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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

アベノノミクスは失敗した2 実質賃金目減り、物価高、負担増で格差拡大。日本人は貧しくなっている。

2014年12月11日 | #安倍晋三が諸悪の根源

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1 アベノミクスで苦しむ国民 

 円安→株高で、富裕層・大企業はほくほくのようですが、庶民生活は危機に瀕しています。ただでさえ消費税増税による物価上昇に苦しめられているのに、さらなる円安で輸入物価は押し上げられ、食料品やガソリン、エネルギー関連の価格上昇をもたらしているからです。

 市民生活に欠かせないガソリンは、国際的な原油価格低落が過度の円安で減殺されてしまい再び上昇に転じかねない情勢です。エネルギー庁が2014年11月3日発表したレギュラーガソリン価格は、1リットル=167円。1ドル=120円になると、2008年並みの1リットル=182円以上もあり得る状況です。これでは8%以上の値上がりです。

 たとえば、燃料費高騰で漁船の出航見合わせが続出し、魚介類やねり製品は値上がりしています。また、原油由来のプラスチック容器を使う納豆やカップ麺、コンビニ弁当も急騰するという悪循環になります。

 金融緩和のせいで円安になり、物価も上がって庶民が苦しんでいるのです。

 

 

2 アベノミクスで企業倒産が増えている

 安倍首相は、過去24年で倒産件数が最も少なくなったとアベノミクスを自画自賛しています。

 しかし、この数字にはカラクリがあります。

 まず第一に、安倍政権誕生前の2012年度の倒産件数もその時点では過去22年間で最低レベルだったこと。第二に、民主党政権時代の2009-2012年の3年間も倒産件数は平均して年8%近く減少していること。第三に、2012~2013年度の倒産件数減少の内訳をみると、件数でも前年比でももっとも大きく減少したのが建設業で、これはアベノミクス第二の矢である公共事業の大盤振る舞い(2013 年度の一般会計の公共事業費決算額は 8.0 兆円で2012年度5.8 兆円と比べて4割近く増加)が主たる要因とあること、に触れていないのです。

 実際には、中小企業は、なんとその7割が赤字経営に苦しみ、「円安倒産」が急増しています。円安の影響による企業の倒産は2014年11月まで3カ月連続で増え、2014年1月から11月にかけて2013年の2・7倍!に増えています。

  

 

3 アベノミクスで実質賃金が減っている

 また、円安で物価は上がる一方、賃金が追いついていません。過度の円安→物価高で国民生活は破壊されているのです。

 実質賃金とはなにか?実質賃金を「購買力」と考えると、消費が低迷する現状を理解しやすいでしょう。

 ある年に100万円の賃金をもらい、全額を買い物に使ったAさんをモデルに考えてみます。この年の購買力は100万円だ。

 翌年、物価が2%上がった場合、同じだけの買い物をしようとしたら102万円必要になります。ところが、賃金が100万円のまま変わらないとしたら、購買力は「102分の100」。つまり、購買力=実質賃金は、「100万円×(102分の100)=98万392円」で、2万円近く落ちたことになります。

 このような国民の実質賃金の低下→購買力低下→消費の減退=不景気、という悪循環が起きているのがアベノミクス、別名アベノリスクやアホノノミクスと呼ばれる安倍政権の経済政策なのです。

写真

 

 

 そんな実態を押し隠して、安倍首相は、 「平均で賃金が2%上がった。15年ぶりです。ボーナスも7%上がった。24年ぶりです」、などと今回の選挙運動の中で数字を並べて実績を強調しています。

 「簡単に言えば雇用を増やし、賃金を増やすことだ」。アベノミクスをそう説明する首相が毎回持ち出すのが、この春闘の実績です。確かに、労働組合の中央組織「連合」の調査では、今年の春闘で賃上げ率は平均2・07%となっているからです。 

 しかし、勤労者の皆さん、賃金があがっているなどと、そんな実感がありますか?

