Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

学生たちをクリエイティブにする法

2009-05-09 23:38:04 | Weblog
2年生向けのゼミでフロリダの『クリエイティブ資本論』を輪読している。5年ほど前,前任校で原著 " The Rise of the Creative Class" を4年生や修士の学生たちと読んだ。そのとき,この本で披露されている地域のクリエイティブ指数を参考に修論を書いた学生は,大手通信企業に就職した。その論文を少し手直して投稿したいと彼にした約束を,ぼくはまだ果たしていない。

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭
リチャード・フロリダ
ダイヤモンド社

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The Rise of the Creative Class: And How It's Transforming Work, Leisure, Community and Everyday Life

Basic Books

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この本に,比較的高給で雇用が安定した工場労働者(いまや現実感ない?)と,雇用も俸給も不安定な美容師とどちらを職業として選びたいかという選択が出てくる。米国の若者の圧倒的多数は美容師のほうを選ぶと著者はいう。日本ではどうかと思いゼミの学生たちに聞いてみたところ,美容師派がやや多いものの,おおまかには半々に分かれる結果になった。これは意外だった。

このゼミは,起業を焦点の1つとしたコースに位置づけられている。だから,ここには起業や独立に関心がある学生が,平均よりは多く集まっているはずなのだが,それでも「日本では米国ほどベンチャーは成功しない」「日本は何だかんだいって大企業中心の国だ」という意見が少なくない。一般学生に聞けば,そうした意見はもっと多いだろう。日本のどの大学でもそうなのだろうか?

フロリダのクリエイティブ・クラス論はベンチャー至上主義ではなく,大企業の役割を認めている。重要視しているのは,働き方の質である。だから,そういうマインドがあれば,どういう組織に就職しようとクリエイティブな仕事をすることは十分あり得る。しかし,「安定している」ことが主な理由で大企業に就職した者が,そこでクリエイティビティを発揮するとは期待できそうにない。

昨夜,前任校の元同僚たちと「みますや」で飲む。百年以上続いてきた伝説の居酒屋では,真っ白なYシャツにネクタイを締めた企業戦士たちが口角泡を飛ばして「議論」している(ずっと昔の自分を想い出す・・・)。そこに混じってわれわれも,共通の思い出話や,それぞれの現在の勤務先の話で杯を重ねた。つい愚痴をいったり,うらやましいと思ったり,それは大変だと同情したり・・・。

そのなかで,非常にうらやましいと思ったのが,放っておくと学生たちがゼミを6時間も続けてしまう,という話だ。5分過ぎただけで文句が出る,どこかのゼミとはえらい違いだ。長時間労働はクリエイティブ・クラスの特徴だ!と叫びたいところだが,長時間働けばクリエイティブってわけじゃないでしょ,と切り返されるかもしれない(そういう学生がいたら,むしろ誉めたいぐらいだ)。

結局,ゼミで何をやるかについて,ぼくにクリエイティビティが足りないのだろう。学生たちも,これは面白いと思うことなら,平気で何時間も取り組むかもしれない。うーん,どうすればいいのか・・・ 

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