Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

アイデア発想力養成ゼミの夢

2010-01-24 15:49:26 | Weblog
金曜の2年生ゼミでは,ハロウィンをテーマにお菓子をプロモーションするキャンペーン企画について,最終プレゼンテーションを行なった。最初からご協力いただいたSPプラニング会社の専門家に加え,お菓子メーカーのマーケターの方にもお越しいただき,講評と採点をお願いした。各チームの発表はいろいろで,レベルもかなり差が出た。優勝チームは独自のターゲティングを提案しただけでなく,「現場」に何度も行って取材と質問紙調査を行った。特別賞をとったチームも,既存資料を丹念に調べて,ロジカルなプレゼンを行なった。

選から漏れたチームは,アイデアはともかく論理や情報の裏づけが弱かった。マーケティングの基礎知識のない20歳前後の学生がふつうに考える企画とは,こういったレベルだろう。入賞チームには「想い」だけでなく,それを形にする「努力」があった。もうひとつ見逃せないのは,成功したチームほど「チームワーク」と「リーダーシップ」が強かったと思われることだ。チームとしての動機づけがよい企画を生み出す一因なのは確かだろう。だが,逆の因果関係も考えられる。アイデア発想力の高い個人がいるかどうかもまた重要である。

それは才能とか個人的資質であるだけでなく,創造的認知の研究が示唆するように,一定の努力で身につく類のスキルでもある。もしそうなら,事業や製品のプラニングに興味を持つ学生たちが,それなりのアイデアを生み出すトレーニングの形態,あるいはそのためのツールを開発できるはずだ。世のなかにはアイデア発想の本が溢れている。それを読めば誰でもすばらしいアイデアを思いつくわけではないにしろ,それぞれ一片の真実は含んでいるはずだ。多くの本を読み込んで整理すれば,何がしか法則が見えてくるかもしれない。

来年度は,そうした作業に学生と取り組んでみたい。そうすると,わがゼミはマーケティング・サイエンス的なるものからますます遠ざかっていくように見える。確かに,ロジットモデルもバスモデルも出てこない。しかし,次世代のマーケティング・サイエンスにとって,アイデア生成はより重要なテーマになる。だからいずれ,こういう実践を重ねて理論化や手法開発につながっていけば,このゼミはクリエイティブなマーケティング・サイエンスを学んでいることになる。いまのところそれは,とらぬ狸の皮算用でしかないが・・・。

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