からだの内なる統合を求めて…

ロルフィング施術者日記
by『ロルフィング岡山』
http://www.rolfingjoy.com

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動作の方向性とコーディネーション

2010-03-09 | ロルフィング
「腰痛と姿勢」の日記では、同じような姿勢や動作をしているように見えても、その中身は、作動している筋肉が異なっている場合があることを書きました。今回は、これらを別の角度から見てみましょう。


ロルフィングのインストラクターであり、以前、フランスのバレエ教師養成課程の教授をしていた Hubert Godardは、人間の動作の研究を通じて、ロルフィングの動作教育部門の発展に大きく貢献しています。Hubertは2003年の6月に来日し、東京でワークショップを行いましたが、その時に聞いた話を以下に紹介します。

 
   ★   ★   ★   ★   ★


合気道のある流派が、「気の作用」を体験させるデモンストレーションとして、「曲がらない腕」というエクササイズを行っていました。それは、2人1組になって、1人が腕を伸ばして相手の肩の上に置き、もう1人が両手で相手の肘を押えて、その腕を曲げようとするものです。


  


腕を伸ばした側の人は、最初は、相手に腕を曲げられないように「一生懸命頑張って、腕を固めてください」と言われ、そのように頑張ります。そして、どれくらいの力に耐えられるかを体感します。次にその人は、ただリラックスして、「伸ばした指先から、遠くへレーザー光線を照射するように、気が出ていると想像してください」と言われます。すると、以前よりも腕が曲がりにくくなっていることに気づくのです。参加者は、それが気の作用であると説明されるのですが、科学者であったHubertは、体の各部分に筋電計をつけて、筋肉の作用に何が起こっているのかを解明しようとしました。すると体では、とても当たり前な事が起こっていたのです。


下図は、肘の曲げ伸ばしに関与する主な筋肉です。肘を伸ばすための筋肉は「上腕三頭筋」で、肘を曲げるための筋肉は「上腕二頭筋」ですが…





「肘が曲がらないように固くしてください」と言われた時には、肘を伸ばすための「上腕三頭筋」と同時に、肘を曲げるための「上腕二頭筋」も作動していました。





そして…
「指先から遠くの方に気が出ていると想像してください」と言われた時には、肘を曲げるための「上腕二頭筋」が休んでいたのです。





つまり、腕を伸ばす力が強くなったのは、自分で肘を曲げる筋肉が休んだことによるものだったのです(気の作用もあるかもしれませんが…)。これによって、肘が曲がりにくくなるのは当たり前のことでした。これに対して、頑張って腕をカチカチに固めることは、相手に対抗する力が強くなると勘違いしていただけで、実際には、エネルギーを消費する半面、力は半減していたのです。これは、最大限の力を発揮するためには、単に個々の筋力だけではなく、「全体としてそれらがどう作動するか」がとても重要だということを示しています。それは、「動作のコーディネーション」と呼ばれます。つまり「最適な動作」は、「最適な筋肉の組み合わせ」が、「最適のタイミング」で、「最適の量だけ」作動した時に生まれるのですが、文字通り、全力で頑張ってしまうと、体はただこわばってしまうのです。


   ★   ★   ★   ★   ★
 

上記の例から、最適なコーディネーションのためには、動作の方向性=ベクトルが重要であることがわかります。腕を伸ばすという、動作の方向性がより明確なイメージを持った場合に、適切なコーディネーションが引き出されましたが、反対に、動作の方向性が混乱するようなイメージによって、目的の動作にはブレーキがかりました。ベクトルの方向性とスピードをいかに操作しているか、という観点から人の動作を観察すると、また新たな気づきが得られます。


たとえば、現在の100m走の世界記録保持者のUsain Bolt選手を見ていると、全身から放射されるベクトルの明確さと大きさを感じます。You Tubeで、彼が9秒58の世界記録を樹立した時の映像を見ることができますが、スタートの直前でも、走る方向のベクトルを大きくはっきりイメージするようなしぐさをしていて、とても興味深く思います。 ⇒ Usain Bolt の 100m世界新記録(動画)


   


今まで、大腰筋のシステムを活性化するためには、胴体内部の空間(コア)を拡大するように動く必要があることを書いてきましたが、その際には、「より遠くへ伸びる」イメージが大切でした。上記のエクササイズでも、「頑張って腕を固める」時には、上腕二頭筋だけではなく、コアも縮んでいたことでしょう。おそらく、「身体を固めて外からの衝撃に耐える場合」以外は、外に向けて力を発揮しようとするすべての動作に際して、コアが縮んでしまうことは逆効果でしょう。「開き直る」という表現がありますが、困難な状況でも縮むのではなく「周囲の空間に対して開くこと」=「身体内部内から外の空間へ向けて動くこと」が、力を発揮するためのカギであると思います。そこで次回は、身体の内側から動くことについて、「内臓感覚」の側面から書こうと思います。
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「傷あと」を癒す ・ モニター募集!

