「本屋大賞」を受賞した小川洋子のベストセラーを映画化。80分しか記憶のもたない数学者と家政婦親子の交流を描く。監督は「雨あがる」の小泉堯史。出演は寺尾聰、深津絵里ら。
巧い、そしてそれなりに面白い、だが物足りない。いきなり結論を書くと、この映画の印象はそんな感じになる。
この映画では数学者の博士と家政婦、そしてその息子のルートとの絆が一つのテーマになっているのだが、その一つ一つの積み重ねが丹念に描かれている。
そしてその絆を描くに当たって、数学というものがかなり大きな役割を果たしている。
ことに友愛数やオイラーの公式の使い方は見事だ。オイラーの公式は、冷静に考えればかなり説明が厄介のはずなんだけど、それを素人でもわかりやすく、しかも深い意味を隠しているという事を丁寧に説明している。そしてそのエピソードが淡い感動を呼んでいるのが印象深い。
なんとも暖かい連帯を感じさせる、優しい作品だ。しかし全体的にトーンが地味なためか、インパクトに乏しいというのも偽らざる思いである。その辺りが残念だ。
以下は蛇足になるし、細かい点なのだが、吉岡秀隆が数式を説明するシーンが若干くどく感じられた。また中学校教師が簡単には準備できないマグネットを使って説明している事にどうしても違和感を覚えてしまった。わかりやすさのためとはいえ、やはりある程度のリアリティはほしいと思う。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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