2006年度作品。アメリカ=インド映画。
列車事故から奇跡的に生き延びて後、見合い結婚した妻を連れ渡米した男。二人はやがて子を成し、息子にゴーゴリという思い入れのある作家の名をつける。後年、成長したゴーゴリは自分の名前に嫌悪感を覚え、インドの習慣に違和感を覚えるようになる。
監督は「モーンスーン・ウェディング」のミーラー・ナーイル。
出演はカル・ペン。タブー ら。
インドからアメリカに移住した夫婦の話から物語は始まるのだが、その夫婦の心のきずなは見ていて大変心地よい。
異国というなじめない環境で孤独をおぼえる妻を、夫が労わっている姿には優しさと愛情があり、見ているこちらまで優しい気持ちになることができる。そのおかげで映画の世界にすっと入り込むことができた。その二人の愛情に満ちた関係が最後まで維持されていたのも個人的には好ましく映った。
夫婦に子供ができるが、成長して後の親と子の世代の価値観の違いはなかなか深刻だ。アメリカに移住した世代と、アメリカで生まれ育った世代であるため当然なのだが、インドの価値観を持って生きる者と、アメリカナイズされた価値観の相克は見応えがある。
孤独を覚える母の気持ちもわかるし、そこまでべったりするより彼女と一緒に過ごしたいと願う息子の浮ついた感情も理解できるために、その親子の距離感はなかなかやきもきさせられる。
そんな息子のアイデンティティは後半、父の死をきっかけに転換を迫られる。
家族との結びつき、インド系の出自、名前の問題、そういった諸々の問題と相克を自分のものと受け入れ、息子は生きていこうとしている。
もちろん時代の流れや人との関係のため一筋縄ではいかないのだが、自分の中で積み重ねられた記憶や人生を抱えて生きていく息子の姿と、子離れをしてインドで自分の生活を生きる母の姿には前向きなものが感じられた。
正直、後半1/4から物語はあからさまに失速している感はあったし(親世代の物語が、息子世代の物語よりもおもしろすぎたためだ)、列車事故の件も「何だよ、その中途半端さは」と感じたことは否定できない。しかし前半の夫婦の愛情や、アイデンティティの模索というモチーフは丁寧に描いていたと思う。
個人的には好きな作品だ。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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