2010-03-01 | ロルフィング
先日、コロラドのボルダーで行われたワークショップに参加し、Scar Tissue(瘢痕組織)へのテクニックを教わってきました。


このテクニックは、40年以上のロルフィングのキャリアを持つ、シアトル在住のSharon Wheeler-Hancoffのオリジナルです。1960年代後半に、カリフォルニアのエサレン研究所のマッサージ・スタッフだったSharonは、ロルフィングの創始者アイダ・ロルフから、「芸術的な実験」として、生徒の中では例外的なやり方でトレーニングを受けました。それは、ロルフ博士がロルフィングを見出した過程と同じように、専門的な予備知識や理論を介さずに、実際の体に起きていることを注意深く観察することによって、「どこからはじめて、次にどこに施術したらよいか」などを体得していくというものでした。Scar Tissue(瘢痕組織)へのテクニックは、Sharonが1973年に、交通事故によって大腿部に大きな傷あとを負った女性へロルフィングを行う中で、偶然発見されたものです。


実際の施術は、とても軽いタッチで、皮膚をなでるように行います。ロルフィング同様、筋膜組織へ働きかけますが、ロルフィングとの違いは、組織の層をどれくらいの感度で感じるか、ということだと思います。通常のロルフィングが玉ねぎの皮むきだとしたら、この傷あとへのテクニックは、オブラートのような薄い層を1枚づつ、磨いて滑らかにしていくような感じです。そして、徐々に深層へと向かい、内臓空間や骨周辺の組織の引きつれにも働きかけます。


傷あとへのテクニックは…

★ 手術痕や、動作を制限している怪我や火傷の痕などを 機能的にも(動きの制限を開放し)、見た目の上でも(皮膚の変色を回復させ、凹凸を滑らかに)改善します。
★ 「こんなもので変化するわけがない」というくらいの軽いタッチで、組織の変化を促します。
★ 1度の施術で、組織の流動性が回復し、組織液の循環が改善されるので、治癒が加速します。

★ このテクニックは、固まった組織をゆるめて柔軟にするので、怪我や手術痕などによって、「関節の動きが制限されている場合」や「腹部などに引きつれ感がある場合」に有効です。ただし、伸びてたるんでしまった組織を引き締めたり、「妊娠線」などの裂けた表皮をくっつけることはできません。
★ 感染症予防のため、傷口がまだ完全にふさがっていない場合には、施術を行いません。


今回は、今後の施術に役立てるデータを収集するため、以下のようにモニターを募集いたします。ご協力いただけるとありがたいです。


「傷あとを癒す」モニター・募集要項

無料で施術を行います。
施術は、傷あと以外の全身の調整を含めて、約1時間かかります。
before/afterの写真(傷あとの部位のみ)を撮らせてください。


岡山近辺にお住まいの、傷あとをお持ちの皆様!
どうぞよろしくお願いします!!

お申込みやお問い合わせは、お気軽に以下までお願いします。
  amod@lapis.plala.or.jp
施術受付時間:10:00~20:00(不定休)
私のホームページはこちらです。
http://www.rolfingjoy.com


また先日、友人の、点滴によってできた内出血痕へ同様の施術を行い、好結果が得られました。
以下に経過の写真を貼り付けておきますので、参考にしてください。


(A)点滴から約2週間後の内出血痕

施術前



20分間の施術直後



5日後





(B)点滴から約2カ月後の内出血痕

施術前



20分間の施術直後



3日後



  
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腰痛と姿勢‐2(前回のおさらい)

2010-02-28 | ロルフィング
前回の日記からずいぶん間があいてしまいました。当初は座る姿勢について書こうと思ったのですが、実は、「楽に座る」ということは、楽に歩き、動くことができた結果として得られることなので、一面的に説明することが難しいことに気づきました。そこで、このトピックについては、前回までのおさらいをして、次回から、身体の統合の別の側面について説明したいと思います。


