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「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。
人気作家、伊坂幸太郎の疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!
出版社:角川書店(角川文庫)
この作品も伊坂幸太郎の良さが出ている作品だ。
解説で触れられているように、カメラ・アイなどの点に新しい境地が表れているけれど、僕が気に入ったのは、彼の本来の持ち味の方、すなわちキャラクター造形とプロットなのである。
毎回伊坂作品には個性的な人物が出てくるが、今回もその良さは失われていない。特に蝉や鯨の存在感はさすがだ。
いまどきの若者の蝉のキャラクターなんかはとにかくおもしろい。
どうやら彼はしゃべり好きらしいのだが、殺しの技術は一級品の見事な殺し屋だ。なのに、岩西に対する屈折した心理などに繊細な面もうかがえて、非常に印象的である。
また鯨の方もおもしろい。
『罪と罰』を愛する彼の能力もユニークで、幻覚を見てしまうという特性や、キャラクターの存在感はインパクト大。
よくもこんなキャラクターを考え出せるものだ、と感心してしまう。
プロットもうまく組み立てられていてさすがは伊坂といったところ。
張られた伏線を回収する点もすばらしいが、復讐を横取りされるという出足もすばらしい。この発想は鮮やかではないか。しかもそこからサッカーをするという変てこな展開に進んだりして、ポイントを微妙に外す手腕は感心してしまう。
こういった展開や発想はこの人にしか、書けない世界だろう。
本作には驚きの要素はあまりないのだが、それでも読んでいる最中は楽しい時間を過ごすことができる。作中に登場する数多くの警句も心地よく、伊坂ワールドを堪能できた。
やはり伊坂幸太郎はすばらしい作家だ。本書はそう改めて気づかせてくれる一品である。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
そのほかの伊坂幸太郎作品感想
『アヒルと鴨のコインロッカー』
『死神の精度』
『重力ピエロ』
『チルドレン』
『魔王』
三つのお話の絡み方が、絶妙でしたね。
トラックバックお待ちしていますね。
コメント&TBありがとうございます。
僕のほうもトラックバックさせてもらいました。
本当に伊坂はお話の絡ませ方が絶妙ですね。いい作家だなーとつくづく思います。
こちらのレビューを拝見して伊坂作品を初めて読みました。
P100に至るまではなかなか入りづらかったのですがそれ以後はスイスイ~ッって読んじゃいました。面白かったです!!
もしよろしければ伊坂作品のお薦めを教えてくださいまし。
伊坂は物語に入っていければおもしろいんです。小粋でストーリーもきれいにまとまっていて。
『グラスホッパー』もやっぱり伊坂らしくていい作品です。
個人的には『オーデュボンの祈り』が、伊坂作品の中では一番気に入ってます。
デビュー作なのですが、全体的に突飛で、キャラクターは個性的で、ストーリー展開は鮮やかで、でも読後は爽やかな作品です。
最初に読んだ伊坂の作品ということもあるかもしれないけど、印象に強く残る作品でした。
なんだかアニメーションのように~情景が目に
浮かんでくる描写ですよね(^^)さくさく読めて
面白かったです。
個人的には鈴木と(劇団の)子供たちの昆虫シールの
やりとりが好きでした。
夢野さんのドグラマグラを購入して~途中で
読み始めた作品なので、余計にさらっと読み
進められた感じですw
ありがとうございました。
読みやすいですよね、伊坂作品は全般的に。
昆虫シールのシーンはちょっと忘れてたんで本を引っ張り出したんですが、何とはなく微笑ましくて、いいシーンですね。いい味出しているよな、と思いながら読み返してました。
『ドグラマグラ』もむかし読んだことがあります。
おもしろかったように記憶しているけど、いい意味でくせの強い作品だな、って思ったことは覚えています。
そりゃ伊坂の読みやすさも際立ちますよね。
以前は恋愛ものや感動ものが好みだったのですが、伊坂作品に出会ってからは、こういう話も好きだなぁって思うようになりました!ちなみにミステリーや怖いものやラノベも読みます!
読んだことのある伊坂作品はグラスホッパー、チルドレン、重力ピエロ、死神の精度、陽気なギャングが地球を回す、オーデュボンの祈りです。
上記の中ではオーデュボンの祈りが一番好きです!最後にそういうことだったのかと、とっても感動しました!
デビュー作にしてこの完成度は本当に素晴らしいですよね♪
もっと新しい作品もすごく楽しめそうなので読みたいです!
オーデュボンの祈りの感想を見つける事ができなかったので、こちらに書かせてもらいました。
伊坂さんの作品オシャレなところも好きです!語る人によってマークがあったりして、わかりやすくて可愛いですよね!そんなところも好みだったりします(笑)
最近ちょっと遠のいていますが、まだまだ読みたい気持ちは持ってます。
このブログに載っている以外では、オーデュボンの祈り、ラッシュライフ、陽気なギャングが地球を回す、と読んできました。
その中でも1番好きなのは、かなさんと同じく、オーデュボンだったりします。
一番最初に読んだせいか、印象が強いです。当時まだ売り出し中の作家だったこともあり、こんなすてきで、見事な話を書くなんてすげえな、とことさら強く思ったのを覚えてます。本当に完成度高いですよね。
マークって章の間にあるやつですよね。
あれは僕も好きです。おもしろいですよね。
私、小説の裏の解説を見た時にオーデュボンは人語を話す「未来が見えるカカシ」が殺されるとか書かれていたので、何だか入り込めない感じの話かもと思い、伊坂作品の中でも後回し気味になってたんです。
でも実際読んで見たら、今まで読んだ伊坂作品の中でもすごく好きだったので、もっと早く読めば良かったぁと思いました!
私が好みだと言ったのは、おっしゃる通り、章の間のマークです(^ ^)
前にStory Seller 2(いろんな有名な作者のショートが載っている本)の伊坂さんの合コンの話というショートも読んだのですが、大きな事件が起きるわけではないのですが、書き方がさすが伊坂さんって感じで画期的(?)でとても面白かったです!伊坂さん、お若いのに才能溢れてますね☆
でも読んでみたら、抜群にすばらしいから困ったものです。あるいはそれが伊坂作品の魅力かもしれないのですけどね。
「Story Seller」、売っているのを見たことあります。
言われれば、伊坂幸太郎の名前があったな、って思い出しました。
大きな事件が起きない、っていうことは日常っぽい話なんですかね。合コンってタイトルからして、何となく『砂漠』っていう伊坂作品を思い出しました。
読み終えた直後は、『砂漠』が伊坂作品のトップだと思ったので、それに近そうな合コンも、いつかは読んでみたいです。