超芸術と摩損

さまざまな社会問題について発言していくブログです。

TERRIBLE REPORT ある日突然[精神科に突然入院]の理不尽

2008-09-16 18:52:58 | 週刊誌から
普通に暮らしていたら家族や隣人に通報され警察が病院へ……
それを機に仕事を失い、再就職が困難になった4人が激白!

精神科の強制入院は大きく分けて2つある。「自傷他害の恐れのある人」を対象にした措置入院、そして前述の症状はないが本人同意が得られない場合、保護者などが申し出られる医療保護入院だ。しかし、治療が必要な場合に限らず「いたって健康な人々がある日突然、精神科病院に連れていかれ、入院させられてしまった」という証言が集まってきた。信じがたいその事例を追ってみた

閉鎖病棟の数世界一!ベッド数を確保しないと採算が取れない不思議

 普段と変わらぬ生活を送っていたら、突然有無を言わさず強制入院させられる……そんな悪夢のような出来事が実際に起きている。「病状を判断するのはあくまで医師」というのが一般的な解釈だが、それだけでは説明のつかないケースが多く存在するのだ。被害に遭った人々は、退院後も差別や偏見、投薬の後遺症などで社会復帰が難しく、まさに踏んだり蹴ったりの状況である。
 取材を進めていくと、日本の精神医療の実態に関する驚くべきデータにぶちあたった。病院勤務医師一人あたりと人口一万人あたりの病床数(A、B)がなんと世界一。この狭い島国で、入院しなければいけないような人がそんなに多いというのか……?
「ほとんどの精神科病院では、ベッド数を確保し、少しでも多くの人が長く入院しないと採算が取れないのです」と語るのは、地域精神医療の実現に長年取り組んできたA医師。精神科の医師数は一般医療の3分の1でもよいとされた「精神科特例」が撤廃された現在もその慣習が残っており慢性的な医師と看護師不足。緻密な医療が困難なため、一般病棟に比べ在院日数が多く(C)、強制入院である措置入院と医療保護入院に適用される閉鎖病棟が多くなる(D)。
「精神障害者の地域医療と地域ケアシステムが整わない限り、病床数は減らないでしょう」(A氏)
 しかも、保険点数が最も高い精神科救急入院病棟は「措置入院、緊急措置入院、医療保護入院、応急入院、鑑定入院または医療観察法入院」を多くしなければならないため、「その病棟を有する病院としては、軽い表病状の人でも強制入院させたいという誘惑にかられることはあります」(同)。つまり、本来入院を必要としない人が入れられる場合もあるというのだ。
 また精神保健福祉法の第23条には「精神障害者またはその疑いのある者を知った者は、誰でもその者について指定医の診察および必要な保護を都道府県知事に申請することができる」とある。また、通報もしくは「その他周囲の事情」から判断した警察官には通報義務もある。すなわち誰かに「異常」と思われ精神科病院に連れていかれると、入院させられてしまう余地があるということか……?
「強制入院の妥当性を判断する第三者機関が十分機能していない」(同)というだけに、事態は深刻だ。小誌では、そのような異常な経緯で強制入院をさせられ、運よく退院できた人々を直撃した。


医師 A氏
精神障害者に対する地域ケアシステム集実集充実のため、長年尽力している。特に精神障害者の長期入院についてさまざまな問題提起をする


A 精神科病院の諸外国との比較 Atlas country profiles on mental health resources, WHO, 2001
人口10万人対医師数
日本8.0 アメリカ10.5 イギリス11.0 イタリア9.0 カナダ12.0 ドイツ7.3 フランス20.0
医師一人当たり病床数
日本35.5 アメリカ9.0 イギリス5.3 イタリア1.9 カナダ16.1 ドイツ10.4 フランス6.0

B 人口1万人対精神病床数 OECD Health Date2007
日本28 イギリス7 フランス10 イタリア1 スウェーデン5 アメリカ3 カナダ3 韓国8

C 一般病床と精神病床の比較 2006年医療施設調査・報告
国・公的病床の割合 
一般病床22.8% 精神病床9.6%
平均在院日数
一般病床19.2日 精神病床320.3日

D 入院形態と入院病棟 厚労省2006年6月30日調査
措置入院
夜間外開放3% 終日閉鎖91% 上記以外6%(目分量)
医療保護入院
夜間外開放15% 終日閉鎖77% 上記以外10%(?、目分量)
任意入院
夜間外開放46% 終日閉鎖42% 上記以外25%(?、目分量)

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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CASE.1 ヤクザ風の男たちに連れ去られた日から職も友達も失った。これは拉致だ!