前回、脊柱を立てて安定させるには、2通りのやり方があると書きました。また、「立つこと」、「物を持ち上げること」も同じように脊柱を立てる動作ですから、同じ2通りのやり方があてはまります。それらは…


1)脊柱を上下に圧縮する(脊柱起立筋群を過度に収縮させる)
  ⇒ 脊柱は棒のように固まる ⇒ 長時間の圧縮が腰痛につながる





2)胴体をコルセットのように横方向の張力で安定させる(腹横筋などを活性化する)
  ⇒ 脊柱は安定しながらも、個々の関節の小さい動きが妨げられない
  ⇒ 周辺の組織液の流動性が保たれるので、脊柱の健康に有利






そして、これら2通りの筋肉群の使い方は、以下のような体の動き方に相当します。

1)体の背中側を縮め、柱や壁のように固めて、体を立てる





2)内臓空間を伸ばすように広げて(⇒ テンセグリティーの項目を参照)、体を立てる





やはりここでも、今まで大腰筋の項目で書いたように…

「縮むように動く(外から内へ)」か?
「伸びるように動く(内から外へ)」か?

…の違いが、これら2つを分ける鍵になります。この「外から内へ」と「内から外へ」の違いは、後々、別の側面から説明したいと思います。


さて、ここまで主に座る姿勢について書きましたが、実は、腰痛の原因は姿勢の悪さそのものにはないと考えています。


以前「NHKスペシャル・病の起源・腰痛」という番組で、タンザニアのサバンナで狩猟採集生活をしている「ハザ」という部族を取り上げていました。獲物を追いかけて、1日に30キロ近くも歩いたり、走ったりして移動する彼らには、日本の私たちのような腰痛の概念自体がありません。その彼らがどんな良い姿勢で座っているのか、興味を持って見ていましたが、石に腰かけて、前かがみになって弓矢の手入れをしていたり、木にもたれかかったり、地面に斜めに座りこんで休息していたり、など…、皆、思い思いの姿勢をしていて、頭を骨盤の上に、まっすぐ位置させて座っている訳ではありません。要するに、1つの「良い姿勢」でこり固まっている人はいませんでした。多分、健康的であるということは、1つの姿勢が不快に感じられたら、すぐに快の方にしなやかに動いて、バランスを回復させることができる状態のことを言うのだと思います。そして、もう1つ強く感じるのは、彼らの身体内部(コア)から出てくる力です。





これに関連して、次回以降は、「内臓空間の感覚」や「動きの方向イメージ」などについて取り上げていこうと思います。
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TV放送のお知らせ

2009-09-06 | ロルフィング
岡山、香川の皆さん。
9月12日(土)の14:00~、RNC西日本放送の「とことん、土曜~び」の中で、私の行うロルフィングが紹介される予定です。
先日、施術の様子などが撮影されました。
短時間で、簡潔に、ロルフィングについて説明するのは自分にとって挑戦でしたが、とても勉強になりました。
興味がおありの方は、どうぞご覧ください。


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腰痛と姿勢

2009-09-05 | ロルフィング
久々の更新になりますが、今回は腰痛について取り上げます。

今まで書いてきたことを要約すると、「体の中心から伸びること」が、しなやかな姿勢や動作の鍵となる、ということです(体を縮めることが役に立つのは、「身を固めて一時的な衝撃に耐える」場合です)。姿勢と腰痛との関係にも、これが当てはまります。


腰痛の原因を探るために、腰椎の椎間板に圧力センサーを装着して、どのような姿勢が最も腰に負担をかけるのかを測定すると、前屈みの姿勢になった場合に、体重が約70キロの男性でも、200キロを超える負荷が椎間板に加わっていることがわかりました。では、この体重の3倍もの圧縮力は、どこからやって来るのでしょうか。それは下図のように、前に傾いた上半身がさらに前に倒れないように、ブレーキをかける背筋群によって生み出されると考えられています。





つまり…
1) 頭が前方へと移動する前屈みの姿勢によって、腰に大きな負荷が加わる。
2) 腰への負荷は、縦方向に収縮する筋肉が生みだす。
以上が、腰痛と姿勢を考える上での重要な点です。


