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わたくし、ご多聞に漏れず、最近iPhone4Sを6PLUSに買い替えまして。
そして、購入して約二か月経って、すべての持ち物の中で、断トツ一番に大切なものになっています。
iPhoneで、音楽は聴く、物を調べるて知識を得る、凄く便利な地図になるし、デジカメ・動画撮映機でもあり、その上電話もかけられます。
人によってはゲーム機にもなる。
前のiPhone4Sも、熱心なアップルファンから仕事に使えると勧められて買ったのですが、電話やメールだけならガラケーの方が使いやすいと感じて、携帯を手放せませんでした。
( ちなみに、ガラケーとは普通のいわゆる携帯のことです。ガラパゴスケータイ」の略で、ガラパゴス化した携帯電話という意味。携帯電話が日本独自の市場で特殊な多機能化が進んだため、ガラパゴス島の動物みたいだということで、ガラケーと呼ばれているわけです)
しかし、何よりもアクセス分析によると、このブログへのアクセス数で、とうとうパソコンからのブラウザよりiPhoneやAndroidなどのスマホの方が多くなってしまったのです。
というわけで、私にとって、スマホは何よりも大事な持ち物になっているのですが・・・
そんな私のiPhone愛を揺るがすような事実を知りました。
1 大巨人とダビデの世紀の一戦勃発す
さて、あらためて言うまでもなく、故スティーブ・ジョブズが創始者として有名なApple社の製品で、スマートフォンとして世界で最も人気が高くまた売れているスマートフォンであるiPhoneですが、その部品のサプライヤー=供給者である日本の中小企業が、時価総額で世界1の巨大多国籍企業を訴えたのです。
そして、これは、世界にその影響が派生する大事件と言われているのです。
株式会社島野製作所という日本の会社が、2014年8月1日付でアップル・インコーポレイティド(以下「アップル」)に対し、独占禁止法違反(請求内容:リベート支払等に関する損害賠償請求)等を理由とする訴訟を提起するとともに、同月6日付けで特許権侵害(一部のアップル製品についての販売差止及び損害賠償請求)について訴訟を提起したと発表したのです。
2 島野とアップルとの関係
この島野製作所は、アップル社の製品の電源アダプタ接合部分に使われるピンのサプライヤーです。
ちなみに、ピンとは、安全ピンのあのピンのことで、物を固定するために使う針状の道具です。
島野は、東京都内にある部品メーカーで、社員数20人と規模は大きくないのですが、米半導体大手インテルや韓国サムスン電子などを取引先に持ち、その技術力は高い評価を受けている、業界では有名な企業なのだそうです。
逆に、アップルは自社工場を持たず、全世界に厳格な審査で選んだ島野のようなサプライヤーを持ち、それらの結晶体として、斬新な製品を世に送り出していることで知られています。
その島野は、今回の訴訟について、2014年9月12日、以下のようなコメントをしています。
「当社は、アップルのサプライヤーとして、約9年間、アップルと継続的取引を行って参りました。しかしながら、これまでの取引において、看過できない行為があったため、訴訟を提起したものであります」
3 アップルの横暴
島野によると、島野はアップルから依頼を受けて新製品用のピンを開発しました。
また、島野はアップルからそのピンの増産を何度も求められ、設備投資等をして量産体制に入りました。
ところが、それから約半年後に突如、アップルからのピンの発注量が激減しました。
実はこのとき、アップルは島野との“合意”を無視するかたちで、しかも、半年間に得た島野の技術を密かに伝えた別のサプライヤーに代替ピンを製造させていたのです。
つまり、これは島野の特許権を侵害したものでした。
島野はそんなこととはまだ知らず、アップルに取引再開を求めましたが、逆にアップルは今後の取り引きについて値下げを要求してきました。
アップルの下請けであり、すでに多額の投資をしてしまっている島野は、やむなくその条件を飲みました。
ところが、アップルはさらにリベートの支払いも必要だと言ってきたのです。
詳しくいうと、島野がすでに納品した過去のピンについてまで、アップルが持つ在庫ピンの購入時価格と島野が今回値下げしたピン価格の差額分に、在庫ピンの数量をかけて算出した約159万ドル(当時、約1億6000万円)を払えというのです。
つまり、過去の納品分も全部安い価格だったのと同じにするというわけです。
