さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「姉」を手に入れたい…。僕は烈しい執着にとりつかれてゆく。「選考委員への挑戦か!?」と、選考会で物議を醸した日本ホラー小説大賞受賞作「姉飼」はじめ四篇を収録した、カルトホラーの怪作短篇集。
出版社:角川書店(角川ホラー文庫)
『姉飼』という作品は、ガジェットを愛でる作品なのかもしれない、と読んでいて感じる。
実際、物語としては物足りないという印象をぬぐえないのだ。
ラストは余韻もあるが、説明不足という印象を受ける。想像力を喚起するという言い方もできるかもしれないけれど、個人的にはちょっともどかしい。
また物語的には、結局グロさを強調しているだけでは、という疑念も読み終わった後で残った。
たとえば脂神輿に関するエピソードは別にいらないんじゃないの、という気もしなくはない。
それらのせいで、読後の印象はさして良くない。
しかし先に述べたように、細かい部分はそれなりにいい。
この作品はグロテスクな要素が強いのだが、そのグロいところが個人的には好きだ。
「姉」の存在などはいかにも気持ち悪いし、先に否定した脂神輿も、その眉をひそめたくなるような描写自体は有りだと思う。
それらのガジェットを駆使して、「姉」に魅入られる「ぼく」の狂気を描いているが、その雰囲気もなかなかよかった。
はっきり言ってトータル的には微妙だけど、グロテスクなシーンには強い存在感があるな、と感じた次第だ。
そのほかの作品としては、『妹の島』も好きだ。
こちらも物語的には説明不足な面もあり、もどかしく感じるところはある。だが、ガジェット自体は楽しい。
人の体に卵を植え付けるオニモンスズメバチや、暴力的な兄弟、妹と性関係をもっていると思しき兄など、いくつかの要素はきらりと光っていた。
そのおかげで、最後まで飽きずに読み進められる点はよかったと思う。
評価:★★(満点は★★★★★)
ブログ主様の読まれる本は、いつも興味深いものが多く、とても参考になります。
ところで、岩井志麻子さんの著書を、読まれてたことはありますか?
★2つということで、人様には積極的に薦めきれない作品ですが、何かの参考になったのなら、とってもうれしいです。
岩井志麻子は「ぼっけえ、きょうてえ」だけ読んだことがあります。強烈にアピールするではない、そこはかとないこわさが印象的な作品だったように記憶してます。