考古学から人類の腰痛の起源を探っていくと、農耕生活の始まりとともに、遺跡から発掘される人骨に、狩猟採集時代には見られなかった腰痛の痕跡(腰椎の変形など)が見られ始めるそうです。このことから、農作業に伴う長時間の前屈みの姿勢が、腰痛の起源だと推測されています。つまり、長時間のデスク・ワークは、走り回って獲物を追いかけるよりも、腰にはつらい作業と言えそうです。実際に、ジョギングやウォーキングの習慣のある人は、そうでない人に比べて、脊柱の靭帯や椎間板などの老化が抑えられることが報告されています。以上から、腰痛を防止するためには、前屈みの姿勢を長く続けない方が良いことになりますが、これは仕事の内容や職場の環境にも左右されるので、可能な範囲で休憩をはさんだり、道具などを工夫したり、日常的に歩いたりしてバランスをとるなどで、対処することになるでしょう。


そして、もう一つの重要な側面は、体に染みついた癖です。以前、トニック・ファンクションの項目で説明しましたが(⇒脊柱の安定)、脊柱を安定させる筋肉のシステムは、大きく分けて2つあります。1つ目は、起立筋などの縦方向に関節をいくつもまたいで走行している筋肉システムです。これが作動すると、脊柱が上下に圧縮されて固まります。そして、前屈みの姿勢で腰椎を上下に圧縮するのも、この筋肉システムです。





もう1つは、本来の腰部の安定筋の、腹横筋と腰部・多裂筋のシステムです。多裂筋は起立筋群よりも深層にある小さな筋肉群で、表層の筋肉のように脊柱に動きをもたらしたり、上下に圧縮したりする力は強くありません。また腹横筋は、はら巻きのように横方向に走行する腹筋で、この筋肉が働くと、下図のように胸腰筋膜と呼ばれる腰の筋膜を横に引っ張り、コルセットを締めるように脊柱を安定させます。このシステムは、脊柱を上下に圧縮しないので、脊柱の各関節の可動性が保たれています。大腰筋システムが働く時には、このシステムがセットになって脊柱が安定化されるので、身体の中心部(コア)から動くためにはとても重要です。日本古来の武道などでは、下半身を安定させるために、「丹田に力を入れる(下腹部を緊張させる)」ことを強調しますが、それはこのシステムの活性化を指していると思われます。


   


同じように頭を体の真上に位置させて座っているように見えても、一方は脊柱を上下に固く圧縮して、もう一方は脊柱が伸びるように寛いで座っているという違いがでてきます。また、正しい姿勢を指導する際に、「背筋を伸ばして」、「胸を張って」などと、脊柱を立てたり、一定の型の維持を強調すると、脊柱を上下に圧縮する筋肉を作動させてしまい、腰痛の原因を作ってしまうかもしれません。脊柱を上下に圧縮せずに座るためには、まず、大腰筋‐腹横筋のシステムを活性化させる必要があります。そのためには、大腰筋で歩くことをお勧めします(⇒「大腰筋でウォーキング」を参照してください)。身体内部から体を支える力が生まれた結果として、楽に座ることが可能になるのですが、それは、ある姿勢で長時間座り続けることでは得られないからです。


大腰筋‐腹横筋システムによって脊柱を支えていると、脊柱の可動性が保たれると書きましたが、多くの人の場合、脊柱を固めて頭を支える癖があるので、脊柱の関節には、動きにくい部分や方向が見つかるでしょう。これを体験するために、以下のようなエクササイズを行ってみてください。

座った状態で、体の周りに、坐骨から頭頂部に至るまでの様々な位置で、フラフープがあると想像してください。自分の手で体に触れながら行うと、その位置でのフラフープをイメージしやすくなるでしょう。フラフープをイメージしたら、坐骨と足(体の外部の固定点)を起点として、そのフラフープを1本づつ、360度回すように、体の水平面を動かしてみましょう。少しづつ高さを変化させながら、楽に、ゆっくり動いて、感じてみてください。この時、ある高さや方向では、動きを感じにくかったり、フラフープをイメージしづらかったり、背中や腹側、内臓領域などが緊張していて、動きを制限しているのを感じるかもしれません。これを続けていると、脊柱を圧縮し、その動きにブレーキをかけている主要な癖のパターンがはっきりするでしょう。自分の癖を自分で観察するのは難しいので、できれば誰かに体に手を当ててもらい、その位置のフラフープを動かすようにすると、より明確な観察ができると思います。





さて、これらの知覚の盲点や、可動性の少ない部分にどう働きかけていくかですが、それは次回取り上げます。
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足の細分化

