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絵のモデルを頼んだ加菜に、憧れにも近い感情で惹き付けられていく美術部員の春―生意気な女子生徒―由貴に、こっそり大切な思いを打ち明けてしまったえみ先生―容姿の劣る親友・実枝に彼氏ができ、穏やかでいられなくなる里加―女子高を舞台にキラめく感情の交差を描き出した、書下ろし1編を含む全7編。
出版社:光文社
僕は男なので、女子高の雰囲気については、何も知らない。
だからこの小説に出てくる、女子社会の雰囲気は、読む分には非常に楽しく、同時に少しうっとうしい気分にさせられる(もちろんいい意味だ)。
そう男の僕に感じさせてくれるほど、本作では女子高生や二十代女性の心理が丁寧に表現されているのだ。そのためいろいろおもしろく、多くのことを発見させられる。
と同時にも、僕が突然女になったとしたら、この世界でやっていけないなとも思った。女子の社会って、めんどくさそうである。
本作中では、『忘れないでね』が一番好きだ。
主人公の美奈は、みんなから避けられている空気が読めない女、真琴と親しくなる。その微妙な関係がおもしろい。
美奈が真琴と仲良くするのは、自分をきらきらと見上げてくれるからで、優越感を味わっていたいからだ。
しかし同時に、そんな関係から逃れたいと思っているところもおもしろい。そして最後にはそれとはまた真逆の自分の感情に気付くことになる。
美奈という少女は、そういう意味、いろいろな感情を抱えもった、かなり複雑な子に感じられた。
だけど、その入り組んだ心理の揺れが、男の僕にはとても新鮮に映り、きわめておもしろく読めた。
そのほかにもいい作品は多い。
憧れにも似たふしぎな親近感を一人の少女に抱いているのに、それをすなおに発露しない心理がおもしろい、『銀杏泥棒は金色』。
地味系女子の、微妙に屈折した心理や、派手な女性への憧れめいた感情がおもしろい、『ポニーテール・ドリーム』。
女性同士が相手を見るとき、微妙な意地の悪さが心に残る、『いちごとくま』、など。
男の僕に女心などわかるはずがない。
それだけに、僕には思いつきもしない発想や心理があって興味を引かれる。わからないからこそ、おもしろい。
女性はなおのこと、男が読んでも、本書はなかなか楽しい一冊ではないかと思った。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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