計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

日本気象学会・機関誌「天気」6月号に掲載されました。

2014年07月06日 | 山形県の局地気象
 待ちに待った、日本気象学会・機関誌「天気」6月号が届きました。
 6月号には私の「山形県における冬季の降水域形成の数値実験」と題した調査ノートが掲載されています。

  

 今回も「天気」編集委員会の皆様には大変お世話になりました。エディターさんの丁寧なアドバイスやコメントに支えられ、さらに月当番の校正委員さんや編集書記の皆さんにも締切直前まで原稿を確認して頂き、ようやくこのページが出来上がりました。今は感謝の想いで一杯です。綺麗にレイアウトされ、印刷・製本されたページを見ると、とても感慨深いものがあります。

 さて、今回の内容は、5年前の2009年に掲載された「3次元熱流体数値モデルの独自開発 ─山形県置賜地方の冬季局地風への適用─」の続編です。

 前回は「熱と流れの理想実験(数値実験)」だったのに対して、今回はさらに「凝結・降水過程の考慮」にトライしてみた・・・というものです。ここまで到達して、いよいよ「局地気象の数値モデル」らしい感じになってきたな・・・と言うのが率直な感想です。

 2009年以前から、山形の冬の気象にアプローチする上で「季節風の強弱」が重要なファクターという事は感じていました。そして、2009年の段階で「熱と流れの数値シミュレーション」により、「季節風の強弱」による「局地風系の違い」は描き出すことが出来ました。この次はやはり、その風の流れの違いによる「降雪域の広がり方の違い」を描き出したい・・・と思ってきました。その想いがようやく実現しました。

 思えば、私が気象予報士になったのは、大学工学部4年に進級する直前(1998年3月上旬だったので)。当時は、機械工学を専攻していました。当時、気象予報士になった直後にふと思ったのは、晴れて合格した後で「局地気象に対してはどのようにアプローチ(勉強)すれば良いのか?・・・」という事です。気象予報士の試験勉強を通して「天気図などの気象資料」の読み方は学びます。しかし、果たして「そのような天気図を分析しただけで、山形県置賜地方の局地気象がわかるのか?」ということです。

 そもそも「局地気象(=当時は山形の気象特性)はどのように学んでいけばよいのか?」ということが分からず、またモデル・ケースも見当たらなかったのです。

 そこで、あれこれと「手探り」が始まります。まずは天気図を基に日々の予想から始めてみます。そうすると地元の冬のある事に気づきます。それを突き詰めると・・・どうやら「季節風の強弱」が重要なファクターであると感じました。

 今度はそのメカニズムを理論的に考察し、概念モデルの構築を試みます。当時はその様子をホームページに書き綴っていました(※現在、このホームページはありません)。当時は、LESやRANSと言った乱流解析はもとより、簡単なCFD(計算流体力学)の技術さえも持っていなかったので、大気の流れを質点力学でモデル化しようとしていました。

・・・あれから十余年。

 局地気象へのアプローチを続け、今ではその結果を学会の大会の場や学会誌上で発表しています。これらは全て「(地元の)局地気象はどんなふうに学んでいけばよいのか?」と言う、過去の問いかけに対する、自分なりに辿り着いた「答え」でもあります。

(p.s.)
 この調査ノートがオンライン「天気」上で公開されるまでのは約1~2ヶ月後になります。

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