2009年度作品。アメリカ映画。
空想が大好きな8歳の少年マックスは、母と姉との3人暮らし。しかし、近頃母も姉も自分をあまり構ってくれず、それに怒ったマックスは母とケンカし家出。浜辺にあった船に乗って海に出てしまった。そうしてたどり着いたのは、見たこともないかいじゅうたちが棲む島。マックスはかいじゅうたちの中へと入っていくが、彼らはマックスを食べようとする。そこでマックスは「僕は王様だ!」と空想の物語を語りはじめ…。(かいじゅうたちのいるところ - goo 映画より)
監督は「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ。
出演はマックス・レコーズ、キャサリン・キーナー ら。
柔らかい雰囲気の映画である。
それは多分かいじゅうたちがCGではなく、着ぐるみを使って撮られていることが大きいのかもしれない。
風で体毛が揺れたり、ドスドスと歩く様は着ぐるみならではの味わいがあって、おもしろい。
「アバター」を始めとして、映画界はCG全盛の時代だけに、かえってこういうつくりは新鮮に映る。
そのため、特殊の世界を違和感なく受け入れられるのだ。
だが、肝心の物語の方は何かが足りないという印象は残る。
ストーリーの流れは平板で、盛り上がりに欠けるからそう感じるのかもしれない。
しかし、大したことのない内容の原作を、オリジナリティを加え、ここまでの作品に仕上げたのは見事な限りだ。
特に映画オリジナルな部分で目を引くのは、現実とファンタジー世界が、上手く呼応していることであろう。
主人公のマックスはちょっと乱暴で衝動的な部分もある男の子だ。
誰かに、特に母親にかまってほしいと思い、それが叶わないと、わがままな行動も取り、癇癪も起こす。だが時間が経って冷静になると、それを反省して落ち込む弱さも持っている。
その姿は、かいじゅうキャロルと重なる部分が多い。
KWに惹かれながら、彼女に対して尊大な態度を取り、怒りにまかせて暴力的な行動をとることもある。けれど時間が経つと落ち込んで反省もする。
互いは非常にそっくりだ。
そういう風に考えると、マックスはキャロルを通し、自分自身の姿を、客観的に見ていると言えるのかもしれない。
自分を客観的に見る。それは大人に至る道のりに、一歩踏み出したという言い方も可能だろう。
最終的にマックスは自分の世界に帰り、母と仲直りをする。それは幸福な終わり方だ。
だがあえて意地悪に言うなら、マックスはまた母に対して、わがままな行動を取ることもあるのだろう、という気もしなくはない。
だがかいじゅうたちのいるところから帰ってきたマックスは、少なくとも何かを得て帰ってきたはずだ。
その手応えが、何とはなく画面越しから感じられる。
物足りなさはあるものの、ラストのその手応えゆえに、味わいはなかなかよいのである。
評価:★★★(満点は★★★★★)
出演者の関連作品感想
・キャサリン・キーナー出演作
「イントゥ・ザ・ワイルド」
「カポーティ」
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