2013年度作品。日本映画。
41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志が遺した唯一の長編小説を綾野剛、池脇千鶴らの出演で映画化したヒューマンドラマ。佐藤の生まれ育った函館を舞台に、それぞれ事情を抱えた3人の男女が出会った事から起きる出来事が描かれる。
監督は呉美保。
出演は綾野剛、池脇千鶴ら。
原作の関係もあるが、純文学っぽい映画であった。
地味で暗く、重く、テンポはとってもゆったりしている。人によっては退屈と見えるだろう。
しかしそれゆえの味というものもある作品である。
男は工事現場の発破技師で、事故により後輩を亡くしている。それを引きずってずっと腑抜けのような毎日を送っているところだ。
池脇演じる女の方は、金を稼ぐために体を売っている。また犯罪を行ない仮釈放中の弟を働かせるため、すでに心が離れてしまった弟の会社の社長と愛人関係を結び続けている。
そんな二人が出会い恋に落ちる。
やっぱり状況をふり返ってみても、この作品はずいぶん暗い。
そんな中で一番明るいのは菅田将暉演じるヒロインの弟だろうか。
弟はずいぶんバカっぽく見えるし、少しウザさもある。
しかしそんな弟でも、姉のことを多少は心配しているようなのだ。
そんな三人はそれなりに幸せになろうとあがいているようなものだ。
だが現実がそうであるように、なかなか上手くはいかない。
そこには、ある種のいらだちや、鬱屈、相手への反発が見えてくる。
特に池脇たちの家族の状況は痛ましくて、見ていてつらくある。
父親に対する娘の行動などは、どうにもやるせない。
そして愛人から抜け出せず、暴力を受ける女の姿もどこか悲しい。
そしてそれが一つの悲劇を生んだのだろう。
ラストはまさに「そこのみにて光り輝く」というタイトルにふさわしいシーンとなっている。
何と言っても朝の太陽が美しく、それだけで見とれてしまう。
そしてそこにはある種の希望のようなものも見えてくるのだ。
もちろん状況的に、この先も希望だけがあるとは限るまい。
しかし前向きな予感は非常に心地よく、心を動かされたのである。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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