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小市民のような平穏な生活を誓い、高校生活を過ごす小鳩くんと小山内さん。高校二年の夏休み、小鳩くんは小山内さんから<小山内スイーツ・セレクション夏>という地図を受け取り、休みの間、一緒に洋菓子店を回るはめに。しかしそれが大きな事件の前触れとなる。
若手作家、米澤穂信の<小市民>シリーズ第2段。
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
シリーズ第2段だが、個人的には前作よりも格段におもしろいと感じることができた。
プロットの完成度と奇抜さ、ライトノベル的なキャラの魅力、それによって醸し出されるユーモア、先を期待させる引きのうまさ、丁寧に張り巡らされたいくつかの伏線、とにかく一級のうまさだ。
シリーズとのことで、キャラは引き継いでいるが、本作ではそのキャラをさらに魅力的に描いている。
前半での小鳩君の小山内さんの恋人ともちがう微妙な関係性や、やりとりはじつにおもしろく、いくつかクスリとさせられて楽しく読める。そしてその魅力の引き出し方も、日常の謎としてくくられるエピソードを通して行なわれているのがかなりうまい。
中盤から非日常な事件が浮上するが、その展開の迫真性もすばらしい。第二章のラストや第三章であおられた謎が、これ以降どうつながっていくのだろう、と期待させてサクサク読み進むことができる。
といろいろ書いたが、一番すばらしいのはラストだろう。
そこで明かされるなかなか破天荒な結末もさることながら、そのプロットからふたりのキャラの掘り下げがさらに進む辺りは圧巻である。小市民を目指しながら、どこかいびつな関係の二人。そのふたりの描写がかなり切なく、青春小説としても独特の余韻をもっているのが目を引いた。
さてここまで煽られては、『秋期限定』と『冬期限定』に否が応でも期待は膨らむ。果たしてふたりの関係性はどうなるのか。ビルドゥングスロマン的な結末となるのか。楽しみに待ちたい。
って言っても、多分完結するのはこのペースだと来年の夏か秋だろうな……長いな、正直言って。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
<小市民>シリーズ感想
『春期限定いちごタルト事件』
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