2009-05-23 | ロルフィング
今回は膝から下の構造の細分化について取り上げます。前回までは、differentiationという英語の訳として区別化という言葉を使っていましたが、ばらばらに切り離すようなイメージがあるので、ここでは細分化と呼ぶことにします。より細かい関節の動きに気づいてもらい、身体感覚をより豊かにすることによって、しなやかな動きを誘導しようとすることですが、実際のロルフィングの施術では、手技によって筋膜組織の制限を解放して、可動性を回復させることも含んでいます。

それでは、下腿と足の骨の構造を見てみましょう。人間では前腕と同様に、足首につながる骨は2本で構成されています。脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)によって踵の骨(距骨)が挟まれていて、内くるぶしの骨に相当するのが脛骨、外くるぶしの骨が腓骨です。脛骨に対して腓骨がわずかに上下前後斜めに動いて、足首の回旋や、内返し/外返しなどの運動が起こります。ちなみに牛や馬などでは、下腿の2本の骨は1本に癒合して、足首の回旋ができないようになっていて、前への推進力を得ることに特化されています。


   


では、これら2本の骨の動きを感じてみましょう。ふくらはぎの外側を膝関節の外側に向かってなでてみると、こつんと腓骨頭に当たります。この腓骨頭と脛骨の内側を手で握り、かかとを中心につま先をワイパーのように動かします。足首に連動して腓骨が動いているのがわかるでしょう。このように、足の機能はすねから始まっているいるのです。





以前書いたように、足の骨は2階建ての構造をしています。1階の外側のアーチ(外側縦足弓)の上に、脛骨と腓骨に挟まれた2階の内側のアーチ(内側縦足弓)がのっています。強靭な靭帯で結ばれたこのアーチがバネのような働きをしてくれるおかげで、着地の衝撃が離陸のエネルギーに変換されるのです。歩く時にこの構造を最大限に生かすためには、かかとの骨(踵骨)が前に転がりながら、アーチが広がるように着地することが大切です(「大腰筋でウォーキング(2)」を参照してください)。


   


足底の傾きを変え、アーチの支持に関与する筋肉群には以下のような組み合わせがあります。これらの筋肉は脛骨と腓骨や、2本の骨の間に拡がる丈夫な筋膜(骨間膜)に付着していて、アーチ構造を足の両側から吊り上げる働きをしています。


      


例えば偏平足の人では、かかとの骨が内側に倒れるように傾いて、その上にのる内側のアーチがずり落ちている傾向があります。そこで、足底のアーチの健康のためには、下腿の筋肉の活性化とバランスが重要です。


   


次に、足の関節を見てみましょう。足は26個の骨(足根骨:7、中足骨:5、趾骨:14)で構成されているので、これらのすべての間には可動性があることになります。強靭な靭帯でつながった足根骨どうしの可動性はわずかですが、1つのかたまった骨ではないことで、全体が変形しながら衝撃を受け止めることができるのです。

また、足底を縦方向に曲げた時に折れ曲がる関節は、以下の通りです。

1)かかとの骨のすぐ前(横足根関節)
かかとを構成する踵骨・距骨と、その前にある足底骨との間の関節で、体重がかかとの骨から前のアーチに移行した時に、ほんのすこし伸ばされる感じがする部分です。

2)中足骨の付け根(足根中足関節)
足の指はすでに土ふまずのあたりから5本の中足骨に分かれています。足の裏を土ふまずにむかって、閉じたり開いたりして動きを感じてみてください。

3)足の指の付け根(中足趾関節)
つま先立つ時には、たいていこの関節を折り曲げるでしょう。

4)足の指の関節(趾節間関節)
手と同じく親指(母趾)には1つ、その他の足趾には2つあります。


    


以上をふまえて、実際に足の骨の動きを感じてみましょう。両足で楽に立ち、床に着いているかかとの骨を感じます。次に、体重を前後左右にシフトさせてみましょう。
足底の傾きに連動して、下腿の2本の骨にも動きが起きていますか?
かかとの骨の前のアーチに移行する時、横足根関節の弾力性を感じることができますか?
内側のアーチ(2階)と外側のアーチ(1階)の感じの違いを感じられますか?(足の目は2つのアーチの頂点あたりにあります⇒「大腰筋でウォーキング(2)」を参照してください)
これができたら、かかとからつま先まで少しづつ折り曲げるように、各関節の動きを感じましょう。
この他にも、握ったり、開いたり…、様々な動きを試してみましょう。


       


可動範囲は小さいですが、足は手と同じくらいのさまざまな動かし方ができるでしょう。歩く時も、ただ地面を踏みしめるだけではなく、地面を触るように感触を楽しんでみましょう。固い路面や柔らかい土など、味わうことはたくさんあります。さらに足底だけでなく、膝、股関節、腹でも地面を感じることができるかもしれません。このように足の感覚が豊かになった時、楽にしなやかに歩いていることでしょう


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モデル・クライアント募集中!

