私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「あの日、欲望の大地で」

2009-11-04 21:56:39 | 映画(あ行)

2008年度作品。アメリカ映画。
行きずりの情事を繰り返し、孤独を守る謎めいたレストランマネージャー・シルヴィア。ある日彼女のもとに、娘と名乗る少女マリアが現われた。突然の出会いに戸惑うシルヴィアに、ニューメキシコの荒野での若き日の過ちがよみがえる。
監督は「バベル」と「21グラム」の脚本家、ギジェルモ・アリアガ。
出演はシャーリーズ・セロン、キム・ベイシンガー ら。



最初から最後に至るまで、興味を惹きつけられる映画であった。
一言で語るなら、きわめておもしろい。
そしてそんな風におもしろく感じられたのは、単純に見せ方が上手かったからだろう。


本作は三つのストーリーが並列して語られる。
時系列がいじられていることもあり、三つのストーリーが正確にはどういう順序か、最初のうちはわからない。
そういう映画はたいていわかりにくいものだけど、きちんと手際よく整理されているので、話がわからず、混乱することはない。
むしろ時系列がいじられているからこそ、それぞれのストーリーにどういうつながりがあるのだろう、と期待しながら見ることができるのだ。
その見せ方はきわめてスリリングで、構成は光っている。


またその見せ方は、それぞれの人物の心理を描く上でも、効果的なものになっている。

たとえば主人公の女が、いろんな男に抱かれたがる理由なんかは、いい例だ。
その理由ははっきり描かれるわけではないが、ラストで、主人公のトラウマが明かされることにより、何となく理由を想像できるところなどは見事だと思う。

キム・ベイシンガー演じる母親も描き方が良い。
彼女が浮気をする心理を、自身の乳がんや、夫の不能といった事実を、徐々に明らかにすることで、さりげなく仄めかすあたりなんか、なかなか手馴れている。演出はきわめて繊細だ。
もちろんジェニファー・ローレンスも、母の浮気にいらだつ少女をナイーブに演じていて、好印象である。


冷静にふり返るに、プロット自体はさして大した話でもないと思う。だけど、見せ方ひとつで、本作は非常に優れた作品へと昇華している。
非常に見応えがあり、深みもあり、エンタメとしてもおもしろい、大満足の一品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・シャーリーズ・セロン出演作
 「告発のとき」
 「スタンドアップ」
 「ハンコック」

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