それでも、島野は止むを得ず言われるまま、その金額をアップルに支払いました。
ところが、アップルは別の会社への受注を継続したため、島野への受注は増えませんでした。
4 島野、アップルとの裁判に踏み込む
そこで、島野はとうとう堪忍袋の尾が切れて、大アップルと全面的にあらそうことにしました。
すなわち、アップル相手に訴訟を提起し、アップルがやったことは決済が終わった売却済み製品の値下げの強要に他ならず、不当なリベートの要求であり、これは独占禁止法違反で禁じる「優越的地位の乱用」にあたると主張したのです。
また、特許権侵害の対象であるアップル製品の電源アダプタと、それが同梱されているノートパソコンであるMacBook ProとMacBook Airの日本での販売差し止めも請求しています。
5 超えてはいけない線を越えてしまったアップル
「リベートを払ってもらう必要がある」「159万ドルを6月第1週までにアップルへ支払ってほしい」「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの……」
この裁判の中で、原告島野製作所から、被告アップルの購買担当者が書いたという、生々しいやり取りを記したメールの文面が訴訟の証拠資料として提出されています。
島野は
「物事には越えてはならない一線がある。約束を破ったことや不当なリベートといったアンフェアにはどうしてもノーと言わなければならない」
「アップルは取引開始当時とは変わってしまった。企業は大きくなったが、人や内部管理体制、コンプライアンス(法令順守)が追いついていないのではないか」
「長年のパートナーを訴えるのは心苦しいが、アンフェアは正すべき」
「この訴訟が、優れた技術を持つ日本の部品メーカーが正当な利益を受ける端緒となることを期待する」
と話しています。
そして、島野は、和解はせず、あくまで自社の主張を伝えていく考えだ。欧米での提訴も検討するとしています。
6 島野が勝訴する可能性
別件ですが、アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」の技術が、日本の個人発明家が開発した特許権を侵害しているとして、東京高裁の知財部が、2014年4月、アップル日本法人に約3億3600万円の支払いを命じる判決を下しています。
特許権侵害の分野なら、蟻が象を負かすこともありえるのです。
7 アップルの横暴
両社の取引が始まった後の2007年、アップルは初代スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を発売しました。
スマホで世界を大きく変えた同社の業容は急拡大し、2011年には時価総額で米エクソンモービルを抜き去り首位に立ちました。2014年12月の株価時価総額は、終値ベースでは約7000億ドル弱、1ドル=120円で計算すると約80兆円以上で、これはトヨタ自動車の3倍超ね当たります。
そして、巨人アップルのサプライヤーは北米や欧州、アジアに広がっています。そのうち日本からは139社が名を連ねており、中国に次いで2番目に多いのです。
果たして、下請け、サプライヤーは元請け多国籍大企業に勝てるのか。
そういう意味で、島野対アップルの裁判の行方は世界中に大きな影響を与えます。
また、何よりも、アップルがしていることは、私のようなアップルユーザーの良心に響きます。
特に、無知無関心だった私は、島野がアップルを訴えたあとの、2014年10月にiPhoneを買い換えているのですから。
次回の巨大企業の闇 アップル編では、アップル下請け工場の悲惨な現実に迫ります。
こんなことと知っていたなら、ソニーXperiaに機種変してたのに!よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
J-CASTニュース
アップルの「俺様」ぶりに日本企業が怒った 不当な値下げ要求に「特許侵害」・・・提訴
米アップルは、部品の調達や製品の生産工程で強固なサプライチェーンを築いている。世界的なヒット商品「アイフォーン(iPhone)」などの製造に不可欠なパートナー企業は、世界各国に広がる。
ところが、長年アップルを支えていた日本のサプライヤーが反旗を翻して訴えを起こした。供給していた部品の特許をアップルに侵害されたとの主張だ。
半年後に突然発注量を半減、他社に製品をつくらせていたと訴え