2009-05-20 | ロルフィング
10月から京都で行われるロルフィングのトレーニングにて、実習用のモデル・クライアントを募集しています。
関西地区にお住いの方、経験豊かなトレーナーのスーパーバイズのもと、低料金でロルフィングをお受けになるチャンスです。
この機会にぜひ!

詳しくはこちらをご覧ください。
日本ロルフィング協会のHP
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しっぽの区別化

2009-05-11 | ロルフィング
前回は骨盤について少しだけ書きましたが、骨盤はさらに詳しく区別化する必要がありました。そこで今回は、骨盤の構造としっぽの区別化について取り上げます。それから、内容が難しいというご指摘をしただきましたので、まずは、骨盤の構造を再確認してみましょう。

骨盤は仙骨と左右の寛骨(かんこつ)という骨によって構成されています。


     


仙骨の両側の寛骨は、図のように3つの骨(腸骨・恥骨・坐骨)が癒合したものです。赤ちゃんのころは、これら3つの骨はまだ軟骨によって分けられていますが、成長とともに軟骨の骨化が進み、成人では1つの骨になります。(下は左の寛骨を側面から見た図)


   


恐竜の原始的な骨盤を見てみると、腸骨・恥骨・坐骨は独立した骨です。これらの突き出た骨には腹筋群や背筋群、脚や尾を動かす筋肉などが付着して、骨盤がダイナミックな動きを中継していたことが想像できます。進化の過程でこれらの骨が癒合することにより、骨盤の安定性が増し、代わりに可動性は減少していったと考えられます。


      


恐竜では腸骨・恥骨・坐骨・尾骨を結んでダイナミックな動きを生み出していた筋肉群は、人間では骨盤底に位置して肛門括約筋などを支える、ハンモック状の骨盤隔膜を形成しています。人間の尾骨は退化しましたが、骨盤隔膜は尾骨にも付着しているので、尾骨周囲の組織の緊張は、骨盤底の張力バランスに影響を及ぼします。また尾骨は、幼少のころから尻もちをつくなどして、衝撃を受けやすい部分です。そこで尾骨周辺は緊張が多く、骨の位置が偏っていることもあります。ロルフィングでは、手指をつかって尾骨周辺の筋膜組織を緩める施術を行います。





下図は骨盤を1つにまとめている靭帯の走行を示したものです。このおかげで、骨盤は様々な方向の動きに対してしっかりと安定しながらも、「仙腸関節」(仙骨との関節)と「恥骨結合」でのわずかな可動性を残しています。


   


前回は、左右の寛骨を脚と連動させるように動かすエクササイズを取り上げましたが(左右の寛骨の区別化)、今回はそれに加えて、尾骨を区別化するエクササイズを紹介します。左右の寛骨を基準にすると、仙骨は「うなずき運動/起き上がり運動」という小さな動きをします。これは視点を変えると、しっぽを前後に振る動きにもなります。そこで立位か、クッションの上に座って、まず自分の尾骨の先を触ってみましょう。肛門よりも後ろ側のコツンとした骨です。そしてしっぽをゆっくり前後に振るように動かします。これは骨盤を揺り動かすような動きです。この感じがつかめたら、しっぽをさらに様々な方向に動かしてみましょう。この動きには様々なバリエーションが考えられますが、腰椎のカーブを変化させる動作は腹横筋と腰部多裂筋を活性化させるので、腰椎の安定化を促進するエクササイズにもなるでしょう(⇒「脊柱の安定」の項目を参照してください)。


 


しっぽの付け根、仙骨の前面には、脊柱の両側を上下に走行する交感神経幹が合流する不対神経節があります。そこでこの部分を動かすことは、自律神経の働きを活性化させると考えられます。尾骨と、前回とりあげた左右の坐骨を区別化することで、骨盤は1つのかたまりではないことが感じられてくるでしょう。このように脊柱の下端の可動性を取り戻すことは、脊柱全体のしなやかな動きを引き出すでしょう。


   
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身体各部を区別する

2009-04-03 | ロルフィング
ここまでは、深部筋の連鎖を通じて、身体の統合を考えてきましたが、これからは身体の「細分化・区別化」という側面からこれを考察していきます。身体の区別化(ディファレンシエーション:differentiation)とは、ひとつのかたまりのようになって、動きがなくなってしまった身体各部に、本来の細やかな動きを取り戻させることです。

