からだの内なる統合を求めて…

ロルフィング施術者日記
by『ロルフィング岡山』
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大腰筋システムで頭を支える(頚長筋)

2009-02-18 | ロルフィング
これまで大腰筋のシステムについて書いてきましたが、今回はその上の首の筋肉、「頚長筋(けいちょうきん)」を取り上げます。

首周辺の組織の緊張には、頭の位置が関与しています。例えば、頭の重心が下部構造の上にうまくのっかっていれば、首はよりリラックスできるでしょう。

首~肩~背中が慢性的に緊張している人には、脊柱の一部を動かないように固定して、そこを足場にして、背中側を縮めて頭を持ち上げている傾向が見られます。ここがリラックスするためには、別のやり方(大腰筋システムによって、脊柱を固めずに地面から頭を支える)が必要です。この時に、大腰筋システムに連動して頭へ動きを伝えるのが頚長筋です。

頚長筋は、胸椎3番から頚椎1番にかけて脊柱の前面を走行する筋肉で、横隔膜をはさんで、大腰筋に連続するような位置関係にあります。(脊柱前面の、横隔膜から頚長筋との間は、筋肉ではなく、筋膜性の組織が覆っています。)





首の脊柱前面にあるこの筋肉が作用すると、下図のように、頚椎の前湾カーブが減少し、後頭部が上に伸びて、顎が引かれます。


  


まず、ここまでに大腰筋システムが活性化していることが前提になりますが、大腰筋と頚長筋を連動させるエクササイズを紹介します。

これらの体の中心の筋肉を活性化させるエクササイズでは、動きを「ゆっくり、小さく、最小限度の力で、感じながら」行うことが重要です。動きをいきなり大きくしてしまうと、目的以外の、より表層の大きな筋肉が介入してきて、深層の筋肉の動きが阻害されがちになるからです。




1)
仰向けに寝て、両膝を立てる。
腹部を緊張させずに、足裏で床を押す(腹部脊柱の前面から脚を押し出すように…)。
無駄な力が入っていなければ、骨盤がロールして(尾骨が天井を向く)、腰椎のカーブが減少します(腰椎が床に押し付けられます)。

2)
この脊柱の動きが頭に伝わると、自然に首の後ろが床に押し付けられ、後頭部でシーツにアイロンをかけるように、わずかに頭頂に向かって伸びるでしょう。
ことさら頭を動かそうと努力せずに、脊柱のわずかな動きが頚椎前面に伝わるのに任せる感じです。

頚長筋が働くと、脊柱に沿って上がってきた力が頭頂部に抜けるような感覚があるでしょう。首の前(気管や食道の後ろ)がシャキっと目覚めます。

また、首周辺に緊張を感じる人では、以下の筋肉群が頑張っている例が多いようです。


  

特に肩や首のこりを訴えてマッサージを求める人は、比較的深層の②と③の筋肉群が緊張している例が多いです。PC作業などの目を使う仕事をする人には、目の緊張と直結している②にコリが見られ、手や腕のだるさや痛みを訴える人は、腕へ行く神経(腕神経叢)の根元にあたる、③がよく硬直しています。

これらの緊張をほぐすためにも、頚長筋の小さな動きが有効です。これらの深層筋を使った動きは、緊張したよろいの内側に動きをもたらします。すると、その表層や関節の反対側に位置する拮抗筋(その動きにブレーキをかける筋肉)が自動的に抑制され、よろいがリラックスするのです。

首の筋肉と下半身の大腰筋システムが連動すると、首の動きが背中の固定点からではなく、足と連続するようになり、地面から頭頂部に抜ける「ライン」(体を支え、推進させる力のベクトル)がよりはっきりしてきます。実際には、首の緊張はその上にのっている頭の構造に左右されるので、ロルフィングの場合は、頚長筋の活性化よりも、頭への施術を先に行っています。

次回は、頭の構造的なバランスについて取り上げます。


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2 コメント

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頚椎椎間板ヘルニアですが (のぶごん)
2015-03-09 00:57:12
左手に痺れが出ていたので、検査した結果、脊柱管狭窄症と頚椎椎間板ヘルニアと診断されています。

>後頭部でシーツにアイロンをかけるように、わずかに頭頂に向かって伸びるでしょう。

 と書かれていますが、この動きは、頚椎椎間板を押し潰す方向に作用するのでしょうか??
 それとも、隙間を伸ばす方向に働くのでしょうか? どっちに働くのかよくわからないので教えていただけますか??
 
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解りやすい解説を有難うございます。 (acupun2)
2016-04-02 03:51:02
 初めまして。
大阪で鍼灸を営みます 小橋 正枝と申します。
 ロルファーさんの筋・筋膜の捉え方、今更ながら、目からウロコです。
 パソコン音痴で一本指打法の為、目障りな事もおありでしょうが、学ばせて下さいませ。
  よろしくどうぞ。
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