「当社は、アップルのサプライヤーとして、約9年間、アップルと継続的取引を行って参りました。しかしながら、これまでの取引において、看過できない行為があったため、訴訟を提起したものであります」
この文面は2014年9月12日、島野製作所が出したものだ。東京都内にある部品メーカーで、社員数20人と規模は大きくないが、アジアに支店や工場を持つ。電源アダプターのコネクタ部分に使われるピン製造では、高い技術力を誇る会社だ。長年のパートナーであり、今や巨大企業となったアップルを、独占禁止法違反と特許権侵害で東京地裁に訴えたのだが、10月24日付「ダイヤモンドオンライン」が訴状の要約として島野の言い分を掲載している。
島野はアップルの発注により新製品用のピンを開発。増産を何度も求められて量産体制をとる。ところがアップルは約半年後に突然、発注量を半減させた。このときアップルは別のサプライヤーにピンを製造させており、しかも島野の特許権を侵害していたというのだ。取引再開の条件として、アップルは値下げを要求。しかも、既にアップルが購入していたピンの代金についても、値下げ分との差額を支払えと求めてきた。
もしもアップルが島野の技術を盗み、その情報を他社に流して製品を安くつくらせていたとすれば不正も甚だしい。「特許権侵害」については、弁理士でITコンサルタントの栗原潔氏が10月26日のブログでこんな分析をしている。
島野の発表資料には書かれていないが、同社が日本で所有する特許権は3件で、「MagSafe」(アップル製品のコネクタ)のピン部分の構造の特許とみられると説明。対してアップルはMagSafeそのものの特許権は持つが、個別のピンの構造には及んでいないと思われるとした。そのうえで栗原氏は、携帯音楽プレーヤー「iPod」の技術が、日本の個人発明家が開発した特許権を侵害しているとして、知財高裁が2014年4月、アップル日本法人に約3億3600万円の支払いを命じる判決を下した点に触れた。「特許の世界」では、中小企業でも十分「勝負」ができるというのだ。
米サプライヤーが嘆いた「厄介すぎるディール」
実はアップルは、別のサプライヤーとも摩擦を起こしていた。
2014年10月6日、iPhoneに使われる「サファイアガラス」を供給していた米企業、GTアドバンストが経営破たんした。「iPhone6」「iPhone6 Plus」にサファイアガラスが採用されず、最終的に破産を申請する道を選んだという。
これにより、両社が交わしていた守秘義務が解除された。また米破産裁判所の判断によりGT経営陣の宣誓供述書が公開された。オンラインITメディア「ギズモード」が11月13日付で中身を紹介しているが、これを読むと両社の契約内容とGTが破たんに至るまでの背景が見えてくる。
GT幹部の証言によると、同社はもともと製造機器メーカーで、当初アップルからはサファイア結晶炉を2600台買いたいとの申し出があったという。だが交渉を重ねるうちに、相手が欲していたのは装置である炉ではなく、サファイアの結晶そのものだと判明。そこでGTは、アップルからの借り入れで巨額の設備投資を断行し、サファイア製造工場を立てて生産を開始した。だが、アップルが選定した製造機器の性能が芳しくなかったうえ口出しや要求内容の変更が相次いだ。しかもアップルの買い取り価格は市場価格を割り込み、独占供給契約だったため他社に転売もできない。結局、納期に間に合わず新型iPhoneへの採用は見送られ、大量の在庫だけが残ったという。
契約は、どうもGT側に相当不利だったとみられても仕方がなさそうだ。GT幹部は、製造したサファイアの結晶をアップルが買わねばならない義理はひとつもなかったと証言しているから驚く。アップルとの間で「厄介すぎるディール(契約)をつかまされてしまった」と嘆いた様子も書かれている。
アップルのサプライヤーは北米や欧州、アジアに広がる。そのうち日本からは139社が名を連ねており、中国に次いで2番目に多い。GTのように泣きをみた会社もあるが、島野製作所は黙っているわけにはいかなかったのだろう。
下請け・アップル、法廷対決 「値下げ強要」と提訴/「不当な高値」と反論
2014年12月16日5時0分 朝日新聞
日本の中小企業が、時価総額で世界首位の米アップルを訴えた。供給する部品の値下げを「強いられた」ことが独占禁止法違反で禁じる「優越的地位の乱用」にあたるとして損害賠償などを求めている。迎え撃つアップルは15日、全面対決の姿勢を示した。
■特許侵害も争点
提訴したのは、島野製作所(本店・東京都台東区)。ノートパソコンの電源アダプターに使われる精密部品を、9年ほど前から開発し、アップルに供給している。
