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『吉例顔見世大歌舞伎」』第二部「新古演劇十種の内 身替座禅(ミガワリザゼン)」歌舞伎座:奥方は右京が自分を「騙したこと」に腹を立てている!

2020-11-17 13:26:36 | Weblog
山蔭右京(尾上菊五郎)、太郎冠者(河原崎権十郎)、侍女千枝(尾上右近)、同小枝(中村米吉)、奥方玉の井(市川左團次)

(1)
「身替座禅」は、岡村柿紅 (オカムラシコウ) 作、1910年初演。狂言「花子」の松羽目 (マツバメ) 物。Cf. 「松羽目」は能舞台の後部の松の画かれた羽目板(鏡板)のこと。歌舞伎の「松羽目(マツバメ)物」は、舞台正面に松の鏡板と、また左右に竹の絵を画いた羽目板を模した張り物を置く。
(2)
山蔭右京は先年、旅先で花子(ハナゴ)という遊女の馴染みとなった。その花子(ハナゴ)が上京し「逢いたい」と文をよこした。山蔭右京は、奥方の目をごまかすため「一晩籠って座禅をする」振りをして、座禅衾(フスマ)を被った太郎冠者に身代わりを押し付け、花子との逢瀬に向かう。
(3)
夜、様子を見に来た奥方は、座禅衾を被り身代わりとなっている太郎冠者を見つけ激怒。奥方は夫に仕返しするため、太郎冠者と入れ替わり座禅衾に籠った。
(4)
夜明け前、戻ってきた山蔭右京は、座禅衾に籠ったままの太郎冠者(実は奥方と入れ替わっている)に向かって、昨夜の逢瀬の様子を詳しく聞かせる。そして太郎冠者と再び入れ替わるため座禅衾をとる。何とそこには全てを聞いた奥方がいた!
(5)
山蔭右京は言い訳する。ところが奥方は、既にすべてを右京の口から聞いているから、怒り心頭。奥方は右京を責め、かくて右京は平謝り。

《感想1》実に分かりやすい。山蔭右京は、今後しばらく奥方に頭が上がらないだろう。
《感想2》奥方はしかし右京の事情も理解する。右京が「出かける」とはっきり言えば、行かせてもよかったと言う。奥方は右京が自分を「騙したこと」に腹を立てている。