超芸術と摩損

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初めて明かされる「勝ち組」のタブー ユニクロ中国「秘密工場」に潜入した!  ジャーナリスト 横田増生

2010-05-20 05:33:06 | 週刊誌から
月給2万円、午前3時までアイロン掛け…

八割以上のユ二クロ製品に付く中国製のタグ。だが、どんな工場で作られているのか、日本人は誰も知らない。中国沿岸部の工場で働いているのは、月給二万円の労働者たち。彼らは徹底管理された現場で疲労困憊していた。日本企業のもの作りの現実がここにある。

 デフレの日本で一人勝ちを続けるユニクロにとって、なくてはならないのが中国にある七十カ所の生産委託工場だ。ユニクロによると、年間に生産する五億着の衣類のうち約八五%を中国で生産しているという。
 柳井正社長は自著『一勝九敗』でこう語っている。
<ぼくらの場合は小売出身なので、生産はできないが、(中国の)メーカーに委託した場合の生産管理は可能だ。可能というより、品質の高い商品を作るために必須なのだ>
 ユニクロの中国戦略にかかわった関係者はこう話す。
 「ユニクロは、中国人が経営する工場をあたかも自社工場のように使いこなすことができるように、九〇年代後半から委託工場を絞り込み、一社あたりの発注量を増やすことで、工場側の“忠誠心”を手にしてきた」
 だが、ユニクロは情報開示に消極的だ。例えば、委託工場が中国のどこにあるのかさえ、突き止めるのは容易ではない。
 小誌が昨年末に柳井社長にインタビューをした際、中国工場の取材を申し込んだところ、
「それだけは企業秘密にかかわること、だから絶対にダメです。ZARAだってどこだって、それだけは見せない。我々が行ったって見せてくれないんですから」
 と言下に断った。

 日本人の誰もが身につけるようになったユニクロの製品は、どんな工場で、どのような人たちによって作られているのだろうか。
 上海から電車とタクシーを乗り継いで四時間。浙江省寧波に着いたのは、四月上旬の小糠雨の降る日だった。この地には、ユニクロの大手委託工場の一つであり、四万人超が働く申洲針織有限公司がある。
 四川省の同じ農村出身だという沈静さん(17)と孫澤申さん(18)は、地元の中学を卒業した後、出稼ぎにきた。ユニクロの生産ラインでアイロンがけをはじめて一年がたつ。
「仕事は、朝八時から夕方五時までだけれど、これまで定時に終わったことはほとんどない。夜九時や十時までの残業はいつものことで、それでも終わらないと、午前零時や朝三時までアイロンをかけ続けることもある。朝三時まで働いても、翌朝八時には次の日の仕事が始まる。睡眠が取れないのが一番つらい。とくに三月は、朝三時までの残業が何度も続いたので、同じラインの女の子が倒れたぐらい」
 休憩時間は昼食と夕食時に一時間ずつある。しかし仕事の聞は、立ったままアイロンをかけ続けるので、残業が終わると肩が張り、足は棒のようになるという。
 この二人が手にする月給は残業代込みで千五百元(約二万円)だ。
「こんなに働いて千五百元は少ないと思うけれど、私たちには経験もないし、残業が続くのは私たちの作業が遅いからだって言われている」
 申洲針織が、ユニクロ向けのポロシャツやパーカーなどのカットソー類の生産を始めたのは、一九九〇年代のこと。その後、ユニクロの成長とともに、事業規模を拡大し、二〇〇五年には親会社が株式公開を果たした。
 二〇〇〇年代に入ってからは、ナイキやアディダスといった欧米企業からの生産も、受注するようになった。が、依然としてユニクロが売上高の五割近くを占める最大の顧客である。
 しかし最近、同社内においてユニクロに対する評価が変わりつつあるという。
「ここ数年、ユニクロとの取引では、ほとんど利益が出ない。利益の大部分は、欧米企業との取引によるものだ。中国国内の人件費や原材料費が年々上がっているのに、ユニクロの買い取り価格は下がってきている」(申洲針織関係者)

