私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「フロスト×ニクソン」

2009-04-20 21:01:07 | 映画(は行)

2008年度作品。アメリカ映画。
コメディアン出身のテレビ司会者デビッド・フロストと、ウォーターゲート事件の汚名にまみれた元アメリカ大統領リチャード・ニクソン。このインタビューに全米進出のチャンスを賭けるフロストと、政界復帰への望みを託すニクソンは、テレビカメラの前で熾烈なトークバトルをくりひろげる。
監督は「ビューティフル・マインド」のロン・ハワード。
出演はフランク・ランジェラ、マイケル・シーン ら。


この映画で、もっとも印象的なのは何と言っても、ニクソンの存在感だろう。
ウォーターゲート事件での不法行為を弾劾されて、立場的に追いつめられている側にも関わらず、テレビインタビューの場面になると、逆境にいる人間とは思えないほど、恐ろしく手ごわい。
インタビュアの追及を交わし、情感に訴えるエピソードを挿入することで、巧みに自己弁護を行なう姿は、やはり世界の頂点の地位についただけのことはあると思わせるものがある。
一言で言うなら、老獪なのだ。そこから、一筋縄ではいかないパワータイプの政治家の姿が浮かんでくる様が見事である。

そんなニクソンを相手に、司会者のフロストが苦戦する姿も見応えがある。
老練な政治家相手にうまく切り込むことができないまま、フロストのインタビューは当初、中途半端なままで終わってしまう。それでいて、それを挽回するだけの行動を取っていない、あるいは取れない姿からは、彼の人間性が伝わってくるようで、おもしろい。

そんなフロストが、酔ったニクソンに発破をかけられて発奮する展開はなかなか熱い。
そしてニクソンに追いつめられていたフロストが、ついに逆にニクソンを追いつめるまでに至る過程には少しドキドキした。

しかし、たった一度のミスが、ニクソンを決定的に敗北に追い込む流れは、単純化そして矮小化を行なう、テレビの力を見せつけられるようで、いろいろ考えさせられる。その点も個人的には好印象だ。

正直地味な作品ではあるのだけど、骨太タッチで描かれる静かな心理戦は臨場感に富んでいて、充分楽しい。
じわじわと湧いてくるようなおもしろさが、なかなか忘れがたい一品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


出演者の関連作品感想
・フランク・ランジェラ出演作
 「グッドナイト&グッドラック」
 「スーパーマン リターンズ」
・マイケル・シーン出演作
 「クィーン」
 「ブラッド・ダイヤモンド」

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