 

 まず、賃金2%上昇はごく一部の限られた企業だけです。厚生労働省の調査によると、連合加盟の雇用者は全雇用者のわずか12%にしかすぎません。そもそも組合がない企業の労働者や非正規社員は含まれないから、連合の調査は国民全体の労働者の賃金を反映したものになりません。

 そこに加えて、物価の上昇が実質賃金を押し下げます。厚労省の毎月勤労統計調査では、物価上昇の伸びを差し引いた実質賃金指数は、2013年7月から2014年11月まで、1年半も連続マイナスとなっているのです。つまり、国民全体で少々の賃金アップがあったとしても、円安による食材の高騰なども含めた物価の上昇に追いついていないのです。

写真

 

 物価高で生活が苦しくなるのは、勤労者の平均の賃金が物価上昇率ほど上昇しておらず、実質的に目減りしているからです。

 2014年10月の消費者物価指数は前年同月比2・9%上昇したが、10月の現金給与総額(勤労統計)は前年同月比0・5%増にとどまっています。これが実質賃金の目減りです

 上のグラフを参照してください。賃金の変動を示す賃金指数を物価指数で割った「実質賃金指数」は、2010年平均を100とすると、2014年10月には95・4まで低下しています。しかも、民主党政権下の2012年までよりも、特に2年前に自民党が政権を握って、安倍政権となって以降の下がり方の大きさが明らかに目立つのです。

 つまり、アベノミクスは消費税増税以前のしょっぱなから失敗しているのです。 

 庶民には円安による物価上昇によって生活苦が襲いかかっています。下のグラフで分かるように、この毎月勤労統計調査によれば、働く人の実質賃金が連続して下落していることで、たった1年半で、国民の平均年収は8万4400円も目減りしています。

グラフ2

 

 内閣府もボーナスの伸びが一部企業にとどまっていると認め、NHK調査では基本給引き上げと答えた企業は9%にすぎないと認めています。また、法人税率の引き下げが賃金に回らず、内部留保の積み上げとなっていて、大企業が利益をあげたら、下請けや労働者にもおこぼれがあるだろうという、上から目線の『トリクルダウン』という発想はすでに破たんしているのです

 

 

4 安倍政権の福祉切り捨てで、国民の負担が増している

 さらに、賃金だけではなく、安倍自公政権の福祉切り捨てで年金は減らされているのに、国民の負担は重くなっています。

 まず、得られる年金の方ですが、 2013年10月支給分から段階的に減らされている公的年金の実質の指数は、2010年平均に比べて、2014年12月支給分では実質6%強も下がりました。これは、政府が1・7%削減したうえ、物価が上昇したためです。金額で言うと、基礎年金満額の人で年金額は年間5万円近くも減りました。

 そのうえに、安倍内閣は、「マクロ経済スライド」による支給削減や支給開始年齢の先延ばしなど、さらなる年金削減も計画しています。

 以上のような平均の賃金や公的年金額が実質的に目減りし、結果的に節約ムードは強まり、国のGDPの7割を占める個人消費は低下し、衝撃の年率1・9%のGDP減少になったわけです。

アベノミクスは失敗した1 GDP改定値:マイナス幅拡大の衝撃 黒田バズーカ→円安でも輸出は伸びない!

 逆に、負担増の方ですが、70~74歳の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げ、入院患者の「追い出し」強化など、医療の改悪も始まっています。さらに、安倍内閣は、後期高齢者医療制度の加入者の半数を超える865万人の保険料を今の2倍から10倍に引き上げ、現役世代の入院食費の負担を大幅に増やし、国保料(税)をさらに引き上げるなど、“老いも若きも大負担増”の計画を立て、「選挙が終われば実行」にうつす構えです。

 介護保険でも、要支援者のヘルパー・デイサービスの切り捨て、特養入所の「要介護3」以上への限定、2割負担の導入などの2015年度実施が予定され、介護職員の待遇悪化と介護の基盤崩壊をもたらす、介護報酬の大幅削減が計画されています。

↑ 実収入に占める非消費支出の割合(総世帯のうち勤労者世帯)(-2013年)
↑ 実収入に占める非消費支出の割合(総世帯のうち勤労者世帯)(-2013年)

 

↑ 実収入に占める税金や社会保険料比率(-2013年)
↑ 実収入に占める税金や社会保険料比率(-2013年)

 

5 株高は国民を豊かにしていない

  さて、アベノミクスの成果として、株高があげられています。確かに、今回の選挙期間中に、日経平均は1万8000円高となりました。これは7年半ぶりのことです。日経平均は安倍政権発足時より8000円近く上昇し、株主の多くは含み益を得ています。

 しかし、実際には誰が株高の恩恵を受けているのでしょうか。

 実は、日本は米国よりも株や投資信託を持つ人が少なく、株高の効果が消費に広がりにくいのです。野村総合研究所の1万人のアンケートをもとにした推計では、2013年8~9月時点で株式を持っている個人は約11%、投資信託は約9%にすぎません。日本証券業協会の調査でも、安倍政権が誕生した2012年10~11月時点で株式や投資信託、公社債などを持つ個人は約17%でしたから、アベノリスクで不景気が続く中で、個人株主が株式などを保有し続けることも難しく、むしろ有価証券保持率は下がってしまっているでしょう。