 千九百九十円で売られている半袖ポロシャツの場合、ユニクロの平均買い取り価格は、四~五ドル(三百八十~四百七十五円)。過去五年間、この価格は「下がることはあっても、上がることはなかった」という。
 中国国内の最低賃金は、過去五年で二倍近くに跳ね上がっており、原材料費も高騰を続けている。
 先の関係者によると、ユニクロと欧米企業では買い取り価格の決め方が違うようだ。
「ナイキやアディダスの場合、諸経費が上がったり、為替が変動した時には、買い取り価格に反映されるようになっている。しかし、ユニクロの場合、『日本の消費者はこの製品にはこの値段までしか払わない』というところから話がはじまるから、利益は薄くなるばかりだ」
 さらにユニクロと欧米企業では、委託工場に対するコンプライアンスの意識も大きく異なるという。
「欧米企業の場合、委託工場での児童労働などが指弾〈れた例もあったため、自分たちに割り当てられた生産ラインで働く作業員の残業時間を細かく管理している。法定労働時間を超える残業など厳禁だ。
 一方、ユニクロは、コンプライアンスよりも納期を優先しているようだ。納期に間に合わなければ、残業してください、それでもダメなら徹夜してください、という感じだ。ユニクロが、労働環境に関心を払っているとは思えない。中国企業に現場の監督責任を負わせるつもりなのだろう」(同前)
 今回取材した中国の委託工場の関係者は、異口同音に、ユニクロの取引条件の厳しさを語る。それなのに、なぜ七十もの下請けメーカーがユニクロとの取引を続けるのか。
 広東省東莞市などに工場を持つ品苑集団は、九〇年代半ばからTシャツやポロシャツなどの生産を請け負い、現在、ユニクロの委託企業としては上位三社に入る。
 ユニクロ以外では、エディー・バウアーやウォルマート、J.C.ペニーなどの生産を請け負う。
 同社のカットソー部門のトップである黄星華総裁(46)は、パワーポイントを使って説明する。
「ユニクロとの取引の魅力は、発注量が多く、安定している点にある。加えて一度決めた取引条件が変わらないのも、取引を続ける理由の一つだ。以前は、複数の日本企業と取引をしていたが、今はユニクロ一社だけだ」
 ユニクロ以外の日系アパレル企業の場合、発注後でも、頻繁に生産量や生産仕様が変わることがあり、さらに支払い前になって、何度も値引き要請が行われることも少なくないという。それでは売上や利益のメドが立たないために、日系企業との取引はユニクロ一社に絞られた。
 同社の東莞の工場には、ユニクロの上海事務所から“匠”と呼ばれる技術者二人を含む、五~六人の日本人社員が毎週やってきて、品質と生産の進捗状況を管理している。