2008-09-16 18:52:16 | 週刊誌から
Mさん・40歳・男性
当時うつ状態だった母親の虚言により強制入院。退院後も通院を強要され、最終的に医師から付けられた病名は「会社に行きたくない病」

 東京の環境調査会社で多忙な日々を送っていたMさんは、体調を崩し、療養も兼ねて岩手県の実家に戻り、フリーという立場で順調に仕事をしていた。
 ところが3年前の休日、自宅にヤクザ風の男性2人と、病院職員を名乗る初老の女性がいきなり乱入してきた。身の危険を感じたMさんは、身分証明書の提示を求めたが「そんなものは持っていない」と一蹴され、屈強な男2人に両脇を固められる形でワゴン車に押し込められた。
 到着先は地元の精神科病院。すぐに副院長が登場し、「お母さんがあなたに暴力を振るわれて困っている」と切り出した。Mさんが「そんな事実はない。母はうつ状態で虚言を繰り返していた」と言ってもまったく耳を貸さず、ニヤニヤと笑っている。観念したそぶりを見せると、病院職員はすぐにMさんを閉鎖病棟へと連れて行った。3か月の入院期間に、Mさんは病院のさまざまな「悪事」を目にし、自らも体験したと言う。
「看護師は、患者に対して殴る蹴るの暴力を日常的にふるっていた。なかには、自らの意思で入院したのに強制入院扱いになっている人も。私は、担当医から『あなたは所詮負け組だ』『マザコンだ』などの言葉の暴力を受け、食後は薬を無理やり飲まされていました』
 その後、Mさんは「病名なし」の状態で退院したが、近所の人々から「精神科病院に捕まった」と噂され、街も歩けなくなってしまった。親類の冠婚葬祭にも同窓会にも呼ばれず、仕事の依頼もプッツリ途絶えて現在は無職の状態である。
「地方では、都会よりも精神障害者への偏見が強く残っています。理不尽な強制入院で、社会的信用も人との繋がりもすべて失った」
 現在Mさんは、岩手県の保健所とともに病院と係争中。身分証明書も見せずに人を連れ去り拘束するのは「精神保健法違反」である、院内で患者が暴力を受けている、院内環境が劣悪であることの3点について福祉環境部に調査を依頼し、話し合いの場を持って病院の制度と環境を改善したいと言う。
「担当医は何度も『あなたは病気じゃない』と明言しているのに、なぜ強制入院が成り立つのか? 私の人生を破壊しておきながら謝罪すらしない。今は同じ境遇の人を救いたいという思いだけです」 

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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CASE.2 4人の警察官に囲まれ精神科病院へ。10日間で息子との信頼関係も失った

2008-09-16 18:51:37 | 週刊誌から
Eさん・43歳・女性
退院後は両親と断絶、息子とは会話なし。しかし不当な拘束をした病院は今、看護師の内部告発により今後新局面を迎えそうな気配

