Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

顧客の脳内を読み取る

2009-04-21 23:38:57 | Weblog
ニューロ・マーケティングはニューロ・エコノミクスに比べ,まだ実体がはっきりしないが,実務家の注目が集まっているのは,それによって顧客の心の内を,ことばを介さず読み取れるのではないかと期待するからだろう。ことばにするとき入り込むバイアスを回避し,ことばにならない無意識まで把握できるとなれば,何と素晴らしいことかと。

だから,WIRED で次のような記事を見つけると,近い将来,消費者の頭のなかにある,ことばにならない気持ちを,ことばを介することなく,直接消費者の「脳から」くみ取ることができるのではないかと,ついつい期待してしまうことになる。

脳から『Twitter』に直接送信(動画)

こういう技術を,Brain-Computer Interface というらしい。それによって,身体の自由がきかない病に冒されても,脳波を通じて義肢を制御できるようになる。記事で紹介されている技術では,脳波をアルファベットに変換することができる。脳波をことば代わりに使うということであって,ことばでは伝えられない何かを伝えるという話ではない。

だが,いつかそんな技術が生まれるかもしれない。『日経情報ストラテジー』5月号は「顧客経験価値の見える化」を特集している。きわめて主観的な顧客の経験をどうやって形にするのか(形にしないと見えないわけで)と興味がわく。経験価値なるものをスコア化し,それをグラフにするといった類の「見える化」だとしたら,がっかりだが。

日経情報ストラテジー 2009年 05月号 [雑誌]

日経BP出版センター

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だが,この特集はいい意味で,ぼくの意地悪な期待を裏切ってくれた。そこでいう「顧客経験価値の見える化」とは,本来個々人の経験として終わってしまう買物や消費に伴う感動や喜びを,ウェブなどを通じて他の見込み客にいかに伝えるかという話であった。実際の事例がいくつか紹介されており,教材として使えるかもしれない。

ウェブ上での経験の交換は,現状では,ことばによる媒介抜きには難しい。したがって,経験価値マーケティングなるものが本来重視するはずの,リアルの全感覚的コミュニケーションにはまだ至らない。しかし,いずれ Brain-Computer-Brain Interface 技術が実現して,顧客経験価値は「見えないが,感じられる化」するだろう。
 
そういう夢を見たいと思う今日この頃。
 

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