 このように、日本で株高の恩恵を受けた人は、国民の1割しかいないわけです。それも、株高で大儲けしたといえるほどの株式を保有しているのは、ほんの一握りの富裕層に過ぎないのです。

 たとえば、100万円までの投資の利益が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)が今年始まったのも、投資家の裾野を広げようというねらいがあった。専用の口座数は6月末に727万人分に達したが、大半は投資の経験者。新たに始めた人は2割もいないとみられています。NISA口座をつくっても、実際に利用している人は10月末で4割弱で、景気回復を示す指標とされる株価が上昇局面にあっても、個人が投資に積極的だとは言い難いのです。

20141209015904asdio3.jpg

 

 では、株高の恩恵を一番受けているのはだれなのか。

 東京証券取引所などの調査によると、2014年3月末時点ですべての国内株式のうち外国人が保有する比率(時価総額ベース)は30・8%と初めて3割を超えています。国内の個人投資家の比率が18・7%と、6年ぶりに2割を割り込んだのとは対照的です。

 機関投資家(個人ではなく大口の投資を行なっている企業投資家)も含む外国人は、安倍政権が発足する直前の2012年10月から2013年末まで一貫して買い越すなど、アベノミクスに期待して持ち株比率を高めてきまし。財務省の2014年12月8日発表の統計でも、海外に住む人による日本株への投資は2014年11月、2兆6471億円の買い越しです。これは、2013年4月以来の大きさで、10月末の黒田バズーカ2=日銀の異次元追加緩和を機に買いを加速させているのです。

 日本国内でも、大企業と大株主はたいへんな儲けがころがりこんでいます。たとえば、トヨタ自動車の営業利益は円安効果で2・3兆円と史上最高を記録し、大企業全体でも経常利益は前年度比で8・8兆円も増え、34・8兆円と史上最高になりました(2013年度法人企業統計)。このように、「アベノミクス」の2年間の株価上昇で資産が100億円以上増えた大株主は、わかっているだけで100人以上にのぼります。

 アベノミクスの2年間で資産が100億円以上増えた大株主は分かっているだけでも100人以上にのぼり、資産増加額は合計7・6兆円に達しました。

 預貯金や株式などの純金融資産を1億円以上もつ富裕層は、2013年に100万7000世帯となり、2011年と比べて24・3%増えました。これらの富裕層が保有する純金融資産の総額は、28・2%増えて241兆円となりました(野村総合研究所推計)。これも株高の恩恵です。

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6 アベノミクスは日本の格差を深刻化させている

 他方で、働く人の実質賃金は15カ月連続で減少し、2013年10月からの1年間で平均年収が8万4400円も目減りしたのは、前述したとおりです。

 この結果、年収200万円以下のワーキングプア(働く貧困層)は2013年に史上最多の約1120万人にのぼり、2012年と比べて30万人も増えました。さらに、貯蓄なし世帯は12年以降の2年間で26%から30・4%に増えました。

 これが、日本の相対貧困率が過去最低を更新し続けている理由です。

 相対貧困率とは、低所得者の割合を示す指標です。厚生労働省が2014年7月にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得の中央値の半分の額に当たる「貧困線」(2012年は122万円)に満たない世帯の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%でした。これらの世帯で暮らす18歳未満の子どもを対象にした「子どもの貧困率」も16.3%となり、ともに過去最悪を更新したのです。

 これは、日本人の約6人に1人が相対的な貧困層に分類されることを意味しています。この調査で生活意識が「苦しい」とした世帯は59.9%でした。貧困率が過去最悪を更新したのは、長引くデフレ経済下で子育て世帯の所得が減少したことや、母子世帯が増加する中で働く母親の多くが給与水準の低い非正規雇用であることも影響した、と分析されています。

 

 

7 アベノミクスで増えたのは非正規雇用者だけだ

 その非正規雇用者の問題ですが、この選挙の中で、安倍首相は、職を探す一人につき何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率が22年ぶりの高水準だと自画自賛しています。

 この有効求人倍率は民主党政権が倒れ、第2次安倍政権が発足した2012年12月には0・83倍で、その後上昇を続け、2013年11月には約6年ぶりに1倍を超え、2014年は年平均で1992年の1・08倍に並ぶ数字で、安倍首相は「政策は成果を上げつつある」と強調するわけです。