島野の主張では、アップルは2012年から島野への発注を減らす一方、島野が製造を委託する海外企業に同様の部品を直接つくらせた。島野から抗議を受けると、アップルは取引続行と引き換えに大幅な値下げを要求。さらにアップルが購入済みの在庫商品の値下げ分として159万ドル(約1億8千万円)のリベートも払うよう求め、島野は渋々応じたという。
だが、その後も島野の受注は伸びず、アップルは海外企業がつくった製品を使い続けた。そのため、島野は今年8月に独禁法違反と特許権侵害の訴訟に踏み切った。損害賠償の請求額は特許権侵害で10億円。独禁法違反については明らかにされていない。また「マックブックプロ」などのノートパソコンの日本での販売差し止めを求めている。
15日、東京地裁で開かれた独禁法違反に関する第1回口頭弁論で、アップルの代理人弁護士は「不当に高い価格を請求し、優越的な地位を乱用したのは原告(島野)のほうだ」と反論した。また特許権侵害については、05年から島野と共同で部品を開発したのに、島野が11年以降になって勝手に特許を取得した、とも主張している。
■世界企業との取引、リスクも
「アリ」が「巨象」に戦いを挑む――。今回の問題は、そんな興味本位の話だけでは済まない背景をはらんでいる。
日本の部品メーカーにとっては、アップルは「救世主」だ。国内の大手電機が振るわないのをよそに、iPhoneなどに使う最先端部品を数多く買ってくれるからだ。規模が大きいだけに、部品が採用されると業績を一気に押し上げる効果もある。
アップルも高価格でも高品質の製品づくりにこだわり、日本の技術力を頼りにしてきた。島野がつくる部品は、電源アダプターの接合部分の中に組み込まれる「ピン」だ。長さ数ミリの微細なもので、少なくとも開発当初は島野もアップルにとって不可欠な存在だった。
だが、技術で抜きんでていなければ、価格の安い台湾や中国にいつでも乗り換えられる。それはグローバル企業の「常識」であり、大手部品メーカーの幹部は「相当な覚悟がないとアップルとは付き合えない」と語る。
(藤田知也)
■主な争点
(A)島野製作所の主張
(B)アップルの反論
*
(A)不当なリベートを払わされたのは独禁法で禁じる優越的地位の乱用にあたる
(B)他社からの調達をはばみ、不当に高い価格を請求したのは島野のほうだ
(A)ノートPCなどの電源アダプターに使う部品が島野の特許権を侵害する
(B)共同開発した部品を島野が勝手に特許出願した。特許権は無効だ
(A)マックブックプロなどの日本での販売差し止めを求める
(B)特許は侵害していないので請求の棄却を求める
日本の中小企業が訴えたアップルの“横暴”の内幕
ダイヤモンド・オンライン 10月24日 0時5分配信
アップルの1次サプライヤーとして、知る人ぞ知る日本の中小企業がアップルを訴えた。サムスン電子のようにビジネスの競合相手としてではなく、パートナーである1次サプライヤーという立場で訴訟の“反旗”を翻したのは、世界でも異例の事件だ。それも、全世界にまで影響が波及するインパクトをはらんでいるのだ。
「リベートを払ってもらう必要がある」「159万ドルを6月第1週までにアップルへ支払ってほしい」
「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの……」
米アップルの購買担当者が書いたという、生々しいやり取りを記したメールの文面が今、ある訴訟の証拠資料として提出されている。
2014年9月期で売上高1828億ドル(約19.6兆円、1ドル=107円換算)、時価総額約6000億ドル(約64.2兆円)という、世界一の超巨人を相手取って訴訟を起こしたのは、なんと売上高数十億円規模の島野製作所という日本の中小企業だった。それも、パートナーであるサプライヤーが提訴するという極めて異例の事態だった。
訴えを起こした島野とは、電源アダプタのコネクタ部分などに使われる「ポゴピン」というピンの専業メーカーだ。規模は小粒の非上場企業だが、技術力の高さは折り紙つき。米半導体大手インテルや韓国サムスン電子などを取引先に持ち、知る人ぞ知るアップルの1次サプライヤーでもあった。
その島野が今年8月、アップルを相手に独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。訴状から島野の言い分を要約すると、以下の通りだ。
