私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「セラフィーヌの庭」

2010-10-19 21:00:11 | 映画(さ行)

2008年度作品。フランス=ベルギー=ドイツ映画。
1912年、フランス・パリ郊外のサンリス。貧しく孤独な女性セラフィーヌの日々を支えていたのは、草木との対話や歌うこと、そしてなによりも絵を描くことだった。ある日、彼女はアンリ・ルソーを発見し、ピカソをいち早く評価したドイツ人画商ヴィルヘルム・ウーデに見出され、その後、彼の援助のもと、個展を開くことを夢見るようになる。そんな中、第一次世界大戦が起こり……(。セラフィーヌの庭 - goo 映画より)
監督はマルタン・プロヴォスト。
出演はヨランド・モロー、ウルリッヒ・トゥクール ら。




セラフィーヌ・ルイという画家を、この映画を通して、今回初めて知った。
多分日本ではそこまでメジャーではないのだろう。実際ウィキペディアの日本版にもないくらいだし。

だが知名度はともかく、彼女はおもしろい絵を描く人だ、と本作を見ていて強く感じた。
映画本編や映画のホームページには、植物の絵しか出ていないが、それらの絵はキャンバスいっぱいに描かれていて、枝葉や花はうねるような格好で描出されている。

映画中に、葉っぱが昆虫のように蠢いて見えるという言葉があったが、的確な言葉だ。
そう感じられるのは、絵が全体的にパワフルだからだろう。

ナイーヴ・アート(素朴派(アンリ・ルソーたちの系列の作品))とくくられているが、彼女の絵はプリミティヴ・アートだ、ってな感じのセリフも作中で出てきたが、まさに原初の力を感じさせるような、勢いを絵の中に見出すことができる。
きっと彼女の内面には、そのようなものを生み出す力が眠っていたのだろう。


そんなパワフルな絵を描く人ということもあってか、セラフィーヌは少し変わった人生を歩んできたらしい。
掃除婦などの日銭労働に従事しながら、天使のお告げのために絵を描き続ける彼女は、エキセントリックな感性の人のようだ。

その個性のゆえか、他人に認められない不遇の期間が長く続いた。
そしてようやく報われたってところで、あのような結末になるのはちょっと悲しくもある。
彼女のようにエキセントリックな人には、いきなり売れっ子になるという環境の変化は、精神的負担が大きかったのかもしれない。
人生は往々にしてままならぬ。そんなことを考えてしまう。


ともあれ、知らない画家の人生を知ることができて、それなりに楽しくあった。
物語自体は平坦で、少し退屈な面もあるけれど、孤独な画家の一生を丁寧に描いていて、好ましい一品である。

評価:★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・ヨランド・モロー出演作
 「ベティの小さな秘密」
・ウルリッヒ・トゥクール出演作
 「アイガー北壁」
 「善き人のためのソナタ」

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