 ところが、同じ有効求人倍率の推移から推認されるのは、むしろ民主党政権の実績です、なぜなら、有効求人倍率は、自民党政権下の2008年のリーマン・ショック後に急減し、2009年の自民党政権末期になんと0・42倍まで落ち込みました。そこから、民主党時代に有効湖雇用倍率が倍増したわけで、伸びが今も続いているのは、民主党政権が道筋をつけたV字回復の流れに、自民党は乗っかっているだけなのです。

 また、安倍政権で増えた雇用者はその大半が地方の公共事業に従事する建設労働者です。これは、財政出動で何兆円も公共事業に投下しているのですから当然のことで、誰がやってもこうなりますから、アベノミクスの手柄でも何でもありません。

20141209020024aosdop5.jpg

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 また、雇用の中身を見ると、正規雇用は減少し、非正規雇用が増加しているにすぎません。正社員として採用され身分が安定して初めて消費に回るのであって、非正規雇用では財布のひもを締めるしかないのです。

 先に見たように有効求人倍率は上向いているものの、中身を見れば、非正規雇用はいまや働く人の4割近くに達し、その平均年収は200万円以下です。先に述べたように、非正規雇用者の増加が格差や貧困の温床なのです。

 総務省の労働力調査では全国の正規・非正規を合わせた労働者数は10月時点で5279万人で、リーマン・ショックで落ち込んだ2009年から回復傾向にあり、この2年では125万人増加しており、安倍首相はこれを成果として強調します。しかし、その中身を見ると、なんとそのうち正社員は42万人減り、パートやアルバイト、派遣といった非正規は167万人増えているだけなのです。中でも15~24歳の若年層は非正規が半数近くを占め、若者が正社員になりにくい状況が続いています。

 長く働いても最低賃金並み。有給を取得すると、契約を更新してもらえない。そんな非正規雇用者が増えても、国民生活は苦しいままですし、景気が良くなるわけがありません。

 

8 安倍政権は所得再分配を軽視し、格差社会を深刻化させている

 なぜ、安倍政権下で相対貧困率が上がっているのか。

 そのもう一つの理由が、所得再分配が軽視されていることによる、格差の拡大があります。

  現在の税制は、高額所得者の所得税負担率が下がり、大企業の法人税実質負担率が下がるという不平等を生んでいます(グラフ3、4)。現在の税制は、高額所得者の所得税負担率が下がり、大企業の法人税実質負担率が下がるという不平等を生んでいます(グラフ3、4)。

 グラフ3

 

9 安倍政権は大企業だけを優遇している

 自民党本部の政治資金団体「国民政治協会」に6440万円の献金(2013年)をしているトヨタは、2008~12年度の5年間にわたって法人税(国税)を1円も納めていませんでした。大企業の内部留保は増え続けています。

 安倍政権は東日本大震災からの復興の財源を確保する企業向けの復興特別法人税を4月から1年前倒し廃止する一方、個人への復興特別所得税は継続しています。この結果、国民には25年間で約8兆円の増税なのに対し、企業向けには、この25年間で約20兆円の減税が恒久的に実行されます。

 

 

 これについて、安倍政権は日本の法人税が高いという説明し、さらなる法人税減税を進めようとしてます。しかし、連結納税制度などさまざまな優遇措置がもうけられているため、日本の法人税は基本税率が30%でも実質負担率は21.3%しかありません。また、復興特別法人税の前倒し廃止で基本税率がさらに下げられたら実質負担率は10数パーセントにしかならないのです。

グラフ4

 

 以上をまとめると、安倍自公政権のアベノミクスで

1 実質賃金は目減りし、購買力が低下した

2 年金は目減りした

3 国民の負担は増大した

4 この結果、個人消費が冷え込み、不景気がむしろ深刻化している

5 さらに非正規雇用が増え、貧困率が上昇しつづけている

6 富裕層と大企業はその分儲けている

7 必然的に格差が拡大している

ということになります。

 こんな状態なのに、本当に安倍政権の経済政策を信任するのですか?

