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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「賠償加算しても原子力コストは火力より安い」は誤り 原発16円 火力10円 自然エネルギー9円

2011年09月01日 | 原発ゼロ社会を目指して

 

原子力安全神話」とともに言われてきたのが「原子力安価神話」。

しかし、そのメッキもはがれました。

ちなみに、これまでの政府=経産省の試算では、原発の発電コストは、1キロワット時=5・3円でした。




さて。。。



下の二つの記事が全く矛盾しているのにはお気づきになりますよね。

かたや、電気新聞は、原子力のコストは1キロワット時16~20円としているのに対して、読売新聞は7・2円としているのです。

これじゃあ、半分以下ですよね。

実は、電気新聞が報じているのは、私が以下の記事を書くのに参考にさせていただいた立命館大学の大島教授などの試算を使っています。

本当の原発コスト 原子力発電の電気代は一番高い!




政府の「エネルギー・環境会議」の中の「コスト等試算・検討委員会」がこの試算案が使われそうだと言うことで、経産省はこれに慌てたんですね。

そこで、経産省は自分が所管する財団法人・日本エネルギー経済研究所に【大地震・エネルギー政策見直し関連情報】有価証券報告書を用いた火力・原子力発電のコスト評価をまとめさせたというわけです。

経産省はかなりの危機感を抱いたようで、このレポートは全編なんとか大島試算をつぶせないかとあれこれ頑張っています。


このレポートの第1の問題は、大島試算が原発コストに入れた揚水発電を全部除いてしまったことです。

原発は点けたり止めたり自由に出来ない、一日24時間運転士続ける融通の利かない発電なので、電力需要の少ない夜間は、発電した電力のうち余力を使って、水を上にくみ上げ、昼間にそれを下に流して水力発電するのだそうです。

これが揚水発電です。

大島試算では、原発には揚水発電がつきものなので、これを原発のコストに入れて計算しています。

大島試算 すでに原子力単独でも8・64円になっているが、これに揚水発電を足すと10円を超えている



ところが、これではマズいと考えたエネ研は、太陽光発電などの自然エネルギー発電は発電が不安定なので、揚水発電を使うはずだ!?という理屈で、揚水発電のコストを原発に加えるのを拒否しました。

でも、現実に今行われている再生可能エネルギーで、揚水発電とセットになっているものはないわけですから、これはためにする卑怯な議論でしょう。

また、悪名高い電源三法による立地コストや開発コストも大島試算より少なくしてしまいました。

保安院のやらせを産んだ原発推進利権 自民党・経産省・財界・マスメディア・自治体の癒着の構造






さらに、私がどうにも納得できないのは、原発事故の賠償金の算入方法です。

エネ研が賠償金を10兆円と算出したのは、まあ、想定される最低額とはいえ、一応よしとしましょう。

しかし、それを原子力発電が始まった1965年から2010年までが46年なので、46で割って1年分を計算して、1キロワット時あたり1・3円としましたが、これ、原発事故は過去から現在、そして未来に至るまで、今回の1回しか起こらないことが前提ですよね。もう一回起こったらまた計算し直しですか?

それに他のコストは2006~2010年までの5年で計算しているのに、今回の賠償金だけ46で割るのはおかしいです。もし、5で割ったら原発発電コストはそれだけで倍になってしまうのですが。。。。


大島試算 立地・開発費用を加算すると原子力単体でも10・68円になっている。揚水発電をあわせると12・23円。これには10兆円以上の損害賠償額は含まれていない。含むと少なくとも3円強は高くなるとされている。

 


他方、エネ研の試算によっても、地熱などの再生可能エネルギーのコストは8・9円だそうです。

私も知らず知らずのうちに、「太陽光発電は高い神話」に乗せられていたみたいです。こんなに差がないとは思いませんでした。

もともと、5・3円を前提に進められてきた原発推進政策。

エネ研の試算に乗っかるとしても、原発が1キロワット時8・5円で、自然エネルギーが8・9円なら、もう、自然エネルギーで行ったらいいじゃないですか。

もう、福島原発事故みたいなのは、いくら安くても、日本に住むすべての人がこりごりだと思っているんですから。

究極の環境破壊で世界中にヒバクシャを作る福島原発事故 そしてセシウム137は30年後に戻ってくる


 