 晶苑集団の別の関係者によると、同社はユニクロの製品開発も行っているという。
「年四回、当社の担当者が企画した製品を持って東京に行き、柳井社長の前でプレゼンを行う。そこで、柳井社長のOKがでれば、シーズンの発注量が決まるようになっている」(ファーストリテイリング広報は、「ユニクロの商品は全てユニクロのR&Dセンターによる企画、デザインです」と回答)
 黄総裁は、厳しい買い取り価格と並んで、ユニクロの取引の特徴として、納期の短さと品質に関する要求の高さを挙げた。
「ユニクロの納期は、生地の裁断から縫製までおよそ一カ月。業界平均は三カ月だから、非常に短い。加えて、不良品率を〇・三%以下に抑える必要がある。これも業界平均の不良品率が二%前後であるのと比べると、ケタ違いの厳しさといえる。しかも、ユニクロの場合、何を不良品とするかという基準も厳しい。Tシャツの表に、〇・五ミリの糸くずが付いていただけでも不良品とみなされる」
 別の工場の関係者は、ユニクロの厳しい取引条件に耐えられるのは、資金力のある大手の工場に限られるという。
 例えば、日本へ発送した製品が、ユニクロ側の検品によって不良品率が〇・三%を超えていれば、すべて中国へ返送される。もう一度検品した後で、再発送することになるが、費用はすべて工場が負担する。
 工場がリコール対象となる製品を出荷した場合は、もっと大変だ。〇八年秋、フリースの膝かけに金属片が混入する事件が起きた。その際、リコール費用に一億円以上がかかり、生産した工場の一年分の利益が飛んだといわれる。
 晶苑集団で縫製工として働く王円さん(29)は工場で働いて五年がたつ。
「この工場は、品質管理が厳しい。すべての作業が機械で記録されているため、一回ミスすると、五元から十元を罰金として引かれてしまう。働き始めた五年前と比べると、プレッシャーがきつくなるばかり。工場を変えないのは、ここの作業の手順ややり方に慣れているからです」
 王さんの月収は約二千元(約二万七千円)で、最低賃金と残業代を合わせた千六百元と、毎週百元支給される報奨金からなる。
 作業を失敗した場合の罰金は、報奨金からひかれるので、もし罰金で報奨金がすべてなくなれば、月収は千六百元になる。
 王さんの夫の方勇氏(33)も同じ工場の検品部門で働いており、八歳になる女の子と三人で工場近くのアパートに住んでいる。
 アパートは日本でいう八畳の間取りに、台所とトイレと、家族三人で眠るベッドが一台あった。家賃は月二百二十元。休日に家族三人で近くの公園を散歩するのが楽しみだと話す。
 夫の方氏に、将来の夢を尋ねてみた。
「娘がちゃんとした教育を受けて、上の学校まで行くことかな。私たちのような出稼ぎではなく、事務所で働くようになってほしい」
 統計によると、彼らのような出稼ぎ労働者は二億三千万人。平均月取は約千五百元(約二万円)だ。地元に働き口がないため、製造業が集'まる広東省や浙江省、江蘇省といった沿岸部に出てくる。
 ユニクロの委託工場で働く労働者たちの住まいを訪ねると、生活の貧しさを目の当たりにさせられる。
 東莞市にある徳永佳集団の染色工場も、ユニクロの大手委託工場の一つ。労働者は、十二時間ごとのシフトで働いている。
 工場で機械修理工として働く河北省出身の凌弘毅氏(25)は、「工場の寮に入ると好きなタバコが自由に吸えない」と、工場の近くのアパートに同郷の友人二人と一緒に住んでいる。
 家賃は月百六十元で、六畳の間取りにおかれた一台のベッドに二人が眠り、もう一人が床にカーペットを敷いて眠る。部屋についているトイレで水を汲んで浴びるのがシャワー代わり。部屋にある家電製品といえば、天井に据え付けられた、三枚羽根の扇風機だけだった。
 一日十二時間働いて、月収は二千元。時給を日本円に換算すると、八十円に届かない。凌氏は、そのうち千五百元を河北省の妻子に仕送りする。自由になるお金は、一日に一箱買うタバコ代の八元だけだ。
 広東省にある別の工場の労働者の部屋に行くと、工場から盗んできたというユニクロのベルトを発見した。この二十代の男性の月収は千五百元。ベルトの価格は百五十元で、彼の収入の十分の一にあたる。中国人通訳は、盗品はどこかで売りさばくのだろうという。
 工場の労働者たちと話していて、気づいたことは、ユニクロについてはほとんど知らないという事実だ。話を聞いた労働者の中に、ユニクロの製品を買ったことがあるという人は一人もいなかった。
「日本のブランド品にしろ、欧米のブランド品にしろ、私たちのような出稼ぎには高すぎる」(ユニクロの委託工場で働く労働者)
 ではどんな人たちがユニクロ製品を購入しているのか。上海市北部のショッピングセンターにあるユニクロの店舗で話を聞いた。
 辛子色のジャケットを着た、安徽省のホテルで働く張興氏(30)は、地元に海外ブランドショップがないため出張で上海に来るたびにユニクロやH&Mで買い物をするという。
「ユニクロの服は、値段が安いのにもかかわらず、かっこいいところがいい。月収は六千元(約八万一千円)ぐらいで、洋服に使うのは五百元ぐらいかな」

 中国でもユニクロ製品の価格は日本とほぼ変わらない。日本で千九百九十円の半袖のポロシャツには、百四十九元の正札がついていた。
 買い物客に話を聞いた結果、彼らの月収は三千五百~六千元に収まることがわかった。出稼ぎ労働者の二~三倍にあたる。委託工場の労働者は、中国の最下層の人々なのだ。
 ユニクロを展開するファーストリテイリングの広報は、小誌の取材に対して、次のように回答した。
――買い取り価格が低すぎて、委託工場の利益が上がらないという声を聞くが。
「ユニクロのお取引先工場はいずれも、長期にわたってともに成長できるいわばパートナー工場と認識しております。従って、指摘の点は当社には当てはまらないものと存じます」
――朝八時から翌朝三時まで働いている工場もある。
「万一、指摘される事実があるようであれば、当社としては厳正に対処しなければなりません。どちらの工場におけることなのか、可能ならば工場名などをお知らせいただけますと幸いです」
 今回取材した工場には、ユニクロの社員が毎週通いつめている。ユニクロの社員が労働環境に気付いていないとは考えにくい。
 日本一のアパレル企業として持て囃されるユニクロ。だが、その生産の大部分を委託する中国の工場には、まだ知られざる闇が放置されたままだ。
(文中一部仮名にしています)

