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カクマ難民キャンプの難民によるフリープレス
翻訳:難民自立支援ネットワークREN
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2012年12月号 難民キャンプに芸術が必要な10の理由

2013年04月28日 | アート
アウェット・アンデミカエル

私は昨年、UNHCRのために研究を行った(内容はhttp://www.unhcr.org/4def858a9.htmlに掲載)。その結果、難民のキャンプでの生活において芸術活動は極めて建設的な役割を果たすことが多く、難民が困難を切り抜けて生き延び、感情面、精神面、身体面で成長するうえでも役立つことが分かった。

もちろん、芸術がすべての問題を解決できるわけではないし、間に合わせの解決策にもならない。キャンプで準備することが難しい設備や訓練を要する活動もある。また、紛争を巻き起こそうと考えている人々が、軋轢を招こうとして芸術を用いることも考えられる。

しかし、訓練されたプロのアーティストでなくても、難民キャンプで暮らしていれば、音楽や詩、ダンス、絵画、スケッチといった創作活動など、芸術に取り組むべきもっともな理由は多い。私は以下10の理由で、キャンプに住む難民は芸術活動に参加すべきだと考える。

1. 芸術活動は権利である。芸術的、文化的な表現は「世界人権宣言」と「児童の権利に関する条約」で保護されている人権だ。

2. 芸術活動をすると、創造的、生産的に時間を使うことができる。生産的活動や雇用が制限されている場合、難民が自主的に始める芸術活動は、有意義な目的のためにエネルギーと才能を使って生産的、創造的に時間を使うひとつの方法だ。さらに、芸術発表を行って年中行事を祝うことで、キャンプ生活に伴う長い待ち時間で疎遠になりがちな「繰り返しの時間」に積極的に関与できる。

3. 芸術活動を通じて、難民キャンプでの生活で発生する心理的、精神的ストレスに対処することができる。キャンプで暮らす難民の多くがトラウマを抱えていることを考えれば、個人や集団としての難民の幸福のために、「癒やし」は実に重要である。芸術活動は精神科療法や医療の代わりとはならない。しかし、個人参加であれ集団参加であれ、またあらたまったものか気楽なものかを問わず、こうした芸術活動は、苦痛や喜びの感情を表現し、困難な記憶に立ち向かい、ときには耐えられない重荷を軽減する手段を与えてくれる。

4. 芸術活動は、心の奥底に潜む感情のためにも有益と言えよう。宗教行事や儀式への参加は精神生活のために重要だが、宗教曲、詩的な祈り、宗教的な踊りや装飾品といった儀式における芸術的要素は礼拝や瞑想中に五感を働かせるうえで重要な役割を果たす。想像力あふれる表現や祝賀行進で宗教行事を祝うことで、自分もその一部である宗教的な伝統や、過去のものとして葬ってしまった宗教的コミュニティーとの結びつきを感じることができる。
5. 芸術活動により、母国にいなくても自分の伝統文化を維持することができる。伝統的な歌を歌ったり、伝統工芸をつくったり、古くから伝わる言語で詩などの文学を編み出すことで、自分の文化を保護できる。また、母国を見たこともない、または覚えていない子供たちに、自分の文化習慣を伝えることもできる。

6. 芸術活動により、キャンプの他の難民との一体感を築くことができる。難民キャンプで異なる集団間の違いを過度に強調すると対立や分裂を引き起こしかねないが、芸術活動は、自分の文化を他者と友好的に共有する機会を与えてくれる。他文化の文化活動や芸術活動に参加することで、キャンプ内の隣人について知ることができ、彼らのありがたみを感じることができる。また、芸術活動は、難しい問題や扱いにくい問題、タブーとなっている事柄についてコミュニティーの人々が議論を行ううえでも一助となる。すべきことやしてはならないことを口で伝える代わりに、ためにならない慣習や、それが関係者にもたらす影響についての劇を上映することなどができる。こうすることで、問題についての会話が促され、コミュニティーの人々は演劇を通じて間接的に議論する自由を得られる。 問題をめぐる沈黙が破られて、ある程度の快適さを感じることができれば、問題によっては直接に対処することも可能だ。同様に、芸術家も物語や歌、踊り、視覚芸術などを用いてデリケートな問題を提起し、考察や議論を促すことができる。

7. 芸術活動を通じて、難民と地元コミュニティーの間にかけ橋を築くことができる。同様に、地元コミュニティーの人々と自分の文化的習慣や伝統的芸術慣習を共有し、地元コミュニティーの芸術活動について学べば、難民と地元コミュニティーの間にかけ橋を築くこともできる。

8. 芸術活動は子どもの学びも助けてくれる。創造性の低い学習方法に比べて、歌や絵などの芸術を手段にすると、子どもが想像力や感性を全開にして学ぶことが可能になる。また、詩や歌を用いれば学んだり情報の記憶がさらに簡単になり、演技、スケッチ、演劇といった参加型の活動を通じてより生き生きと授業に向き合うことができ、自らの学びにも活発に関わることができる。さらに、移住を余儀なくされたことなどで教育が中断してしまった子どもたちは、学ぶことが特に難しかったり、心的外傷を抱えていることもあり、それに対処することが必須となるが、その場合にも教育や治療の手段として芸術を用いることが適している。最後に、芸術的、創造的な学習は楽しいので、退屈な学習よりも子どもの注意を長く惹きつけられる。

9. 芸術活動を通じて、大人は、心身の、そしてコミュニティーの健康と幸福を高める行動について学び養うことができる。多くの場合、芸術活動が子どもの学びにとって効果的であるのと同じように、芸術は大人にも多くの学びの場を提供してくれる。学びは学術的なものに限らない。芸術(音楽、野外劇、詩、ポスターなど)を通じて、衛生意識、病気の予防、家族関係、世代間や性別間の関係、異人種間や異宗教間の対話や他の社会問題に関する重要な情報や有益な方法を効果的に共有できる。特に、識字率が低い難民コミュニティーにおいては、口頭による情報の伝達は、パンフレットなど文字による伝達よりも効果的となりうる。また、歌や詩は覚えやすいため、コミュニティーの全員が知っておくべきメッセージも、芸術的に伝達されれば人々の記憶に長く残るかもしれない。より多くのことを長期間覚えていられれば、それに応じて行動が変わることが多く、習慣や態度にも好ましい変化をもたらす。

10. 芸術活動により、キャンプ外での生活に向けた準備もできるかもしれない。文学、視覚芸術、舞台芸術といった競争性の高い分野で専門家として働くことになるかどうかは別にして、規律、創造性、忍耐力など芸術活動に参加して得られた技能は、永住または帰還によりキャンプを去った後も、大いに役に立つだろう。



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