 天才闘牛士アントニオ(ダニエル・ヒメネス・カチョ)は、アクシデントに見舞われ、牛に体を貫かれ瀕死の重傷を負う。 ショックで産気づいた妻は、娘カルメンシータを生むと同時に亡くなってしまった。 祖母(アンヘラ・モリーナ)に育てられ...
ブランカニエベス (迷宮映画館)
切ない思いと、嬉しさと、美しさに、醜さとみんな詰まってた。
白黒サイレントで見せる闘牛士な白雪姫 (笑う社会人の生活)
29日のことですが、映画「ブランカニエベス」を鑑賞しました。 人気闘牛士の娘カルメンシータは継母にひどい目に遭わされながら育てられ、危うく殺されかける 「こびと闘牛士団」の小人たちによって助けられたカルメンシータは女性闘牛士として才能を開花させていくが・....
白黒サイレントで見せる闘牛士な白雪姫 (笑う社会人の生活)
29日のことですが、映画「ブランカニエベス」を鑑賞しました。 人気闘牛士の娘カルメンシータは継母にひどい目に遭わされながら育てられ、危うく殺されかける 「こびと闘牛士団」の小人たちによって助けられたカルメンシータは女性闘牛士として才能を開花させていくが・....
ブランカニエベス (いやいやえん)
【概略】 天才闘牛士の娘・カルメンは、邪悪な継母に虐げられて幼少期を過ごす。ある日、継母に命を奪われそうになった彼女は小人たちに救われ、見世物巡業の旅に出る。 ダーク・ファンタジー タイトルの「ブランカニエベス」とはスペイン語で「白雪姫」。そう...
ブランカ二エベス (映画に耽溺)
いやあ~~~別にホラー、ファンタジー好きの友人に勧められたって訳でもないのにDVDパッケージの妖しいオーラにやられて手にとったのが運の尽き これ、これ、まさしく「トラウマレベル」の作品だわよ~~~~!!!! 「ブランカ二エベス」はスペイン語で「白雪姫」って...
「ブランカニエベス」 (或る日の出来事)
白雪姫っていう意味か~。