晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮本輝 『地の星』

2011-11-05 | 日本人作家 ま
『地の星』は、「流転の海」シリーズの第2部、前作では
愛媛から大阪へ出た松坂熊吾が、一代で大きな会社を築き
あげ、房江という女性と結婚し、戦争で故郷の愛媛に引っ
込み、終戦をむかえてふたたび大阪へ戻って、戦後のゴタ
ゴタの中を奔走、伸仁という子供を50歳でさずかって、
さあ、これから、というときに、病弱の子供を心配し、故郷
の愛媛に戻るぞ、というところまで。

第2部では、熊吾、房江、そして伸仁が、愛媛の南宇和へ
戻ってから、ふたたび大阪へ出るまでが描かれていて、まず
冒頭から、5歳になって田舎の野山をはしりまわるように
なった伸仁と熊吾が歩いていると、風体のよろしくない男
が近づいてきて、自分は「わうどうの伊佐男」と名乗ります。
なんでも、熊吾がまだ小さかったとき、広場で相撲をとって
いたとき、隣の地区の伊佐男が熊吾に挑んできて、熊吾に
投げられたはずみに石段から転がり落ちて、それ以来、片足
が不自由になってしまったというのです。
今では、広島や松山ではそこそこ名の通ったやくざ者の伊佐男、
こんなヤツに目をつけられては平穏な田舎生活はたまったもの
ではありません。

さっそくトラブルが。熊吾の義弟の政夫が、借金のカタに、村
一番の牛と闘牛勝負をしようというのです。相手は漁師の網元、
魚茂の牛で、はじめから負けは見えていて、熊吾はこの勝負を
やめさせようと魚茂に話をします。
するとどうやら、この闘牛の話の裏には、政夫が仕組まれたよう
で、伊佐男が絡んでいるというのです。
本音をいうと闘牛をやらせたくない魚茂ですが、牛はすでにニンニク
やら焼酎やらを飲まされ、いきり立って、止めようがなく、熊吾
は猟師から銃を借りてきて、牛を撃ち殺します。

この「事件」が、のちのちまで、熊吾の周囲に波乱を巻き起こす
きっかけとなってしまい・・・

妻の房江もあまり体が良くなかったのですが、田舎で暮らすように
なって元気になり、熊吾のいないところで、川に入って、なんと鮎
を手づかみでキャッチするという評判。

熊吾は熊吾で、いろいろ相談を持ち掛けられては解決に奔走し、
田舎に引っ込んでも事業欲は衰えていないようで、さまざまな
「ビジネス」展開をします。

熊吾の母、妹、妹の夫と子供たち、房江にとっては義理の家族ですが、
こちらの問題にも頭を抱え、田舎ならではの諸問題も噴出。

土地とそこに住む人間の因縁というか、見えない何かに翻弄されて、
不便や理不尽にも思える田舎独特の「暗黙のルール」は、長年に渡り
築かれてきたもので、容易に変わるはずもなく、しかしそれは土地で
生まれた知恵でもあり、優しく、厳しく、意地悪で、それでも人は
それに「従って」生きていくことが最善なのです。

そんな南宇和での生活もそろそろ終わりにして、また都会でひと勝負、
熊吾は房江と伸仁をつれて、ふたたび大阪へ・・・

そして、第3部へと続きます。



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