 5年前、末期の子宮頸がんで入院する際、全財産を実母に預けたEさん。奇跡的に回復し、退院したときにはその大半がなくなっていた。なんと、母親が娘のカネを使い込んでいたのだ。Eさんは27歳で離婚、退院当時は15歳の息子と二人、身を寄せ合いながら生活していたのだが……。その後は両親と別居したが、実母はEさんの留守中に合鍵を使って度々侵入、室内を荒らすなどの嫌がらせを繰り返していく。
「両親が商売に失敗した後、2人のために家まで立ててあげたのに、なぜこんな仕打ちを受けるのか」
 そして2年前のある日。話し合いのために実母の部屋に行くと、Eさん宅の鍵付きの物置にあるはずの「鎌」が、ベランダに放置されているのを発見。問い詰めると、実母は突然鎌を振り回し、自分で自分の頭を傷つけてしまった。
 その夜、Eさん宅に地元の警察官4人が訪ねてきた。母親から傷害の訴えが出ていると言う。あれは自傷だと説明すると、
「とにかく病院にいきましょう。お母さんもそこで診察を受けているし、先生もいい人だから」
 と言うので、素直に従ったのだが、その言葉は真っ赤な嘘だった。着いた先は精神科病院、実母は受診しておらず、医者はすぐにEさんを「被害妄想」と診断、20人の職員に包囲させて保護室へ。
 翌日、すぐに精神保健センターに電話をかけて退院請求するも、2週間かかると言われ断念。最終的には、交際相手の男性が担当医と面談、何とか10日後に退院することができたのだが、保護者ではない第三者が退院許可を得ることは異例のケースだ。
「辛いのは、息子が『言ったもん勝ち、嘘も真実になる』という考えに偏り、口ゲンカのたびに『また病院に入れるぞ!』と言うようになったこと。息子に長年かけて教えてきた道徳心は、たった10日で消えてしまった。今はただ、病院と警察の姿勢を正したい」

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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CASE.3 死ぬよりも辛かった入院9か月。自分を取り戻すまで半年以上かかった。

2008-09-16 18:51:00 | 週刊誌から
Iさん・32歳・男性
家庭の事情で大学中退を余儀なくされ実家へ。尊敬していた父親の変わり果てた姿を見て殴ってしまい、初の強制入院を経験する

 父親を殴ったことによる1度目の強制入院は、病院の副院長が正常であると判断したため、1週間で退院することができた。
「その頃僕は為替トレーダーになろうと決意、勉強しながら何とか生活費を稼げるまでになっていました。近い将来会社を興し、父親に楽をさせてあげれば元気になってくれるだろうと、反省の意味も含め考えた末の選択でした」
 本当の悲劇はその3年後、'05年に起きる。当時一緒に暮らしていた母親と買い物中、冗談で「デコピン」をした数分後、店内に警察官5~6人が踏み込んできてIさんをパトカーに乗せ、そのまま精神科病院へ連行した。
 病院では、鉄格子付きの保護室に即収容された。翌日やってきた院長は、問診もなしに「統合失調症」という診断を下した。警察に通報した母親は、数年前から怪しげな宗教団体に所属しており、「息子に悪霊がついているから隔離してほしい」と言ったらしい。「君は自分がまともだと思っているのか」と日々院長からなじられ、薬を拒否すると強制的に注射をされるので、飲んだふりをしてすべて捨てた。そして、食事は冷え切って無味の劣悪なもの……。
「早く出たいなら、院長の言いなりになって開放病棟へ移るのが得策だと、仲良くなった看護師さんが教えてくれた。病院スタッフは僕が正常だと知っていました」
 アドバイスに従い、Iさんは9か月後に外出許可をもらってそのまま逃走する形で退院に成功した。
 しかし、完全に社会復帰するまで半年以上かかったと言う。コンビニに出かけることすら不安な気持ちになってしまい、トレードの感覚もすっかり忘れて戻らない。近所の噂が耳に入る。
「何の希望も持てず、死にたくなるのが強制入院生活。9か月でこうなのだから、1年以上経験したら社会復帰はとても無理でしょう」
 結局Iさんは元の土地にいられなくなり、単身別の土地へ引っ越したが、心の傷は癒えていない。

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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CASE.4 夫の選挙活動に反対したら精神科入院。医師と自治体相手に抗争10年

2008-09-16 18:50:20 | 週刊誌から
Fさん・62歳・女性
出張美容師として社会復帰したFさんは現在、一人でも多くの強制入院の被害者を救うため、最高裁で精神科医らと闘っている