 

 

 

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別名アホノミクス

 

 

アベノミクス是非、「有利な数字」が前面に

三輪さち子、藤原慎一 藤原慎一、三輪さち子

2014年12月7日01時16分 毎日新聞

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 衆院選の主要な争点である安倍政権の経済政策「アベノミクス」の是非をめぐり、与野党で様々な経済統計の数字を交えた論戦が熱を帯びている。与党は雇用や賃金の好転ぶりを数字で誇り、野党は別のデータを使って反論する。ただ、自らに都合のよい数字だけを持ち出す実態も浮かぶ。

 「平均で賃金が2%上がった。15年ぶりです。ボーナスも7%上がった。24年ぶりです」。安倍晋三首相は6日、兵庫県姫路市の街頭演説で立て続けに数字を並べて実績を強調した。

 「簡単に言えば雇用を増やし、賃金を増やすことだ」。アベノミクスをそう説明する首相が毎回持ち出すのが、この春闘の実績だ。実際、労働組合の中央組織「連合」の調査では、今年の春闘で賃上げ率は平均2・07%。「民主党を応援する連合の調査ですよ」。そう挑発的に語ることもしばしばだ。

 民主党の海江田万里代表は「賃金2%上昇はごく一部の限られた企業だけだ」と反論する。厚生労働省の調査によると、連合加盟の雇用者は全雇用者のわずか12%。組合がない企業の労働者や非正規社員は含まれないためだ。

 賃金の額面が上がっていると訴える首相に対し、共産党の志位和夫委員長は、物価上昇の伸びを差し引いた実質賃金指数では「16カ月マイナス」と強調する。厚労省の毎月勤労統計調査では、昨年7月以来マイナスが続く。円安による食材の高騰なども含めた物価の上昇に追いついていない。

 こうした批判に反論するため首相が持ち出したのは「総雇用者所得」という耳慣れない統計だ。

 賃金に雇用者の人数を掛け合わせるため、雇用者数が増えるほど数字は大きくなる。安倍政権になって雇用者数は増えている。首相は「私が20万円の給料をもらっていて、妻が10万円のパートを始める。安倍家の収入は30万円に増えるが、平均値は15万円に下がる」と説明する。1人あたりの平均の賃金が伸びていなくても、雇用者全体では所得が増えている、というわけだ。首相はさらに、その数字が「消費税の引き上げ分を除けば上昇している」と訴える。これに対して生活の党の小沢一郎代表は「正社員として採用され身分が安定して初めて消費に回る。そうじゃないと財布のひもを締めるしかない」と批判する。

 雇用では、職を探す一人につき何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率の「手柄争い」が熱を帯びる。

 「有効求人倍率は、22年ぶりの高水準であります」。首相は6日、兵庫県尼崎市で力を込めた。演説で必ず触れる数字だ。

 倍率は民主党政権が倒れ、第2次安倍政権が発足した2012年12月には0・83倍だった。その後上昇を続け、13年11月には約6年ぶりに1倍を超えた。今年は年平均で1992年の1・08倍に並ぶ。首相は「政策は成果を上げつつある」と強調する。

 だが、同じ有効求人倍率の推移から海江田氏が訴えるのは、民主党政権の実績だ。08年のリーマン・ショック後に急減し、翌年の自民党政権末期に0・42倍まで落ち込んだ。「民主党時代からの伸びが今も続いている」と海江田氏。民主党政権が道筋をつけたV字回復の流れに、自民党は乗っかっているだけ――。そんな思いがにじむ。(三輪さち子、藤原慎一)

■仕事巡り「データ合戦」

 経済政策をめぐる与野党の「データ合戦」は、雇用者数でも激しい。安倍晋三首相(自民党総裁)は主に自らの政権で雇用者数が増えたことに焦点を当てる。これに対し、野党は「雇用の中身」を問題にする。

 安倍首相が演説で、有効求人倍率の上昇とともに必ず強調するのが、自らの政権で「雇用を100万人増やした」という実績だ。

 確かに、その数字には根拠がある。総務省統計局によると、第2次安倍政権が発足する前の2012年7~9月期から14年7~9月期で、役員を除く雇用者は全体で約101万人増えた。

 だが、共産党の志位和夫委員長は「首相は雇用が増えたと自慢しているが、増えたのは非正規雇用だけだ」と、批判の矛先を正規雇用が増えていないことに向けている。

 この2年間、雇用者数を押し上げたのは、123万人増えた非正規雇用だ。反対に正規雇用は22万人減った。全体で増えた101万人のうち、54%を非正規の女性が占めている。生活の党の小沢一郎代表は「正規、非正規の格差が非常に広がり、日本の将来にとって非常に危ういことになりうる」と指摘している。

