「川の底からこんにちは」
2009年度作品。日本映画。
上京して5年、仕事も恋愛もうまくいかず妥協した日々を送っていたOLの佐和子。そんな彼女の元に、父が末期がんで倒れたという知らせが届いた。佐和子は田舎に戻り、実家のしじみ工場を継ぐことに。しかし工場は倒産寸前で、パートで働くおばちゃんたちからも相手にされない。さらについてきた恋人にまで浮気されてしまう始末。そんな追い込まれた中で佐和子は工場を立て直す決意をし……。(川の底からこんにちは - goo 映画より)
監督は「剥き出しにっぽん」の石井裕也。
出演は満島ひかり、遠藤雅 ら。
予告編の時点でわかっていたことだけど、「川の底からこんにちは」はゆるい映画だ。
主人公は「しょうがない」が口癖で、自己評価が中の下という女。前半の彼女のトーンはいかにも無気力って感じである。
こんなキャラが主人公では、ゆるくなるのも当然と言えば当然だ。
しかしそれによって、映画にはゆるい笑いが生まれている。これがなかなかおもしろい。
会話などは、噛み合っているようで、微妙に噛み合っていないし、どのキャラクターもどこかとぼけた味わいがある。
爆笑と言えるほどのネタはないが、くすくすと笑えるポイントは多い。
ぶっちゃけてしまえば、グダグダなわけだけど、雰囲気はこれで悪くない。
そんなゆるい、まったりテンポで進む物語は、後半になるに至り、微妙にテンポが変わる。
それまで、しょうがない、と流されているように生きていた主人公が、男に逃げられることで見事にふっきれるのだ。
自分の自己評価は、相変わらず、中の下のまま。彼女は自分をそんなものだと認識している。
しかし、だからこそがんばるしかない、と彼女は思うようになる。
そう開き直った彼女の姿は、非常にすがすがしい。
彼女の言葉は、基本後ろ向きだけど、行動はきっちり前を向いている。
僕自身も、自己評価は中の下だと思っているので、彼女のふっきれ具合が、いい感じで心に響いてきた。
絶賛できるほどのポイントはないと思うのだけど、細やかな笑いと、ネガティブ寄りのポジティブさが、楽しい一品である。
作品自体は、中の下よりもちょっと背伸びした感じ、言うなれば、それなりの佳品といったところだ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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