週刊文春2010年5月6日・13日ゴールデンウィーク特大号


ユニクロ側が文春に全面敗訴 「過酷労働」記事の訴訟

 「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなど2社が、過酷な労働について書いた週刊文春の記事や単行本で名誉を傷つけられたとして、文芸春秋に計2億2千万円の損害賠償と本の回収などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、請求を全て退けた。
 判決理由で土田昭彦裁判長は「『月300時間以上、働いている』と本で証言した店長の話の信用性は高く、国内店に関する重要な部分は真実」と指摘。「中国工場についても現地取材などから真実と判断した理由がある」と指摘した。

共同通信(2013年10月18日17時56分)


本誌が勝訴! ユニクロはやっぱり「ブラック企業」 月300時間労働 サービス残業の“裏ワザ”

「原告らのその余の請求をいずれも棄却する」
 10月18日、東京地裁の法廷に、土田昭彦裁判長の声が響き渡った。ユニクロ側が小社を訴えた裁判の判決で、本誌が指摘した「過剰労働」について、裁判所は全面的に事実と認定したのだ。今回の判決は、すべてのブラック企業への最後通牒である。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(柳井正社長)らは、本誌記事「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した!」(2010年5月6日・13日号)および単行本『ユニクロ帝国の光と影』(小社刊・横田増生著)によって名誉を毀損されたとして、小社に計2億2000万円の損害賠償と書籍の回収を求めていた。
 ユニクロ側が問題視したのは、国内店舗や中国の工場における過酷な労働環境をレポートした、次のような記述についてである。
〈現役店長はこう説明する。(中略)「けれど、仕事量が減ったわけではありませんから、11月や12月の繁忙期となると、今でも月300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? 薄々は知っているんじゃないですか」〉(単行本より)
 柳井社長の怒りは凄まじかった。11年6月6日に行われた部長会議では、小社を訴える旨の報告の後、柳井社長から次のような話があった。
「高収益を上げ、高成長を遂げているユニクロは、低価格と高品質を両立した商品を実現するために、店舗の社員やお取引先の労働者から搾取している、という内容が書籍に書かれている。
 しかし、我々は、そのような恥ずべき行為は決してしておらず、万が一、不適切な労働実態などがあれば、真摯にそれを正していく企業である」(同社「部長会議ニュース」より)
 これに対し、本誌はユニクロの現役店長や元店長の陳述書や詳細な取材メモを法廷に提出。事実をもって柳井社長やユニクロの主張に反駁した。
 その結果、裁判所は柳井社長やユニクロ側の請求をすべて棄却。判決のポイントになったのは何か。
 判決文では、ユニクロ国内店舗の労働環境について〈出退勤管理のシステム上、サービス残業を行うことは物理的には可能であり(中略)、現にサービス残業が行われた事例が発覚していることが認められる〉〈(記事の)重要な部分については真実である〉として、著者の横田氏が店長の証言にもとづいて報じた長時間労働の実態を事実と認定している。
 中国の現地工場における長時間残業などについては〈(記事の)重要な部分が真実であると判断したことには相当の理由がある〉と内容の正当性が認められている。