 夫は教師を辞職して父親の会社を継いだ地元の名士、3人の子供に恵まれ、自宅1階で美容室を営んでいたFさんは、傍目には幸福な女性に見えていただろう。しかしその実は、子供の頃に虐待を受け、心に深い傷を負った夫から日常的に暴力をふるわれ、離婚にも応じてもらえない辛さに耐える毎日。弁護士に相談すると「ご主人を精神科へ連れていくべきです」とアドバイスされた。
「心療内科でカウンセリングを受ける主人の姿は本当に異様でした。さっき言ったことを忘れてしまったり、突然子供っぽくなったり、ありもしないことをしゃべり続けたり・・・・・・多重的人格、虚言癖、妄想癖など、さまざまな病気が混在している、それこそが主人の本当の姿のように思えて、背筋が寒くなったのを今でも覚えています」
 そんな夫が10年前、幼なじみでもある現国会議員の中川氏(当時は八木町長)にそそのかされ、八木町の町会議員選挙に出馬することに。
「心を病んでいる人に、どんな町政ができるというのでしょうか。私はもちろん断固反対の姿勢で選挙活動も手伝わず、家を出ていました」結局、夫は中川議員の大いなる権力を借りて選挙に当選。Fさんもしぶしぶ自宅に戻った。そんなある日の夕方。Fさんが仕事中に居間に入ると同時に、突然背後から夫に押さえつけられた。その直後に八木町の職員3人と、精神科医の瀬尾氏が乱入。頭に袋をかぶせられ、職員3人に手足を押さえられた状態で、瀬尾医師から精神安定剤の注射を打たれて意識を失う。そのまま町の公用車に担ぎこまれた。
 目が覚めると、そこは山中にある精神科病院の保護室。鉄格子の中には汚れたベッドと剥き出しの便器、それに監視カメラも設置されていた。
 医者の問診なし、力ずくの強制入院は、拉致と同じである。しかも保護者の夫には通院歴があるというのに、病院側はそちらの話だけを信じ、Fさんの話には耳を傾けようとすらしなかったという。
 「数日後には大部屋へ移されましたが、そこはまるで収容所。狭い部屋で、熱が出てもほったらかし。便秘をすると下剤を投入され、脱肛寸前の辛い思いをしたことも。ベッドに、革ベルトで一日中拘束されている老婆もいました」
 治療は、カウンセリングとは名ばかりの短い問診と薬物。それも口を開けさせられ、強制的に放り込まれる。病名も適当に付けられ、日によってコロコロ変わっていった。
 だが最終的にはFさんの兄が府知事宛に代理投函してくくれた退院請求が認められ、2か月半後にやっと病院の外へ出られた。
「町に帰ると町職員や中川議員から迫害を受けるので、退院後は家に帰れず、知人との交流も絶たれ、仕事もなくしてしまいました。何より辛かったのは、私が入院中、子供が主人にすっかり洗脳されてしまったことです」
 しかし、このまま泣き寝入るするFさんではなかった。瀬尾医師、八木町、中川議員を相手取って人権侵害と損害賠償の裁判を起こしたのだ。
「町の職員は裁判で、当時私が刃物を振り回して暴れ、いつ人を傷つけるかわからないから強制入院させる必要があったと証言しましたが、もちろんそんな事実はありません。実はこの事件の前夜、主人と中川議員、職員3人と瀬尾医師は私を強制入院させる打ち合わせをしていたことが裁判で明らかになった。選挙や町政に反発し、主人が心の病だと知っていた私を精神障害者に仕立て上げ、社会的に抹殺しようと企てたわけです」
 地裁では瀬尾医師と八木町に対しては勝訴したが、中川議員については認められずに敗訴。高裁でも敗訴し、現在は最高裁で係争中だ。

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過去に起きた強制入院の例

2008-09-16 18:49:39 | 週刊誌から
駐車場で夜を明かしていたら
友人と映画を見た帰り、終電を逃し所持金が少なかったので駐車場にて夜を明かす。明け方、体にはってきた蟻を振り払っていると通行人に不審者とみなされ通報される。取り調べの際、疲労していたため身元について話さないでいると、そのまま移送され鑑定入院させられた。