アップルから依頼を受けて新製品用のピンを開発。そのピンの増産を何度も求められ、量産体制を構築した。ところが、それから約半年後に突如、ピンの発注量が激減。実はこのとき、アップルは島野との“合意”を無視するかたちで、別のサプライヤーに代替ピンを製造させていた。しかも、これが島野の特許権を侵害していた。
取引再開を求めたが、アップルは値下げを要求。やむなくその条件をのむと、さらにリベートの支払いも必要だと言ってきた。アップルが持つ在庫ピンの購入時価格と、島野が値下げしたピン価格の差額分に、在庫ピンの数量をかけて算出した約159万ドル(当時、約1億6000万円)を払えという。これは実質的に、決済が終わった売却済み製品の値下げの強要で、不当なリベート要求である。
これらに伴う開発費や設備投資、アップル向け製造ラインの休止、不当なリベートなどの損害賠償を求める。また、特許権侵害の対象であるアップル製品の電源アダプタと、それが同梱されているノートパソコン、MacBook ProとMacBook Airの日本での販売差し止めも請求する。以上が島野の主張の概要だ。
「長年のパートナーを訴えるのは心苦しいが、アンフェアは正すべき」と、島野の島野守弘会長は提訴に至った思いを吐露する。島野側の溝田宗司弁護士は「この訴訟が、優れた技術を持つ日本の部品メーカーが正当な利益を受ける端緒となることを期待する」と語る。
一方、この訴訟についてアップルに問い合わせたが、本稿執筆の10月22日時点で返答はない。
● 会長・社長の進退も懸けた 島野の覚悟
実は、島野の訴状で詳らかにされたアップルの“手口”については、かねてサプライヤーから懸念の声が上がっていたことだった。
「恐れていたことが、確信に変わった」
以前、ある日系サプライヤーの幹部の手元に、アップルが別の企業に送ろうとして、誤送信した資料が届いた。あろうことか、そこには自社技術に関するデリケートな情報が書かれていたという。
アップルは自社工場を持たないが、取引先工場に融資や投資をして、そこで培った知的財産を両社共有にすることで独自技術を掌握してきた。一方で、電子部品に強い日本企業の一部は、モノづくりの技術的ハードルの“解決策”を、率先してアップルへ提供してきた。
しかし、その技術やノウハウが、アップルを通じてアジアなどの他サプライヤーに流出し、肝心の受注段階で彼らとのコスト勝負に引きずり込まれたとみられる事態が起きていた。水面下では、そんなことの繰り返しに嫌気がさしている企業も出ていたわけだ。
「アップルとの取引がなくても大丈夫な基盤は確立しているが、今回の訴訟が原因で不測の事態が起きた場合は、島野会長と共に辞任する」と、島野の船木幸城社長は自らの進退を懸けた覚悟を明かす。
アップルからの発注次第で、業績や株価が乱高下するサプライヤーが多い中、島野が訴えた境遇と似た企業がいたとしても、“一斉蜂起”にはならないだろう。
ただ、アップルがサプライヤーの情報公開を進める契機となった事例がある。アップル製品の製造工場で工員による自殺など不祥事が多発し、問題視する声が高まったことだ。今回の訴訟も行方次第では、アップルのサプライチェーンに新たなメスが入る、大きな転換点になるインパクトを持っている。今回、日本の一中小企業が上げた声はアップル経営陣に届くか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、鈴木崇久)
続報アップルvs島野製作所
証拠メールが暴く事の顛末
週刊ダイヤモンド編集部
週刊ダイヤモンド11月1日号で既報の通り、米アップルを1次サプライヤーの島野製作所が独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた。
今回の訴訟で、アップル製ノートパソコンMacBook ProとMacBook Air(写真)が日本での販売差し止めを請求されている
Photo by Takahisa Suzuki
衝撃に拍車をかけたのが、アップルの資材調達担当者が島野に送ったされるメールが、証拠資料として明るみに出たことだ。その文面からは、数年に及ぶアップルとの生々しいやり取りと、島野が訴えるに至った背景が見て取れる。
「最新のフォーキャスト(出荷予測)に基づいた、C6用ピンの供給計画を送ってもらえますか」「今すぐその情報が必要だ」
2012年2月初め、アップルの担当者はノートパソコンMacBook ProやMacBook Airの電源アダプタ接合部に必要な特注ピンの供給計画が、島野から送られてこないことに焦っていたようだ。