 

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記事1

 

政府が原子力コスト試算案 1キロワット時16~20円

2011/08/23 電気新聞

原子力のコストが1キロワット時当たり16~20円程度との試算案が政府内でまとめられたことが明らかになった。一部経済誌の試算を参照して使用済み燃料の再処理などバックエンド費用を74兆円と仮定し、国から投入される立地費用と技術開発補助金、賠償費用を加えると、従来の政府試算の5円強を大幅に上回る単価になるとしている。政府の「エネルギー・環境会議」は、原子力コストの算出などのために「コスト等試算・検討委員会」(仮称)を9月に立ち上げ、報告書を11月に公表する予定。同委員会内の議論にあたっては、今回の試算案が一定の材料となる可能性もある。

試算案では、地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾氏や立命館大の大島堅一教授がまとめた試算を活用。バックエンド費用が74兆円との前提を置くと、発電費用、バックエンド費用などの合計は秋元氏の試算の場合で10~15円程度、大島教授の試算の場合で約13円になるとしている。そこに立地費用と技術開発補助金の約2円を加算。賠償などのリスク費用を3円強と想定し、すべて足し合わせた場合の原子力コストは15.8~20.2円になるとの結論を導き出している。 (本紙1面より)

 

 

記事2

 

賠償加算しても、原子力は火力より安い…エネ研

読売新聞2011年9月1日(木)00:10

 経済産業省所管の財団法人・日本エネルギー経済研究所は31日、原子力や火力などの発電コストを試算した結果を発表した。

 原子力は1キロ・ワット時あたり7・2円、火力は10・2円となり、原子力のコストが火力より安くなった。

 電力10社と電力卸2社の有価証券報告書をもとに、2006~10年度の5年間平均の実績値を計算した。試算では、燃料再処理費や廃炉費用は、各社が積み立てている額などをベースにしており、「将来、実際にかかる費用とは異なる可能性がある」としている。

 東京電力の福島第一原子力発電所事故による賠償額を10兆円と仮定し、1965~10年度の46年間の発電コストに上乗せすると、1キロ・ワット時あたり1・3円が加わって計8・5円となり、火力との差が縮まる結果になった。

 

 


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2 コメント

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日本の原発がアメリカの原発の半額でできるはずがないでしょう (Howdy)
2011-09-09 14:11:04
2010年に米国エネルギー省エネルギー情報局が公表した2016年にアメリカで運用を開始する新規発電所の百万kWhあたりの発電コストは改良型原子力発電で113.9ドル、1ドル=90円として10.3円/kwhになります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E7.AB.8B.E5.91.BD.E9.A4.A8.E5.A4.A7.E5.AD.A6.E5.9B.BD.E9.9A.9B.E9.96.A2.E4.BF.82.E5.AD.A6.E9.83.A8_.E5.A4.A7.E5.B3.B6.E5.A0.85.E4.B8.80.E6.95.99.E6.8E.88.E3.81.AB.E3.82.88.E3.82.8B.E8.A9.A6.E7.AE.97

大島堅一教授の見積もりとアメリカの5年後の見積もりと一致してるんです!原発がそんな安いわけがないだろう。同サイトには電力会社が原発建設申請時に提出した試算もでています。

柏崎刈羽5号機 19.7円/kwh
浜岡3号機 18.7円/kwh
泊原発1号機 17.9円/kwh
女川1号機 17.0円/kwh
玄海3号機 14.7円/kwh
大飯3号機 14.2円/kwh
大飯4号機 8.9円/kwh
玄海2号機 6.9円/kwh
返信する
日本はアメリカからウランを輸入してるんですものね (ray)
2011-09-09 14:20:02
ウィキペディアですでに議論が完結しているとは(笑)。

教えてくださりありがとうございます。

規模の経済ということで、太陽光発電など再生可能エネルギーも普及すればするほど安くなるわけですしね。

もう原発推進派がよって立つべき根拠がないのですが。
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