歯科医に文句を言ったら
5年間歯科矯正治療を受け、総額130万円を支払ったが改善されないまま一方的に治療を打ち切られる。歯科医院を訪ね苦情を言うと、歯科医が待機させていた警察官が横の部屋から登場。「警察官通報」によって病院に移送、「妄想状態」「人格障害」と鑑定され3か月の措置入院。

薬を飲んでいないのに「全治」
職場でもめごとがあり、帰宅後勤務先から両親経由で解雇を告げられる。その直後、両親に精神科へ連れていかれ、自傷他害の意図もないのに強制入院。薬は危険だとわかっていたため、2か月間飲んだふりをしていると、医師から「治った」とされ退院。

DV夫の言い分が通ってしまう
夫の暴力と浮気に悩んでいたある日、夫に精神科に連れて行かれ、もともと痩せ形にも関わらず「摂食障害」と診断され強制入院。自分で食事ができるのに1年間点滴を打たれ、拒否すると縛られた。だが某精神科病院での入院患者暴行事件が報道されると、理由なく点滴が外された。

酔ってつい妻に手を。その後は
酒に酔ったある日、つい妻を殴ってしまった。すると実家に呼ばれ、そのまま入院させられる。ここまではある程度仕方ないかもしれない。だがその4~5年後、電話で大声でしゃべっていると母親に「怒鳴っている」とみなされ、強制入院。いきなり保護室に入れられ縛られた。

統合失調症の母の言葉を真に受けた医師に、謎の注射をされる
職場のトラブルから、いじめや中傷を受けていた被害者。統合失調症の疑いがある母親を精神科に連れていくと、医師に「あなたの幻聴の方が深刻」と言われ何かを注射される。事前に母親から話を聞いていた医師が、被害者が職場で受けた中傷を幻聴・被害妄想と解釈していた。目を覚ますと保護室だった。「もう聞こえなくなりました」と言うと退院できた。その後、上司や同僚の応援で調査してもらい、職場で被害者に対する中傷があったことが証明された。だが、病院側は主張をコロコロ変えて正当化している。

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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必要のない強制入院、そのカラクリとは

2008-09-16 18:48:54 | 週刊誌から
健康な人、または入院するほどでもない人が手当たり次第病院に送られていく現実。運が悪いのか、もしくはそのシステムに問題があるのか!?

「強制入院が必要な人とは、幻覚や幻聴が聞こえ、それに操られて『自分は死ななければならない』と思っている人。覚醒剤・アルコール依存症・薬物中毒による幻視・幻聴によって犯罪(ママ)、錯乱している人です」と話すのは、精神科医の笠陽一郎氏。笠氏は上記に当てはまらない人に強制入院が適用されてしまう要因に、精神科診断システムが関係していると推測する。それ以前は、患者と思われる人の育ってきた背景、家族構成、家系にまで遡って精神障害か否かを調べていったが、アメリカの精神医学会が考案した「DSM分類」を全面的に導入して以来、誤診が増えたと言うのだ。これを例えて言うなら、10項目の質問に○×で答えていく簡易テストのようなもの。ある診断基準を満たすと精神疾患だとみなしてよいとされる。症状のみの論理的推察と統計学的要素を取り入れ分類したこのテストによって、診断基準が明確になったと言われるが……
「数々の症状が本当に精神障害から来ているかどうかを、10の質問や数分の問診で知ることは非常に難しい。診断の間違いは私にも他の医師にも起こり得るので、本来は利害関係のない複数の医師に診断してもらうのが最良です」
 実際、診断基準の内容や疾患分類の妥当性については疑問視する声も少なくなく、政治的な圧力に左右されたとも言われており、純医学的概念ではないとの指摘もされている。現場の医師たちも頭を悩ませているようだ。
「自宅にいって生活態度や部屋の様子などを総合的に観察していけば、どちらがおかしいのか初めてわかる」(笠医師)
 さきの事例にもあるように、相談に来た家族の方が精神を病んでいる例も少なくない。
「例えば、○○大学に何としても入学しろと長年子供に強要し、子供が耐え切れなくなってバットを振り回した例がありました。子供側にしてみれば必死の抵抗であり、精神科の範疇には入らない。これを強制入院させるのはおかしな話です」