「先月日本で話し合ったように、4月の需要に応える約束はまだできない」「現在(出荷予測)量も増えてきており、再検討に時間がかかる」と返答する島野に、「事情は理解しているが供給計画が一刻も早く必要だ」と切り返した。
さらに「東京での話し合いでは、1月31日までに渡してくれるはずだった」「今週末までに供給計画を渡せるように、あらゆる手段を講じてほしい」と迫った。文面の最後には「島野はC6のサプライヤーの中で唯一、供給計画を提出できていない。アップルの上級幹部たちから島野が目を付けられてほしくない」とまで添えた。
和解金狙いではない
しかし、その後アップルは別のサプライヤーに代替ピンを製造させ、島野へのピン発注量を激減させた。島野は供給先に関する“合意”の無視と特許侵害を訴えた。
島野が取引再開を求めると13年5月下旬、アップル担当者は値下げ要求の他に「深刻な問題を認識している」という文面で始まるメールを送ってきた。「ピンの在庫が残っており、先入先出法(仕入れた順に出庫すると仮定した在庫評価方法)のルール上、新たにピンを発注する前に在庫を使い切る必要がある」という。そして、「この問題を解決するには、在庫ピンの購入時価格と島野の値下げ後の価格の差額分に基づいたリベートを、島野がアップルに払う必要がある」と続いていた。
約1週間後には「この取引を成立させるには、6月第1週までに159万ドル支払ってもらう必要がある」というメールも届いた。
島野は不当な要求と思いながらも、やむなく値下げとリベートの支払いを承諾。「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの口座番号375129****……」と、アップル側が指定した振込先に送金した。
以上が、島野が提出した証拠資料からひもといた訴訟に至るまでの詳細な経緯だ。「和解金狙いではなく、企業の大小を問わず最低限のルールを守るべきという思いで提訴した」という島野製作所。訴訟への注目度は高まっている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、鈴木崇久)
ニュース
2014年12月8日
日本の下請け業者がアップル提訴 ファブレス戦略に影響も (2/2)
PC向け部品を製造する島野製作所が米アップルを訴えた。不当なリベート要求や重大な契約違反があったという。日本の中小企業が世界最大の企業を訴えるのは異例のこと。果たしてその真相とは――。
不当なリベート要求
「約159万ドル(当時の1ドル=102円程度で計算すると約1億6220万円)のリベートを振り込んでほしい」。資料によると、13年5月のメールだった。値下げ前に島野から購入しアップルの在庫になっていたピンの数に、値下げ分の金額をかけた額だといわれた。島野は支払わざるを得なかった。
米アップルと島野製作所との取引をめぐる出来事
これに対し島野は、既に販売したピンの値下げを不当に要求してきたもので下請けに対する優越的地位の乱用に当たり、独禁法違反だと主張している。
島野は今年8月、提訴に踏み切った。特許権侵害やリベートなどによる損害賠償と、対象となるアダプターやそれを同梱(どうこん)するパソコンの日本での販売差し止めを求めた。同社幹部は「物事には越えてはならない一線がある。約束を破ったことや不当なリベートといったアンフェアにはどうしてもノーと言わなければならない」と話す。和解はせず、あくまで自社の主張を伝えていく考えだ。欧米での提訴も検討している。
アップル側は、この訴訟についてコメントしていない。
両社の取引が始まった後の07年、アップルは初代スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を発売。スマホで世界を大きく変えた同社の業容は急拡大し、11年には時価総額で米エクソンモービルを抜き去り首位に立った。今月4日の終値ベースでは6773億ドル。1ドル=120円で計算すると約81兆2760億円でトヨタ自動車の3倍超だ。
島野は「アップルは取引開始当時とは変わってしまった。企業は大きくなったが、人や内部管理体制、コンプライアンス(法令順守)が追いついていないのではないか」(幹部)と指摘する。同社側の溝田宗司弁護士は「取引にはルールがある。そのルールが破られたとき、どう対処すべきか。これは“技術立国”日本を支えるデバイスメーカーに共通する問題だ」と話している。(高橋寛次)
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