F & F嫁の “FFree World”

※PCでの閲覧を前提とした構成です。文字サイズは「大」推奨です 

東京バレエ団 「 ジゼル 」  第 1 幕

2010年09月11日 | Ballet

F log






ゾロ目バレエ の中日、9 月 9 日木曜日に F 嫁と五反田ゆうぽうとホールへと向かった。


8 日、9 日の 東京バレエ団の 「 ジゼル 」 には、英国ロイヤルバレエのプリンシパルである贔屓のアリーナ・コジョカルちゃんと
同じくプリンシパルのヨハン・コボーが出演する。


先だってのロイヤルバレエの来日公演、コジョカルちゃんの出番はロミジュリたったの 1 日だけ。
おまけにコボーが個人的な理由により急遽デンマークへ帰国したため、直前にルパート・ペネファーザーと組むことになった。


ロミジュリには感銘を受けた が、やはり公私共のベストパートナーであるヨハン・コボーとのペアで観たかったというのが本音。
満を持して…加えて演目が自他共に認める十八番 「 ジゼル 」 となれば、仕事も休みをとって朝からコンディションを整えるのも
至極当然といえよう


以前のエントリーでも記したが、インタビューで故郷ルーマニアにおける 「 ジゼル 」 上演中に啓示を受けたというコジョカルちゃん。
彼女のジゼル役は世界的にも個人的にもたいへん評価の高いものだが、それが更に高みに到達したのかと期待も高まる。


例によって舞台を包括的に論じるのは他の素晴らしいバレエブログ各所にお任せして…
ウチは当然のごとく、コジョカルちゃん中心のミーハーレポになることを御了承いただきたい。










17 時半に五反田着。
外回りの仕事だった F 嫁と待ち合わせて近くのタイ料理屋さんで食事をし、18 時半の開場時間にゆうぽうとホールへと向かった。


今回、様々な事情があり座席は 20 列と出遅れてしまった。
まぁ双眼鏡も用意したし、上手側なのでお墓もよく見えるからよしとしよう。


ところが目当てのダンサーをガン見するにも、コール・ドの中から青田買いするにも双眼鏡必須論者であった F が、
この日それを改めることになったのだ。









バレエ 「 ジゼル 」 の舞台はとてもシンプルだ。 第 1 幕は村。第 2 幕は森。
そして主役のジゼルは、第 1 幕では純朴な村娘、第 2 幕では精霊とまったく異なるキャラクターが求められる。


それが 「 ジゼル 」 の見所であり、当事者たるダンサーにとっては困難極まりない役作りとなるのだ。






第 1 幕


コボー@アルブレヒトのノックから、一瞬間をおいてドアを開けて登場するコジョカルちゃん。
ブルー系の村娘衣装だ。 ルグリと踊ったあの夏 と同じであろう。


しかしこの愛らしさといったらどうだ。
こればかりは天から与えられたものであろう。 まさにジゼルそのものだ。


大きな拍手と共に舞台を一周、「 いま確かにノックの音がしたのだけれど‥ 」 のマイムをする。
恋に浮き立つ少女の心持ちを見事に表現した登場の踊り、跳躍も高くとても動きが大きかった。


久しぶりに観るコジョカルちゃん演じるジゼル。
やはり “ 第 1 回ミス村娘世界選手権優勝者 ” だけはある(笑) 完璧な村娘ぶり。


肉眼で舞台を観ても、双眼鏡で覗いてもああジゼルってこうだよねぇ~と納得の役作り。
東欧の…とひと括りにするのもなんだが、独特の影がある表情が運命を示唆している( ように見える )。
 

アルブレヒトとの逢瀬を控えて期待と喜びに溢れていた以前に比べ、嬉しくはあるがどこか不安を抱えた雰囲気を醸し出す。
それが体調面なのか役作りなのかはハッキリしないが、よく動く身体、よく上がる脚とは若干の違和感が。


あいかわらずコジョカルちゃんのスカート( チュチュ )さばきは見事である。 摘んだり押さえたり持ち上げたりと、その動きは無限大。
それによってふんわりと動いたりシャープに回ったりするスカートが、少女漫画のようにより美しく愛らしく見せている。










バチルドに促されて踊るヴァリエーションでも、ロイヤルの映像作品と比しても著しく進化していた。
アチチュードターンも顔が正面に残ったまま鋭く回転。 いやこう書くとハードな踊りのようだが実際は優美。


キレイに入る 5 番からアラベスク~パンシェも映像よりゆっくり丁寧に音を使っていた。
ピルエットも軸足の交換をすることなく 3 回転回りきっていた。


その後の左軸足ポワントでケンケンするとこ ( 語彙が乏しくてすんません ) も、右足を意図的に音から外していた。
うむむむ、この表現は初めて観た。 まるで会話だ。