筋肉や関節には、「固有感覚器」と呼ばれるセンサーがあり、刻々と変化する筋・腱・靭帯などの緊張度合を感知して、そこから伸びる感覚神経を通じてその情報が脳に伝えられます。これにより、「その筋肉がどの程度緊張しているのか」、「その関節はどの位置にあるか」などが把握されるのです。下のグラフは、筋肉へ連絡する一般的な神経の構成を示したものですが、筋肉へ血液を供給させる血管運動神経と、感覚神経(筋肉から脳へ情報を伝える神経)が大部分を占めていて、運動神経(脳から筋肉へ指令を伝える神経)は感覚神経の約3分の1の量しかありません。このように、筋肉は、それを作動させる運動神経と、その3倍の量の感覚神経によるフィードバック機構によって制御されており、これによって、まっすぐ立ったり、卵を握りつぶさずにつかむことができるようになっています。


    


「動くこと」と「感じること」は表裏一体です。動きがない関節の周辺では、そこにある固有感覚器があまり刺激されません。例えば、神経麻痺によってある関節が動かなくなると、その動きを感知する脳の領域の神経が委縮することが知られています。つまり、動きのなくなった部分は、脳からもその存在が失われていくのです。また、動きのない部分は血行が促進されないために、組織的にも退化・委縮して、さらに動きが失われる傾向があります。また、慢性腰痛の患者は、「骨盤や腰部の位置の感覚が不明瞭である」、「腰の筋膜にある固有感覚器の数が少ない」などの研究結果も報告されています。このように、ひとかたまりになって動きの少なくなった関節に、本来の細かい動きを取り戻すことは、失われた固有感覚を取り戻すことであり、見失っていた自分の体の一部を再び全身に統合することでもあるのです。

以前、東京で行われたロルフィングのトレーニングのお手伝いをしたことがあります。クラスの1日の始めと終わりには、参加者全員が手をつないで輪になり、自分とお互いの体を感じる「サークル」という儀式を行うのですが、他人への施術がほぼ未経験の生徒たちが多く、最初は固い印象のあった手のひらが、お互いの体を触りあうことで、日々しなやかに変化して、やがて輪全体に何かが流れるようになることがはっきりと感じられました。これは、知覚することと、しなやかに動くことが一体であることの実例として印象に残っています。



今回はまず手始めに、骨盤を区別化してみましょう。


  


以前「大腰筋でウォーキング」で書いたように、骨盤を構成する左右の寛骨(かんこつ)は、背中側の仙腸関節と腹側の恥骨結合を境にして、わずかですが別々に動かすことができます。それでは今、椅子に座りながら、頭の位置を体の中心に戻し、椅子の上の左右の坐骨を感じてみます。そしてダイエットのエクササイズの「お尻歩き」の要領で、左右の坐骨で歩くように動いてみましょう。左右別々の動きを感じることができたら、この動きをあらゆる方向へ拡大していきます。

左右の坐骨(坐骨結節)と腹側の恥骨、背中側の尾骨に囲まれた領域には、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉群があります。この骨盤底の前半分の領域には尿道口があり、後ろ半分には肛門が位置しています。それぞれの出口は、括約筋という管の端を絞るような働きをする筋肉によって閉じられています。例えば、おしっこを我慢する時には主に骨盤底の前半分が、うんこを我慢する時には後ろ半分が緊張するのがわかるでしょう。これらの括約筋は平常時には閉じていなければなりませんが、それらが位置しているハンモック状の骨盤底筋群は、他の動物では元々しっぽを動かすための筋肉だったので、独立して動かすことができます。骨盤底は内臓を支えるために緊張し続ける必要はありませんし、内臓そのものも、呼吸や運動に伴って結構動いています。左右の坐骨を別々に動かすということは、この筋肉群も両脚の一部としてしなやかに動くということです。





膀胱、大腸などの内臓は、それらを包んでいる漿膜の働きによって、お互いがつるつると滑りあいながら、位置が移動します。できれば、これらをイメージしながら動かしてみましょう。まるでパン生地でもこねるように、腹にも腰にも、どこにも固定点がなくなるように、腹全体を練るように動かしましょう。固有感覚器は、その瞬間の状態を感知しているので、骨盤周辺の感覚は変化し続けていくことでしょう。普段動きのない部分が動き出すと、その部分の存在感が再び回復されるので、身体内部に新しい空間が生まれた感じがするかもしれません。それは脳の中で失われていた身体の部分を取り戻すことでもでもあります。そして、このように身体内部の空間を広げることは、テンセグリティー構造を安定させ、姿勢を安定させることにつながるのです。