 じつはユニクロ自身、こうした過剰労働の実態を認識していた可能性が高い。ユニクロが日経新聞(11年3月1日付)に出した全面広告には、〈過剰な残業時間や連続勤務の背景には、ユニクロの発注時期の遅れや急な計画変更のしわ寄せが生産現場に及んだと考えられる場合もあり、私たちも自らを厳しくチェックしなければなりません〉との文言があるのだ。
 法廷ではこの点についてユニクロ側が厳しく追及される一幕もあった。
 労働問題の専門家からも、判決を評価する声が相次いでいる。『人が壊れてゆく職場』(光文社新書)などの著書がある笹山尚人弁護士は、「労働者、とりわけ若い人を使い潰す『ブラック企業』に対して警鐘を鳴らす意味がある」と指摘する。
「店長さんの証言を読むと、ユニクロの労働環境は『ひどい』の一言に尽きる。標準的な労働者の労働時間は月間で約170時間程度。ところが同社では240から250時間で、残業時間は70から80時間に上る。これは過労死ラインですよ。さらに300時間を超える時期もある。
 店長の負担を軽減するために権限を他のスタッフに委譲したり、従業員を増やしたりといった実質的な対応が取られていないことも裁判で分かりました。そもそも、『時間外労働』について、きちんとした認識を持っていないことも分かった。
 そうした実態が取材に基づいて明るみに出されたら、いかに企業がもみ消しに動いても止めようがないことが明らかになった」
 また、ブラック企業被害対策弁護団の代表を務める佐々木亮弁護士は「裁判所が記事の真実性を認めた点は画期的だ」と語る。
「判決文では『ブラック企業』という言葉こそ使われていないものの、認定された事実からは、ユニクロが労働者を使い潰す企業であると判断できます。
 また、長時間労働に従事させられていたユニクロの店長には『管理監督者』だとして残業代が支払われていませんが、それを取り戻せる可能性もある。かつてマクドナルドの店長が“名ばかり管理職”だとして未払い残業代を請求して認められた事例もあります」
 もし残業代の未払い訴訟が相次げば、「ユニクロ側は膨大な負担を求められるだろう。逆にいえば、人件費を正当に支払った場合、同社はけっして高収益企業ではないことが露見する可能性もある」(経済部記者)との指摘もある。

『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(小社刊)などの著作がある今野晴貴氏(NPO法人ポッセ代表)は、他のブラック企業と対峙する上でも判決の意義は大きいと言う。
「いわゆるブラック企業は、問題を指摘するメディアや従業員に対して高圧的な対応を取るところが多い。今回の判決はそうした恫喝的体質への牽制になるはずです。そもそも2億2000万円という請求額が異常で、勝ち目が薄くても恫喝目的で訴える『スラップ訴訟』だったのではないか」
 判決を受けて、ユニクロは今後どのように変わっていくのだろうか。
 一連の取材を行った横田氏は、こう語る。
「私は、良い面も悪い面も含めてユニクロのことを書きたいという思いで取材しました。旧態依然としたアパレル業界でユニクロが新しいビジネスモデルを作ったことは間違いないし、優れた点も多い。ただし、柳井社長が売上に占める人件費比率の圧縮を徹底した結果、労働現場にしわ寄せが行っているのは確かです。
 私は、その後も多数の関係者に話を聞いて回りましたが、みな口々に言うのは、『各店舗に正社員がもう1人いれば、サービス残業はなくなる』ということです。
 ユニクロは全国に約800の店舗があるから、仮に社員1人あたりのコストを1000万円としても80億円程度の負担増で実現可能です。1000億円を超す利益を上げているユニクロにとって、けっして難しいことではないはずです」
 判決に先立つ10月10日、ファーストリテイリングは、アパレル企業として初めて年間売上高が1兆円を突破したと発表した。
「(売上高)5兆円は、充分達成可能だと思います」
 柳井社長は今後の目標についてこう豪語してみせた。
 だが、従業員の労働環境について、今回の判決をどう受け止めたのだろうか。

週刊文春WEB 2013.12.29 07:00
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2 コメント

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アマゾンドットコム (藤井康一)
2011-06-14 21:27:10
以前アマゾンについても本を出していますが、アマゾンはユニクロのように訴えてきたのでしょうか?そういったアクションはありましたか?
教えてください。
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Unknown (あっ子)
2011-11-19 12:48:03
 ユニクロのサプライチェーンについて調べていて横田さんのサイトに立ち寄りました。

中国の最下層労働者の知られざる苦労のおかげで、ユニクロは低価格で高品質の服を提供できてるわけなんですね。
http://www.fastretailing.com/jp/csr/business/ で記載されていることが実際には守れてないなんて・・・心が痛みます。服の値段が少し上がってもいいので、是非ユニクロにはもっと中国の労働者を上げてほしいです。

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