誤診と高い保険点数、そして……

 また、強制入院の背景の一つには「厚労省が定めた医療点数配分の問題があることは否めない」と言う。本人意思による任意入院の基本額は約30万円。しかしその精神病院が精神科救急医療システムに参加している場合、「精神科急性期治療病棟入院料」扱いで入院すると約60万円、「精神科救急入院料」(スーパー救急=警察関連での強制救急)になると約90万円(すべておよそ1か月の場合)。
 また、たとえ任意入院だとしても、「君は症状が重いから」と言えばスーパー救急扱いとなる。それゆえの「誤診」も多いのではないかと笠医師は懸念する。
 30年以上のソーシャルワーカー歴を持ち、世界各国の精神医療現場を回った滝沢武久氏は、問題の根底には精神医療と治安維持を結び付けてきた歴史が絡むと話す。
「日本精神病院協会が、精神障害者を『平和と文化を妨害する者』として公安上、旧厚労省に隔離を求めた経緯があります」
 その後、国策として病床が増床され続け、医療法特例により精神科医師一人当たりの患者数を他科の3倍とし、民間病院に県立病院機能の代行を求めた。'71年には精神病棟は25万床に達し、そのうち措置入院患者は7万6000人。最新データによると32万4335床中、措置入院は2276人とかなり改善されてきているが、医療保護入院を含めると全体の約4割で12万345人。任意入院でも閉鎖病棟で長期入院している人が多い。(平成17年度精神医療保健福祉資料調査)
「'71年に爆発的に病床が増えた理由の一つは国の財政事情が良く公費が優先されたこと。その大義は事故・事件の予防措置としての予算確保が政治家から要求されたからと聞いたことがあります。『危険な』精神障害者は公費で隔離しろということ。そうして、精神障害者を隔離する風潮が定着した。世界ではベッドを減らす方向に動いているのに。そこに、入院させた方が儲かるという民間病院の企業論理が絡む」
 手続き上の欠点もある。警察通報・判断による保護の場合、鑑定期限は保護後24時間以内。だが鑑定医を探すうちに多くがタイムリミットを迎え、結果的に病院送りとなるのだ。
 病人でなくとも、強制入院。荒唐無稽な話に見えるが、その器が存在することだけは確かだ。


強制入院のしくみ

精神科医⇒診断
⇓診断結果が居住都道府県の首長へ
首長 入院決定!⇒入院
司法↔医療 境界線はあいまい

対象者
精神障害のため、自分自身を傷つけ、他人に害を及ぼすおそれのある者
(医療保護入院の場合)
精神障害のため、医療および保護のため入院を要すると精神保健指定医に診断された者。この場合行政は介入せず゛、医師の判断と保護者もしくは扶養者の同意があれば入院させることが可能


精神科入院に伴う病院収入

本人が進んで病院に来た場合。精神科入院は本人に説明をして、同意を得ることを基本としている。原則として開放病棟に入るが、本人が同意をした場合には、閉鎖病棟への入院も差し支えないとされている(任意入院) → 30万円

精神科病院が精神科救急システムに参加している場合、「精神科急性期治療病棟入院料」扱いで入院させることができる。本来、精神症状が悪化した「急性期」の集中治療が必要な人に適用される → 60万円

病状が極度に悪化し速やかな治療が必要とみなされた人が対象。家族の申告、または警察官通報によって「精神科救急入院料(ママ)」に運ばれた場合に適用される(スーパー救急) → 90万円