コジョカルちゃんの第 1 幕を観て思ったのは、マイムや表情ではなく踊りで言葉を発するように感じるということ。
「 恥ずかしい‥ 」 「 嬉しい!! 」 「 心配しないで 」 「 見て、わたしこんなに踊れるの 」… etc


その “ 言葉 " を生み出すのは独特の音の取り方。 「 間 」 と言っていいのだろうか。
要するに演歌の歌い手が音をわざと遅らせて、最後に帳尻を合わせるような・・・・・というのは例えが悪いか。


本人の発言によれば 「 音をたっぷりと使って戯れる 」 ということになるらしい。
これが彼女の個性であり、観客とバレエ教師(笑)からすれば好き嫌いが別れるポイントでもあろう。 もちろん F は大好き。








そしてその天賦の才である音感を完璧に理解してサポートするヨハン・コボー。
コジョカルちゃんとセット扱い( 失礼! )される風潮も見受けられるが、どうして素晴らしいダンサーだと思う。


アルブレヒトの造形こそ、どこからどう見ても貴族然としたルグリには負けるものの、ジゼルを見る目の温かさ。
事が露呈した直後の狼狽。 悲劇が起きてしまった後の悲嘆ぶりなど、個人的にはストレートで好き。


なによりシスや群舞の間、舞台後方などで見つめ合うふたりには、本当の信頼関係が見て取れる。
しかしずっと以前、コボーが公私に渡るパートナーだったと知った時 の荒ぶる感情を思い起こすに、F も大人になったものだ(爆








東バの 「 ジゼル 」 といえば楽しみなのは、井脇さんのミルタと木村さんのヒラリオンだ。
今回井脇さんは残念ながらミルタではなく、バチルド姫だった。


ガムザッティに代表されるように、脇役好きな F は「 ジゼル 」 のバチルドも大好き。
デフォになっているのは、コジョカルちゃんがジゼルを踊ったロイヤルの映像作品におけるそれだ。


上流階級の嫌らしさ、尊大さを完璧に表現した “ 怖い ” バチルド。 アルブレヒトがひと睨みで震え上がるほど(笑
「 貴男、まさかこの小娘に手を出したんじゃないでしょうね(怒) 」 てなぐあい。


氷のミルタで定評のある井脇さんだけにバチルドもたいへん期待していたのだが、結果的に控えめな “ 優しい " 演技に終始していた。
貴族的な優美さを保っているが、クーランド公の後ろで狂乱の場からは常に目を伏せ続ける。 そしてそのまま退場とやや物足りなかった。




9/13 追記

お世話になっている naomi さんの同日のレビューを拝見して、井脇さんのバチルドの造形について知る。

   9/9 東京バレエ団「ジゼル」Tokyo Ballet "Giselle" Alina Cojocaru & Johan Kobborg

リンクされた井脇さん御自身のページも読んで、なるほどそういう事だったのかと得心する。
まったくパタナイズされた鑑賞眼に陥っていたことに反省しきりである。








そして木村和夫さんのヒラリオン。 以前に見た濃~い演技が忘れられない。
第 1 幕の最後、ジゼルが亡くなったことを嘆くヒラリオンだが、その嘆き方が尋常じゃなかった印象が強く残っている。


この日はそこまで濃い演技ではなかったが、ジゼルに思いを寄せる森番の青年を上手く演じていた。
ただヒラリオンという役に対するイメージは、もう少し粗野であると思う。 木村さんはやや知的に振った印象だった。


そういえばこの 「 ジゼル 」 ツアーで、木村さんがアルブレヒトを踊る日があるそうだ。
もともと端整でテクニックのあるダンサー。 アルブレヒトをどう演じるのかたいへん興味がある。









さて第 1 幕のクライマックスである狂乱のシーン。
その少し前、アルブレヒトがバチルドの手にキスをした刹那、劇的な音楽とともにジゼルが間に割って入るシーンが好き。


そこから先の “ 狂乱 " は涙なくしては観られない。
舞台前面に跪きエア花占いをするところなど、思わずもらい泣き。








そして感情の波とともに演ずるコジョカルちゃんの目からも涙が…


もはやアルブレヒトのことも最愛の母も目に入らない。 宙をさまようジゼルの視線。 
最後に突然意識が覚醒し、母の胸に飛び込む。 そして視線は愛するアルブレヒトへ。


この部分の音楽はたいへん劇的だ。
命が燃え尽きる刹那、ジゼルはアルブレヒトの胸に飛び込み、天に駆け上るような頂点でその腕をすり抜ける。


嗚呼、何度見ても切なくやるせない。










以前に実演や映像で観た村娘ジゼルより、溌剌さを押さえた第 1 幕だった。
その静かなる序奏は、第 2 幕で我々の予想を遥かに高く飛び越えて昇華したのだった。


F は第 1 幕で力尽きた (笑) ので、肝心要の第 2 幕は F 以上に感銘を受けた F 嫁が久しぶりに書いてくれた
















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