次回からは、この区別化をさらに全身に広げていきます。
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全身を連動させる胴体の動き

2009-03-23 | ロルフィング
これまでは下肢や上肢などの体の各部分について、その構造を生かしたしなやかな動きについて説明してきました。今回は、最大限の力を発揮するために、いかに全身を連動させるかについて取り上げます。

ここで重要になるのが、パリントニシティ(Palintonicity)という概念です。パリントニシティとは、ヘラクレイトスの思想を基に、ロルフィングのインストラクター、Jeffrey Maitlandが提唱した、「対極のバランス・対極の統合」を意味する造語です。構造的に調和のとれた体は、動作の際に「上にも下にも」、「前にも後ろにも」、「右にも左にも」、同時に、バランスよく拡がるのです。


  


例えば、ロケットを打ち上げる際には、対極の方向である地面へ向ってジェットを噴射します。同様に、体が前に進もうとする場合にも、地面へ後ろ向きに力を加えると、同時に逆方向への地面からの抗力が得られます。


  


以前「大腰筋でウォーキング」の記事で、体の中心から地面に向かって伸びるように動くことが鍵になる、と書きましたが、実際の体では、同時に正反対の方向への動きが起こっています。外部の固定点で力が反転するために、「地面に向かって伸びる動き」は、「地面から頭に向かって伸びあがる動き」に変換されるのです。そしてこのように、体が同時に対極の方向へ拡大する時に、物理的に効率の良い動作が得られます。これがパリントニシティです。これは歩く、走る、押す、持ち上げるなどの動作でも、ベクトルの方向が変わるだけで、同じく対極方向に同時に拡大することが重要になります。そこでしなやかに全身を連動させるためには、特に体幹部分において、この対極方向に同時に拡大する動きをマスターする必要があります。このためには、まず体幹部分をあらゆる方向へ拡大するように動かしてみましょう。





まず、仰向けに寝て行う簡単なエクササイズを紹介します。この時、膝は立てても、立てなくてもかまいません。腰椎には前湾カーブがあるために、横たわった腰と床との間には、小さなすき間があるように感じていることでしょう。このすき間を押しつぶすように、おなかを背中側に押し出します。まるでボールが膨らむように、皮膚の内側から拡大する感じをつかんでください。これができたら、背中側の様々な部分を床に押し付けましょう。そして次はさらにいろいろな部分(腹側や側面も)で、皮膚を中から外へ広げるように動きます。体をくねらせて泳ぐ魚をイメージしてください。生物の進化の過程では、手足はずっと後から発達してきたものです。手足は、しなやかに動く胴体の延長のように動きを伝えると、全身が連動します。これは、胴体の内部のエンジンを目覚めさせるのに良いエクササイズです。どの方向にも体幹部(頭を含む)のボールが広がる感じがしたら、座位のエクササイズもやってみましょう。


  


座って行うエクササイズでも動作の質は同じです。脊柱に重力が加わるので、脊柱を立てるために背中などを固定してしまう癖のある人には、動作が少し難しくなりますが、これらの固定点を内側から拡大するように動かしてください。この時に、外側の固定点(床や椅子や机)を押すようにして動くと、対極の方向により大きく広がることができるでしょう。これがパリントニシティです。このエクササイズの部位と方向を変えながら、「ボールが膨らむように、対極の方向に同時に広がること」と、「外の固定点からの抗力を有効に利用するためには、体の内側から固定点が消える必要があること」を体感してみてください。

      


このように、床や椅子や机を足場にして、対極方向へ拡大する動きをする時、すでに手と足を含んだ全身が連動し始めています。動作や体位が変わったとしても、対極方向に広がるベクトルの位置と方向が変わるだけです。例えば、立って手を上げる場合には、地面と指先との間で拡大するように動くのですが、背中や肩の周囲に固定点ができてしまう場合には、まず足と胴体との間で拡大するように動き、それができたら次に肘へ、さらに指先へと拡大する動きを広げていくのです。実際にはその前に、手技によって緊張した組織を緩めることや、基礎となる大腰筋システムを活性化させることが必要になるかもしれません(⇒「大腰筋」を参照)。


      
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