 安倍首相は最近、野党からの「増えたのは非正規」とする批判に対し、演説で反論を始めた。昨年と今年の7~9月期を比べると、正規雇用は10万人増えている。そのデータを持ち出し、その時期には「正社員は10万人増えたんです」と訴えている。

 賃金や雇用をめぐる実績アピールと批判の応酬が続く一方、国全体の財政立て直しについては、ほとんど語られていない。

 1日の党首討論。安倍首相は政策の経費を税収でまかなう基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、20年度の黒字化を目指して来年夏までに計画を策定するとした。

 だがそれ以降、街頭演説でこの話題に触れることはない。伸びる社会保障費をまかなうために消費税や保険料の引き上げは避けられない状況だが、国民にどれだけの負担がかかるのか。その数字は示していない。

 公明党の山口那津男代表も「アベノミクスで社会保障と財政再建を前へ進めていきたい」と述べても、国民の「痛み」については具体的に触れない。

 野党も状況は同じだ。「人への投資」や「厚く、豊かな中間層の復活」を掲げる民主党も、社会保障費をまかなうための必要な経費については具体的に示していない。

 維新の党は公務員の給与カットなど「身を切る改革」を訴え、共産党は大企業の内部留保を一部活用して財源を確保するという。

 だが、人口が減っていく中で社会保障を維持し、膨らんだ借金を返済するために十分な財源となるのか。包括的な解決策については口をつぐみ、聞こえのいい数字を並べる党が目立つのが実情だ。(藤原慎一、三輪さち子)

■日本総研の山田久チーフエコノミストの話

 約20年間、賃金の下落傾向が続いていた雰囲気を変えたことは、アベノミクスの成果として評価はできる。安倍晋三首相は、デフレからの脱却というマクロ経済の変化を強調している。

 一方、野党側は一人一人の生活水準として、賃金が物価上昇に追いつかず、苦しくなっている点を強調している。円安は大企業にはプラスだが中小企業には負担が大きく、野党はこの点も批判している。

 アベノミクスで収益が上がるのなら、政権は賃上げ要請をするだけでなく、もうけた分を賃金につなげるルールの議論をすべきだ。

 

日経平均1万8千円超え、最も恩恵受けたのは誰?

真海喬生、細見るい

2014年12月8日11時12分 朝日新聞

 10月末の日本銀行の追加の金融緩和をきっかけに急上昇した日経平均株価は、この1カ月あまりで2400円近くも上がった。年金の運用成績が良くなるなど株高の恩恵は確かにあるが、直接的に利益を得られる個人は、実はそう多くなさそうだ。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「日本は米国よりも株や投資信託を持つ人が少なく、株高の効果が消費に広がりにくい」と話す。野村総合研究所の1万人のアンケートをもとにした推計では、昨年8~9月時点で株式を持っている個人は約11%、投資信託は約9%にとどまった。日本証券業協会の調査でも、2012年10~11月時点で株式や投資信託公社債などを持つ個人は約17%だ。

 100万円までの投資の利益が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)が今年始まったのも、投資家の裾野を広げようというねらいがあった。専用の口座数は6月末に727万人分に達したが、大半は投資の経験者。新たに始めた人は2割もいないとみられる。口座をつくっても、実際に利用している人は10月末で4割弱で、景気回復を示す指標とされる株価が上昇局面にあっても、個人が投資に積極的だとは言い難い。

 株高の恩恵を一番受けているのはだれなのか。東京証券取引所などの調査によると、今年3月末時点ですべての国内株式のうち外国人が保有する比率(時価総額ベース)は30・8%と初めて3割を超えた。国内の個人投資家の比率が18・7%と、6年ぶりに2割を割り込んだのとは対照的だ。

 機関投資家も含む外国人は、安倍政権が発足する直前の12年10月から昨年末まで一貫して買い越すなど、アベノミクスに期待して持ち株比率を高めてきた。財務省の8日発表の統計でも、海外に住む人による日本株への投資は11月、2兆6471億円の買い越し。昨年4月以来の大きさで、10月末の追加緩和を機に買いを加速させている。

 足元の日経平均は安倍政権発足時より8000円近く上昇。多額の含み益を得ている外国人も多い。(真海喬生、細見るい)

 

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1 コメント

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Unknown (わたしも99%)
2014-12-25 21:18:18
 日ごろ肌で感じていることを、学術的に系統だてて説明いただいたよう感じます。この報告を見て納得される人はけして少なくないと思います。
 
 あとはこの報告を読み終わった後どうするかではないでしょうか? 
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