代議士秘書 滝沢武久氏
代議士政策秘書、精神医療福祉モニター。30年以上のソーシャルワーカー、家族に患者を持った体験から精神医療への提言を行う

医師 笠 陽一郎氏
的確な診断および処方を行うためのセカンドオピニオン受け入れや、精神科往診を行う。精神病者サポート活動も

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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精神障害者は犯罪者予備軍? 医療観察法が起こす波紋

2008-09-16 18:47:55 | 週刊誌から
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(心神喪失者医療観察法)が、平成17年に施行された。同法は精神障害者は罰せずという刑法39条にのっとり、殺人、強盗、傷害、傷害致死、強盗・強制猥褻、放火を犯したものを対象に2~3か月の鑑定入院を行った後、指定医療機関での治療を行う。
 同法は精神障害者の治療と社会復帰の促進を名目としている。が、この問題に詳しい池原毅和弁護士は「同法の指定入院機関の医療の質は、一般の精神科病院のそれより優れている部分があった。でも最近は過剰収容になり始め、また旧来の病床をこの法律用に代用・転用する動きも出ています。すると、対象者には『罪を犯した危険な精神障害者』という烙印を押されて、隔離され続ける不利益だけが残ることになりかねない」と問題提起する。傷害の場合、検察官は障害が軽い場合には申し立てをしないことができるが、刑事手続きであれば罰金程度で済む傷害であっても、鑑定入院や入院命令により1年以上の身柄拘束を受ける事例も少なくない。
 また、この法の最も大きな争点は再犯予測の可能性。多くの場合が鑑定入院中に病状が回復するが、実際には再犯防止の観点が重視され、退院許可を出すのは主治医ではなく裁判官だ。だが再犯予測の可能性については医療関係者の多くが否定している。健常者の再犯率と比べると精神障害者のそれは3分の1というデータがあり、重症であるほど再犯率が低いともいわれているからだ。この問題に取り組んでいる精神科医の伊藤哲寛氏は「対象者には手厚い医療を行うため、再犯予測があいまいでもよいという見方もあるが、科学的根拠なしに再犯予備軍扱いすることはできない」と話す。
 ちなみにこの法は池田小事件が起きた際、「危険な精神病患者を野放しにしてよいのか」という世論が高まったのをきっかけに一気に成立した。だが当の宅間容疑者は精神鑑定で精神障害ではないと診断されている。

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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強制入院をさせた側の家族が抱える、苦悩とは

2008-09-16 18:47:05 | 週刊誌から
実際に心を病んでしまった当事者の家族も精神医療の被害者であり、強制入院はあってはならないと考えている。しかし、精神障害者犯罪の被害者の75%がその家族であることは、あまり知られていない。家族としては、どのような行為を受けても、当事者は愛する大切な家族の一員である。当事者の罪を罰する気持ち、守りたいという気持ち、そして自分たちを責める気持ちが交錯する。しかしそんな家族が強制入院に追い込まれないよう、手を差し伸べてくれる公的機関はほとんどない。家族たちの苦悩は増すばかりだ。
 現在76才になるAさんの息子は、小さい頃から自分を表現するのが苦手だった。社会から孤立した息子は、Aさんに暴力を振るうようになった。「はけ口を求めたんでしょうね。甘えも合って、私に」。Aさんは息子と別居。息子はある日、面倒を見ていたAさんの夫を傷つけ、強制入院となった。
 発病前も発病後も地域のケアがなく家族同士で支えあっている苦境。
 そんななか、孤立無援・疲労困憊する家族が強制入院に追い込まれないよう支え、また発病者の自立支援という観点からも活動しているのが、Hさん(83)。内向的な優等生だった息子は、学級委員に選ばれたがうまく立ち回れず、Hさんにもそれを理解してもらえないと暴力を振るうようになった。強制入院を選ばざるをえなかったHさんだが、「強制入院はあってはならない。本人にも家族にも、しこりが残る。そうならないようにショートステイや地域で当事者を支える仕組みを作らなければ」と訴える。
 社会から外れた人々を孤立させ、拘束する精神医療のあり方が問われている。

SPA!週刊スパ2008年6月3日号
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