私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「麦の穂をゆらす風」

2007-01-09 19:17:21 | 映画(ま行)


2006年度作品。アイルランド=イギリス=ドイツ=イタリア=スペイン映画。
1920年アイルランド、そこでは隣国イギリスによる支配が行なわれていた。医師になる将来を捨てデミアンは兄と共に独立を求める戦いに身を投じるが…
2006年カンヌ映画祭パルムドール受賞。
監督は「SWEET SIXTEEN」のケン・ローチ。
出演は「プルートで朝食を」のキリアン・マーフィ。ボードリック・ディレーニー ら。


人間というものは愚かしいものだ。いやあるいは不器用と言うべきなのか。この映画を見ているとそんなことを思う。

この映画で描かれるのはイギリスからの独立を狙うアイルランドの姿だ。
イギリスのアイルランドに対する支配は一言で言えば、苛酷である。それだけにその支配に耐えかねて、戦いをくりひろげる人々の気持ちは痛いほどに伝わってくるし、共感も覚える。

しかしそんなアイルランドの人間も、独立を目指して共闘しながら、決して一枚岩ではない。人間が集まっているのだから、当然といえば当然だが、互いの理想や理念や思惑により衝突することもある。
そして悲しいのは、それに対して、統制を求めるあまりに、内部で処刑や弾圧を行なわれるという点だ。その姿はあまりに見ていて苦しい。

アイルランドの人間は、支配されるという悲惨さ、苦しさを味わい、だれよりもそのことを知っているはずだ。なのに、なぜ同じ国の人間を以前自分たちが苦しめられた方法をつかって押さえつけようとするのだろうか?

もちろん、押さえつける方も、押さえつけられる方も、互いがそんなことをしたくないことを知っている。しかし純粋で、手応えのある結果を求めるあまりに、考えは硬直し、性急に行動を起こし、愛する人間を傷つけることになってしまう。
その矛盾に満ちた悲劇と、現実の悲惨さと、人間というものの悲しさが胸に深く突き刺さった。
すばらしい、の一語に尽きる作品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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